しのぶの観てきた!クチコミ一覧

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温室

温室

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2012/06/26 (火) ~ 2012/07/16 (月)公演終了

満足度★★★★

敵も味方も、嘘も本当も、生死も、、
怖かった~!意味わからない~!けど、面白い!ストーリーも結末も確かにあるのですが、何が本当で嘘なのかわからない…。でも面白かったんです。出演者では山中崇さんが素晴らしかった!

ロビーで戯曲の文庫本を買って、家に帰ってからパラパラと読んでみたんですが、私のような素人にはどう読むのか見当もつかない…やはり深津さんは凄い演出家だと思いました。

ネタバレBOX

最後に登場する“本省”の役人が、すべて計算通り、何もかも知っていた…といったニヤニヤとした態度なのが恐ろしいです。でも高橋一生さん演じる“専門職員”の報告だって、本当かどうかわからないですよね(実は誰も死んでなかったりして?)。
色々想像をめぐらせてみると、今の日本の政治に似てるとも思えてきます。
ネジ工場

ネジ工場

タカハ劇団

駅前劇場(東京都)

2012/06/20 (水) ~ 2012/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★

現代日本への痛烈な批判も込めたファンタジー
約1時間50分。力のこもった戯曲。一見、ザ・昭和な具象美術の人情劇だが、時間軸にも時代にも一捻りあり。昔懐かしい幸せを望む姿は愛らしいが、それ自体が風刺になっている。現代日本への痛烈な批判も込めたファンタジー。

THAT FACE~その顔

THAT FACE~その顔

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2012/06/14 (木) ~ 2012/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★

THAT FACE
母と息子が暮らす家に娘が帰って来て、離れていた父もやってくる、ロンドンのある家族のお話。面白かった。やっぱり“依存”が問題なんだよなー。いつも思うことだけど子供の方が親を愛してるよね(例外あるでしょうけど)。約2時間10分休憩なし。

ネタバレBOX

父親が出てきたところで、一気に面白くなりました。そりゃーこのお父さんは、ヤバイなって(笑)。
お父さんは「怒って赤い顔をしてる!」とか言われてたけど、私の席からは横堀さんは後ろ姿だったので見えず。でも見えなくてかえってよかったです。
マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜

マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜

SPAC・静岡県舞台芸術センター

舞台芸術公園 野外劇場「有度」(静岡県)

2012/06/02 (土) ~ 2012/06/23 (土)公演終了

満足度★★★★

小雨がスモーク効果に
舞台上舞台で、いつもなら舞台がある場所に客席があり、かなり前の方を選んで鑑賞。手堅いですね。山の上で森の中の芝居。おのずと神聖な心持に。

スキラギノエリの小さな事件

スキラギノエリの小さな事件

城山羊の会

小劇場 楽園(東京都)

2012/06/06 (水) ~ 2012/06/17 (日)公演終了

満足度★★★

スキラギノエリの小さな事件
私にはエッチすぎた…(笑)

南部高速道路

南部高速道路

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2012/06/04 (月) ~ 2012/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★

すごくスリリング!
役者さんが何をやっていても、どこを見ても面白かったです。私は間近の席でラッキーだったかも。原作の文庫本もパンフも購入。

ことほぐ

ことほぐ

intro

生活支援型文化施設コンカリーニョ(北海道)

2012/05/31 (木) ~ 2012/06/04 (月)公演終了

満足度★★★★

“不幸”な妊婦と陽気な仲間たちの夏のファンタジー
 演技スペースをぐるりと囲むように、客席が四方に分散して設置されています。床には円の模様が放射線状に描かれ、灰色に塗られた電信柱、ジャングルジム、バス停の看板などが、中央の円を囲みつつ点在。輪郭のはっきりしない円形劇場ともいえます。昭和歌謡が流れる、メラコンリックでどこか空虚な空間でした。劇場に入るなり期待度アップ。

 舞台は貧困状態にある妊婦3人が同居するアパートの一室、とはいえ壁がなく、玄関の位置も曖昧です。女性3人の閉じられたひ弱なユートピアに、彼女らとゆかりのある男性たちが入り込んできます。会話に若干のまどろっこしさを感じましたが、ある意味のん気な妊婦たちと、彼女らを叱咤激励する男性陣にはそれぞれに憎めない魅力がありました。

