満足度★★
現代における泉鏡花の意義
泉鏡花の作品の引用や作家自身のエピソードを積み重ねることによって、デシタル化する現代において失われつつある「魔的なるもの」の意義を考えさせる作品でした。オペラと称していますが、特定の役を演じて物語を進めるという形式ではなく、合唱を主体として断片的なシーンが展開するものでした。上演時間が90分にも満たない、オペラとしては短い作品でしたが、引き込まれる要素があまりなく、時間が長く感じました。
合唱は素晴らしいハーモニーで良かったのですが、舞台作品としては印象に残らない構成になってしまっているように感じました。
終章のひとつ前の『オペレッタ「貝の穴に河童 がいる」』と題された章が長く、バランスが悪かったと思います。しかもオペレッタという割りには芝居(途中に影絵劇もありました)だけで進行する部分が多く、音楽も同じパッセージがリフレイン的な何度も繰り返されるので集中力が途切れてしまいました。
終章では現代の街の環境音が前半のシーンとリンクするように上手く使われていていたので、このような演出上の仕掛けをもっと観たかったです。
普段は合唱団として活動している人たちなので演技があまり上手くないのは仕方ないところがありますが、歌はとても良いので、芝居より演奏で舞台を引っ張って行く構成の方が良い気がしました。
クラシカルな発声法だけでなく、各人の声の個性を活かした曲があったのが良かったです。音楽としてはホモフォニックな曲が多く、せっかく空間を自由に移動しながら歌うので、それを活かしたポリフォニックな曲が聴きたかったです。