ドレッサー
シス・カンパニー
世田谷パブリックシアター(東京都)
2013/06/28 (金) ~ 2013/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
舞台俳優・大泉洋の真髄
世界で上演され続けているイギリスの戯曲「ドレッサー」
第二次世界大戦中の、ある劇団の座長と付き人の関係とその周囲の人との関わりを描いた作品。
日本でも過去に何度か上演されたが、初めて見る作品だった。しかし、三谷幸喜演出、大泉洋出演となっては期待も高まり、観に行った。
見て、感じたのは、大泉洋の集中力の高さ、膨大な量の台詞。さらに、モノマネも入り、役者大泉洋の演技力の高さを感じた。
ストーリー自体は、座長と付き人の関係が、「リア王」とそこに出てくる道化との関係に合わせていたそうだが、シェークスピアなんて、高尚なものを見ることのない私にとっては、分かることはなかった。
しかし、この作品を見たときに、付き人に切なさを感じた。
シェークスピア劇が、海外ほど浸透していない日本では、難しい面もあるかと思うが、それでも、演技力の高い役者さんが多数出ていることもあり、十分に楽しめたと思う。
遠くに行くことは許されない
セロリの会
「劇」小劇場(東京都)
2013/07/25 (木) ~ 2013/07/28 (日)公演終了
満足度★★
切ない気持ちになった
22年前に行方不明になった妹が見つかったことから始まるストーリー。
妹ではないかと思われる人物・上原を発見し、連れてくるところから、不思議な感じになっていく。
ネタバレBOX
「逃げるかもしれない」と、ずっと縄でくくりつけたままにする次男。
次男と二人で上原を「妹」と言い聞かせる愛。
次男の言うことを信じて、ひたすら上原を「妹」と思い込んでいる長女と千鶴子。
実は違う人物だと分かっている長男。
ずけずけと割り込んでくる青木と久保。
なんだか、すべてがおかしくて、不思議な感じだった。
「まともな人はいないのか?」と何度も思った。
最終的に、上原は、実は違う人物だということになり、次男の子どもを妊娠した愛と次男は、家を出ることになる。そして、残された3人(長男・長女・千鶴子)は、また、同じような日々を過ごす、ということになった。
しかし・・・もう少し穿った見方をすることはできないだろうか、と2日経って考えた。
上原は完全なる被害者。
本当は、愛と次男の宏が企てたトラブルではないかと。
愛は、宏の子どもを妊娠し、焦っていた。このまま「妹・ゆうちゃん」探しを続けていれば、子どもを産むことで、周りから責められるに違いない。いや、産むことさえ許されないかもしれないと。年はどんどんとるし、自分の幸せをつかむことさえ許されない今の関係性につかれてきたのではないかと。
だから、上原という「ゆうちゃん」の代わりになりそうな人物を探し当て、さらってきた、と考えた。
だとしたら、愛と宏は、無責任だ。
いや、無責任ではない。
自分たちで自分たちを苦しめているのではないだろうか。
この5人が、自分たちで「ゆうちゃんが見つかるまでは、自分が幸せになってはいけない」と思い続けたことが何かの問題なのかも?
でも、一方で、家族が行方不明になったとしたら、自分の幸せなんて探していられないのかも。
だから、第三者の誰かが「幸せになってもいいんだよ」と言ってあげる必要があったのかもしれない。
でも、この芝居に描かれる第三者はいない。
第三者的な立場である青木や久保も、結局は花井家とガッツリ関わっている。だから、違った視点ではあるが、第三者ではないように思う。
そう思うと、この家族が、とても可哀想なものに思える。
ラスト、長男と長女、そして千鶴子がいつも通り、朝食を食べていた。
そこに愛と宏の姿はない。(勿論、青木や久保もいない)
だから余計にこの3人が切ないように感じた。
妊娠して、幸せな2人の姿はそこになく、過去に取り残された3人だけがいつも通り過ごすしか方法がない。
2年前に自分が感じた思いが、そこにあったように感じた。
突然、妊娠して幸せを歩み、目の前から消えた同僚と、突然訳も分からない仕事を押し付けられて、苦しんだ自分。
異論はあると思うが、この芝居を見たことで、自分を振り返る事ができたと思う。
そして、願うのは「ゆうちゃん」が見つかることだ。
Happiness 東京公演
劇団PEOPLE PURPLE
SPACE107(東京都)
2013/05/30 (木) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★
良かった!