 子供ができたことを素直に幸せだと思えない、そして祝福もされない妊婦たちの悲しみ、憤りが、強がり混じりの切実な叫びとして直接セリフで語られる場面もあり、現代日本の若者の疑問や諦念を代弁しているようにも受け取れました。そんな悲壮感が漂う設定に軸を置き続けることなく、余白を多く残しながらコミカルに飛躍させていく演出には、演劇の力を信じて委ねる余裕と意気込みが感じられました。

 北海道の盆踊りは子供の部と大人の部に分かれていて、音楽も振付も違うそうです。このことが当日パンフレットに書かれていたおかげで、作品から伝わる意味がずいぶんと味わい深いものになったと思います。
 作・演出のイトウワカナさんが開演前にCoRich舞台芸術まつり!およびCoRich舞台芸術!の宣伝をしてくださいました。札幌でも公演登録やクチコミが増えて欲しいです。

ネタバレBOX

 妻子ある男性との不倫の末に妊娠し、相手に内緒で1人で産んで育てようとしている愛子。DV夫から逃げて、同じく妊娠中の妹えりこと一緒に愛子のアパートに転がり込んだ、わがままで厚かましい人妻さとみ。えりこはアルバイターで、男好きかつ奔放ゆえに誰の子を妊娠したのかがわかりません。愛子、さとみ、えりこの手持ちの全財産は1万円に満たず、さとみのせいで真夏なのに水道も止まってしまいました。ワケあり妊婦の3人は親に頼ることもできず、給料日までの数日間をどうやって乗り切るのか…。

 「大人になればいい会社に入って、年を取るごとに給料が上がって幸せになれると信じていたのに、ずっとアルバイトで薄給で、すっかり騙された!」というえりこの叫びはもっともです。また、「子供ができたこと(=妊娠)は幸せなことのはずで、無条件に祝われるべきだ」という妊婦らの主張は、現代社会に対して根源的な問いを投げかけています。経済的なことや道義的なこと、世間体もありますから難しいとはいえ、本来なら命はそれ自体が祝福されるべきものだと私も思います。でも、どうすればいいの…と悶々と考えました。

 3人と同じく貧困状態にある隣人男性の杉田、愛子の兄でゲイの英一、えりこの雇い主の山下が、彼女らに水や焼き鳥などの現物支給をしながらも、1人で子供を産み育てることの厳しさを突きつけます。立場も考え方も違う人々が集まった部屋は混乱状態になり、さらには妻さとみに暴力を振るう河野も入ってきてヒートアップ。妊婦たちは男たちの姿としてあらわれた“現実”と初めて本気で立ち向かっているようでした。

 はちゃめちゃな騒動が一段落したところで、隣人の杉田以外の男たちは去りました。杉田が持ってきた水と、愛子の部屋にあった白米を入れた電子炊飯ジャーでご飯が炊きあがり、4人がともに一膳ずつ食べます。「食べる」ことは生きることの基本ですから、そこに立ち戻る姿は感動的でもありました。
 ご飯の残り香が漂う中、杉田が去ったところで終演かと思いましたが、そうはならず。盆踊りの音楽が鳴り始め、妊婦らは踊り始めました。きっと大人の部の振付ですね。現実を直視して生きていこうと決めた妊婦らの、子供から大人への成長が示されたように思いました。その踊りの輪はどんどん広がり、地味な色だった照明もカラフルに変わって、男たちも一緒になって出演者全員が祝祭ムード全開で、飛んだり跳ねたり、独自の振付で踊り始めます。お腹の子供も一緒に踊って、すべての命が祝福されているような、とても幸せな時間でした。

