ザ・シェイプ・オブ・シングス~モノノカタチ~
ホリプロ
青山円形劇場(東京都)
2011/02/10 (木) ~ 2011/02/24 (木)公演終了
満足度★★★
なんか勿体ない
ダサイ男が美女と付き合って、ある意味翻弄される、一種すごく残酷な物語。それなりに面白い芝居だが、最大の問題は、主人公を演じる向井理が当初ダサイ男として登場することに無理があるということ。向井の演技は悪くはないのだが、ダサイ男の変化がポイントであり、向井がカッコいいことは隠しようもないので、そこの変化で驚くことができない。一方で、エキセントリックな女を演じた美波のトンガリぶりはなかなか見事。さまざまな場面でしっかりした演技が見られる。米村の演技は安定しており、川村も無理のない役なので不満はない。一方で、笑えるシーン/セリフが相当あるのだが、ほとんど笑いが起きないのは、向井ファンでいっぱいの客席がそういう芝居に慣れていないこともあろうが、基本的には演出の問題ではないだろうか。タイトルの「モノノカタチ」というセリフは1回しか使われないし、原題が "Things" と複数形になっているのは重要なポイントかと思う。アダムとイブ(リン)という登場人物の名前にも象徴的な意味はあるだろう。
焼肉ドラゴン
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2011/02/07 (月) ~ 2011/02/22 (火)公演終了
満足度★★★★★
笑わせながらも重い
作・演出の鄭義信の原体験をベースにした物語は、韓国の役者陣を迎えて、丁寧で濃密で笑わせながらも切なく展開される。父・母・3姉妹と末の息子の6人家族と、取り巻く人々の物語だが、エンディング、2人だけ残された父母が去っていく場面は、意味は重いが不思議な明るさがある。実に秀作。2008年の演劇賞で高評価を得たのも納得できる。長女を演じた粟田の中盤まで押さえた演技、逆に過剰に感情を出す次女の占部、ややトリッキーな存在の朱の3姉妹の対比が巧みだが、軸となる父・申の「運命…宿命」という繰り返されるセリフや、母・高の胸を繰り返し叩く感情表現には、強烈な印象が残る。
怪物-カイブツ-
ブラジル
駅前劇場(東京都)
2011/02/13 (日) ~ 2011/02/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
怪作であり快作
壮絶なフィクションの上に、登場人物達が繰り広げる、人間味あふれつつも笑わされてしまう物語は、終盤、少し切なく、少し温かくエンディングを迎える。ブラジルを見始めて随分になるが、ありえない状況の上に物語を作る、というスタイルは一定だけれども、今回はこの劇団でしかできない「大技」を使って、非常に面白い作品になっていた。同劇団の芝居に慣れた役者陣が集まったということもあって、無駄も弱点もなく、実に楽しませてもらった2時間だった。
南へ
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2011/02/10 (木) ~ 2011/03/31 (木)公演終了
満足度★★★★
良くも悪くも野田らしい
『ザ・キャラクター』『表に出ろい!』と合わせて、一種の3部作となっているそうだが、「信じる」ということをどう考えるか、という点で繋がっているように思う。本作では、加えて、マスコミとか天皇とかあたりまでは何となく予想できたのだが、終盤の、ヒロインの独白の方向性は予想外で、タイトルとの関わりに深さを感じた。野田らしい作品ではあるし、そこでのメッセージも何となく分かる。
ロクな死にかた
アマヤドリ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2011/02/03 (木) ~ 2011/02/13 (日)公演終了
満足度★★★★
楽しかった
何本か観た同劇団の作品の中でも流れが分かりやすく、独特のパフォーマンス的な動きの美しさも維持しつつ、抒情的な感触もある、かなり楽しい作品だった。
さめるお湯
あひるなんちゃら
OFF OFFシアター(東京都)
2011/02/09 (水) ~ 2011/02/14 (月)公演終了
満足度★★★★
良い意味でユルイ
いつもながらのユルイ物語。発明家の主人公を中心として、妹や仕事仲間や友人兄妹とか、ちょっと不思議な人々が作り出す、不思議な感触の70分。こういうのが、この劇団の特徴なんだよなぁ。今日の疲れが癒される
俺のお尻から優しい音楽
五反田団
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2011/02/04 (金) ~ 2011/02/13 (日)公演終了
満足度★★★
良い意味で本当に下らない
あぁ本当に下らない(^_^;)。「壊れそうなほど美しい少年大山はプロのバイオリニストを目指しフランス音楽学院に留学する。そこに待っていたのは、世界中から集まった音楽エリートや、厳しい先生たちだった。 」って言って、これで粗筋を述べたことにはなるんだろうけど、とにかく、芝居やってます、という感じをモロ出しにしながらやるのは、この劇団が年明けにやってる「新年工場見学会」の感触に近い。主張があるわけでもなく、本気で下らないことをやってるのを観て下さい、っていうのは、役者にとっては逆に難しい面があるようにも思う。
恋する、プライオリティシート
コメディユニット磯川家
