おのれナポレオン
東京芸術劇場
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2013/04/06 (土) ~ 2013/05/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
三谷×野田=?
4/11,4/18に続いて、3回目の観劇。日を追うに連れて芝居がこなれてきたらしいことが分かる。三谷幸喜らしい、笑いを満載させつつも、巧みな伏線を見事に張り巡らし最後に収拾するストーリー展開が、まず良い。加えて、希代の名優・野田秀樹を、彼自身のキャラクターにかぶせた晩年のナポレオンとして起用したことで、物語が強烈な説得力を持った。三谷は基本的に役者に当て書きをするのだそうだが、野田の存在感をしっかり理解して物語を書いたと思う。他の役者陣は、各々が1本の芝居の主演を務められるだけの力量の持ち主で、特に、敵役の内野聖陽の存在が実に巧く、かつ重い。個々のセリフも練られていると思った。
オーラルメソッド3
シンクロ少女
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2013/05/01 (水) ~ 2013/05/06 (月)公演終了
満足度★★★★
興味深い作り
3日に2本、4日に1本と、全3本を観劇することができた。
「極私的エロス」は主宰・名嘉友美の結婚から離婚までを生々しくリーディングにした(かなりの部分が実話なんだろうなぁ…(-_-;)…)。敢えて上演する意図は最初と最後に語られる部分に込められているんだろうなぁとは推測できるのだが、どう受け止めたらいいのかは悩ましい。同時上演の「性的人間」は団鬼六の短編小説がベースだが、小説とは全く異なる味わいの芝居になっている。笑いながらも人間の業をつかんでいる気がする。味わい堂々の宮本奈津美が妙に色っぽい。
3日の2本目「ダージリン急行」は映画の舞台化らしいのだが、母を訪ねてインドを旅する3人兄弟を描いた不思議な作品。元の映画を知らないので、感触の差とかはよく分からない。
4日に見た残り1本「愛についてのシンクロ・レポート」は、「性についてのキンゼイ・レポート」のパロディまたはオマージュのようだが、「…エロス/性的…」に近い感触を持った。
芝居として演技が見事、とかいうのとは別に、非常の面白いアプローチだと思った。
おるがん選集 3
風琴工房
くらしのアトリエ ひらや(東京都)
2013/04/27 (土) ~ 2013/05/06 (月)公演終了
満足度★★★★★
トータルに面白く観られる作品
中野と高円寺の中間になる普通の民家(通常はギャラリーやイベントスペースらしい)を利用して、短編小説を2本、芝居として上演する。川上弘美「物語が、始まる」は、川上らしい幻想的なストーリーを、不思議な感触を醸し出す佐野功、独特の美意識を溢れさせている田中沙織、現実感をしっかり担う根津茂尚の3人が巧みに演じる。面白い!休憩の間に席を移動して、室内の別の部分を舞台として上演されるのが、鷺沢萌「痩せた背中」。これは再演だが、脚本も演出もほとんど変えていないらしいのに、雰囲気が相当違う。やはりスペースの質感とか、役者の個性とかで、芝居は全く変わっていくのだな、と、改めて思う。こちらは、初めて間近で観る李千鶴の雰囲気に好感。スペースも含めて、見応えある作品(群)だった。観られる人は観ておいた方が良い。
あなたに会えてよかった
東京ジャンケン
ザ・ポケット(東京都)
2013/05/02 (木) ~ 2013/05/06 (月)公演終了
満足度★★★★
よくできているなぁ(^_^)v
元クロカミショウネン18の野坂実と声優の豊口めぐみが立ち上げたユニットの旗揚げ公演。選んだ作品がエイクボーンの傑作サスペンス・コメディ(2006年にプレタポルテで観劇経験有)というあたりの着眼点は見事だが、タイミングとかが重要な作品だけにどうなのか、と思って観に行った。それがどうして、実に巧い造りになっていて、非常に楽しめる作品だった。元々のストーリーに少しだけ甘さがあるとは思っていたのだが、今回はそれがよかった、と思える造りになっていた。女優陣は舞台経験が少ないらしいが、そうとは全く見えなかった。むしろ、男優陣が少し「やりすぎ」な感じがあったのは、個性なのか演出なのか…。でも、全体には満足できる作品だった。
ただし、当日券のトップで入ったのだけれど、当日券の中で最も悪い席というのは、作品でなく制作の問題として気になってしまった。
筋肉少女【残すは7月in→dependent theatre 1st!】】
石原正一ショー
こまばアゴラ劇場(東京都)
2013/05/01 (水) ~ 2013/05/03 (金)公演終了
満足度★★★★
久々の石原正一は楽しい
見事だ。ピンポイントの話題に拘り、徹底的に笑わせようとする。その分、詳細をスッ飛ばす部分とディテイルを必要以上に丁寧に出す部分が混在するのだけれど、それこそが石原正一の真骨頂だと私は思ってる。彼らしさ満載の楽しい舞台だった。女優陣の選択もgood!東京ではなかなか観られない人達なので、その分も楽しい。メインの丹下真寿美は実はなかなかの美形と見た(^_^;)。中道裕子が渋い所をしっかりと押さえている。
湯煙の頃に君を想う 舞台写真UPしました!!!