 やがて登場人物が1人ずつ、ゆっくりと消えて行き、舞台には愛子だけがたたずみます。他の2人の妊婦も男たちも夏の盆踊りも、何もかもが愛子の夢だったのかもしれない…と解釈できるエンディングでした。考えてみたら愛子は「(私個人のことなんだから他人は)関係ない!」「(母1人での子育ても)やってみなきゃわからない!」と威勢よく頑な態度を取っていました。彼女はとても孤独で、追い詰められていたのでしょう。でも愛子は夢の中で、母となる自分とお腹の子供を精いっぱい祝福し、他者とともに生きる自分の人生を獲得したのだと思います。

 中盤で説得力にかける展開などありましたが、盆踊りと愛子1人のエンディングを観て、そんなことは重要ではないと思えました。例えば3人のお腹は見るからに臨月の大きさだったので、えりこが堂々とあおむけに寝るのには無理があるな~と思っていたのですが(妊婦はお腹が重くて横向きにしか寝られなくなるため)、すべてが柔らかくファンタジーとして昇華されたので、劇中にどんな嘘があってもいいんですよね。
 最後にひとこと。妊婦3人全員が杉田のことを、「彼氏です!」と紹介するはめになったのが可笑しかった(笑)。
シレンとラギ

シレンとラギ

劇団☆新感線

青山劇場(東京都)

2012/05/24 (木) ~ 2012/07/02 (月)公演終了

満足度★★★★

楽しかった~
プロのエンターティナーに存分に楽しませていただきました。衣裳が豪華。東京公演だけでも1ヵ月以上あるんですね。感謝。

サロメ

サロメ

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2012/05/31 (木) ~ 2012/06/17 (日)公演終了

満足度★★★★

多部さんが良かった♪
四人の帰り道で賛否は真っ二つ、だったかな。私は賛。最期に向かってサロメの愛にグッと絞られていく。多部さんが良かった♪ 二時間ないので休憩なし。これでもか!ドーン!ダーン!と一気に観られるのもいいかも。ただ、好き嫌いは分かれますね(笑)。

ネタバレBOX

チラシの血は、演出そのものだったんですね~。
夢!サイケデリック!!

夢!サイケデリック!!

範宙遊泳

アトリエ春風舎(東京都)

2012/04/25 (水) ~ 2012/04/29 (日)公演終了

満足度★★★

空間の使い方が巧みな実験的要素の強い演劇
 くらげのようなテーブル、イス、バス停の看板など、天井から吊り下げられオブジェは現代アートのような鮮やかな存在感。照明器具そのものも装飾品のようでした。舞台奥の透明ビニールのカーテンも含め、空間の使い方が巧みだと思いました。奥の階段は当たる照明の色や具合で表情を変え、作品中の意味も変化していました(出入口、結界など)。

 アイデアやイメージは個性的だと思いましたし、役者さんも一人ひとりが魅力的でしたが、1時間30分のお芝居を“夢”という1つのテーマで突き進むのは難しかったんじゃないかと思いました。

ネタバレBOX

 夢だとわかって展開を追っていくので、血液が脱脂粉乳になった女が病院に行くとか、ピンポン球の成人式といった各エピソードにはあまり興味が持てませんでした。女以外の役者さんが冷蔵庫やトイレになるのは、現実と夢との接点だったのでしょうか。

 夢から現実に戻ったかと思わせて、実はまだ夢だったという仕掛けにわくわくできたのは、役者さんの演技が巧みだったからだと思います。大橋一輝さんのトイレに熊川ふみさんが座ったところが可笑しかったな~。
 2役を素早く演じ分けたり、物になったり、役者さんは自分に課された役割を十分以上に果たされていたと思います。何度も繰り返される華やかなアリアの尺に合わせた演技も、稽古のたまものだろうと思いました。

 大量のピンポン球が降ってきたのには興奮!しかも生きてると思って球を見るとゾクゾクしますね(笑)。踏まれてつぶれる度に「あ、死んだ!」と思ったり。
うれしい悲鳴

うれしい悲鳴

アマヤドリ

吉祥寺シアター(東京都)

2012/03/03 (土) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

架空の日本の物語が詩と踊りとともに沁み込んで来る
 いつもながら群舞が素晴らしかったです。選曲が個性的で飽きさせません。劇場のロフトを使い、奈落まで続く階段でシャープな空間をさらに広く見せた舞台美術でした。衣裳は一人ずつデザインが異なる現代服ですが、赤、青、緑、灰色と色を合わせることでスタイリッシュに見せていました。ただ、初日(プレビュー翌日)の仕上がりは一体感、緊張感、柔軟性などで今一歩。まだまだこれから成長する舞台だと思いました。

