村木みたかの観てきた!クチコミ一覧

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第20回公演 『君♡ふりーく』 第21回公演 『ジェニュイン・ケア』

第20回公演 『君♡ふりーく』 第21回公演 『ジェニュイン・ケア』

劇団天然ポリエステル

小劇場 楽園(東京都)

2017/07/26 (水) ~ 2017/07/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

深い闇の世界をちょっと覗いてみるもりが、完全にズブズブにハマってしまった件。

今回も天ポリさんは、豪華二本立て公演!って、欲張ってとか頑張ってとかそういうレベルはもうとっくに卒業してしまって、もう毎回2本やるのが当たり前になっているところが驚愕レベルなんですが、今回は第20回公演、初日のファーストステージの「君♡ふりーく」を見てきましたよ!

ネットの世界の中には、ほらよくいるでしょ、それなりの年齢になってるけど、定職にも就かずに家から全然出ないで生活してる人って。ご職業は?自宅警備員ですっ!とか言ったりたりしてますが、今回はそんな引きコモラーのお兄さんのお話なのです。
んでもって、この彼が売れない地下アイドルの強烈なファンな訳ですよ。もう、画に描いたようなわかりやすい引きこもりヲタクさんなわけですね!
ただよくある話とちょっと違うのは、依存している先は両親ではなくて、真面目でお兄さん思いの良く出来た弟君だという事。両親ももちろん出てくるんですけど、あれ?なんか変だぞ?
特にお父さんは彼のライフスタイルをむしろ突き通せ!と応援してるぐらいの勢いだったりで無責任を通り越して、むしろ潔いぐらいだったり。

お兄さん思いの熱心な弟君はお兄さんを外の世界でまともに暮らしていけるようにと、精神科の先生のところに相談しに行くのですが、そこで聞かされた話は結構シリアスで、このままではヤバい!治療できる限界を超えてしまってるかもしれない際どいところ。
そんな弟君の心配をよそに、お兄ちゃんはなんだかわけわからない理由で、ついうっかり外に出てしまう事になってしまったので、まあ結果オーライ。
そして外にはお兄さんの仲間がなんと4人も居たのです。あれ?そのうち一人はなんか違和感ありますけど。

売れなくても地下アイドルに固執していないと、人生やっていけないわよ!って完全に追い詰められている感じの年齢詐称の地下アイドルさんは、5人しかいないファンの為、というか自分のためだけに一生懸命頑張ってはいるんだけど、寄生先のお姉さんの家でギクシャクしていて、ついにお姉さんのほうがキレて家出してしまう始末。
漫画のようなよくあるシチュエーションの、端から無責任に見ていると他人事ならニヤニヤしてしまうような状況で、これからどうなる?ってところで、観客である私たちは、あらかじめ用意されたすごく深い闇の世界に有無を言わさず一気に引きずり込まれてしまって、見事演出の魔の手にハマってしまうわけです。今回は独特の空間がウリの下北沢の楽園での公演だったのですが、エリアの使い方もお見事!

いつもはどちらかというとイロモノキャラを演じている客演の吉原さんが、今回は常に目の下にクマを作っていて微妙にイライラしてるけどそれを一生懸命抑えているような精神治療科の六平先生を演じているんですが、その微妙な雰囲気がとても素晴らしい。そしてその先生の助手室井が軽薄なイカれたキャラなのかと思いきや、すごいトラウマを抱えた、共に深い闇の世界を目を逸らさず見てくるしかなかった世界の側の人を大変素晴らしく演じているのがとても印象的です。

あなたは病気なんです!って自覚がない人に言っても、何言ってんだい?なんて言葉が返ってきちゃったりしますけど、重症を通り越してしまった4人プラス、お兄さんの5人の地下アイドル親衛隊は世間一般では、そりゃ犯罪ですっていう領域を踏み越え始めてしまったり。
お兄さんは戸惑いながらもやっと認めてくれて受け入れてくれた仲間を失いたくないという思いから、どんどんその行為に身を染めて行っちゃうのですが、皆にはそれぞれそんな所にまでなってしまった切実な理由があって、それが明かされていくと、彼らをケシカランとは思えなくなってしまう絶妙なラインで話が進んで行きます。
普通、こいつ完全にアウトじゃん!と思われてしまうヤバいストーカー君が、実は彼なりの踏みとどまるラインを実は持っていたりするんだけど、一見一番しっかりしたリーダーシップを取っている親衛隊のリーダー格の彼が、もう修復不能レベルの精神崩壊していたりと、観客の判断力と価値観を巧みに切り崩しをかけてきて、誘拐拉致監禁と最強犯罪級の状況まで行ってしまったところで、思わぬ刺客が現れます。もうね、ラストは見てください!としか言えない感じなんですが、しっかり通ったスジに強力な説得力と、ダメ押しで凄い破壊力の無理押しと、畳み掛けるようなラストの展開で、ここら辺が天ポリさんの絶妙なバランスでなんだか納得させられてしまって、見終わった後今回もマンマとやられたなあと感心してしまう訳です。