ホチキス
テアトルBONBON(東京都)
2011/04/13 (水) ~ 2011/04/19 (火)公演終了
満足度★★★★
ホチキスらしいけど、少し違うテイスト
温泉宿を舞台に、ホチキスらしいドタバタ・シチュエーション・コメディが展開される。いろんな無理はあるけど、コメディだしぃ、そもそもホチキスだしぃ、という許容範囲で、終始楽しく観て大笑いし/苦笑いして楽しめる作品になっていた。今までだと、誰かをメインに置いた作品になってる感じがするのだけど、今回のメインは一応は渡邊安理なのだけれど、むしろ全員の協力を描いた群像劇として非常に良く練りこまれた脚本で、それぞれのキャラを役者がしっかり演じているという印象だった。初日からのダブルコールも納得の出来。
8人の女
トレモロ
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2011/04/07 (木) ~ 2011/04/10 (日)公演終了
満足度★★★
大掛かりの舞台をしっかりと
かなり大がかりな物語を、小劇場でしっかりと構成できていたのは見事だと思った。一部、演技のぎごちなさとか、上流の雰囲気とか、もう少し出ているとよかったと思う。演出の早坂彩は世田谷シルクで演出助手をしていたそうで、世田谷シルクっぽいパフォーマンスシーンも入れこんでいた。元々の大雪の朝、という設定を切ってしまったため、閉じ込められた8人、という緊張感が今一つだったように思うのは残念なところだが、全体には本作の持つミステリータッチは活かされていたと思う。エンディングの長セリフを担う加藤はなかなかの出来で大発見かも…。
毒見<全日程終了致しました。ありがとうございました!!〉
味わい堂々
OFF OFFシアター(東京都)
2011/04/05 (火) ~ 2011/04/10 (日)公演終了
満足度★★★★
確かに毒を見た
トモダチと恋愛の境目、とか、トモダチをやめる、とかの、「トモダチ」という関係性に依拠しようとする30代男女の感触を巧く伝えていると思う。それにしても、味わい堂々の舞台で濃厚なラブシーンを観られるとは思っていなかった(いや、チラシを観て思っていたけど…(^_^;)…)。しっかりと「毒」を見せてもらった。
パラリンピックレコード
北京蝶々
シアタートラム(東京都)
2011/04/07 (木) ~ 2011/04/10 (日)公演終了
満足度★★★★
演出が過剰かなぁ
とにかく複合的な物語で、基本は、マイノリティとは何か、を問いながらも、現在の石原都知事のマイノリティ排除を批判するスタンスを持っている作品ではあると思う。よく、都知事戦の前にこういった作品を上演させたなぁ>トラム。前回の黒澤世莉に続いて、今回も演出を中屋敷法仁に任せているのだが、それで面白くなった部分も確かにあるとは思うけれども、全体には中屋敷スタイルが過剰で、ちょっと辟易する部分が多いのは、脚本が良くできているだけに勿体ない。非常に多くの役者が登場するが、それぞれの役割はしっかりと果たしている。岡安の巨乳キャラとか帯金のメガネ姉萌えキャラとか、この辺は相当楽しいが、堀越はどこに出ても堀越の演技なので、もうちょっとかなぁ、という気はした。役者の山本卓卓をしっかり観たのは初めてだと思うのだけど、巧い人だとは思った。安藤理樹はelePHANTMoonとの落差に柔軟性を感じた。全体には非常に楽しく見せてもらった。
15 Minutes Made TOUR
Mrs.fictions
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2011/04/07 (木) ~ 2011/04/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
今までで最も面白かった
6劇団が15分ずつのオムニバス公演だが、今回は初めて関西の劇団が参加し、大阪ツアーもやるのだという。
大阪の劇団ミジンコターボはベタな高校生コメディだが、途中で「長い」と言われて、そこまでのシーンを一気にダンスで見せてしまうあたりとか、全体のスピード感とか、若さを感じさせてくれる。競泳水着は劇団員による2人芝居だが、少し笑えて少し泣けての抒情的な展開は、期待通りの競泳スタイルだと思う。続くロロは、夏の熱さの中で展開される、不条理だけど感触のある舞台を作ってて、その感触が心地好い。