 不感症(痛みを感じない)の男と過敏症(何もかもにアレルギー反応)の女を軸に物語は進みますが、彼らを演じる役者さんはあくまでも“代役”で、男のセリフを複数の男優が語ったり、女は2人の女優さんが演じ続けるなど、特定のヒーロー&ヒロインの物語に固定させず、誰にでもあてはまる普遍性を保っていました。

 震災以降の空気も含め、日本という国を冷静に見つめる視点を持った社会派戯曲でもあり、演劇が持つ豊かな可能性を堂々と引き出す詩的なセリフも美しかったです。ひょっとこ乱舞の作品はそれほど多くは拝見していないのですが、戯曲は広田淳一さんの最高傑作ではないかと思いました。

ネタバレBOX

 お父様がくも膜下出血で倒れたために降板した、劇団員の女性の録音の挨拶から開幕(なぜかお風呂に入ってしゃべってました)。極々プライベートな内容なので驚きました。「ひょっとこ乱舞、大爆破」というセリフで始まるオープニングもいきなり過ぎて戸惑いましたが、ダンスが始まるとわくわくして、スムーズにお芝居の中に入って行けました。

 舞台は近未来の日本。テキトーに作った法案“アンカ”を例外なく絶対実行させるための暴力組織“オヨグサカナ”が編成され、「これが本当に日本なのか?」と疑うほどひどい政策が次々と実行される、信じがたい世の中になっています。アンカのせいで人生をめちゃくちゃにされた人もいるのですが、人々はそれが当たり前だと受け入れ、慣れてしまっています。その法案を誰が作ったのかは問われず、誰も責任を追求せず、誰も責任を取らず、ただ「そう決まっているから」となし崩し的に実行されるのは、お役所仕事や昨年の原発事故を連想させます。

 オヨグサカナのメンバーである男は、「強制お引越し法」なるアンカが適用された地域にたまたま住んでいた女と出会い、2人は恋に落ちます。男はエレベーターに閉じ込められ1週間後に奇跡の生還を果たして以来、不感症。女は幼いころに発症して以来、部屋から一歩も出られない過敏症でした。
 正反対の2人は徐々に変化して恋の奇跡を謳歌しますが、幸せは長く続きませんでした。「植物人間の臓器を入手する」というアンカが施行された時、女の母親がくも膜下出血で倒れ、植物人間になってしまったのです。男はオヨグサカナのメンバーとして女の母親の臓器を奪う使命を帯び、女は母が死ぬ時は自分も死ぬと固く決心しているので、2人は敵同士になってしまいます。

 ロミオとジュリエットのように引き裂かれた男女のエピソードと並行して、意識不明の重体である(と噂される)天皇にも例外なくアンカを実行すべきかどうかをめぐり、オヨグサカナ内で闘争が始まります。やがて政府が転覆させられ、オヨグサカナは解散。「植物人間の臓器を入手する」アンカが実行されてすぐのことでした。
 女を殺した男は不感症から過敏症になってしまいます。女を殺したことについて考え過ぎて過敏症になったのか、愛した女との同化を強く望んでそれが叶えられたのか、理由はわかりませんが、愛ゆえだと私は思いたいです。

 物語の顛末があらわされた後は、詩でした。「月と海がケンカしてる。その仲裁に入ろう。」
 そしてオープニングと同じ(と思われる)群舞がリプライズされました。踊るのは市井の人々、つまり私たちです。まるで細胞の運動のように見えました。収縮と弛緩、集合と離散を繰り返す生命の営みであり、宇宙と星々の関係のようでした。
 終演後、誰もいなくなった舞台を観て開演前のアナウンスを思い出しました。降板した劇団員の女性のお父様は、登場人物の母親と同じくも膜下出血で倒れられたのです。これは2012年2月の日本の話なのだと感じ、オヨグサカナも、過敏症の女も、詩も、踊りも、一気に沁み込むように体に入ってきました。
オーシャンズ・カジノ

