満足度★★★★★
平和への帰還・・・ドロシーに学ぶ
観劇から、既に3ヶ月。
たくさんの感動をいただいた2週間後。日本は巨大地震と津波に襲われ、
それ以前とは全く異なる価値観への変更を余儀なくされることとなった。
恐らく、多くの日本人が感じてはいるが、あまり口には出せないこと、
「日本のある時代はこれで幕を閉じた」それを飲み込む苦しい日々が、日本人の「今」なのだろうと感じている。
そんな中、私はドロシーの苦悩が、そのまま現在の日本の苦悩になぞられるのではなかと、この頃感じるようになった。
ただひたすらに、自分の世界を描き出し、人々(特に思春期の若者たち)に届ける作家活動に邁進していた高峰ドロシー。
ところがある時、その作風の残虐性部分にのみ感化された少年が、事件を起こし自殺するという悲劇に遭遇する。世間は責任を作者ドロシーに向ける。
読者の受け取り方までも、筆者は責任を持つべきか否か。ドロシーは悶々としながら、そして自分を責める父親と対立しながら、人知れず苦しみの日々を10年も過ごす。
しかし、それぞれの夢に向かいもがき苦しみつつも前進を諦め無い若者たちとの出会いや、自分を20年来信じて支えてきた編集者の存在を深く想う中で、長い年月保留にし続けていた問題に結論を見出す。
「自分が信じて創り上げた作品が読者に及ぼすあらゆる影響も含めて、自分は逃げることなく、真摯に受け止めていこう。例え、それが深い苦しみを伴うものでも、受け止めよう。苦しみを胸に秘めて、それでも自分の世界を描き続けよう。自分の作品を支えとして、必要としている読者がいる限り、自分は作家として生きる責任があるのだから。もう、引き返せない所まで、自分は歩んできたのだから。父親や編集者、そして読者の支えを得て。」
このドロシーの苦悩と決意の道のりは、今回大災害のみならず、それによって引き起こされた原発事故と向き合う、現在の日本国民全員が歩むべきそれになぞられるのではなか?
信じて進めてきた原子力発電の弱点。修復は絶望的な状況の中、国民は何を決意し、今後どう行動を起こすべきか、ドロシーは教えてくれてるように思った。
そして、日本人は、今後どこにどのように帰還すべきか?
世界人類が、平和と幸福への道のりへと帰還するために選択すべき行動とは?
私たちを叱ってくれた父なる地球の懐へ戻る資格を得るためには、この苦しみに耐えることは、日本人にとって、必須なのだろう。