モジョ ミキボー
イマシバシノアヤウサ
シアタートラム(東京都)
2019/12/14 (土) ~ 2019/12/21 (土)公演終了
満足度★★★★
ベテラン俳優一歩手前ぐらいの二人の俳優が、少年になって広い舞台を動き回る。それぞれ何役も兼ねているが、役を切り替えるときの強引さもおもしろい。
餌
TinT!
新宿スターフィールド(東京都)
2019/12/11 (水) ~ 2019/12/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
多重人格がモチーフになっている作品は過去にも見たことがあってそれはミステリー仕立てであったが、これはもっとヒューマンな内容。
人の生き方のテーマと多重人格ひいては虐待の問題をこのように絡めてくるとは、よくできた台本で、ツボを得ており、観劇の喜びを素直に味わわせてくれる。次に期待できる。
メモリアル
文学座
文学座アトリエ(東京都)
2019/12/03 (火) ~ 2019/12/15 (日)公演終了
満足度★★★★
外国の作家でこういう実験的な作品はいくつか観たことがあるが、これは日本人の作家。だから、某宗教団体のブラックな小ネタなど日本の事情が揶揄される。
こういう演劇も見慣れてくるとそれなりに楽しめる。筋道の通るストーリー展開は感じられないが、個々のセリフは妙に具体的で、それを聞いた瞬間だけ成立する意味のイメージや連想する日常の出来事の記憶が浮かんでは消え、うつろな夢を見ているような気分になる。
8月のオーセージ
劇団昴
Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)
2019/12/05 (木) ~ 2019/12/18 (水)公演終了
満足度★★★★★
芝居としてはよくある家族の葛藤と秘密の物語だが、その家族の女性たちは極端にシニカルで盛大にキれていてとにかくうるさい。パンフレットに書いてあるとおりブラックな作品で、シリアスだからかえって可笑しくて笑いが生まれる。
幅のある劇場空間の使い方が興味深い。俳優たちもうまいという印象。最初のほうで家族の名前だけがバンバン出てきて誰のことかわからないので、事前にパンフレットの相関図を見て家族の名前を頭に入れておいたほうがとっつきやすいか。
フィクション
JACROW
駅前劇場(東京都)
2019/12/04 (水) ~ 2019/12/08 (日)公演終了
満足度★★★★
東京五輪に絡める必要はなく、典型的なデフレ経済下(リーマンショック後長らく、とくに地方はこんな感じだった)で人々の心が萎縮していることが背景にある3つの物語。
それぞれのストーリーは深刻になりすぎず、掛け合いで笑いもとる。熟キャバの場所もリアル。
あの出来事
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/11/13 (水) ~ 2019/11/26 (火)公演終了
満足度★★★★
この作品の着想の元となったという事件のことについて、知っておいたほうが理解しやすいかもしれない。でもその事件を具体的に用いた内容ではなく、ずいぶん変形され抽象化されている。
主人公の内面の葛藤や分裂が示された対話による多数のエピソードが、一見前後のつながりなく並べられていて、難解な印象はある。最初からそういうものと思って観れば、そういう演劇を観慣れている人なら、合唱団の使い方が古典ギリシア演劇を連想させる点や、観る者の想像力に依存する非具象的な演出などを楽しめると思う。
インコグニート
劇団俳優座
俳優座スタジオ(東京都)
2019/11/12 (火) ~ 2019/11/24 (日)公演終了
ドイツの犬
演劇企画体ツツガムシ
シアター風姿花伝(東京都)
2019/10/31 (木) ~ 2019/11/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
あちら側とこちら側、という単純な構図でなく、複雑で深みのあるストーリーで、普遍性のある人間の物語と感じさせる。アーチ型の回廊のような舞台セットも印象深い。
当日パンフレットにあった「現政権」云々は、作品のもつ普遍性を弱めてしまい、かえって作品の鑑賞を妨げてしまう気がする。
燃えつきる荒野
ピープルシアター
シアターX(東京都)
2019/10/30 (水) ~ 2019/11/04 (月)公演終了
満足度★★★★
日本近代史の中で最もきな臭い時期、それも満州を舞台にした三部作の完結編だが、今回、後半ほど展開をはしょった感があった。この時代の歴史に詳しい人、好きな人でないとついていきにくいと思う。3年かけて三部作として上演してきたんだし、どうせなら、今回、休憩を2回ぐらい入れて3時間半ぐらい時間をかけてじっくり最後の物語を進めて欲しかった。ただ、非常に複雑で硬派な内容だけに、そんなことをしていたら興業として成り立たないのだろう。
荒涼とした草原を意識したような舞台セットが印象深い。俳優たちの演技も手堅い。
コンドーム0.01
serial number(風琴工房改め)
ザ・スズナリ(東京都)
2019/10/25 (金) ~ 2019/10/31 (木)公演終了
満足度★★★★
内容はおもしろい。が、あんなに皆がやる気満々で前向きな会社は見たことがない。売上落ちてきているのに。異様というか非現実的というか、そこが気になってしまった。芝居でそんなことを気にしても意味ないのだが・・・。
調和と服毒
Ammo
上野ストアハウス(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/22 (火)公演終了
満足度★★★★
自分には調和と服毒というタイトルの意味が全然わからなかった。「パラゴーネ」では当たり前すぎるからか?「美とは何か」の議論を提示するのはとてもチャレンジングだが、さすがに難しい課題だったようだ。でも、「カーテンを閉じたまま」の時にも感じたが、なかなか独創的な舞台設定において観る者をどんどん引き込んでいく物語を作り出す作者の力量には舌を巻く。俳優たちの熱演も小気味よく、楽しめた。
男たちの中で
座・高円寺
座・高円寺1(東京都)
2019/10/18 (金) ~ 2019/10/27 (日)公演終了
満足度★★★
翻訳劇だからなのか、原作からカットがあるからなのか、わからないが、どうにもわかりにくく飛躍してしまう印象があり、登場人物たちのキャラの変化もしっくりこず、ちょっと混乱させられた。3時間かかる台本だが、散漫で今ひとつ盛り上がらない。せっかく渋い俳優たちが揃っているのに、もったいない気がする。舞台も広すぎたと思う。
「隣の家-THE NEIGHBOURS」 「屠殺人 ブッチャー」
名取事務所
「劇」小劇場(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/29 (火)公演終了
満足度★★★★
「隣の家-THE NEIGHBOURS」ストーリーの大半が舞台の半分で展開するのだが、その演出意図は何なのだろうか?原作の指示?スズキさんが劇に出てくる意味は?