一心寺シアター倶楽(大阪府)
2011/01/26 (水) ~ 2011/01/31 (月)公演終了
満足度★★★★
ウェルメイドなコメディ
ホテルにあるバーでのドタバタの物語を、マスターがある男に語る、というスタイル。丁寧に練られたプロットと、細かい伏線が最後に収拾されて行くプロセスは、ややご都合主義的だけれども、コメディならありかな、という限界で頑張っているように思った。全体のテイストが今まで観たコメディとは少し違う感触もあり、その辺がなかなか楽しい舞台だった。
ベイビーベイビー
劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)
赤坂RED/THEATER(東京都)
2011/02/05 (土) ~ 2011/02/13 (日)公演終了
満足度★★★★
楽しめる舞台だった
よい意味でのご都合主義的コメディで、秘密を持つ主人公2人が、必死にそれぞれの立場を隠したり、互いの言葉の意味を取り違えたりして、ウェルメイドなドタバタが巧みに展開される。難しいことを考えずに楽しむ舞台だと思うし、楽しませてもらった。しかも、平田敦子演じる演出家が「ゴドー…」に言及しつつ、演劇ファンには結構ハマるセルフが入っていたりして、その辺の小技もなかなか見事。
金閣寺 The Temple of the Golden Pavilion
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2011/01/29 (土) ~ 2011/02/14 (月)公演終了
満足度★★★★
見応えはある
三島由紀夫の作品を、宮本亜門が舞台化。基本的に何もない舞台上で、椅子や机やロッカーなどをさまざまなものに見立てる手法で、全体に抽象的で幻惑的な表現が多いが、物語自体はきちんと原作の流れに沿っている。実際の金閣寺は舞台上に登場せず、画像で1シーンだけ現われるだけだが、金閣寺に捕われた主人公の苦悩は巧みに表現されている。主たる登場人物の演技も見事だし、大駱駝艦による動きの滑らかさもまた作品の感触にフィットしている。柿落としということもあるのか、舞台美術・音響・照明・装置等、劇場のポテンシャルを存分に発揮しているが、何と言っても休憩込み3時間出突っ張りの森田は健闘である。終演後のオールスタンディングなど、ジャニーズ系のお約束っぽい部分はちょっと気になるが、商業演劇としては一定の成功と言ってよいだろう。
コドモもももも、森んなか
マームとジプシー
STスポット(神奈川県)
2011/02/01 (火) ~ 2011/02/07 (月)公演終了
満足度★★
何だか…
特別なセットを組んでいない温かみのある舞台上で、ある種抽象的で幻想的に展開される芝居は、実は主人公の記憶なんだろうな、と後で思う。前半の途中で、幼児役の演技がリアルでないなぁ、と思った瞬間から、ただただ鬱陶しい芝居になってしまった。後半の抒情性の感触は悪くなく、それを描くために前半にややトリッキーな状況が展開されるのだろうとは分かるが、ちょっと私のテイストではないなぁ、と思った。受付の対応はちょっと納得できなかった。
浮標(ブイ)
葛河思潮社
吉祥寺シアター(東京都)
2011/02/01 (火) ~ 2011/02/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
本当に観てよかった
4時間と聞いて心配しつつ観に行ったのだが、とんでもなく良かった。作者・三好十郎の実生活を戯曲にしたような作品で、愛する妻の看病に専心する主人公の姿が、他の人々との関わりと事件の中で淡々と描かれるだけで、笑えるシーンもほとんどないのだが、10分の休憩2回を挟んでの3時間52分が全く長くない。ほとんどのシーンに出ている田中の力量と緊張感も見事だが、その看病を病身で受け止める藤谷の存在感も素晴らしく、他の役者陣も実に丁寧に役割を演じて、本当に観てよかったと思わせる芝居だった。
ソムリエ
靖二(せいじ)
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2011/01/28 (金) ~ 2011/02/01 (火)公演終了
満足度★★★
丁寧な「いい話」…だが
悪人は出て来ないけれど、それぞれの立場の違いで様々な事件が起こるという、それなりのウェルメイドないい話。ただ、何の伏線もない終盤の出来事は、やはり唐突に過ぎる。2時間は飽きることのない長さだが、細かいエピソードを切ったり、テンポにメリハリを付けたりすることで、もう少し短くした方がインパクトのある舞台になったような気がする。でも、気持ちの良い芝居だった。
世界の百貨店
サモ・アリナンズPRODUCE 劇団ワンダフルズ
駅前劇場(東京都)
2011/01/25 (火) ~ 2011/01/31 (月)公演終了
満足度★★★★
下らないことを本気でやるのが楽しい
サモ・アリナンズの小松和重が中心となり、荒川良良ほかのメンバーで、大の大人が本気で下らないことをやりきっているという公演だが、2年4か月ぶりの第4回公演。前回も参加した浅野和之も含め、力があるんだかないんだか分からない味のある役者達が、真面目に意味のない芝居に徹する(^_^;)。千秋楽ということもあって、いろいろと余分なファクターが入ったらしいが、とにかく、苦笑と爆笑の2時間だった。家納ジュンコの覚悟を決めたバカさ加減も見事。
雨と猫といくつかの嘘.