どうしてジョセフが妻と離婚したのかはよく分からなかったけど、最後まで見たとき、家族の大切さを感じるストーリーだと思いました。
また、人種差別もストーリーの筋に入っていて、今の日本ではありえない話だけど、ふと、そういう時代があった、そういう場所が今もあるかもしれない、と思い出されました。
ヴィヴィカは、そんな人種差別のある時代に生きていたけど、そこで抱える葛藤を吐露した瞬間は、私自身が抱えていた悩みも近いものがあって、それでも許せない私は本当はいけないんじゃないかとか、色々考え込んでしまいました。
people purpleのストーリーは、分かりやすく、とても感情移入しやすいので、大好きです。そして、その台詞1つ1つが、何気なく生きている自分をフッと振り返る瞬間を作ってくれて、本当に観に行って良かったと思いました。
姐さん女房の裏切り
千葉雅子×土田英生 舞台製作事業
サイスタジオコモネAスタジオ(東京都)
2013/06/05 (水) ~ 2013/06/12 (水)公演終了
満足度★★★★
面白かった
キャリアも実績もある土田さんと千葉さんが2人芝居をするということで、大変、楽しみに行きました。
逃亡してから20年後、すっかりヒモ状態の男と、生活のためにスナックで働く姐さん。
二人の関係が「反対じゃない?」と思えるようなやりとりが続いたところは、千葉さんの冷静な声だけど控えめな雰囲気が抜群に生かされていて、とても面白いやり取りでした。
8日にも行って、アフタートークで、お二人の野望というか、今後の展望も話されていました。その中で、全国で公演したい!とのことでしたが、自分の家の近くでもしてもらえるといいな・・・と思いました。今後のお二人に、また注目したいと思いました。
近未来パーク
とくお組
吉祥寺シアター(東京都)
2013/04/17 (水) ~ 2013/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★
賑やかで楽しいお芝居でした
日替わりのゲストさんが登場し、いつも以上に人数も多く、とても賑やかなお芝居でした。
ネタバレBOX
ある公園に未来人が集まっている。自分たちのいた時代に戻りたいけど戻れない未来人・公園を愛する公務員・カメラで写真を撮っている不思議な人・水の営業マンのおりなすドタバタ劇がとても面白かったです。
21日は、Piperの川下大洋さんが出演していて、お芝居に渋さと深みがグっと増していました。
次回作も期待して観に行こうと思います。
AMUSE×PEOPLE PURPLE ORANGE 東京公演
劇団PEOPLE PURPLE
本多劇場(東京都)
2013/03/28 (木) ~ 2013/04/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
感謝の気持ち
阪神淡路大震災から18年、震災前まで生きた時間よりも震災後に生きている時間が長くなった。
2年前には東日本大震災もあり、すでに阪神淡路大震災も「過去のもの」と感じることが多く、阪神の被災者としては心苦しいものがある。現在、関東で住んでいるため、周りはどうしても3.11への気持ちが大きく、それ自体を否定することはないが、やはり私は、1.17への思いの方が強い。
そんな中で、舞台「ORANGE」は、すでに3度目。初めて見たのは、3年前。今はなき前進座劇場だった。きっかけはヨーロッパ企画のお芝居を見に行ったときに「ORANGE」のチラシを見て、「行かなきゃいけない」と、心に何か感じたことから、チケットを手配した。そして、観劇した後、心の底から脚本を作った宇田学さん、そして演じてらっしゃるpeople purpleの皆さんに「ありがとう」という気持ちになった。
震災を扱う作品の多くは、絶望を全面的に出したものか、希望を見出してハッピーエンドで終わるようなものが多いと感じ、それらの多くはお涙頂戴もののストーリーで、嫌悪していました。震災後、しばらくは震災を扱う作品を見ることはなかった。
そんな私がどうして「ORANGE」を「見にいかなくてはいけない」と思ったのか今となっては不思議だが、少なくとも、「ORANGE」を見て、本当に良かった、このような素晴らしい作品があることを知れて、幸せだと思った。
「ORANGE」は、あの時、あの場所であったことが目の前で繰り広げられ、それは絶望的でもあるけれど、でも、本当だったことを描いているからだ。
演じられる役者さんのご苦労は相当のものだと思うが、あの時のあの現場、あの時間がリアルに繰り広げられ、それを多くの人に知ってもらうことは、阪神淡路大震災の被災者として、心が救われる思いになる。
多分、これから東日本大震災の被災者、他の自然災害(事故や事件もありますが)の被災者も同じように感じると思うが、「忘れられること」ほど、悔しい・悲しいことはない。
だからこそ、このお芝居が私にとって「ありがとう」という気持ちになるのだ。
「ORANGE」のはじめの台詞に東日本大震災の被災者に対する言葉が入ったことで、きっと私と同じように救われる人はいると思います。
本当にありがとうございました。
『うぶな雲は空で迷う』
MONO
赤坂RED/THEATER(東京都)
2013/03/23 (土) ~ 2013/03/31 (日)公演終了
満足度★★★★★
キュートな窃盗団
チラシをみても何を見ても、「ダンディーなSF会話劇」とあった。
だから、今回、MONOはダンディーを目指すのか、と思って期待しながら劇場に向かった。
でも、実際、あれはダンディーだったのだろうか???