レネゲイズ
Nana Produce
赤坂RED/THEATER(東京都)
2019/10/11 (金) ~ 2019/10/15 (火)公演終了
満足度★★★
新興宗教が絡むドラマ、特に新興宗教の側から描くことはなかなか難しいのかもしれない。今までにいくつか観たことがあるが、あまりリアリティがなかったり、ストーリーが無理筋であったりで、中途半端になりやすいような気が。
新興宗教団体の実態についての情報や印象が鑑賞の邪魔をしてしまうこともあるし、演劇的なヒューマニズムと宗教の神性とが相容れないからかもしれないし・・・。
終夜
風姿花伝プロデュース
シアター風姿花伝(東京都)
2019/09/29 (日) ~ 2019/10/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
関係崩壊寸前の2組の夫婦の会話(喧嘩)は、観ているこっちもイライラさせられるような罵倒・なじり合い。それだけならまだいいが、言動が不合理で矛盾し、ときに支離滅裂、理解しようと聴いていたら、こっちまで頭がおかしくなりそうになる。頑なで残酷で狂った心をこれでもかこれでもかと見せつけられる。
雰囲気的に「夜への長い旅路」を思わせるが、それよりもっとイカれている。4人全員の言動にほとんど共感できないが、とくに「今、気づいた」には、お前はバカかと突っ込みたくなるし、最後のシーンは、もう開いた口がふさがらなくなる。
役柄もあって、栗田さんの演技が出色だが、どの俳優も膨大な場面とセリフをほとんど噛むことなくテンポよくこなし、さすがプロと思わせる。舞台を囲む堤防のようなセットが興味深く、演出・演技に効果的に使われていた。優れた演技と演出は観る者を劇中の世界に引き込むが、客席と舞台を隔てるその堤防のおかげで、自分は登場人物たちの暗い狂った世界に完全に引きずり込まれずにすみ正気を保てたように思える。
どん底
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/10/03 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
全体を劇中劇に見立てたような演出が興味深い。「どん底」はちょっと分裂した、セリフの掛け合いが雑然と並べられたところのある群像劇だと個人的に勝手に思っているのだが、こういう演出だとそれが実に刺激的で面白く見えてくる。
国粋主義者のための戦争寓話
ハツビロコウ
小劇場 楽園(東京都)
2019/09/24 (火) ~ 2019/09/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
不気味で息詰まるような展開に観ているこちらまで極限状態にさせられる。ずっと以前に別のプロダクションでこの作品を観たが、今回のほうが断然すばらしかった。本当に洞窟の中にいるような狭い劇場空間や薄暗い照明が効果的、死体がずっと置きっ放しなのもちょっと大胆な演出と感じた。
ばしょ
Pityman
新宿眼科画廊(東京都)
2019/09/20 (金) ~ 2019/09/24 (火)公演終了
満足度★★★★★
役柄と同じキャラを持った俳優を選んでいるのか、俳優たちの演技力が高いのか、とにかく登場人物たちが今そこに実在しているかのようにとてもリアルに感じられた。小さい劇場空間であることもプラスになっている。台本もリアルで良い。
ガリレオの生涯
こゆび侍
新宿眼科画廊(東京都)
2019/09/07 (土) ~ 2019/09/16 (月)公演終了
スリーウインターズ
文学座
文学座アトリエ(東京都)
2019/09/03 (火) ~ 2019/09/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
ユーゴ紛争が絡んだ演劇はこれまでいくつか観たことがあるが、クロアチアの歴史と一つの家族の連綿とした物語を重ねたこの作品がもっとも濃密だった。
こんな作品を構想できる作家のすごさとともに、必ずしも一貫した展開のあるとっつきやすいストーリーではない、少なくとも日本人にとっては縁遠い内容の長大なこの作品を取り上げて観客を魅了するプロダクションに仕上げるこの劇団の実力に感嘆した。今の日本ではこういう作品が観られるんだな、こういう作品を上演してくれる人たちがいるんだな、という感慨を覚えずにはいられない。