満足度★★★★
命について考える
照明も音響も衣装、道具、演出が練られていて素晴らしかった。
入れ替わり立ち代わり俳優さんが違う役を演じるところが面白かった。
さすがスズナリで公演を打つ劇団です。楽しませていただきました。
ネタバレBOX
ラストで照明を当てるために床が格子になっているのですが、
上を通るたびに鉄がきしむ音がするので、気になりました。
また、個人的には緩急がもうちょっと欲しかったと思います。
ロボットの方が人情に厚いところは、
人間が人間らしさを失っていることを象徴しているのでしょうか。
世界は巨大なシステムであり、上に行かなければ搾取されるだけだ、
という美容師の思想について、自分もよく考えます。決定的な答えは出ませんが…
この舞台では未来も人間は変わることなくシステムに負け(組み込まれ)て不幸であり
そんな世の中に生まれて来る子牛の未来は食われるだけである。
どうにもならない不公平な世の中になっているよ、という風刺のように感じました。
満足度★★★★
相変わらずの残酷物語。
「なんでそこまでやるの?」と、「だからここまでやるんだ」の天秤で
人によっては、やっぱりやりすぎ、という結論が出てもおかしくない作品。
インプロは、ちょっとゆるい感じで成立させていたのだけど、
個人的にはスリリングな真剣さがもう少し欲しかった。
話は相変わらず酷いが良く出来ていて、ただの狂気に終わらない。
ただ、はじめての人には刺激が強いかも。
ネタバレBOX
なまなましい殺人の様子や、殺した人間の肉を食う、という展開は非常にグロい。
相変わらず衝撃的な物語と演出。
やがて加害者たちは子ども時代に受けた虐待が原因であることが明かされていく。
そうなると「なんでこんな残酷なことするんだよ」と観客が加害者を憎んでも
ああ、そういう因果があったのか、と受け入れざるを得ない。
そこが「やられた」感。脚本の罠に引っかかった感じ。
ゆるい部分は良し悪しで、それが中和剤になって、
多少苦手なお客さんにとってもそれが救いになった部分があるかもしれない
と思いました。
満足度★★★★★
文句なしに面白い
リアル。
演劇を見ているというよりも、観察をしていた気分。
演劇的なクライマックスに向けての高揚はありませんでしたが
カンペキなものを見た、いう印象。
客席がひたすら狭い事も、ケツが痛いことも
つまらない芝居ならストレスにしかならないのに、この芝居は逆に舞台に集中させる。
役者と演出の力、凄まじかった。
加熱しすぎず冷却しすぎず、欲しいところに欲しい物が出てくる。
まったく隙がない。もうこれはお手上げ。
★5しかないです。
ネタバレBOX
社長という肩書きの知り合いがいますが
まさしくああいう喋り方、ああいうノリ(暴力はないですが)。
役作りもリアルで嘘が無く、「そこにいる」という感覚で見れました。
キャラクターもすべてぴったり。
席の関係で見辛いシーンがありましたが
芝居の出来に文句を言うところがない。
とても素晴らしい舞台でした。ありがとうございました。
満足度★★★★
話が非常に良く出来ていた
なんといっても話が良かった!