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2011/01/30 (日) ~ 2011/02/08 (火)公演終了
満足度★★★★★
見事だった
再演で、初演も観ているが、実に優れた作品である。還暦を迎える風太郎の誕生日の記憶。誕生日はなぜかいつも雨、という風太郎と、常に飼っていた猫の物語と、記憶の中で微妙に美化される過去が、時間軸を何度も前後し、事実か幻想か判別し難い感触の、優しい抽象劇として終局に向かっていく。切ない面が強いが、人間の優しさを信じる吉田小夏の脚本が見事で、俳優陣も極めてタイトな演技で丁寧に表現する。安心できる緊張感、といようなものを楽しめる舞台だった。
コイツらありき。
電動夏子安置システム
ギャラリーLE DECO(東京都)
2011/01/25 (火) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★★★
観に行く方も、コイツラありき
通常は主宰の竹田哲士の書く「ロジカル・コメディ」を上演する劇団だが、劇団員の力量が話題になることが少ない(という不満が竹田にある)らしく、劇団員を前面に押し出したオムニバス作品。竹田の作品のほか、殿様ランチの板垣雄亮、ホチキスの米山和仁が提供した作品や、渡辺美弥子がやっている「ある女」シリーズもあり、それぞれに楽しい。その場で抽選して役を決めて即興で演じる「夏の夜の夢」は期待したのだが、意外にハズレてしまったのが惜しい (^_^;)。
くちびるぱんつ
ぬいぐるみハンター
王子小劇場(東京都)
2011/01/27 (木) ~ 2011/01/31 (月)公演終了
満足度★★★★★
シンプルに面白い!
現代の人々、30XX年の人々、宇宙を旅する銀河鉄道999の人々とそれに乱入した人々、という3つの物語が、途中から混在し絡み合って、ワケが分からないけど、ひたすら楽しい物語を展開する。大型ダンスシーンなどもあり、キャットウォークも舞台として使って動きも激しく、極めて自由で大きいのに、主張はない、という、若さが良い意味で爆発した舞台で、楽しい時間を過ごさせてもらった。東大劇研時代の野田秀樹はこういう舞台をやっていたなぁと思い出してしまった。
『Prism』
*rism
ギャラリーLE DECO(東京都)
2011/01/25 (火) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★★★
カワイイだけじゃない
童話から題材を取りつつ、4人の作家がそれぞれの特徴を出しての短編を4本。全体を通して、女子の「カワイイ」を全面に出しつつ、カワイイだけじゃない実のある芝居をしっかりと作っていた。
最低の本音
月刊「根本宗子」
ギャラリーLE DECO(東京都)
2011/01/26 (水) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★
ちょっと残念
やろうとしていることへの感覚は分からないでもないが、芝居がかえって難しくなってしまっている気がする。テキストも充分に整理されていない感じがあって、ちょっと勿体ないなぁ、という感じか。もうちょっと観てみようとは思う。
明るい表通りで― On The Sunny Side Of The Street―
文月堂
シアタートラム(東京都)
2011/01/27 (木) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
結構ビター
この劇団には、丁寧に練られた物語で何となく「いい話」に終着するような印象を持っていたのだが、本作は結構ビターだ。さまざまな状況から苦しい立場に追い込まれながら明るさを失わない人々の群像劇だが、ある種のハッピーエンドかと思わせておいて、芝居の中で流されていた伏線がエンディングに炸裂する。そこが実にビター(^_^;)。役者陣は皆達者で、脚本の持つ細かさを巧く表現できている。と同時に、小さい劇場でやっている劇団にとっては、トラムの広さは難点になりかねないのだが、勢いのある演技で広さを巧く使っている。特に、鯉和鮎美の元気さは特筆もの。FUKAIPRODUCE羽衣で観たときにはパフォーマンス系だったので、ストレートプレイではどうか、というのが実は最大の興味だったのだけれども、予想をはるかに越えた安定した演技だった。というわけで、相当に満足した2時間弱だった。