おどくみ 公演情報 新国立劇場「おどくみ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    普通の家庭のリアリティが見事!
    青木さんの作品は、非日常的なストーリーより、こういうごく日常のありふれた家族劇の方が秀逸だなと感じます。

    登場人物全員に、その人間の日常が見え、これは、KAKUTAの桑原さんにも感じる、劇作の才が顕著です。

    昭和から、平成に移る前後数年の日本の普通の家族劇。
    先日の震災で、津波によって海に誘われて逝った友人のお嬢さんの旅立ちの会に参列した後の観劇でしたので、余計、この時代は、皆、結構能天気に、皆希望に溢れていたなあと、今のこの国の対比としての切なさが胸に込み上げて来ました。

    役者さんも全員好演!
    特に、昔我が家の常連ゲストのお一人だった、樋田慶子さんが、全く以前と変わりなく、ご健在ぶりを発揮されていて、個人的にとても嬉しい観劇となりました。

    高橋恵子さんは、同世代として、観る度、歓喜したくなる素敵な演技で、何度心で、喝采を叫んだか…。
    子役から素敵な役者さんだった浅利さん、とっても親近感を感じる娘役の黒川さん、戦中モノも観てみたくなる下村さんの丁寧な演技、ゴジゲンで拝見する東迎さんは、ベテラン勢の中でも、動ぜず、自分の演技を貫き、感心、谷川さんは、風采の上がらなさを絶妙表現、人の良い皇室オタクおばさんの根岸さん、「六羽のカモメ」の頃から、脇役として得難い好演をされる小野さん…

    まあ、よくぞここまで、ジャストフィットのキャスト選別がなされたかと、感動すら覚えました。

    ネタバレBOX

    高橋さん扮する一家の大黒柱である主婦の言動は、一々同感することばかりで、歌舞伎の大向こう並みに、掛け声を掛けたくなりました。

    青木さんの脚本の好きなところは、全く演劇的でないと言うか、デフォルメされた状況設定や、わざとらしい台詞がない点です。

    たとえ喧嘩しても、家族が、相手を思いやって言わずに呑みこむ台詞までが、役の内心から聞こえて来る秀逸さには、いつも舌を巻きます。
    そうして、つい、言ってはいけない言葉を口をついて発してしまった後の小野さん扮する夫の態度も、実にリアルなある家庭の断片描写になっていて、大仰な台詞や過剰な演出がない分、それほどの大事件が描かれているわけでもないこの芝居が、あれほどの拍手で終演の役者さんを賞賛する結果に結びつくのだと感じました。

    近頃流行の似非演劇とは比べようもない、充実感得られる観劇体験に、関係者の皆様に感謝したいと思います。

    お隣の巨体男性が、斜めになってその上大きな双眼鏡を両手で抱え、私の視界を遮りさえしなければ、更に充足感で満たされたのにと、それだけが無念でなりません。

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    2011/07/18 22:08

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