きちんと「今やる内容」になっていました。
怪物が示唆しているものが
こちらの想像を何度も覆して、面白かったです。
ネタバレBOX
方言が聞き取れないことがある。
聞き取れないのは言い回しの場合もあり、滑舌の場合もあります。
いくつか重要な台詞が聞き取れなかったので、前後の流れで理解する。
それでも内容は大体わかったので、役者もきちんと仕事をしているのだと思う。
個人的にはもっと役者自身のエネルギッシュな衝動が見たかったが
バランスとしてはちょうど良かったのかもしれません。
原発、津波、政府の対応など現実で起きたことが、
この小さな集落の物語とリンクしており、その手法がとても上手かった。
シチュエーションと台詞に組み込まれた言葉の断片が
散々ニュースなどで繰り返された単語とダブって聞こえて
特に、総理を皮肉っていると思われる所長の発言や行動が興味深かった。
世界観がはっきりしていてバランスがよく、脚本は本当によくできていて
今年見た話の中では一番よくできていたと思います。
満足度★★★★
世界観が良い
照明がとても効果的だったのと
音も、観客を不安にさせるのに十分な(良くもわるくも)効果があったと思います。
また、劇場・空間の使い方がとても良かった。
世界観が守られていて
ひとつの物語としてしっかり見ることができました。
ネタバレBOX
これは個人的な見方の問題ですが、あえて排除しているのかもしれませんが
何がどうつながっていて何が何を示唆しているか
はっきりさせたいタイプなので紐が解けないとむずむずします。
アフタートークでも話されていましたが
やはり、「思い出」を失う時、なぜ安東は大丈夫だったのかということは
非常に気になりました。同時に、その答えにはちょっと残念。
都市は人間の幸福になりたいと思う意志の集合体で動いており、
アルカージィが書いた小説により肉の塊になる一連を
人間の幸福(=人間性の回復)と誤って理解し装置を造ったのだと
思ったが、その大元となったアルカージィは何故そう書いたかを見せてほしい気がした。
「ただなんとなく意識せずに書いた三文小説」だけでなく、
それを書いた時の気分、意味、経験みたいなものが見たいなと。
2時間の舞台でしたが
テンポの良さ、構成の良さもあり、長さはあまり感じませんでした。
面白かったと思います。
満足度★★★
何回斬られても…
殺陣がメインの舞台で2時間弱。
アクション好きの方や派手な立ち回りが好きな方には良いかも。
個人的にはアクションが入るとそこから展開が進まなくなって
斬ったり蹴ったりする動きをただ見ているしかなくなるので、
後半少しつらい感じ(殺陣の手が似たものが多い為)でした。
潮見さんのアクションは迫力、安定感ともに流石。
ネタバレBOX
何度斬られても死なない人がいて、
きっと物語に関連する特殊な役(吸血鬼的な)なのかと思って観ていたが、
どうやらただ強いだけの人だった。
2回か3回斬られたら倒れてほしい(笑)
アクションを見せるためにリアリティが犠牲にされているようで
「斬られる」ことへの重みが薄まっているように感じました。
また潮見さんの殺陣はすごいのですがショーになってしまっていて
舞台の総合的な効果としては、むしろやり過ぎのような。
脚本は、過去に戻る最初の時点でかなり力技で
過去に戻ってからの設定も整合性があまりなくて
邪馬台国やヤマタノオロチやヒミコなどの名前を使う必要が
そもそもあまりないような気がします。
ヒミコが人を死なせる力を持っていた設定もなぜそうしたのかよくわかりませんが、
ヒミコの母親がヒミコの手によって中絶(?)させられるシーンも必然性がない。
また、いつも観客が登場人物のバックグラウンドを理解する前に
キャラクターが窮地に陥ってしまってから因果の説明をし始める。
こっちとしてはキャラに思い入れがないままピンチになっても入り込めず
観客の方で相当努力して説明台詞の背景を補完しなければ、泣けない。
だけど人はどんどん死んでいくしひどい目にあっていくから単純に嫌悪感が起こる。
アクションを見せるために登場人物が死なされている、という印象があるし
ざくざく殺す大ボスが中途半端に優しさを持っているため、余計にそう感じます。
非情なら非情で仕方がないと思えるのに「中途半端な優しさを役に入れられるなら
そもそも他の人間も救ってやればいいじゃん」と思う余地を与えてしまう。
全体的に人間が舞台上で死ぬ意味の代価が不足しているように感じます。
殺陣はかっこいいところや華やかなところも多かったのですが、他のさまざまなことが