オーシャンズ・カジノ

北京蝶々

王子小劇場(東京都)

2012/04/18 (水) ~ 2012/04/30 (月)公演終了

満足度★★★

エンターテインメントに徹した姿勢に乾杯!
 船上のカジノを舞台にさまざまな社会問題を提起しつつ、堂々と娯楽に徹した賑やかで楽しい現代劇でした。カジノのラウンジでありながら、マストのある船の形もしっかり表現した舞台美術が見事です。美術、照明、音楽などのスタッフワークのコンビネーションをはじめ、ダンスやステージングも凝っており、華美なパーティーやカジノの熱い勝負をとことん派手に見せる演出が素晴らしかったです。

 劇場ロビーにバー・カウンターをしつらえ、天井の照明にカラフルなセロファン(舞台照明用ゼラ?)を入れて、観客が席につく前の空間からムードづくりをしていました。日によってはカジノ・ナイトというイベントも開催し、作品だけでなく演劇公演全体をエンターテインメントとして演出する試みがいいですね。テーマパークのアトラクションのように気軽に楽しめる上質の小劇場演劇って、実は少ないと思うのです。あとは役者さんの演技のレベルが全体的に上がってくれれば…と思いました。

ネタバレBOX

 日本の領海を出て合法的に開催される船上カジノ・パーティーでは、主催者と招待客、そして侵入者のさまざまな思惑が渦めき合っていました。財政難に陥っている長崎県の県議マダラメ(ザンヨウコ)は、中国人企業家ヤン(鬼頭真也)にのせられてカジノで勝負をして、こっぴどく負けてしまいます。ヤンは日本進出を狙う海外カジノ業者で、日本のカジノ合法化の機会を狙っていたのです。
 起死回生をもくろみ船に乗った若者トビオ(堀越涼)と、トビオのギャンブル狂いを治そうと必死になっている恋人アンコ(帯金ゆかり)は、ふるさとの長崎にカジノが上陸するのを防ぐため、ヤンに戦いを挑みます。その裏では、日本のパチンコ業界からの刺客と、違法とばく取り締まり専門の警察官もひそかに船に乗り込んでおり、物語の顛末には巧いどんでん返しが用意されていました。

 社会問題を複数の切り口から描き、違う立場の人間の思いも盛り込んだ、よくまとまった戯曲だと思いました。でも上辺をサラリと説明するに留まっているようにも感じました。演技のせいなのか演出のせいなのか、はたまた戯曲のせいなのかは私にはわからないのですが、もっと濃くて複雑な一瞬々々を積み重ねて欲しいと思いました。

 地面のレベルから3階まで表現できる、高さのある舞台美術でした。左右両側にある階段を上ったり下りたり、役者さんが頻繁にぐるぐると走り回るので躍動感があります。舞台前面中央のカジノテーブルは、使われない時は舞台奥へとスライドしてカーテンの裏側にしまわれる仕組みになっていました。カジノテーブルがカーテンから出てくると、役者さんは2階部分からジャンプして飛び降りて、テーブルに着きます。それだけでハっと目を引く見どころでした。
 照明のオペレーションと役者さんの演技とを合わせる演出で魅せてくださいました。トランプのカードを取る、めくって見る、テーブルに置くといった一挙手一投足に合わせて、照明が鮮やかに変化します。息を合わせた気持ちのいい効果が出ていました。きっかけが多くて大変だったことと思います。
 パチスロのドラムが回って止まるのを、チャイナドレスの女性らの屈伸で表現したのも面白かったですね。

 初日に拝見したせいか、役者さんの演技のおぼつかなさがずっと気にかかりました。もっと笑えるはずなんでしょうね。
 ザンヨウコさんはさすがの安定感。立ってるだけで役柄のバックグラウンドをはっきり表現されていました。鬼頭真也さんはピタリと決める堂々とした演技で存在感が大きかったです。堀越涼さんは中盤まで堀越さんだと気づかなかったほど、うだつのあがらない若者の役作りを丁寧にされていたと思います。ただ、ヤンとトビオのポーカー対決では、間(ま)を長く取り過ぎていたようにも感じました。帯金ゆかりさんがオープニングで見せてくださった腹筋が美しかった!
翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)

翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)

バナナ学園純情乙女組

王子小劇場(東京都)

2012/05/24 (木) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

緻密に組み立てられたカオスを体験できる過激なアトラクション
 チケットを受け取って階段を下り劇場入り口に着くと、壁にビニールが貼られていました。早くもロビーから養生されているんですね。客席のパイプ椅子を含む劇場全体にビニールが張り巡らされています。バナナ学園純情乙女組(以下、バナ学)の客席は安全地帯ではありません。水だけでなく他にも色んなものが飛んでくるのです(観客全員に1つずつレインコートが配布されます)。これを1日3ステージ上演することに、まず驚愕します。凄い!

 諸事情により最前列で拝見し、始まるやいなや出演者数人に着替え用の服やタオルを預けられたり、七味まゆ味さんに何やら頼まれたりして、観客というより作り手の一部(演出部お手伝い?)になった気分で拝見することになりました。これまでにバナ学は4作品観たことがありますが、作り手側にぐっと寄りそった(参加した)視点になったのは初めてでした。

 開演前はマイクで複数人がアナウンスをし続けています。ツイッターの感想を読みあげたり、鑑賞中の注意事項をノリノリで説明してあおったり、否応なしに恐怖混じりの期待が高まります(笑)。制作さんがバナ学の舞台を「ディズニーランドの“スプラッシュ・マウンテン”みたいなもの」とおっしゃったのには納得でした。アトラクションだと思うとそれなりの覚悟ができますよね。ただし内容はかなり大人向けで過激ですが(笑)。

 今回は“おはぎライブ”ד演劇”ということで、シェイクスピア作品など有名戯曲からの引用が多数ありました。でも、セリフが聴き取れることを重視していないし、複数の作品が重なっていたり、全く関係ない(と思われる)要素が次々と加わって来たりして、一度で詳細をつかみ取ることはできない構造になっています。大量の情報を洪水のように暴力的に浴びせ続ける熱いパフォーマンスは、これまでの作品と同様、現代日本を鮮やかに表していると思いました。ただ、私が観客らしい受け身の視点でなかったせいもあってか、限界に挑戦する出演者の雄姿に心打たれ、ちょっとした恍惚状態になるまでに、時間がかかりました。

ネタバレBOX

 劇場ロビーが楽屋になっており、通常の楽屋が観客用の通路になっていました。王子小劇場でこんな体験は初めてです。気分がアガりますね!劇場側の協力体制なしに、この作品は上演できなかっただろうと思います。新進演劇人を支えてくださっている王子小劇場に感謝します。

 シェイクスピアの「ハムレット」、「ロミオとジュリエット」、「マクベス」、「リア王」などの有名戯曲の一部が大改編され、演じられていました。黒人男性が出演されていたので「本物のオセローがいる!」と少し興奮(笑)。リア王役の男性が「秋元康」と書かれたはちまきを頭につけていたのが面白かったです。
 シェイクスピアだけでなくチェーホフ作品からの引用もあり、「三人姉妹」「桜の園」「かもめ」などに登場する女性のセリフをしゃべり続ける七味まゆ味さんの独壇場になっていました。寺山修司さんとマメ山田さんのお面を被った人たちがロフト上で何やら芝居をやっていましたから、海外古典に限らず演劇全般をモチーフにしていたのかもしれません。

 ブルマに体操服の浅川千絵さんが、常に本編を外側から眺める存在で居続けます。softbankのCMを真似したり、網にかかって天井からぶら下げられたり(これはお馴染みですね)。作品自体を批評する発言力も持たせて、熱狂と冷静が共存する空間を維持し続ける知的さがいいですね。

