天守物語 公演情報 SPAC・静岡県舞台芸術センター「天守物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    宮城聰の演出が冴える
    SPACの野外劇場はいつ来てもその景観とすがすがしい雰囲気に感動する。
    演劇ファンを自認するかたには、一度は体験をお勧めしたい。


    背後に迫る夜の森が幻想的な雰囲気を醸し出し、吹き渡る風も天然冷房のように涼しく心地よい。
    今回の「天守物語」にふさわしいロケーションであった。

    コロッセウムのような階段式の客席通路を花道のように使い、舞台との高低差を生かした演出。

    宮城さんが好む民族調の打楽器の演奏で始まるのが祝祭的でよかった。

    一部カットして1時間5分にまとめあげているが、原作の世界はじゅうぶんに堪能できた。

    小劇場で古典をモチーフにした作品は上演時間が長いものが多いが、長いことが必ずしも作品の価値を高めるとは限らない良きお手本のような公演だった。

    「天守物語」のファン必見の贅沢な舞台だと思うので、ぜひまた再演してほしい。


    ネタバレBOX

    棕櫚を編んだような傘を差して、富姫が客席上段から現れる。いかにも、妖怪らしく効果的な演出だと思う。

    おどろおどろしい朱の盤坊がなまはげのように客席になだれこんで、客を驚かせ、怖がらせ、笑わせる。

    俳優はスピーカーとムーバーに役割分担し、動いて演技をする俳優と、セリフをしゃべる俳優、2人で1つの役を演じる手法が文楽のようで面白い。

    女性の役はムーバーが女優で、セリフは男優が、男性の役はムーバーが男性で、セリフを女優が担当する逆転の妙。

    「天守物語」は舞台化が難しいとされ、「お金を出してもよいから上演してほしい」と鏡花が切望したにもかかわらず、
    長く上演されなかったことで知られる作品。


    歌舞伎や新派などで腕がある俳優が上演する分にはあまり問題がないが、最近、小劇場で上演された作品などを観ると、鏡花の独特の台詞の魔力に完全に負けてしまう俳優が多いようで、
    力量不足を感じていた。

    その意味でも、今回の演出は非常に効果的で成功していたと思う。

    男女で1役を受け持つことにより、富姫の魔性や怪しい迫力と、図書之助の清冽さがよく表現されていた。

    富姫と亀姫のドレスは、鯉のぼりの生地を縫ったようなどこか京劇やアジア風の個性的な扮装。
    特に後ろのフォルムが、俳優が動くと可愛らしい。

    眼目となる獅子頭が獅子というよりデザインが「龍」に見えたのも面白い。

    桔梗が舌長姥の役も兼ねている。
    播磨守の手勢を桔梗が覗き込む場面、位置的に舞台中央後方で、俳優が後ろ向きになり、語りのスケール感が伝わらなかったのが惜しく感じた。

    やはり正面を向き、城を見下ろすように語ったほうがよかったように私は思う。


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    2011/07/08 16:46

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