アクションのために犠牲になっている、という感覚はぬぐいきれませんでした。
満足度★★★
少し長かったかも
照明の効果や、途中の仕掛けなど、面白い要素がありました。
入口に作られた井戸も良かった。
受付に置かれた蚊取り線香の臭いも手伝って、
夏、という感じがしました。
ただ、パイプイスで100分を超える舞台はやっぱりちょっと長い。
短いエピソードの積み重ねでしたが、いつ終わるのか明確でないので、
観る方としても少しペースが掴みづらいかも知れません。
話を厳選するか、テンポアップが求められると思います。
ネタバレBOX
女子高生の話と、ナースコールの話は面白かったです。
海から母親(実は偽物)が呼ぶ話は鳥肌が立ちました。
もともと海に近いところに住んでいたので、リアルに想像できるというか…
また、随所の照明を使った演出は効果的でした。
心霊系の話でも、笑えるもの・泣けるもの・理不尽なもの・
自業自得なもの・ホッとするものなど種類があると思いますが、
お客さんにどのように感じさせるかを、演じる側が
もっと明確にする必要があると思います。
お客さんの想像力を掻き立てるには、話自体の恐さはもちろんですが
話し手の呼吸とテンポがとても大切だと感じました。
朗読が結構あるので読み方に関しては特に気になるところ。
あんまり怖いと個人的には困りますが…(笑)
事情をお伺いしたところ稽古期間が短いということだったので、
これから本番を重ねてさらに面白くなっていく事を期待しています。
満足度★★★
ラストのテンポが良い
物語後半のスピード感が良かった。
出来事がすべて収束していく感じが小気味良い。
舞台装置もシンプルな上、間口が非常に広かったので
演技がスペースに見合ってなかったかも。
照明は、特に青がとても綺麗に感じられた。
ネタバレBOX
NASAやJAXAや国連について、それらが細かく設定されていて
終盤で伏線がすべて回収されるところはとてもいいのだけど、
最初の方は、失礼ながら、中途半端なSFコメディかと思ってしまうほど
要素が散らばってて観づらかった。
また、さなこが父親に対する嫌悪を抱く動機が薄い。
自分が目指していた宇宙飛行士の夢を、
途中から父親が目指して先に叶えたからというのは…。
また、犯罪を犯した松尾と久留米が罪を告白するところでは
久留米はわかるが松尾は許しを乞う必要がないように思う。
デンキマンと血吸いコウモリのやりとり自体はおもしろかったが
なぜ突然、正義の味方と悪者が、開発局の近くで定食屋をやっていて
しかもデンキマンなのか、というのがちょっとご都合かな…と。
リアルな部分との兼ね合いがよくわからなくなる。
無血テロリスト佐藤も、後々大事なキーパーソンになるが
前半ではあまり触れられないので突然重要事項に挙がってきた感がある。
また吉田が局長にコロっと行ってしまうのも、観ていて突然すぎる。
広島弁のヤクザ風JAXA人事部は、目標とやっていることの整合性が…。
そのようなことから
脚本をラストの展開から遡って書いているのかなーという印象を受けました。
満足度★★★★
殺陣が良い
見せたい部分がはっきりしていて、クライマックスの盛り上がりが良かった。
それぞれの男気を見せる瞬間に拍子木の音が入る演出がニクイ。
やっぱり蜂寅企画は殺陣と男前な台詞が持ち味。
ネタバレBOX
親分がすべての人間に大きく関係しているので、台詞や演出等を使って
もっと親分の存在にインパクトを与えても良いのではないかと思った。
人間関係の描き方について、全体的にもう少し丁寧に描いて欲しいと感じた。
恋に落ちる瞬間とか、怒りや悲しみや裏切りや許し。
腑に落ちないところがいくつかあった。
今まで怪我人を出さなかった盗賊たちが岡引を殺した(ように見えた)事には、
それなりの意味を持つと思うが、ラストで旋風一派が全員生き延びて、
笑い合い、風まかせに仕事を続けていくであろうラストが、一番気になった。
一派は今回の事件が大きすぎてそれぞれ深い傷を負ったので、
いつもどおりに振舞うことでごまかしている、という解釈もできなくもないが、
特にそういったことをにおわせる感じもなく、普通に見ていると、
「いろいろあったけど全員生き延びてめでたしめでたし」のように取れる。
旋風一派が単純にヒーローのようで、違和感を感じた。
公演が終わって、他のお客さんが
「すごい面白かった~!誘ってくれてありがとね!」と友人らしき人と
話していたので、「しらなみ浮世」は成功だったのだと思う。おつかれさまでした!