 意図的とはいえ、お芝居にしては役者さんの演技が未熟なのが気になりました。もっとセリフを聴こえないようにするとか、逆に、きちんとドラマを見せるとか、改善の余地があるのではないかと思いました。
 そういう演技のせいなのか、私が最前列でがんばり過ぎたせいなのかはわかりませんが、なかなか気分が盛り上がらなかったです。でもレディー・ガガの“Born This Way”でワワっと楽しくなりました。汗だくで、水びたしで、血のりまみれになって踊って歌う出演者が輝いて見えてきて、私も自然に顔がほころんで、やっといつものバナ学ワールドに浸ることができました。でもそれはほぼ最後の曲だったんです…残念。
くろねこちゃんとベージュねこちゃん【ご来場ありがとうございました!!】

くろねこちゃんとベージュねこちゃん【ご来場ありがとうございました!!】

DULL-COLORED POP

アトリエ春風舎(東京都)

2012/03/14 (水) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★

演劇の特性を活かすアグレッシブな演出
 開演前の数十分は2人の女優さんが猫耳や尻尾をつけた可愛らしい衣裳でお茶をふるまい、舞台上でお客様との触れ合いタイムが繰り広げられました。最前列に座っていたのですが、私はちょっと入って行きづらかったです。開演時刻になると会場案内をしていた劇団員の方々も舞台上に出てきて、日常から地続きにお芝居が始まる演出になっていました。会場の空気を和ませ、観客が舞台を身近に感じてきたところで、さらにグっと惹きつける巧みなオープニングだったと思います。

 父、母、息子、娘の4人家族のお話でした。父が突然事故で亡くなり、一人になった母は家政夫に家事をまかせ、2匹の猫と会話をしています。母役を男性が演じるので、さっきまでお茶を淹れていた女優さんが猫役を演じても、無理なくファンタジーとして受け入れることができました。
 葬儀のために帰ってきた息子と娘には猫の姿は見えません。幻想の猫と堂々と話をして、家政夫に対する態度がコロコロと豹変する母は精神を病んでいるようにも見えるのですが、猫たちが元気に軽快なムードを作るので過度な深刻さは生まれません。娯楽性を重視する演出が成功していたと思います。
 亡くなった父も登場する回想シーンでは、猫たちが当時の母を演じ、その回想を母が外から見守る構造でした。ひねりが入った劇中劇で虚構性が増し、家庭内の確執を暴く痛々しい場面でも、冷静に観察できたのが良かったです。

 以上のような工夫をこらした演出は刺激的でしたが、谷さんの作品をほぼ10年観てきた者としては、戯曲に物足りなさを感じました。いわばステレオタイプな家族の物語で、私の想像力の及ばない境地へと連れて行ってくれなかったのが残念です。役者さんの演技がおぼつかなくて、私にとっては正視に堪えない場面もありました。私が谷さんの実績と比較してしまうせいなのでしょうが、1人を除き出演者を劇団員だけにしたことで、演技力の未熟さが表面化したようにも思います。

 カラフルな照明で空間を派手に、賑やかにしていたのが良かったです。ただ、ある部分だけを照らして空間を分けるような効果も、もっとあっても良かったのではないかと思いました。日本語の歌詞の曲が流れていましたが、邪魔にならずポップなムードになっていたのが個性的で楽しめました。でも音楽が特に印象に残ったこと自体は、作品全体として良かったのかどうか悩むところです。

ネタバレBOX

 多地域ツアー用と思われる身軽そうな舞台美術でしたが、貧相すぎないのが良かったです。折り畳み式ダイニングセットの周囲に、雑誌の紙を撒き散らして演技スペースをつくる演出もいいですね。開演前にタイトルの『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』の文字が天井から吊り下がっていたのは、長塚圭史さん演出のミュージカル『十一ぴきのネコ』へのオマージュかしら。可愛らしかったです。

 父は税理士でしたが本当は税理士の仕事が嫌いでした。引退したいと言い出した父を母は拒絶。“税理士の妻”という地位に、母はまだまだしがみついていたかったのです。母は息子が演劇を続けることに反対で、一方的に「税理士になれ、父の事務所を継げ」とうるさく言い続けていました。対して受験生の娘には「女なんだから大学に受からなくてもいい。自分のような専業主婦の人生でも幸せなのだ」と、勉強の邪魔をします。言い争いの末には「(あなたは)自分のことばっかり考えて!(ひどい)」と、自分を棚に上げて怒ってしまう、わがままで高圧的な母親でした。見てて本当にイライラしますね(笑)。

