グッド・モーニング
ロロ
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2018/08/02 (木) ~ 2018/08/13 (月)公演終了
いつ高シリーズ6作目は二大フリーキー女子の邂逅。最も早い朝の時間の、まだ誰もいない駐輪場。その出会いがあまりに素敵だったので、黄色い傘の裏でキスするのかと思った。
日本文学盛衰史
青年団
吉祥寺シアター(東京都)
2018/06/07 (木) ~ 2018/07/09 (月)公演終了
青年団は現代口語演劇の先鋭性を受け入れさせるために大衆性(平田オリザは小津安二郎やクレイジーキャッツの影響を公言している)を必要とした、と常々考えていたのだけど、いよいよ大衆性に振り切った作品を作ったのだなという印象がある。大衆演劇としての安心感と気恥ずかしさを感じてしまったり、ギャクに絶妙な古さを覚えてしまったり、いろいろと悩ましい。島田さん、兵頭さん、山内さんなどなど、演者の個の強さを感じる上演でもあった。
ガラスの動物園
ゲッコーパレード
旧加藤家住宅(埼玉県)
2018/06/08 (金) ~ 2018/06/18 (月)公演終了
うん、さようなら
五反田団
アトリエヘリコプター(東京都)
2018/05/26 (土) ~ 2018/06/04 (月)公演終了
山山
地点
KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)
2018/06/06 (水) ~ 2018/06/16 (土)公演終了
あか
ゆうめい
新宿眼科画廊(東京都)
2018/06/08 (金) ~ 2018/06/12 (火)公演終了
ツヤマジケン
日本のラジオ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/06/05 (火) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
合宿所の裏倉庫という設定の舞台には木の台とライトが積まれ、殺風景な様子。タイトなラインの制服の首にはリボンがかけられ、青赤白と色の違いで学年の違いがわかるようになっている。ほとんど無個性に見える女学生たちの個性が明らかになる展開において、重要な役割を果たすのは学年の違いである。「違う」ことの距離感と「同じ」ことの親近感はその前提への思い込み故に崩れてく。これは年齢の物語であり、先生の年齢が43歳と明示されるのもそもと無関係ではない。パンフレットには制服を着た役者たちの写真集がついており、エロティックな誘惑の様相を見せる。その危うさも含めて津山事件と衝突させようとしている。
市ヶ尾の坂
森崎事務所M&Oplays
本多劇場(東京都)
2018/05/17 (木) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
冒頭、麻生久美子が語る三連風車のイメージが三兄弟の関係性を予告し、最後のワンシーンが隠ぺいしていた主題を開示する。日常会話、動作の自然さの中に、異形の詩的な言葉が急襲する。松葉杖のエピソード、あざみ野の「ミニーズハウス」、丸い顔の安藤さん(=ぶどう)。義理の息子と母との関係がトラブルの中心として言葉上は進行していくものの、まがまがしいものを抱えているものは明らかに三兄弟の方だ。だからドナルドのバッヂのウソに対する三男の怒りがある。二つの疑似家族の軋みが、懐かしくも痛々しい心のうちを静かに激烈に刺激する。俗と聖、騒と静、強さと弱さの振れ幅を巧みに配置してく岩松戯曲がとにかくすごい。演技は全員堂々としたものだが、浮ついた長男を演じる大森南朋がとてもよかった。
母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ
MICHInoX(旧・劇団 短距離男道ミサイル)
北千住BUoY(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
鑑賞日2018/04/22 (日)
公演前から、役者たちは舞台にたち前口上を述べている。「写真撮影、SNSへの投稿どうぞご自由に!私、歩くフリー素材でございます」などとユーモラスに語り、藤原竜也の物まねで観劇中の諸注意を投げかけて観客を笑わせているが、その姿は『人間失格』と彼ら自身の演劇活動が重なっていくなかで、あの猿の笑顔を浮かべる道化の姿の写し絵であることが理解されてくる。「私」を出すこと以外にできることはない、という意志は強固なものなのだろうか。潔い悲しみが漲っている。
革命日記【青年団・こまばアゴラ演劇学校“無隣館”】
こまばアゴラ演劇学校“無隣館”
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/04/14 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
観客を完璧に無視しているという点において、ひとつの極北。青年団出身の劇団は数多くあれ、まるで観客たる「私」がここに存在していないかのような感覚を味わえるのは平田オリザ演出のみではないか。叫びが舞台にまったく向かってこないあの感じ。演劇がはじまるときにある種の恥ずかしさを僕は普段感じるタチなのだが、青年団にはその恥ずかしさがないのは、この「無視」が関わっているように思う。
ツアー
ままごと
STスポット(神奈川県)
2018/04/21 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
偽中国語の非常に有効な使い方!端田新菜の「ご賞味!」に泣かされる。「人生は旅」という紋切型な慣用句を紋切型に終わらせないための試み。クラウトロック風のミニマルなBGMが心地よい。
GHOSTs
青年団国際演劇交流プロジェクト
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/05/05 (土) ~ 2018/05/09 (水)公演終了