休憩後に登場した大阪の劇団ガバメンツは、ファーブルの昆虫記をベースに、かなりキチンと笑えるストレート・コメディ。続く、FUKAI PRODUCE 羽衣「浴槽船」は、歌とパフォーマンスという点で他の劇団とテイストが違うので少し得してる感はあるように思うが、お風呂の至福への讃歌は実に見事(^_^)v。ステキだった。最後の Mrs. fictionsは2人芝居。出産に関わる2人の会話は、思いがけない方向に進んで、巧みな物語が展開される。発想の巧みさで楽しませてくれる。
東京の劇団も厳選されている感じがして、全体として非常に面白いものばかり見せてもらった気がする。
東京の空に
オーストラ・マコンドー
王子小劇場(東京都)
2011/04/02 (土) ~ 2011/04/10 (日)公演終了
満足度★★★
感触の芝居
ワンルームマンションの隣人である3人の若い女性(岡田あがさ・和希沙也・梅舟惟永)を巡る物語から、東京の孤独、みたいなのを描きたいように思えるが、ロジックというより感触の芝居になるのはマコンドーの特徴かと思う。悪くはないが、今回は何か足りない感じがしてしまう。力量ある役者を集めているのだから、もっと巧く使えるはず、という感じなのかもしれない。
時間創造部
ワーサルシアター
ワーサルシアター(東京都)
2011/03/09 (水) ~ 2011/04/10 (日)公演終了
満足度★★★
ハイブリッドっていうのは…
矢部大の書籍をベースにしたハイブリッド演劇、というので、ちょっとオッカナビックリな感じで観に行ったのだけれど、割と普通の演劇として楽しめるものであった。ちょっと普通の演劇ファンが敬遠してしまわないかな、と心配。 個々の役者の個性を際立たせているあたりは巧い。
国民の映画
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2011/03/07 (月) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
堪能
2幕3時間の大作だが、三谷幸喜らしい実に計算された見事な作品が展開される。三谷の得意なリアルタイムの芝居の中で、それぞれの登場人物のキャラクターがしっかり設定され、芸術を愛しながらも、ナチスの不合理に協力していってしまう人々の心の動きが丁寧に描かれる。今回の役者陣の中では相対的に若手である吉田羊が、いかにも場違いな駆け出し女優をしっかり演じる。そして、風間杜夫の重厚でしっかりした演技と、その風間と対決する新妻の凛々しさも際立つ。また、老優という設定の小林勝也の演じるシーンも見事である。また、映画シーンほかでピアノや効果音を出すピアニスト(荻野清子)は、セリフは全くないものの重要な存在である。しかし、何と言っても小林隆があまりにも素晴らし過ぎる。いかにも重い内容の作品だが、堪能、という言葉がぴったりくる舞台だった。
トップ・ガールズ
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2011/04/01 (金) ~ 2011/04/24 (日)公演終了
満足度★★★★
女優陣の見事さを楽しめる
オープニング、強烈な個性の女性陣の会話が爆笑というより苦笑を起こすのだが、現実の話題に戻ると、そこでは厳しい話題が様々に展開される。いろいろなタイプの、ある意味典型的な女性像を並べ続けることで、基本的にはチャーチルが戯曲を書いた時期の女性が置かれた状況を描いているように見えるのだが、そこにはある種の普遍性があり、エンディングはちょっと恐ろしくもある終わり方となる。終始、キリリとした女性を演じる寺島や、貫禄の麻実の存在感は明らかで、この2人が対決するシーンの緊張感はなかなかのものである。他の女優陣ももちろん見事なのであるが、軽やかさをまとった小泉、そして、粗野な男勝りのフリートから16歳の少女に転換する渡辺の怪演ぶりはスゴイ。見て損はない、ある意味で壮絶な舞台である。