個人的には、売れない地下アイドルさんは、鈴木みその漫画「限界集落温泉」に出てくる伝説のネットアイドルぐらいのダメダメレベルで演じてくれればもっと破壊力があったかもしれません(笑)
地下アイドルさん本人がそこまで逝っちゃってれば、親衛隊の異常度も、もっと引き出せたかもですねー

上演時間は1時間40分ほどですが、毎度高密度ハイスピードでとても満足な上演でした。次回公演も下北沢だそうです。楽しみですね!

第19回公演『隣人』

第19回公演『隣人』

劇団天然ポリエステル

OFF OFFシアター(東京都)

2017/03/08 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/03/12 (日) 13:00

天然ポリエステル公演【隣人】

さてさて、近頃天ポリさんの公演二回に一回は公演しているぐらい定着している、この寂し部シリーズですが、今回は堂々下北沢のOFF-OFFシアターにて上演!って、天ポリさんが、じゃなくて劇団寂し部が!ですよ。
いつもはなんとも形容しがたい恐ろしく散らかったワタシの部屋のような、劇団事務所でのお話というパターンでしたが、劇団なんだから本番公演をやっている姿だって見せつけてやりたい!と思ったかどうだか分かりませんけど、今回は公演のために劇場入りした彼らの、幕が開けるまでの超高密度なギリギリを攻めてる綱渡り的な時間の中を、ほぼリアルタイムなんじゃないかという100分弱の時間で一気に見せつけてくれますよ。

寂し部が公演を打つとなったら、そりゃもう一筋縄で行くわけがありません。とんでもないトラブルや大問題が何重にもこれでもかと束になって襲いかかってまいります。見ているお客さんは、やっぱりそれじゃなくっちゃ寂し部じゃないわよさ。と思わず無邪気に喜んでしまうような展開で始まりますが、見ていくうちに、劇団制作の重鎮オネエこと岡村ちゃんの過去が痛ましく、でもストレートにドスドス刺さってくるように私たちに明らかにされてきます。

最初、このキャラクターの人って、男性が演じてるけど、女性役なんだよね、こういう女の人居る居る〜♡なんて思っている人もいたかもなのですが、実は最初っから正真正銘なオネエで、舞台上でもすんごいメイクしてるけど男性のキャラなんです。その葛藤や過程を赤裸々に結構残酷にさらけ出されていってしまうというのが今回のポイントです。

そして、いろいろなトラブルやパニックがおきながらも、なんとか公演開始までこぎつけるという、内輪の楽屋ネタ的進行、カッコ良く言うとアメリカの夜的な進行は、狙ってわざとやっているので自己満足みたいなダラけてたり内輪で受けてるだけというのとは別次元として仕上がっています。お世辞にも広いとは言えないOFF-OFFシアターの舞台と、楽屋の中まで見せて使ってしまうという逆転の発想に一本取られました。彼らはこっち側にまだお客が入っていないカラの劇場でホントにドタバタ開演まで悪戦苦闘しているのです。
芝居の世界にずっぽりハマってもはや抜け出すことができないワタシのような人から見ると、スタッフ役を演じてる役者さんがリアルすぎてアルアル!を通り越して拍手したくなっちゃうレベルだったり。終演後チラッと聞こえた話では、この役の為にむさ苦しい無精髭を生やしまくったのだとか。