鑑賞日2018/05/06 (日)
速度が少しずつ遅くなる。冒頭、役者6人が素早く舞台に登場するシーンにはじまり、スピード感とともにつくられていくリズムはすこしずつテンポを
下げ、お茶を飲む喪の場面で遅さは頂点に達する。その落差はバイクの速度と亀の速度との差異ともパラレルだ。6人兄弟(妹)はひとつの悲劇に結び付けられているようでいて、その実、多層化された複雑な痛みを共有している。普遍的な痛みを主題にしながら、主題を鑑賞者に単純化させない工夫が為されている。
翻訳語の違和感が気になったかもしれない。否定的な感想ではなく、そこから考えることがあるという意味で「気になった」。
LOVE BATTLE FIELD
情熱のフラミンゴ
アトリエヘリコプター(東京都)
2018/04/05 (木) ~ 2018/04/08 (日)公演終了
桶川のパン屋一家をめぐる愛の戦争。法律と感情の相剋がよろめく身体と共に展開され、身障者のレイプ、過保護とネグレクト、冷凍冬眠、サイバースペースとあらゆる主題が戦場に放り込まれる。ノアの箱船を想起させるラストまで引っ張って行くスケールもいい。様々な方向性を潜在的に持つ作品なので、劇団がこの後どうなっていくのか気になります。
もうはなしたくない
範宙遊泳
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2018/03/03 (土) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
今まで観たきた範宙遊泳のなかでも屈指の重さ。3人の女たちの性に対するオブセッションの軋みが頭にこびりつく。もう衣装からして重い。格別変な格好をしているわけでもないのになにかを含んでいると思わずにはいられないファッション(メンヘラ、ということなんだけどただメンヘラってわけでもない)。笑えるセリフもあるにはあるのだけど、笑いより痛みが残ってしまう。油井文寧の左まぶたぴくぴくが効いてる。
物の所有を学ぶ庭
The end of company ジエン社
北千住BUoY(東京都)
2018/02/28 (水) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
鑑賞日2018/03/10 (土)
全員がある種の「弱者」である中で、「所有」が語られることの痛ましさが胸を衝く。異なる時間軸の二つの会話が、同じ単語の響きをたよりに同時に発話されることのリズム感の中で、所有と喪失のあわいは曖昧に溶ける。そのうら寂しさをBUoYの会場全体を駆使したセットが表現する。中央に荒んだ庭、左はもっと荒んだドアのはずれてものが散乱した部屋、右側には柱がいくつもたてられ、客席の椅子にはツタが絡まる。本当は何も所有したことはないかもしれないのに、なんで喪失感だけがくっきり残るのだろう。そんなどうしようもない感情のツボをおされて泣きそうになっていた。
ロボット演劇「働く私」/アンドロイド演劇「さようなら」
青年団
浜離宮朝日ホール(東京都)
2018/03/09 (金) ~ 2018/03/10 (土)公演終了
鑑賞日2018/03/10 (土)
会場に段差があまりなくて後方だと演技が確認できないという劇場構造上の難点はあったものの、作品は十分に楽しめた。ロボットのうなずきとまばたきのタイミングなどが相当に細かく設定されており、その辺りが作品の肝になるのだと思う。人間の身体ノイズがもたらすリアルさを機械が表現すること。人間の身体というより日本人の身体といった方が適切かもしれないけど。ロボットだけの会話はスムーズすぎてちょっと違和感を覚える。
忘れる日本人
地点
KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)
2017/04/13 (木) ~ 2017/04/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
とにかく役者の力がすごい。すり足で、かかととつま先を交互に動かしながら移動し続ける俳優達は存在自体に鋭い批評力が宿っていた。四方に張られたひも、中心に居座る船。二つの境界が忘却、ナショナリズム、領海、死とあらゆるものへ想像力を導いていく。観客が作る出していく演劇とはこういうものかと少し思った。
未亡人の一年
シンクロ少女
ザ・スズナリ(東京都)
2017/03/08 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
『ララランド』に「見習え!」と思わず言いたくなる戯曲の丁寧さ。二つの時間軸に対して三つの部屋を用意する演出も見事だし、クイーンなど曲の使い方もよい。感情が年月を経てシンクロする様が感動的だった。
少年期の脳みそ
玉田企画
アトリエ春風舎(東京都)
2017/03/10 (金) ~ 2017/03/20 (月)公演終了
高校の卓球部の夏合宿の一夜。男子も女子も、顧問も毎年来てるOBもその彼女も、全員どこか間が抜けててダサくて、手本となるような問題のない人間はひとりもいない。そのダメさ加減をどこか優しい視点で見つつ、高いレベルで劇を構成している。特に先輩に思いを寄せる童貞一年生の強がりは最高だった。
ヨブ呼んでるよ
鳥公園
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/03/16 (木) ~ 2017/03/22 (水)公演終了
精神的弱者と無意識的迫害者の関係性がエグくてかなりしんどかったなぁ。藁を敷いたステージに脚が足りず斜めになったテーブル。聖書的な場所で引きこもりや貧困などの現代的テーマが展開される。自分が責められてる時に、神のような存在を想定して引き上げてもらおうとする。人間は自然にそのような正当化を行ってしまう。そのどうしようもなさを容赦なく見せつける感じが痛々しかった。