満足度★★★★
拝見しました。
主役コンビには、過去を背負ってそこにいる、という
神秘性がもっと欲しいと思いました。
素直な感情をストレートにぶつけすぎな印象。
二人が会わない間にこんなことやあんなことがあったんじゃないかという
さまざまな可能性があるはずだが、
そこが台詞でない部分で感じられたら良かった。
伏線や心情の積み重ねが多いので
役者もきちんとシーンを積み重ねて欲しい。
舞台美術は色使いが良かったし、衣装もおしゃれで良かったです。
死体も良かった。
パンフレットの役者紹介の文章が印象的でとてもよかった。
個人的には凛々役の方の滑舌と演技が素晴らしかったです。
お値段との兼ね合いで★3.5です。
満足度★★★★★
看板に偽りなし
壮大なスケールでくだらなく面白い。
ここまでナンセンスな笑い追求をした劇団を見たことがありません。
グレート義太夫さんのここだけの(?)すべらない話も面白かった。
舞台で大笑いをしたのは久しぶりでした。
さすが100回記念!サイコーでした。
満足度★★★★
スマートなコメディ
すんなりストレートに面白いコメディ。
演技はよくて、話も面白くできていたけど
逆にすんなり行き過ぎた感もちょっとあるかも。
お金と実力は見合っていると思います。
贅沢を言わせていただくとやはりテレビとの違いが欲しい。
舞台ならではの迫力や、やり取りが。
満足度★★★★
これぞエンターテイメント
友人に誘われて。
劇場も演技も音響も照明もダンスも殺陣も、
値段にふさわしいエンターテイメント。
脚本の好みは別れるが、見て後悔はしない。
良い舞台でした。
満足度★★★
1時間40分は長いかも…
座席が狭く、ちょっとつらい状態で見るので、
もっとテンポがあったほうが嬉しかった。
俳優さんは
最初はちょっとぎこちなかったけど、
話が進むにつれて、だんだん温まってきたという感じでした。
ネタバレBOX
「マッチ売りの少年」というタイトルですが
主人公とマッチ売りの関係が深くないような気がして、
ちょっとピンと来ない感じでした。
物語は必然性がない事が多く、
客席がかなりせまいので、遊びの部分が増えるとちょっとつらいかも。
主人公の性悪な部分が、人助けの部分へ変わるところが
物語の大事な過程のひとつのはずなのだけど
あれ、いつの間にかいい人になっちゃってる?という印象。
どこで変わったのかいまいちわかりづらかったです。
マーガレットゥ(笑)は芸達者で魅力的でした。
満足度★★★★
事件の予習が必要
「劇」小劇場に初めて行った。
椅子がとても良かった。ぜんぜん腰がいたくならない!
間口も広いし駅から離れてないしとても良かったです。
溺愛のほうは、もとになっている事件の予習が必要だと思いました。
ネタバレBOX
まずは一本目の「溺愛」。
久留米で起こった、看護師による保険金連続殺人事件を
もとに作られた猟奇的な作品。
舞台そのものが主犯格の女、看護婦ジュンコの世界。
そこへ弱みをつけ込まれ、揺さぶられ、次々と
共犯者となる女性が搦めとられ、犯罪に手を染めていく。
この舞台、
事件と、異常な女の思考回路と一般人の苦悩と人間心理を
演劇的手法で描いたのだという事を理解しないと
ハテナマークがいっぱい浮かぶ。予習が必要。
がんじがらめの日々生活を、
本当に裸になる(衣服を脱ぐ)ことにすり替えられ、
脱ぎすてた不自由の代わりに裸の自由(結局不自由)を与えられる。
理解が追いつかないと単に
「官能的な表現を売りにした舞台」みたいに思える。
物語の進行役を名乗る男は、存在が中途半端。
"観客に見られている”という認識を役が持っており、
それが役の感情と行為の理解をさらに妨げている気がする。
インパクトはあったのだけど、
個人的にはこの事件のどこをクローズアップしたかったのか
どこを一般化したかったのか、明確に感じることができなかった。
演出、効果は素晴らしかった。
舞台の上に舞台を作ったのもよかったし
前説からいきなり芝居に入るところも、服を脱がせ方も、隠し方も
その後、体に白い布が巻き付いて
綺麗な衣装になったのも素晴らしかった。
一番最後にすべてを搦め捕る白いリボンも世界を現していて良かった。
だから全体的に、難解だけど、良いものを見たという感想。
事件の概要をパンフレットに載せてみてもいいかも。
そこはこだわりでお好みだとは思いますが…。
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「水飲み鳥」の感想。
同級生の葬式で久々に集まる同級生の話。
限りなく日常の、片田舎の、どこにでもありそうな風景。
特に派手な展開もなく、
一本目の「溺愛」とはまったく違うテンションで進行する。
4人の登場人物が、それぞれの「日常」を持って再会。
