鬼の如く、地獄の如く、恋の如く
Dotoo!
駅前劇場(東京都)
2009/03/18 (水) ~ 2009/03/25 (水)公演終了
満足度★★★★
コーヒーを一杯
一般的なイメージから、ちょっと外したところもある文豪たちのキャラクターが、まずは面白かった。芥川龍之介が妙に明るくてたくましかったり、夏目漱石がやたらと屁を使った例え話をしたり、菊池寛がとてつもなく軽いノリだったり、観ていて思わずクスクス笑ってしまう。
自由恋愛・不倫・心中未遂、挙句の果てに、それを題材に小説を書いたり、生まれてきた子どもに魔子と名づけたり。文豪たちの波乱万丈の生き方が、会話の中から次々と見えてくる。
そんな文豪たちの人生と、経営不振のため歴史のあるコーヒー専門店を閉めようとしている加織やそれを止めようとする兄 幸輔の状況が、微妙にからみあいつつ、物語は進む。そして、加織と夫 健太郎との間の微妙な関係が問題になって……。
人生ってのは、ちょっとほろ苦いコーヒーみたいなもの。そんな気障なせりふをつぶやいてみたくなる。当然そのときには、片手にコーヒーをね。
BASARA~謀略の城
WAKI-GUMI(脇組)
俳優座劇場(東京都)
2009/03/06 (金) ~ 2009/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
戦国マクベス
戦国時代の史実よりは、原作であるマクベスの方に近い。マクベス=松平弾正久秀とその妻が追い詰められていく様子が印象的だった。殺陣や舞の迫力は一見の価値があると思う。
恋人としては無理(JAPAN TOUR)
柿喰う客
STスポット(神奈川県)
2009/03/05 (木) ~ 2009/03/09 (月)公演終了
満足度★★★★★
これも愛
初演をご覧になった方の感想などから、スピーディでハイテンションな芝居なのだろうと思っていたら。
冒頭のスピード感や小ネタの応酬に目を奪われているうちに、ふと気がつくと、疾走感の中に透き通った切なさが加わっていて。
弟子たちの過去が語られる辺りやイエスの処刑後の弟子たちの様子に、愛することや信じることへの悲しみが感じられてきたり。
これはたぶん、ある種のラブストーリーだったのだろう、きっと。
観終わった後、そんなふうに思った。
オンリー・ユー
鈴舟
シアターサンモール(東京都)
2009/02/24 (火) ~ 2009/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
幸せになってね
強盗が人質と共に立てこもった郵便局という一種極限状態のはずの場所で、どこかとぼけたやり取りが続く。郵便局員やアルバイト、客、そして強盗も、それぞれの事情を抱えた中での微妙に噛み合わない会話がおかしい。その上、予想外の飛び入りがあったり、ピザを取り寄せて腹ごしらえをしたり。
どの役者さんも達者で観ていて安心感があったが、特に麻生美代子さんが演じたおばあちゃんが素敵だった。
ボケてしまっているのかと思ったのに、話が進むに連れて鋭いセリフが次々と飛び出してきて、終盤、郵便局を出て野次馬相手に演説する声を聞いたときなどは、笑いながらもなんとなくジンときてしまった。
何度も笑わせながら、夫婦の間の心の機微や、職場恋愛の葛藤、家族への愛情などが描かれていく。観ているうちに、最後はホロリとさせられてしまった。
ごく普通で、そしてちょっと変な人ばかりなのに、それでもみんな一生懸命なのが少しせつなくて。できればこの後、みんなどうにか幸せになって欲しい、そんな気分になった。
傑作
世田谷シルク
ART THEATER かもめ座(東京都)