5人の窃盗団が、船の中で繰り広げる失敗→言い訳の繰り返し。
あっという間に時間は過ぎ、期待したことは自分の元に訪れることはない。
ある種の絶望さえ感じてしまうけど、その様子が滑稽で、それを演じるMONOの皆さんがとてもキュートでした。
それぞれのキャラクターが持つ魅力と役者さんの演技力の素晴らしさ、見事なチームワークによって生まれる会話のズレが面白かったです。
前回の「少しはみ出て殴られた」に見られる、バイオレンスな部分や目を背けたくなるような部分はなくて、むしろ笑えるんだけど、胸にズシッとくる台詞が散りばめられていて、さすが土田さんだなぁ・・・と感心しました。
ここ数日、複数のストーリーが絡み合ったお芝居を見ていただけに、1つの芝居を落ち着いて見ることができ、充実感を感じた。
ネタバレBOX
結局、元に戻ってくるという結論で終わるわけですが、何か大きなことを夢見るのではなく、足元を大事にすることが重要なのかな?なんて考えて家路に着きました。
デカメロン21~或いは、男性の好きなスポーツ外伝~
ナイロン100℃
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2013/02/22 (金) ~ 2013/03/24 (日)公演終了
満足度★★★
きらびやかなお芝居
性にまつわるストーリーがいくつも繰り広げられ、その1つ1つに濃密なエロスを感じた。
初めて見るナイロン100℃は、煌びやかで「派手!」という印象だった。
結局は、つまるところ「エロ」だよ!と言われているような気もしたが、何か生きるってものすごいパワーが必要で、そのパワーを見せてもらったようなそんなお芝居でした。
キャッチャーインザ闇
悪い芝居
王子小劇場(東京都)
2013/03/20 (水) ~ 2013/03/26 (火)公演終了
満足度★★★
突き抜けた先には?
若い感性が溢れるお芝居という印象の強いものだと思いました。
テーマが「闇」で、3つのストーリーが時には絡み合い、時には並行してすすめられていく中、自分たちが今進んでいる道(人生?)の先には一体何が見えるのか、私は何を目指しているのか、そんなことをふと考えました。
今回、突き抜けた先に見えるものを3つのストーリー、それぞれにあるわけだけど、個人的には陸上選手のお話が一番胸に落ちたような気がしました。
HIPHOP侍vsレゲエ侍
男肉 du Soleil
元・立誠小学校(京都府)
2013/02/23 (土) ~ 2013/02/23 (土)公演終了
満足度★★★★
パワーと勢い
初めて男肉du Soleilを観ましたが、みなさんのパワー溢れるダンスと勢いでおしまくるストーリーにはただただ圧倒されました。
スマートモテリーマン講座VOL.3
avex live creative
天王洲 銀河劇場(東京都)
2013/01/17 (木) ~ 2013/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
安田さんが良かったです!
ケーススタディを用いて行う「講座」という形で行われた本公演。
安田顕さんの濃いー演技が印象に残りました。
芝居あり、ダンスあり、歌あり、パロディありと、要はなんでもありのお芝居で、楽しいことこの上なしでした。
内容としてとても感動するようなものではないけれど、ただ単純に笑いたいと思ったとき、スカっとするお芝居だと思いました。
イケメン大東俊介さんが主役ではあったというのに、安田さんの濃い演技だけが心に残りました。
「僕と彼の彼女達」
セロリの会
「劇」小劇場(東京都)
2012/07/26 (木) ~ 2012/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★
心優しき人たちに幸あれ!