久しぶりの出会いに付随する喜びと興味、
環境の違いと考え方の違いによる戸惑いがとてもよく出ていて、
舞台を見ている内に、知らずと自分に重ねてしまう。
あの頃と同じだと思っていても
長く暮らしていくと、年月の分だけいろんなものがひっついて
昔のように何も考えずには付き合えない。
郷愁と現実の違いが物悲しい。
特に何かのメッセージがあるわけではないけど
役の設定のバランスがとても良く、演技も上質で、
いろんなことを味わう事ができる良い舞台でした。
満足度★★★
主張は伝わる
シアターグリーン BOX in BOX THEATERってホームページで見たとおり、
やっぱりキレイだし客席の段の高さが見やすい。
今回は1時間15分ということで舞台では短い方だったけど
内容の重さとの兼ね合いもあって、ちょうどいい長さでした。
ネタバレBOX
話のメインはいじめに関する主張で、
それは伝わってくるのだけど、ちょっとシェイクスピアとは関係なかったかな。
役の名前の由来と行動の一部が似てるという印象。後付け感があるかも。
主張自体は青臭いほど直球ストレート。
いじめた人間は簡単な気持ちで人を追い詰めるけど
反省したふりをすれば逃げられる。現実にはそいつらを殴ることはできない。
一度いじめられた経験があったり
いじめをとめようと思ったことがある人なら感じたことのあるこのイライラ感。
それをこの舞台では思いっきり殴ってみせる。
殴る、殴る。女であろうと殴る。
バッコスの祭の脚本・演出の、そういうところは好感。
ただのよくある「イジメやめよう系」の話に納まらないところと
譲れない、こだわりのポイントへのエネルギーのかけかたが。
でもちょっと今回はキャラが多く、散らかっちゃったかな。
シェイクスピア縛りがないほうが役に幅をもたせることができたかもしれません。
満足度★★★★★
ネガティブというよりもっと強烈なインパクト
「ネガティブ」という言葉は
うなだれてるような、エネルギー残量少なめな印象だが
これはもっとなんていうか、ミサイル級の破壊力のあるネガティブ。
いやネガティブっていう言葉に収まりきらないんじゃないだろうか。
非常に強烈なインパクトです。
理不尽な話。
物語が理不尽なのではなくて、そもそも世界が理不尽であり
その縮図を描いたがゆえに理不尽。
そして壮絶なラストを迎えて、さらに強烈に迫ってくる。
その突き刺さりっぷりは、免疫のない人にとっては嫌悪感を生むかもしれない。
そのことも絶対分かっていてやっている。強烈な批判が来ることも。
それでもこの選択は潔い。
インプロを舞台に織り込むというやり方も、
とても面白くて素晴らしかった。
今年見た中で一番きた。だから今年初の★5
場内整理のスタッフも丁寧で、行き届いていて良かった。
あとひとつ、音響さんの素晴らしさを感じた舞台でもあった。
ネタバレBOX
救いのない話。
力のないものがみんな死ぬ。
普通は勇気ある若者の出現とか、神様(脚本家)のいたずらとか粋なはからいで
観客のカタルシスは満たされるものだけど。そういうものとは無縁。
最初がとても明るく、笑いや拍手まで巻き起こるコメディだけに、
終盤のインパクトは凄まじい。
観客が愛着を持ち始めた、今を一生懸命生きる登場人物たちが
目の前でむごい仕打ちをどうしようもできず受けるのである
それもささいな、ちょっとした、取り返しのつくことで。
客にとっては非常に厳しい。
それがどんどん手から離れて、大きな流れが生まれて全てを壊していく。
目をそらしたくなるし、いたたまれなくなるし、逃げ出したくなる。
ゴミ山で生きていた少年達はすべて燃え死ぬ。愛と希望を持ったまま。
誰も助けてくれない。死ぬ。
力の有る側(町の人)は、きっとこれからもなにも知らずに、
罰を受けるわけもなく、生き続ける。
これが世界の縮図。こういうことが。世界では起こる。起こっている。
人知れず起こる。誰にも知られていなくも。届かない叫びがあるのだ。
誰かに気づいてほしくても誰にも気づかれずに
力に翻弄されて死んでいくものがいるのだ。
そして知らずに自分達は加担する側にいる。
そのことに気づけと言わんばかりにこの作品には救いがない。
観客の優しい心を切り裂くようなラスト。
自分の間違いに気づいた主人公の少年の目の前で、
牢から逃走し生き残った最後のゴミ山の友だちは、拳銃で自殺する。
カタルシスのかけらもない、批判覚悟の終わり方。すべては言いたいことのために。
お見事。
うらやましい。
こういう舞台は俳優の信頼がなければやれない。
また、俳優に実力がなければ、ただの嫌な舞台で終わる。
こういう仲間と舞台を作れることはとても素晴らしいことだ。
満足度★★★
バカバカしさが良い
話の発想がバカ(笑)
こんなこと普通は思いついてもやらないだろう
と、いうことを舞台でやってしまった!
