満足度★★★★
小説の言葉を誠実に、まごころ込めて立体化。
短編小説を演劇にする企画です。3週間連続で新作3本を発表する底力は、長年活動を継続している劇団ならではなのでしょう。ゆるやかにつながる3公演のうち、《群青の夜》と《黒の夜》を拝見。《桃色の夜》は残念ながら観られませんでした。
各短編小説を古書店店主のオリジナルのエピソードでつないでいきます。くるくると頻繁に場面転換するのがスムーズで手堅いです。少なくない出演者が息を合わせて作品を成立させる、その一体感も見どころでした。
役者さんは登場人物の思いを素直に表現されていましたし、演出も誠実で、物語の進行に安心して身を任せられました。でも、演技が文章を追いかけて説明しているように見えて、退屈することもありました。俳優の身体と感情が言葉よりやや先行する(ように見せる)方が、劇の進行を停滞させないのではないでしょうか。朗読とセリフ、所作とのコンビネーションは、タイミングやバランスが難しいところですね。
役者さんの中では「ピエロ男」でタイトルロールを演じた若狭勝也さんと、「ネオン」でヤクザ志望の若者、「ささやく鏡」で主人公の幼なじみを演じた尾﨑宇内さんが特に印象に残りました。
終演後の客席で上演短編を収録した文庫本を販売し、劇場ロビーの物販は、劇団の15周年記念パンフレットや過去公演DVDなどが充実していました。小説と演劇が出会う期間限定イベントの魅力を温かくアピールし、毎週五反田に通いたい気持ちにさせてくれました。