満足度★★★
夢と知りせば覚めざらましを
「終末」もので「疑似家族」もの。
巷に溢れている設定の物語で、新味はない。言い換えるなら、どのような展開が行われ、結末がどうなるかは概ね見当がついてしまう。
しかし観劇中、一時も目を離すことができない。それはこの舞台に、観客のイマジネーションを刺激する力が備わっているからだ。
ここで描かれる「世界が終わるまでの期間限定の理想郷」は、初めから崩壊することが約束されている。登場人物の誰もが、それが「虚構」にすぎないことを認識している。しかし、我々の住む「現実」とやらも、極めてあやふやな思い込みによって成り立っている「虚構」ではないのか。東日本大震災と原発事故を経験し、「安全神話」がいかに脆弱なものであったかを我々が自覚している今、そのことを特に痛感しないではいられない。
「多様な解釈が可能な作品ほど優れている」という言葉がある。この物語の結末が果たしてハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、それも観る者によって受け取り方は様々だろう。脚本の三浦としまるははっきりとメッセージを込めて戯曲を書いてはいるが、それは決して押しつけがましいものではない。