腐女子のキモヲタやアニメ制作会社の熱血担当君や、その昔子役としてチヤホヤされてたけど、今は鳴かず飛ばずで腐りかかってる女優とか、微妙にリアルな役柄がたくさん出てきて、狭い舞台を客席まで容赦なくはみ出した彼らの演技は、だいぶ人数多いんじゃね?というぐらいたくさん大暴れですが、OFF-OFFの狭い舞台を全く感じさせる事なく演じているのが見事です。

そうこうするうちに、とうとう絵に描いたような超分かり易いイメージのラスボスとして、おばあちゃんが登場!
岡村ちゃんは、面倒見てもらっていたのに突然失踪した現在の自分の姿を、おばあちゃんにだけは見られたくないと、メイクを落として男として振る舞おうと頑張りますが、そこで過去からのとても重い葛藤が赤裸々になってくるところが観客の心に激しく揺さぶりをかけてきます。

男と決別するための重要なその一歩を踏み出す決心ができずに、もがいている岡村ちゃんを傍から見守っている、その昔劇団を立ち上げようと只者じゃない人材を集めようと、いろんなところに出没している二人。過去ヤクザをやっていた熊八の時と同様に、これはスカウトというより、2人に落とされたというぐらい見事な印象的なシーンです。全てを認めて受け入れてくれる寛容な世界へようこそ!ってなったら私だってそっちに逝っちゃいますよ。結構古いですが、映画マトリックスでネオがモーフィアスから手を差し伸べられて、Welcome to the Real World!って言われた瞬間ぐらいの衝撃です。

そして、常識の世界代表のようなおばあちゃんは、果たして変わりはててしまった姿の岡村ちゃんを見て何を思うか?今は居ない細かい理由は明かされませんが、おばあちゃんの娘、岡村ちゃんのお母さんの姿をそこに見ることになるのか?

寂し部の公演は季節をうまく取り入れて、雛人形のお内裏様とお雛様の話として進むはず。だったのですが、最後はとんでもない結末として急遽ラストが大改変になってしまいます。でもこっちの結末のほうがすごくリアルで、そういう世界もあるよね、個人的には完全に理解するのは難しい気もするけど、そういう人や事も優しく認めてあげようよという、とても優しいメッセージに包まれていて、ドタバタパワーだけでなく、繊細な機微も素敵に出せる演技力も身につけられてきた役者の皆様がとても素敵でした。

そしてさらに印象に残った見所が二つほど。ちょっとイヤミな感じの制作会社の熱血お兄ちゃんが、最初スゲー嫌な奴に見えるんですが、この世界で仕事している人達は、真に実力がある人の才能にはホントに真摯な態度で接してくれます。こんな天才の才能は殺したら俺の責任だ、なんとしてでも応援しなければという超フェアな気持ちがこの世界ではまだまだ絶対のように存在しているよ!という素敵な振る舞いと、
雛人形を飾ってある畳(の体)の台に役者さんが上がる時に、大家さん夫妻はきちんとスリッパを脱ぐのに、役者やスタッフはこんなの作り物だから別にいいや。って履物や靴を脱がないという雑さの対比がちょっとリアルで面白い感じでした。

次の寂し部は一体誰に焦点が当たるのでしょうね?勝手に色々予想を立ててワクワクしてきちゃいます。

第17回公演 『モラルハザード』 第18回公演 『Ctrl+z ダイアリー』

第17回公演 『モラルハザード』 第18回公演 『Ctrl+z ダイアリー』

劇団天然ポリエステル

キーノートシアター(東京都)

2016/11/24 (木) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

これは!
今回の天然ポリエステルさんの二本立て公演のうち片方の公演「Ctrl+Zダイアリー」と書いて、リトライダイアリーと読みます。
もう一本とは全く毛色が違う話なんですが、絶句です。完全にやられました。
久しぶりにこれは伝説として語り継がれるんじゃないかという公演にぶち当たりましたよ!

