グラデーションの夜 《群青の夜》 《黒の夜》 《桃色の夜》 公演情報 KAKUTA「グラデーションの夜 《群青の夜》 《黒の夜》 《桃色の夜》」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    物語るテンポの際立った秀逸
    群青と桃色を拝見。

    語られるペースが本当に良くて、心をかたむけてしまう。

    群青とコラボした写真も、桃色とコラボした歌も、
    それぞれの広がりで、見る側が受け取るいイメージを広げてくれて。

    心地よさをこんなにしっかりと感じることができる舞台は
    本当に久しぶりでした。

    諸事情で黒を見損なったことがものすごく悔しい。

    ネタバレBOX

    基本的にはリーディングというか、
    短編の朗読をベースにした舞台。
    でも、この舞台には物語を読み聞かせることにとどまらない、
    演劇的にイメージを広げる仕掛けがあって。

    数作の小説をつなぐ、もう一つのエピソードが
    舞台の骨格の態で
    見る側を物語に引き込んでいきます。

    ボーダーを感じることなく、ベースのエピソードに
    小説が挟み込まれていく。
    面白い本を広げて本を広げて
    たちまちその世界にとりこまれていくように
    物語が咳払い一つせずにやってくる。

    朗読が、線描のように物語に輪郭を創り出していきます。
    クオリティを持った朗読が
    言葉のニュアンスにいくつもの色を与えていく。
    その色に誘い出されるように
    役者たちの演技が重なっていきます。

    さらに、週替わりでの表現のコラボがあって。
    群青の週は写真でしたが、
    それが本の挿し絵のごとく
    物語のイメージをクリアにしていきます。
    一枚の写真が物語切れを作る。
    あるいは舞台全体に映し出された公園の風景が
    物語の曖昧な背景に具体性を与えたり。

    桃色の週は音楽、
    全身にその声が季節と登場人物たちの想いを彩ります。
    観る側の全身に染み入るような
    つややかな美しさを持ったボーカルが
    美しいメロディーや映像とともにニュアンスを紡いでいきます。
    なんだろ、物語の瑞々しさが
    感覚の内側まで浸してくれる感じ。

    なんというか、
    その場にいることがとても心地よく感じる。
    ベースになる小説の世界が
    観る側の思考のスピードと歩みを合わせるように
    舞台を満たしていく。
    語り綴るテンポが抜群に良いのだと思う。
    筆舌に尽くせないような、
    やわらかい高揚にどっぷりと浸されて。

    こう、上手く言えないのですが、
    物語を語るペースが本当に秀逸で
    なにか自分の体躯にとてもあった服を身につけたような感じが
    物語を追い世界が流れこんでくる楽しさの中に
    潜んでいるのです。

    この作り手にしか成し得ないであろう
    この表現方法は、
    作り手にとっても観る側にとってもいろいろな可能性を
    秘めているような気がする。
    作り手にとっては
    自らが書き綴る物語とは別に
    上質なクオリティで表現しうる
    無尽蔵な物語が存在するわけだし
    観る側にとっては様々な小説の
    読むだけでは感じ取り得ない領域に導びいてもらえるわけで。
    未読の小説はもちろんのこと
    観終わったあと、すでに読んだことのある小説の
    原作を読みたくなるのは
    舞台が観客に原作の新しい奥行きを
    与えてくれているからだと思う。

    両日とも観終わって、どこかがずっとほわっとしていた。
    群青と桃色の両バージョンそれぞれに
    ほんと、どっぷりと嵌ってしまいました。

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    2011/05/06 11:40

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