黒い十人の女 公演情報 ナイロン100℃「黒い十人の女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    骨も肉もおいしい
    長尺のお芝居でしたが
    飽きが全く来ず
    舞台上の時間に浸り込んで
    楽しむことができました。

    登場人物たち一人ずつに
    鮮やかな印象があって
    10人の女性としての個性が
    がっちりと組みあがっている。

    映画は観ていないのですが
    物語自体もずるいくらいに面白くて・・・。

    堪能いたしました。

    ネタバレBOX

    冒頭と最後に短いシーンがあって、
    観る側がその狭間にあるメインの時代を覗きこむような感じ。
    その工夫で、観る側の視座が決まり
    戸惑うことなくその時代へと導かれていくことができる。

    テレビ局に流れる時間がいろんな工夫でしたたかに
    作られていきます。
    くっきりとした混沌というか
    登場人物のそれぞれが
    その場所に流れる時間をつかみきれない中で
    一生懸命に動いているような感じ。

    そこに縫い込まれるように
    主人公のプロデューサーの日々を生きるスタイルや
    女性たちの個性、さらにはプロデューサーへの
    想いが浮かび上がってきます。
    愛情の表現はどこか表層的で
    わかりやすいというか型にはまった感じもあるのですが、
    にも関わらず、血が通っているというか瑞々しい。
    物語の流れという点では、
    キャラクターたちは職業や立場などのイメージに
    コーティングされているので
    とてもわかりやすいのですが、
    役者たちのお芝居には、
    そのイメージの内側に
    女性たちの想いの揺らぎをしなやかに表現する
    したたかさがあって。
    それぞれの人物に肩書や制服の内側の魅力を
    醸し出していく。

    そもそも、物語の構造自体が
    どこか薄っぺらいのに馬鹿に面白くて
    男女の想いの噛み合わなさなどに
    いまにも通じるような真理が織り込まれていたりもするのですが
    舞台上ではそれを物語るというより
    時代の質感とともにキャラクターを紡ぎ出し
    男女の関係のなかで
    立体的に積み上げていくような感じがあって。
    だから、いろんな遊び心や映像などの秀逸も
    はみ出したり冗長に感じられることなく
    登場人物たちの個性を彩り
    シーンの豊かさとして生きる。

    さらに、醸し出された立体感は、
    その時代の大人たちの
    擬似体験のような感覚を観る側に与えてくれるのです。
    女性たちに満ちてやがてしぼんでしまったような高揚も
    終盤の男のなにかを手放したような感覚も、
    観る側で乖離をしない。

    ラストシーンで時代の外側に戻されても、
    男女が根源的に持つものや
    キャラクターそれぞれの印象は
    霧散せず、むしろ今の物語として語られるよりも
    しっかりと残るのです。

    役者たち、特に10人+1人の女優達の紡ぎ出す個性に浸るだけでも
    十分に満たされるようなお芝居ではあるのですが
    それに男優や脇を固めr役者たちをも道具に仕立てて描かれる
    作り手の世界は単なる役者たちの魅力を凌駕する
    膨らみを持っていて。

    休憩込180分の尺が、むしろ短くすら感じられたことでした。

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    2011/06/04 11:08

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