あるお土産屋さんの跡取り「謙介」その姉「真奈美」そして妹「この実」。
3人には、「ショージ」という兄がいる。
4人はある日、店で集まる予定だったが、「ショージ」が来ない。
代わりに、女性がぞろぞろとやってきた、「ショージ」を探しに。
「ショージ」の元妻「香」、香の前後でショージと付き合っていた「清子」、香と清子とショージの相談相手「竹子」。
店にしょっちゅうやってくる若い女「佐藤」。
そして、謙介と商売上の付き合いがある「西牟田」、店の職人「三千代」までショージと付き合っていたという。
女たちは、自分がショージの彼女であると公言し、相手を牽制し始める。
謙介達は、困ってしまうが、どういうわけか女たちに巻き込まれてしまう。
でも、結局、ショージの居場所は、ある女性の家でいたことが発覚し・・・・
ネタバレBOX
ここのところ、ドラマとか映画で恋愛のドロドロしたものとか、見ていたので、ゲンナリする部分もあった。
特に「佐藤」に関しては、理解不能で、同じ女性としても鬱陶しいなぁ・・・・と思った。
逆に「西牟田」などは、今の自分を表しているかのようで、将来のこと、結婚のこと、仕事のことに悩む姿には大いに共感できた。
最終的に、ショージは、竹子の家に居て、竹子と入籍するのだが、末期のガンで余名わずかとなっていた。
女を引き寄せるような男「ショージ」に対して、特に何の感情もわかないが、彼が最後に「竹子」を選んだことは何となく理解できた。
恋愛のドロドロしたものなんて、なに1つ経験のない私だが、少なくとも、「相手を思いやる」気持ちだけは重要だと気づかされた。
最後に、やはりこの作品、謙介役の尾方さんが格好よかった。
とても優しくて、でも不器用で、それでも一生懸命な謙介は爽やかな尾方さんだからこそハマリ役だったと思う。
ラスト、謙介がみんなに怒鳴るシーンがあったが、「いい人」は常に、誰かのワガママや要望を聞き、受け止めていると思う。それがいっぱいいっぱいになって、どうしても耐えられなくなった時の姿と感じたが、仕事に行っても生活していても、どこにでもあるその風景が自分にとって胸が傷んだ。
自分が「いい人」であるとは思っていないが、職場の「いい人」が「ずるい人」によって利用されたり、仕事を丸投げされている姿を見ていると腹立たしくさえ思う。
多くの謙介が、輝く世の中になってほしいなぁ・・・なんてふと思ってしまった。
WARRIOR~唄い続ける侍ロマン
TEAM NACS
赤坂ACTシアター(東京都)
2012/05/30 (水) ~ 2012/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
3年ぶりの新作は満足しました!
前作「下荒井兄弟のスプリング・ハズ・カム」から3年。
各方面でソロでの活躍著しいTEAM NACSの新作となれば期待も最高潮です。
本命を「東京公演」、保険として「大阪公演」を予約したところ、両方ともチケットがとれたので、無事に2回、行ってきました。
時は戦国時代。
かの有名な桶狭間の戦いから始まる。
本来、史実に基づけば、今川軍に徳川家康も明智光秀もいないのだが、森崎さんがアイデアを出したことで、同時代に活躍していないはずの武将を同じ時代に生かすことで、物語に深みとストーリー性が生まれた。
ネタバレBOX
桶狭間の戦いで、殺された家康。織田信長に捕らえられた光秀。
家康は、そのまま葬られたが、和睦を結びたい信長は、家康と同じ顔をした又兵衛という絵師を家康の影武者に仕立て、光秀は自分の軍師にする。
又兵衛は、自信がないこともあり断るが、信長はそれを許さず、結局、又兵衛は、不安を抱えながらも家康としての道を歩み始める。
一方、家来も殺され、生きる理由も見つけられない光秀は、死のうとするが、信長の野望により、死ぬことさえも選べない状況に追い込まれる。
信長の忠実な家来には柴田勝家、豊臣秀吉がいる。
ある日、武田軍が攻めてきたことで、家康は突然、武将として戦わなくてはいけなくなる。
しかし、一介の絵師がそんなことできるわけでもなく、家康はただひたすら逃げる。
そのため、秀吉が殿(しんがり)を務めることになるが、死にたくない秀吉は家康に自分の気持ちを吐露する。
生きることを説得するが、秀吉は「武士」としての勤めを選ぶことにしていた。しかし、光秀の登場により、秀吉は生き延びることができる。
信長は、無事に武田軍を追い払った光秀、殿を勤めた秀吉に褒美として、妻の濃に酒を注がせるが、もともと自分の妻だった濃にそんなことをしてもらうことに光秀は抵抗があった。
一方、武田軍が動いたのは、家康の妻、築山御前の策略と知った信長は、家康に妻子を殺すように命ずる。
「影ゆえに本物になりきろうとした」家康は、2人を守ろうとするが、逆に築山に諭され、2人を殺すことになってしまう。
大切な人を失う自分を省み、本当に守るべき時は闘うことを誓った家康は、気持ちを入れ替える。