2009/02/14 (土) ~ 2009/02/15 (日)公演終了
満足度★★★
刺激的な1時間
3回公演のうち、花組芝居の堀越涼さんがゲストの回を観てきた。
芝居の冒頭、背を向けて座っていた堀越さんが平手打ちされてこちらを向いた瞬間、ドキッとする。
薄暗い空間。遥かな銀河を巡る少年たちの物語とそれに織り交ぜられるさまざまな断片。 そのイメージの連なりの中に、死というものを意識させる流れ。
日替わりゲストによる日ネタ(?)のコーナーもあって、ますます多彩な印象となっていた。
せっかくなので、「銀河鉄道の夜」についての部分をもっとたっぷり観たかった気もするけれど、いずれにしても刺激的な1時間となった。
怪奇探偵丑三進ノ助 ~推して参る!~
しゅうくりー夢
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2009/02/05 (木) ~ 2009/02/09 (月)公演終了
満足度★★★★★
満足満足
今回の公演は、連日完売で追加公演も決まったという。その勢いもうなずける、見応えのある作品だった。
ハラハラドキドキするストーリー展開やカッコいいアクション、そしてせつない思い……。
人気のあったシリーズの続編だけれど、初めてご覧になる方でも問題なく楽しめる内容になっている。もちろん、以前の「大正探偵怪奇譚」をご覧になっていれば、「あ、あのセリフは!」とか、「あれ?この曲……」とか、けっこうピンと来る場面も多くて、ますます楽しめるだろう。
2月9日18:00~の追加公演については、まだチケットがあるようなので、気になった方はぜひ!!
泉鏡花の夜叉ケ池
花組芝居
青山円形劇場(東京都)
2009/01/12 (月) ~ 2009/01/22 (木)公演終了
満足度★★★★★
人ならざるモノたちの祝祭
マチネで那河岸屋(なにがしや)組、ソワレで武蔵屋組を観劇。(主人公の萩原晃を演じる役者さんの屋号で、チーム分けしてあるのだ)
那河岸屋では、ぽっちゃりしたお茶目な学円と華奢で可憐な百合、そしてワイルドな晃という組み合わせ。何より加納さんの演じる白雪のワガママで情熱的なお姫様が、いいようもなく美しい。
武蔵屋組は、凛々しい学円と清楚で妖艶な百合、そして頼もしい晃という組み合わせ。 山下さんの白雪は、蛇とも鬼とも言われる夜叉ヶ池の主の猛々しい外観から滲み出る恋心がせつない。
白雪の眷属たちの衣装や動きのポップさが素敵だった。ずっと前に観たリンゼイケンプカンパニーを思い出させる、人ではない妖しいモノたちの祝祭という風情が印象的だった。
客を舞台に乗せたり、客席に歌詞カードを配って歌わせたりと、観ているものに一体感を感じさせる演出が楽しかった。
proof
コロブチカ
王子小劇場(東京都)
2008/12/25 (木) ~ 2008/12/29 (月)公演終了
満足度★★★★
濃密な時間
「休憩です」と言われて驚いた。時計を見ると、芝居が始まってすでに1時間以上経過していたけれど、実感としてはほんの短い時間に感じられたから。
それほど引き込まれてしまったのは、4人の濃密な演技によるものだろう。それぞれの役の細やかな心の動きが、表情からしっかりと伝わってくる。特に、コロさんの演じたキャサリンの繊細さと大胆さには目を奪われた。
観に行ってよかったと心から思える美しい舞台。観た後に、少しだけやさしくなれる気がした。
プリンで乾杯
劇団競泳水着
王子小劇場(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/16 (火)公演終了
満足度★★★★
いい意味でベタ?
