1
露出狂
柿喰う客
CoRich舞台芸術まつり!2010グランプリ作品。女性だけの作品というとアイドル系か宝塚系かと思われるが、これは体育会系。客演した豪華女優陣が、それぞれ他のところでは見せることはない演技を見せてくれた。そういうところを引き出す力も中屋敷マジックか。本当に全国制覇を目指しているサッカーチームのような団結力が役者陣から感じられ、創作現場の(絶対面白い作品を作るんだ!という)意識の高さが端々から感じられた。それが見事に結実した舞台である。
2
そして彼女はいなくなった
劇団競泳水着
いつもは何げない日常の中での胸ときめく瞬間を見事に切り取って、素敵な作品に仕上げて見せてくれる劇団だが、今回はなんと本格サスペンスに挑戦。それが見事に決まって、上野友之の才能を確信させられた作品でもある。殺人事件の犯人を捜す謎解きと、姉に恋人を奪われた妹の心の葛藤とが見事に調和し、作品としての完成度も高い。「りんごりらっぱんつ」も素敵な作品だった。甲乙つけがたい。
3
アメリカン家族
ゴジゲン
若手劇団ながらもはやゴジゲンワールドを確立している。一見コメディ風のタッチでありながら、実は奥が深く、若者の行き場のない苦悩や悲しみが見事に表現されている。もはやゴジゲンをコメディ劇団の範疇に入れることは出来ない。この作品も苦悩に満ち満ちている。松居大悟は今誰よりも若者の悲しみを表現出来る作家かもしれない。2012年大ブレイクしそうな予感がする。
4
恋2 【満員御礼!ありがとうございました!】
ろりえ
ろりえの作品にはずれはない。奥山雄太の作家としての感性のみずみずしさと、演出家としてのダイナミックな演出力が見事にマッチしたのがこの作品。ともかく若さとエネルギーがいたるところにあふれ、それがきらきらと輝くような作品。さまざまな演劇的限界やタブーに挑戦していこうという姿勢も心地よい。素敵な客演陣も豪華だが、常連のメンバーの技量が上がり、プロとして通用するレベルになった。年末の「女優」も感動的作品だったが、作品の完成度としてこちらを選出した。
5
ロロ vol.4 ボーイ・ミーツ・ガール
ロロ
2010年最も精力的に活動した劇団のひとつ。三浦直之の表現スタイルは常に新鮮で、観ているものを素直に感動させる。この劇団も感性で勝負する劇団ではずれがない。特にこの作品は連続殺人事件がモチーフという猟奇的な匂いのする作品でありながら、風船を割ることによって殺人を表すように、表現のひとつひとつがとても新感覚で、全体としては素敵なラブストーリーにさえなっている。POPで鮮やかで胸がキュンとする芝居を作り続けている三浦直之の底知れない才能にも驚かされる。
6
東京アメリカ
範宙遊泳
観客の前で舞台を作る過程を見せるというのはときどきあるが、観客にお面をかぶらせ、その観客たちが劇中劇の地球を侵略する敵の大軍を演じるという設定は見事。しかも、観客の中に素直にお面をかぶる人といやがる人がいるということを計算尽くで、そのことさえ芝居の中で取り込んでいるところなど秀逸。やられたという感じ。
範宙遊泳は役者の身体能力の高さと、発想豊かな作品に魅力を感じる。古典をやったり、新発想の芝居を作ったり、これからどう発展していくのか楽しみでならない劇団だ。
7
やわらかいヒビ
カムヰヤッセン
一年前シアターグリーンの学生芸術祭に参加していた劇団がもう三鷹芸術センターのMITAKA \\\\\\\\\\\\\\\"Next\\\\\\\\\\\\\\\" Selectionに選ばれる。その成長の早さにまず驚く。そして星のホールの広い舞台を見事に使い、北川大輔は脚本力だけでなく、演出力でも非凡な才能を見せつけた。スケールの大きい物語と、それを紡ぐ美しい台詞で我々をうっとりさせる。
8
暴くな
INUTOKUSHI
新しい感覚のコメディを追究する劇団。ここまでやるかという一線を越える作品を提供し続けながら、実は緻密に計算されていたりする。すぐに裸になったりする劇団だが、その肉体は鍛え上げられたもので、いい加減な気持ちで芝居に取り組んでいないということがよくわかる。その劇団が相撲を舞台にしたというところがしたたかだ。しかも八百長問題を取り上げながら、「暴くな」というタイトルも意味深長。ただのコメディ劇団に終わっていない。主宰のモラルは久々に存在自体が面白いという個性派の演出家。彼が舞台にどう出てくるのかで面白さが変わってくる。年末のゾンビは彼の出番が少なかったのが少し物足りなかった。
9
ジーンズ -gene(s)-
劇団銀石
従来、詩的な言葉とイメージが先行して、ストーリー的にはわかりづらい作品が多かった劇団だが、今作は肩の力が抜けた感じで全てが調和がとれていた。ともかく台詞の美しさ、面白さは群を抜く。そしてようやく佐野木雄太の台詞を表現出来る役者陣が揃ってきて、作品の質が急上昇してきた。作品全体が、かろやかな感じで、佐野木作品のコミカルな面も今回はうまく仕上がっていた。
銀石のスタイルがひとつ完成した作品として評価したい。
10
『アタシが一番愛してる』
バナナ学園純情乙女組
2010年は後半、おはぎライブをひっさげて学園祭を周り、最後に王子小劇場で集大成を見せてくれたが、そのエネルギーは恐るべしだ。久々に死者が出るかもしれないという演劇公演に立ち会えた感動があった。(※それくらいエネルギッシュという意味。)このかもめ座での作品はおはぎライブではなく演劇公演だが、演劇公演とおはぎライブと分ける必要はないと思う。どちらも二階堂瞳子の演劇革命戦士としての熱い想いが刻み込まれているからだ。
今演劇界ではバナナ学園旋風が巻き起こっている。単にひとつの公演ではなく、その活動スタイル全体が時代にウェイブを巻き起こしている。2011年もさらに大きなバナナ旋風が吹き荒れることだろう。