そんな時、毛利征伐のために、信長は、一時、本能寺へ行くことにするが・・・・
アイデアを森崎さんが出し、それを元にpeople purpleの宇田学さんが脚本をするという、私にとっては最高のコンビだと思った。
今までのNACSの作品は「パワー・勢い・テンション」という言葉に代表されるように、とてもパワフルで勢いがあった。
本来、森崎さんが脚本をするのが理想だが、森崎さん以外の人がNACSの脚本をするとなると・・・?と思うと、宇田さんの感動を紡ぎ出す言葉の数々は、理想とするところだ。
すでに舞台が始まる前から期待は高まっていた。
そして、実際に大阪公演を観たとき、5人が揃った姿を見た瞬間、とめどなく涙があふれた。
3年前、「下荒井兄弟のスプリング・ハズ・カム」以来、楽しみにしていた瞬間だった。
お芝居の内容は、史実に基づいてはいないものの、アイデアが満載で、とても面白かった。
NACS独自の笑いのシーンもふんだんに盛り込まれ、さらに、泣かせるところは泣かせる内容には、十分満足した。
戸次さんは、一見非情ではあるものの、実は愛する人のことを思う信長を艶やかに演じ、音尾さんは、農民から信長の右腕にまでに登り詰めた実力があるものの実は、一番野望を秘めた秀吉を器用に演じていた。
さらに、森崎さんはそのご自身の持つパブリックイメージ通りの豪快でワイルドな柴田勝家を大らかな雰囲気を持って演じていた。
1人の女性をただひたすら愛する光秀を演じた大泉さんは、TVで見るイメージとは違っていたが、逆にその一途な姿に目を奪われた。
そして、安田さんは、このお芝居の核になる「生きる」ということをひたすらに感じ、考え、伝える役目を演じていたが、安田さん独自の笑いのシーンもあり、本当に感動した。
5人がそれぞれにキャラクターが確立し、さらに、そのキャラクターに甘んじることなく、多岐にわたる役を演じられるTEAM NACSの凄さには毎回驚かされるが、今回も、十分に満足することができた。
次回作が、何年後になるかわからないが、楽しみに待っていたいと思う。
PLAY PARK2012
PLAY PARK 事務局
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2012/04/20 (金) ~ 2012/04/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
MONOを観に・・・
今年の2月にMONOの「少しはみ出て殴られた」を観に行って以来、MONOに釘付けになってしまった私。
ちょっとでも観れないものかと思い、探し出したのが「PLAY PARK」。
最終日に出演するということで、昼公演と夜公演がありましたが、夜公演は売り切れていたので、昼公演に行くことにしました。
5組出演中、MONOは4番目。
期待も最高潮に来たときに登場!でした。
ネタバレBOX
「意外な盲点」
ある部屋に集まった4人の男。
彼らは、ある計画を練っていたのだが、その計画が警察にもれたことから、誰が犯人なのかと探し始める。
でも、実は、その計画がもれた理由は・・・・
MONOらしい、会話が中心でその会話のズレによって生まれる笑いがとても面白かったです。
個人的には、尾方さんがめちゃくちゃ可愛くて、水沼さんがカッコ良かったです(*´∀`*)
余談ですが、MONOの後に登場したコンドルズ独立機動部隊「暁」さん達が、スーツ姿でピストルを持っている姿がめちゃかっこよかったのですが、その前のMONOもスーツ姿にピストルを持っていたので、全く違った趣があってそれはそれで良かったです。
あと、動物電気さんは、辻修さん以外の方が、みんなズングリしていて笑えました。
燕のいる駅
Cucumber
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2012/05/18 (金) ~ 2012/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
今置かれる自分を振り返り・・・・
5月19日、三鷹芸術文化センター星のホールにて「燕のいる駅」を観てきました。
ある駅に流れるいつもと変わらない時間。
しかし、遠くの空にタヌキの形をした雲があらわれたことから、そこにいる人々は「世界が終わるのでは?」と考え始める。
でも、外は、何も変わらない風景がそこにあるというのに・・・・
ネタバレBOX
駅には、のんびりとした性格で、事の次第を受け止めていない駅員「高島」と外国人の同僚「ローレンコ」、そして売店の店員「有本」が残っていた。
そして、弟の帰りを待つ有本の元家庭教師「下河部」と葬儀会社の社員「真田」とその上司「水口」がいた。そこに不思議な男性「祭」をローレンコが駅に連れてきたことから、人々の不安が広がっていく。
初演1997年、MONOでは1999年、さらに2005年にも再演されている本作品。