トレンディードラマ……というキャッチフレーズに若干の不安を感じつつ、柿喰う客でカッコいい殺陣を見せてくださっていた佐野功さんのご出演と、花組芝居の堀越涼さんのアフタートークにつられて観に行った。
バイト仲間の男女4人が、一軒の家を借りて共に暮らしていく。その家をはじめとする複数の場所・時間の場面を積み重ねながら、若者たちの思いを着実に立体感を持って描いている。
登場人物がそれぞれ親しみやすく、観るものに感情移入させていくため、決して目新しいとはいえない展開ながら、最後まで飽きさせない。
佐野功さん演じるまことのキャラクターが魅力的。いい感じに男っぽくて、ちょっと情けない感じが絶妙だった。
それから、バーのマスター役の永山智啓さんが他の役を演じるところを観てみたくなった。アルバイトから店長になる亜佐美とマスターのやり取りがとても楽しかった。
観終わった後こんなふうに、登場人物について誰かといろいろ話をしてみたくなるような、そういう芝居。
アフタートークでは、主宰の上野友之氏と花組芝居の堀越涼氏が、飾らないトーンで言葉を交わす様子が心地よく、話の内容も興味深くて楽しめた。
接触
世田谷シルク
ギャラリーLE DECO(東京都)
2008/11/15 (土) ~ 2008/11/16 (日)公演終了
満足度★★★★
際立つ関係性
交互に語られる2つのストーリーと、散りばめられたいくつもの一人芝居が、いくつかのモチーフやキーワードでゆるやかにつながっていく。
触れること・香りが呼び覚ます記憶、色・音・語られなかった言葉など、五感を通して感じられる様々な形の出会いと別れ。二人芝居だからこそ、人と人との関係性が際立つのだろうか。
刺激的な、そのくせどこかしっとりした印象を残す芝居だった。
極道LIVE!
theatre BAROQUE
元麻布ギャラリー(東京都)
2008/10/10 (金) ~ 2008/10/19 (日)公演終了
満足度★★★
えっ、ここはどこ?
最初に案内されたのは、ヤクザの襲名披露の会場?いったい何が始まるの?
儀式あり(?)、歌あり、踊りあり、そして男の意地や裏切りあり、アクションあり、笑いあり、という盛りだくさんな内容。
そまりえ
黒色綺譚カナリア派
ザムザ阿佐谷(東京都)
2008/10/03 (金) ~ 2008/10/13 (月)公演終了
満足度★★★★
贋物と本物
男女を逆転させた配役やままごとの家のような小さなセットなど、違和感や居心地の悪さを意図的に感じさせる仕掛けの数々が印象的。
贋物と本物。 虚像と実像。男と女。
観た後に感じたのは、見え隠れする多くのモチーフが、どこか伝わりきらないもどかしさ。それを含めて、その雰囲気と試みとに心惹かれた。
怪談 牡丹燈籠
花組芝居
あうるすぽっと(東京都)
2008/09/03 (水) ~ 2008/09/15 (月)公演終了
満足度★★★★
丁重な華やかさ
花組芝居、初観劇。噂に違わず魅力的で達者な役者がそろっており、見応えがある。原作の雰囲気を活かしてまとめた話の面白さと、間違い探しのような小道具の使い方の面白さ。手間ヒマかけて創り上げられた、粋で華やかな舞台だった。
真説・多い日も安心
柿喰う客
吉祥寺シアター(東京都)
2008/08/21 (木) ~ 2008/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★
クセになりそう……
38人が、いや39人が(そう、キャスト表に出てない方が約1名、舞台上にいましたよね?)舞台上を走り、飛び、叫び、転がり、そして歌う。その勢いに圧倒されたり、疾走感に酔いしれたり。
終わったあとも、いろいろな場面やセリフが脳裏に浮かんできて。……そしてまた明日、観に行きます。
Father Christmas, Don’t Cry ~2008 下北Ver.~
しゅうくりー夢
駅前劇場(東京都)
2008/07/31 (木) ~ 2008/08/04 (月)公演終了
満足度★★★★★
8月のクリスマス?
悲しいからじゃなく、愛しいから泣けてくることもあるんだ……と、この舞台を観て知りました。
笑いあり、涙ありの2時間15分。ちょっと照れくさい言葉でも言ってみたいような、人恋しい気持ちになりました。