 遺言書が見つかり、父は伴侶であったはずの母に遺産を残さないほど恨みを持っていたことがわかります。きれいごとで済ませない展開がいいですね。現実はこんなものだと思いますし、家族の話にはこれぐらいの毒があって欲しいです。
 でも、この4人家族が“普通の生活”を送ることができていたのは、家事全般を当然のごとく引き受けてきた母のおかげです。大学を中退し結婚後も演劇を続けている息子は、父の遺言書をねつ造して、まるで歌舞伎の「勧進帳」のように、母が悲しまない内容に新創作して読みあげました。真実がいつも正しいわけではないと判断し、嘘(フィクション)の力で人間を救う名場面でした。息子が芸術を志す者として立派な態度を示したことを嬉しく思いました。

 父を演じた塚越健一さんの演技が良かったです。長年ギュっと本音を押し込めてきた寡黙なたたずまいに説得力がありました。
ミッション

ミッション

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2012/05/11 (金) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

追加公演の回を拝見。
俳優の会話にどう転ぶかわからないスリルが常にあってすごく面白かった!私はこういう演技が好き。小川絵梨子さんの演出で今までと違うイキウメでした。約2時間5分。

旗揚公演「ミント+」

旗揚公演「ミント+」

ミントシアター

イワト劇場(東京都)

2012/05/16 (水) ~ 2012/05/20 (日)公演終了

満足度★★★

友人がかかわっているので拝見
よくできたコメディーでした。装置、衣裳、照明などのスタッフワークで、堂々とファンタジーの世界を作り出していたのが良かったと思います。役者さんが楽しいお芝居にしようと前向きの姿勢だったことにも好感を持ちました。

どうしても地味

どうしても地味

箱庭円舞曲

駅前劇場(東京都)

2012/05/16 (水) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

大阪公演あり。
今よりもっと窮屈になった日本の過疎の村の、不格好で滑稽な人間模様。あっという間に常識化する過激な社会制度や、いつの間にか忘れられ失われる日々の喜びを、地味目の会話にギュっと詰め込んだ現代劇。充実の2時間5分でした。

ネタバレBOX

欲求不満の妻が花火工場に火を付け、坊主はタバコでしょっぴかれ、中国人ハーフもつかまり。「いもづるしき」のひとことでわかるのがいいですね。
マームと誰かさん・ひとりめ 大谷能生さん(音楽家)とジプシー

マームと誰かさん・ひとりめ 大谷能生さん(音楽家)とジプシー

マームとジプシー

SNAC(東京都)

2012/05/11 (金) ~ 2012/05/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

マームと誰かさん・ひとりめ
ものすごかったです。上演時間は約45分。前売り完売。

ネタバレBOX

「このお芝居のタイトルは、『亡霊』」。だとすると、過去も、決まったセリフを話してる役者さんも、観客も、亡霊なんだろうと思いました。松井周さんいわくの『ゾンビ』にも通じるものがある気がしました。
負傷者16人 -SIXTEEN WOUNDED-

負傷者16人 -SIXTEEN WOUNDED-

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2012/04/23 (月) ~ 2012/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★

平日ソワレなら残席ある回も
前評判どおり重かったが、良かった。異国の戦争、生活が肉声で届くから自分のこととして考えられる(私はそう)。もし自分が彼/彼女だったらと、彼らの苦悩を知り得ないと知りつつも想像し続けた。休憩含む2時間45分。

ネタバレBOX

身重の恋人がパン屋に掛け込んで来る最期の場面はいらなかったんじゃないか、という感想を聞いて、なるほどな~と。たしかに説明っぽいかも。私は気にならなかったですが。
カフカの猿~フランツ・カフカ「ある学会報告」より~

カフカの猿~フランツ・カフカ「ある学会報告」より~

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2012/05/02 (水) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★

俳優
キャサリン・ハンターさん。素晴らしい。全席完売のようですが、55分という短いお芝居なので、当日立ち見席にチャレンジしてもいいんじゃないかと思います。

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