震災もあったものの、内容やそこにあるメッセージは、色あせないものだと感じた。
そして、それを生み出した土田英生という脚本家の才能に驚いた。
私事ではあるが、まだ5月の終わりは、大きな行事の前ということもあり、気持ちの焦りがあった。
仕事も立て込んでいて、正直、気持ちが落ち着かない日々を送っていた。
その中で、この作品を見たとき、「真田」の落ち着かない感じや大声で威嚇する割に、「世界が終わるかもしれない」不安に対して弱気なところを見ていると、なんだか自分を映し出されているような気になった。
真田と水口は、最後に2人で逃げることを選択するが、この時、真田がとても弱気だったことがどうしても定期大会へ向けての自分を見ているようで痛々しささえ感じた。
そして、自分にとっての「水口」はいるのだろうかとボヤッと考えてしまった。
最後に、今回、土田さんが演目を「燕のいる駅」に決定した1ヶ月後、東日本大震災が起こったという。それに対し、土田さんは演目を変えようか迷ったとパンフレットに書いてあった。
確かに、あの震災・原発の被害を画面上だけではあるものの、目の当たりにした人たちが、「燕のいる駅」を観た際、あの場面を思い出す人も多いだろう。
しかし、この作品があの被災地の現状を見せているわけではない。
そう考えると、私自身は、この作品が、今、上演されることに、なんら疑問は抱かなかった。
毎回、見ている人に疑問を投げかけ、考えさせる場面を作りながらも、笑いやホッとする場面も用意できる土田さんの脚本が好きで、次の土田さんの作品にも期待をしたいと思います。
BABYTRIP
と黒キ組プロジェクト
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2012/04/20 (金) ~ 2012/04/22 (日)公演終了
満足度★★★★
純真さと爽快感を感じました
ヨーロッパ企画の黒木正浩さんといえば、格好いいとか、男くさい世界とか、多分、多くの女性には理解されないかもしれない(ここに自分が女ということは棚上げしていますが・・・・)独特ではあるけど、ある種の世界観に信念を持って表現している人だと思う。
そんな黒木さんが脚本・演出、そしてとくお組の柴田さん・篠崎さん・堀田さんが客演となれば、行かないわけにはならないだろう。
今から約30年後の世界に住むキラネネとドラゴン。
仲睦まじく過ごしてきた2人だが、ある日、ドラゴンが事故に巻き込まれ死んでしまう。
そして、そのショックでキラネネも後を追って自殺するが・・・・
ネタバレBOX
自殺したはずのキラネネは、初代ワンワン博士により、サイボーグとして生まれかわる。
そして、その後、1960年間、キラネネは、ずっとドラゴンとの思い出に浸り、絶望しながらワンワン博士の子孫に生かされ続ける。
そして、人類が地球に住めなくなった最後の日。
29代目ワンワン博士は、キラネネをタイムマシンに乗せ、ドラゴンが事故に合う前の世界へと送る。
しかし、マシンの関係で、キラネネは、ドラゴンが生まれる以前の2012年にたどり着く。
そこには、龍虎姉妹によって守られている商店街だった。
キラネネは、その商店街の一角に住む若き初代ワンワン博士によって助けられる。
いくつかの誤解を生んだが、ワンワン博士や大家さんのおかげで、キラネネは、街で生活できるようになった矢先、皆を守ったことで・・・・・
黒木さんの世界観と言えば、「ザ・男!」という印象が強かったが、その世界観を女性が体現することで、また、独特なものとなっていた。
しかし、1つ1つのセリフやストーリーの展開などは、黒木さんの世界観そのままでとても充実していた。
何気に、小銭を投げるシーンは、舞台版・智恵光院雀鬼で、雀鬼さんの登場シーンを思い出したり、龍虎姉妹など、色々、黒木作品の関連できるものが出てきて、それも楽しめた。
勧善懲悪のストーリーでありながらも、最後は皆がホッとできるような、でも、ちょっと切ないラストではあったが、黒木さんの作品の多くは、今の世界ではありえないほどの純真さを感じる。
仕事にしても生活上色んなことにしても、正直者が馬鹿を見ることは多々ある。それに辟易している部分もあるが、黒木さんの作品は、そういうところをぶった切った感じで、とても爽快だ。
まだ新楽器始まって2週間ちょっとだったけど、とにかく疲れた私には清涼剤のような作品でした。
一緒に行った後輩は、「もう少し内容を増やして映画化してほしい」と言っていたけど、私もまた、何かの形(映画でも芝居でもなんでも・・・・)でみたいなあと思う作品でした。
深夜の市長
とくお組
シアタートラム(東京都)
2012/03/29 (木) ~ 2012/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
とても良かったです!
今回も2回、観に行ってきました、「深夜の市長」!