とても個人的な物語【公演終了いたしました!ご感想お待ちしております!】
Minami Produce
新宿眼科画廊(東京都)
2011/03/26 (土) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★
感覚の芝居…、かな
現実と妄想と、そして実は過去が混じった一種幻想的な舞台。ロジックの積み上げと言うより感覚で見せる。印象は悪くないけど、主人公の小説家の、書くこと/書いたこと/書けないことへの根拠はもう少し見せてもいいのではないかとは思った。
月にぬれた手
舞台芸術学院
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2011/03/25 (金) ~ 2011/03/31 (木)公演終了
満足度★★★
落ち着いたファンタジー
舞台芸術学院60周年を記念して、卒業生による公演を行なうことになったという。渡辺えり(25期の)脚本、鵜山仁(27期)の演出で、高村光太郎を描く。さまざまな年代の役者陣が折りなすファンタジーは渡辺えりの幻想性が良い形で出てきていると思った。発見があるわけではないが、心が落ち着く楽しい舞台だった。
無い光/変な穴(御来場ありがとうございました・御感想お待ちしています)
MU
OFF OFFシアター(東京都)
2011/03/24 (木) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★
『変な穴(男)』
昨日観た作品を男女を入れ替えての上演で、MUではよくある「反転」バージョン。元々は、こちらの男バージョンがオリジナルだった。女編に比べると、残念ながら主人公の狂気が今一つ弱く、ドレーに対する乱暴な言葉遣いが似合わないのが惜しい。登場人物によっては男編の方が説得力があるので一長一短はあるけど、個人的には女編が好きかな、っていうところか。
無い光/変な穴(御来場ありがとうございました・御感想お待ちしています)
MU
OFF OFFシアター(東京都)
2011/03/24 (木) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★★
『変な穴(女)』
まぁちょっとありえない設定なのだけれど、「穴」という存在に強い説得力があり、それを埋めたいために一種の狂気に走る男(太田守信)が切実な存在として浮かび上がる。一方で、それを虚無的に共感する外山弥生の存在が見事で、この2人の狂気に、そこまではいけない他の人々が翻弄される展開が、結構切なく迫って来る。その意味で、キャラを書き分けた脚本と、それをしっかりと演じた役者陣は巧いが、なかでも狂気を背負った太田と外山が秀逸である。
無い光/変な穴(御来場ありがとうございました・御感想お待ちしています)
MU
OFF OFFシアター(東京都)
2011/03/24 (木) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★
『無い光』
全体に、20分を65分に延ばしただけみたいな印象が拭えないのが惜しい。短編では活きていた題材が、65分ではあまり活きていない。やはり、短編とは違うエピソードがもう一つ必要だったのではないだろうか。それと、かなり笑えるはずのシーンがいくつかあるのに、笑ってはいけないような感触があり、その辺の焦点の当て方も工夫の余地があるように思う。面白いテーマの作品なのだから。
裏屋根裏
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2011/03/20 (日) ~ 2011/03/31 (木)公演終了
満足度★★★
「裏」の意味が…
「屋根裏」と呼ばれる小さな部屋のようなものが作られ、様々な人々がその中で行なう様々な行為が、短い場面の連鎖で展開される。全体を通して、「屋根裏」を作ったのは誰か、という謎も関わっており、徐々に様々な感触があぶりだされる感じが面白い。ただ、基本的には言葉が大切な作品だと思うので、あえて外国人を起用して字幕でセリフを見せる、ということの意味が重要には思えなかった。