好きです。そういうとこ。
ネタバレBOX
ひとつの世界に入りこんでいる空気があまり感じられなかった。
あれが妄想の中の話なら、逆にもっと盲信的であってほしい。
人間的でナチュラルな反応が、せっかくのバカバカしいフィールドで
バカバカしいエネルギーから遠ざけた感があります。
確信犯的に仕掛けている作り手の感覚が伝わってしまう。
ここまで馬鹿な話を実現するなら
いっそもっと台詞を叫ばせたほうが良かったかな。
満足度★★★★
エンターテイメントとしてアリ
きれいなお姉さんがキレのあるダンスを踊っている、
というだけで、男目線でいうと価値が、ある(笑)
ダンスが本業の方が多かったのかな?
台詞がもうちょっとな感じの方がちょこちょこ…。
話の着眼点はよかったのだけど
全体的に、いきなり予兆もなく突発的に出来事が起こるので
もっと伏線を織り交ぜてもよかったかもと思います。
座席はパイプ椅子でした。劇場ちょっと空調が暑かったかな?
天井が低いので、後ろの席だと少し観づらいかもです。
ネタバレBOX
あとでチラシ見たら、宣材写真と舞台メイクが違うので
どの役が誰だったかいまいちわかりづらいかも。。
主人公の妹が、ホテルに連れ込まれトイレで姉に助けを求め
姉がナイフを持って助けに来るが、あやまって刺してしまう。
そして裁判で有罪判決を受け、そこから監獄生活が始まる、という話なのだけど。
プロローグでは、たとえば主人公はいつも悪さをしていて
警察の調書を悪く書かれてしまって裁判に不利になった、とかの補足が欲しい。
清楚で堂々としている(多少男勝りな)姉が体を張って妹を助けに来たのに、
なぜ実刑判決なのか?という理不尽さが強い。
全体的に、説明されていないピースを頭の中で
埋めていかなければならないことが多いかも。
また妹が、姉(主人公)が助けに来てくれた恩義を忘れるのが早くて、
主人公が妹を思い、あそこまで手紙を書き続けることに感情移入しづらい。
妹は姉に感謝し尊敬していたけど、あまりに理不尽な目にあってしまい
自分の意志とうらはらに、姉を恨んでしまう…という流れが
もう少し丁寧に描かれているほうがよかったかも。
突然事件が起こり、それに主人公が振り回されるという構図なのだけど
つながっている話というよりは出来事が独立しているようなイメージがあり、
100分という時間の割には長く感じました。
途中入る舞踏はキレがあって素晴らしかったです。
歌や生演奏のバイオリンも上手いのだけど、ちょっと統一感が。
背の高い女優囚人役の方が非常に魅力的でよかったです。
満足度★★★
オムニバス
自分のところでも一回
オムニバスやりたいなあと思っているのだけど
見る立場から、どんなカタチで提示するべきか悩んでいるときに
このオムニバス公演。
それぞれ違う人が考えて、違う人が演出しているのだけど
やはりおもしろいのもあれば、そうでもないかなと思うのもあり。
ひとつひとつ違う人が作っているのだから
評価は難しいけど、2000円の舞台にしては面白かった。
ネタバレBOX
ストーリーテラーの俳優さんが一人いて、
それぞれTelephone(電話)を絡めて進めて行くのだけど
特に電話でなくてもいいんじゃないかなあと…。
短い時間で話を完結させたり、
全体的に他の話とのバランスを整えたりしなければならないのが
やっぱりオムニバスの難しさ。
最後の話は、話そのものが序章という感じで
思いっきり続きがありそうな感じで終わってしまい、
一番最後にもってくるにはふさわしくなかったかもしれない…。
これも仕方がないこととは言え、
作品の出来と俳優の質の差が激しかったように感じました。
でも光るものはあり、個性的な役者さんもいて
つい笑ってしまうところも。楽しい公演でした。