1回目と2回目で見比べるというか、2回目に1回目にぼーっとみていたところなどを詳しく見れてよかったと思います。
21世紀の現在に住む「浅間」という司法修習生。
彼の趣味にしている真夜中の散歩。
ある日、行き先もわからないバスに乗ったところ、全く訳の分からない世界に飛び込んでしまう。
そこは・・・・
「真夜中のT市はラディカルでドラスティックになる」
という言葉にあるように、浅間がたどり着いたのは、昭和11年のT市。
T市は、雷文と卍という2つのグループが勢力争いをしている街。
そこに「市長」と呼ばれるバーのマスターに出会ったことで、浅間は、その世界にドップリをつからざるをえなくなる。
ネタバレBOX
前回の「雲をつかむような冒険」、前々回の「魔法の公式」と比べると、その抽象的な雰囲気のセットに驚いた。
そしてその抽象的なセットが、現在と昭和11年を行き来する際、ある時は学生寮に、ある時はバーに、ある時は研究室に・・・・と次々に場面が変わる。
そして、複数の役を演じる魅力あふれる役者さん達の演技も素晴らしかった。
現在から突然、昭和11年に迷い込んだ浅間を演じる篠﨑さんは、その不思議な状況をいかに受け入れ、(多分、浅間本人は最初は受け入れていないんじゃないだろうか?)最終的に自分が「新市長」に落ち着くまでの気持ちの移り変わりを時には大胆に、時には繊細に演じられていた。
また、今回、唯一とも言える「ホントの悪役」だった「ニンニク」を演じた堀田さんは、冷静沈着な冷たい感じが出ていて、「恐ろしさ」さえ感じた。特に、カラメを殺すシーンは予測できたものではあったけど、その時の雰囲気や目付きなどは、本当に怖かった。
逆に「怖い」はずなのに、全然怖くなく、ある意味、魅力的なキャラクターに仕上がっていたジローを演じていた鈴木さんは、いつも通り、コメディ部分を担っていた。また、ものすごい衣装の松井やジローと松井の1人芝居など、鈴木さんの活躍シーンもあって、目が離せなかった。
そして、やはり爆笑したのは徳尾さんだった。前回の「マックス」さん同様、鍋島さんなどは、登場するだけで笑え、さらにこってこての大阪弁でまた爆笑した。今だに鍋島さんの「世の中の真理は、目に見えるものだけが、すべてやないんやで」は、頭に残っている。
前回も客演で出演されていた本折さんは、低いワイルドな声で渋さもあるカラメを、全くセリフはないけど、表情1つ1つで繊細にアンドロイドのドビュッシーを演じられていた。一緒に行った後輩は、本折さんがとても印象に残ったと言っていた。
同じ客演の鬼塚さんは、研究員の速水を憎たらしく思われるようなほどの冷静さで演じていた。1度目に観た際、この速水が途中まで印象が悪かった。しかし、彼が未来へ行き、戻ってきた時の情けない姿を見ると、その印象は薄れ、逆に人間くさい部分もあるんだと感じ、面白いキャラクターに思えた。
最後に、タイトルにもある「市長」を演じていた柴田さんは、とても堂々としていて、その立ち姿に惚れ惚れした。
1度目では、あまり感じなかったが、ラスト、市長がバス停に行く時に、浅間に言った言葉が印象に残った。
多分、それは、自分が置かれている状況がそうさせたのかもしれないが、市長の「人間、生きていれば誰でも、理屈で説明できないことが起きる。これもその一つだよ。それでも、自分なりに答えを見つけて生きていくしか、ないんだな」という言葉には胸に響いた。
そして、それを言う市長(柴田さん)が、あまりにも優しく諭してくれるような言い方で、思わず涙がでた。
今まで(DVDも含めて)とくお組の作品をみて思うことだが、とくお組の作品には「本当の悪いヤツ」がほとんど出てこない。
バイオレンスなシーンもほとんどない。
そういう意味で、今回は、ちょっとバイオレンスなシーンもあるし、悪いヤツも出てきた。
でも、とくお組の持つ穏やかな雰囲気が、それらのシーンを毒々しく感じさせないのかなと思い、逆にとても見やすかった。
昨今、バイオレンスなシーンの映画や芝居を観て、「ウワッ」と思うことは多い。
思わず目を伏せてしまうことも多いが、このお芝居は、そんなこともなく、笑いの要素もふんだんにあって、とても楽しい時間を過ごすことが出来たと思う。
次回は夏にあるようだが、また、時間を見つけて行きたいと思っている。
少しはみ出て殴られた
MONO
吉祥寺シアター(東京都)
2012/02/17 (金) ~ 2012/02/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
自分に投げかけられた課題
ヨーロッパ企画の諏訪さんと中川さんが客演、とくお組「雲をつかむような冒険」でアフタートークで爆笑をとっていた土田英生さん脚本・演出、そして以前から注目していた劇団MONO、ということで2月25日の夜公演を観に行きました。
「線とは何かを巡る寓話」とチラシにあったが、まさに「線」を巡るストーリーだった。
場所は、マナヒラ(架空の国)にある刑務所。
ネタバレBOX
このマナヒラが2つの国に分かれたところから始まる。
囚人達がいる刑務所は、この2つの国の国境線上に位置し、誰かが言い出したわけでもなく、この国境線をそれぞれが意識し始める。
そうすることで、囚人たちだけでなく、看守も含めて皆が2つに分かれた。
でも、コチ出身のミタムラ・コニシと仲の良いヒガシマナヒラ出身のタヌキ・マサルは、その様子に疑問を投げかける。
「どうして?変だよ」
同じヒガシマナヒラ出身のヨコヤマ・トオルと2人で、みんなに言うが、誰も聞こうとしない。
そうして、状況はエスカレートし・・・・
以前、安田顕さんが出演していた「総体的浮世絵」を観たとき、この脚本を作った人は、人間の醜い部分やずるい部分を嫌味なく、でも、何か批判しているようなそんなことを上手く描く人だなあと思っていた。
そうこうして、とくお組のお芝居のアフタートークで、芝居と全く関係ない話で爆笑をかっさらっていった土田氏が同じ人とは思えなかったけど、逆に興味を持った。
今回の「少しはみ出て殴られた」も、やはり、人間の醜い部分やずるい部分を描いている。
「いじめ」や「争い事」が、実は些細なことから生まれ、そしてどんどんコトが大きくなる様を見ているようであった。
ある考えが、集団に浸透しつつある中で、それが間違っていたとき、「変だよ!」と感じる感性を持ち、それを発言できるかどうかといわれると、自分自身に「絶対する!」とは言い難い。
タヌキが「変だ!」と言っても誰も耳をかさない、状況は悪化するばかりという場面で、彼が刺繍をしている姿は、現実逃避しているようであった。
実際、世の中ってそんなものなのかもしれない、ふとそんなことを考え、学校の教員という立場である私に、大きく投げかけられた課題だなあと思った。
さすが、土田さんだなぁと思った。
ついでの話ではあるが・・・・
MONOについて色々調べていたら、尾方宣久さんの爽やかな笑顔の写真を発見し、「めっちゃカッコイイ!」と思った。
お芝居を観に行ったら、やっぱりかっこよくて、満足した。
パレード
フジテレビジョン
天王洲 銀河劇場(東京都)
2012/01/16 (月) ~ 2012/01/29 (日)公演終了
満足度★★
原作に興味をもちました
ルームシェアをしている男女のストーリーで、物語自体は淡々とすすんでいきました。
映画や原作を見たことがなく、新鮮な気持ちで見ることができました。
ネタバレBOX
全て見終わったとき「人と人のつながり」について考えさせられる作品だなあと思いました。
当初4人の男女がルームシェアをし、そこに1人の青年が加わることで、歪みが生まれ、その歪みがどんどん大きくなったかと思うと、実は、通り魔が直輝だと分かるくだりはとても緊張感がありました。
どちらかと言えば、私は自分1人の時間を大事にすることが多く、結婚でもしない限り、まあ、誰かとルームシェアすることはないと思いますが、ルームシェアすることで、ある程度のルールは必要だと思う。
だけど、「パレード」のような状況が生まれるとしたらそれは恐ろしいなあと思った次第です。
まあ、これは、物語だから、別に、こういうふうになるとは思いませんが・・・・
吐くほどに眠る
ガレキの太鼓
こまばアゴラ劇場(東京都)
2012/01/06 (金) ~ 2012/01/15 (日)公演終了
満足度★★★★
人生を振り返ると・・・・
酒井なおという女性が、自分の生い立ちを語り、それが繰り広げられる。
それは、平凡としか言いようのない人生だったはずなのに・・・・
ネタバレBOX
なおが小学6年生の頃にあったあることがきっかけで、兄は海外へ留学した。
なおは、何事もなかったかのように普通に暮らしていたが、その中では、自分が家族を支えなくてはいけないという思いにかられ、生きるようになる。
ポツリポツリなおが語るその言葉や繰り広げられる光景は、ほとんどが、誰にでもあるような人生だと思った。
なんてことないその人生の端々でパニックを起こしたり、精神的に何か追い詰められている(病んでいる?)なおの姿が見えてくる。
結果的に、なおが語っている相手は、弁護士であり、彼女は人殺しをしたのだが、その人の生い立ちを振り返ることで実は、6年生の出来事が全てを支配しているかのように感じた。
私自身も阪神淡路大震災を経験することで、人の生死について深く考えるようになった。
どこかしら、なおが「死」ということに敏感になっている様は、自分自身を振り返るようであった。
そのことが、自分の思うとおりのことであってもなくても、何か生死に関わるおおきな出来事がその人の人生に大きく影響するのは、今回のお芝居だけではないと思う。
この作品は、それを「忘れた気がする」ことにし、でも、実際は当人に大きな影響を及ぼしていたことを示していたと思う。
あまりまとまらなかったけれど、今回のお芝居は、決して笑って過ごせる内容のものではない。
でも、もし、自分の目の前に、何か気がかりな出来事を持っている人がいたとき、その人の心に寄り添える人間でありたいと思った。