「この世界の片隅に」でも、なかなかすごい演出だなあと感心する事はあっても涙ボロボロにはならない非情でスレたワタクシですが、この作品には完璧に打ちのめされました。涙で前が見えません。・゜・(ノД`)・゜・。
多分、絵空事の感動のツボポイントが普通の人と完全にズレているようです(^_^;)
ただ、そういうヒネクレ者は若干ながら一定数居て、この劇団の作演出はそういう尋常じゃない人のツボをつくのに長けた天才なのではなかろうか、という気がしています。

簡単に言ってしまうと、イジメに屈しない強い意志を持った聡明な女の子と、頑張ってるけどまるでダメ男くんの精神が成長していく話。
って言うスタイルですが、映画で話題になった「聲の形」の登場人物の女の子、植野さんを素直にして川井さんを合体させて超賢くしたような女の子、もしくはマンガ「宇宙兄弟」のビンセント・ボールドを若い聡明な女の子にしたような屈強な精神に完全にノックアウトされてしまいます。

上演時間は約90分と、話はコンパクトめですが荒唐無稽な芝居らしいわざとそれないでしょwっていう筋を織り交ぜながら、一気に畳み掛けてきます。
この話を見ていて、高校の時超変人だったあのクラスの同級生の子もこういう感じだったんだろうなとか、年齢ではなくて、精神世界って構築されている人はされてるし、年寄りになっても全く構成できていない人もいるものなのかもなあとシミジミ思ったり。

あのときの約束を守って変わらないままずっとトンガッて20年間生きてきた彼女が再開を果たしたラストシーンは、役者さんがまだその実年齢には達していないからなのか、ちょっとあっさりしていて物足らなく感じることもあるけれど、ダメ男くんだった彼が明確なリアクションをできないまま暗転になる演出ってのはなかなかやるな!と感心したり。

悪役も、生身の人間が容赦なく徹底的にあの非道を演じきるのはだいぶ難しいところだと思いますが、まさに絵に描いたようなというのがふさわしい極悪非道っぷり。影響されて改心したりなんていう生っちょろさがないのが素敵でした。

天才気質の人というのはそれなりに見かけますが、最初に天ポリさんを見せてもらってから、現在までの間に職人として職業脚本家として荒波に揉まれ、すごい苦労をしてきていると見受けられる高原フヒトさんは、ストーリーのテリング技法をしっかり自分の物として身に着けてセンスと技巧が高いレベルで融合してきているように感じます。

もうね、そのままアニメ化できるぐらいの完成度だと思いましたよ。
時間捻出して、日曜日もう一回見に行こうかな?こんな気持ちになったのは久々です。
絵空事ジャンキーでも十分な刺激を受けられる、伝説に残る素敵な作品でした(^^)

あの芝居すごかったよ!と終わってから語られるより、日曜日までやってますから、是非この目で見てみましょうよ。ワタクシが言ってることが納得できた人は、おめでとうございます!まともな人が住む世界から完全に外れたところに棲息する素敵な人認定です(笑)

第16回公演『大人』

第16回公演『大人』

劇団天然ポリエステル

中野スタジオあくとれ(東京都)

2016/06/30 (木) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

脚本の構成にますます磨きがかかってきてますね!
第16回 天然ポリエステル公演「大人」

毎度お馴染み、寂し部公演!5作目ですって。
ここまでくると、もう、天然ポリエステルの寂し部公演ではなくて、劇団寂し部に天ポリの役者さんが出演してるという感じの密度で公演されてるような第16回公演です。

今回は七夕を題材にしたちょっとロマンチックな話。と思いきや、冒頭からなんかハードボイルドを匂わせるような展開で。
元ヤクザだった熊八の過去や彼の人間関係が明らかになっていくという縦軸と一緒に、幻になってしまった伝説の劇団の、未完の台本が横軸となって、めちゃくちゃな展開なんだけど、そんなのどんなんでも許せちゃうという寂し部パワーに押されて一気に見れてしまう100分間です。
その昔、下北沢まで登り詰めた伝説の劇団で、見た目ラブラブロマンチックなカップルになって行ってる劇団員を後目に、文字の銀河に惚れてしまった硬派な脚本家と、脚本家にというより、彼が創り出す世界全てに恋をしてしまったヒロインの話なんですけど、そこに寂し部が関わるとさあ大変!混ぜるな危険!状態の化学反応が起こってあたりはシッチャカメッチャカに!
もう、漫画みたいなアニメみたいな荒唐無稽のめちゃくちゃで強引なんだけど、全て許せちゃうのが寂し部ワールド。それってまさしく劇的っていう表現じゃん!彼らはマジで身体張って頑張っているのさ。
果たして今回の台本は無事書き上がるのか?脚本の登場人物はしっかり生きているか?
それは見てのお楽しみってことで。

毎回寂し部の誰かにスポットが当たるこのシリーズですが、今回はガタイはともかく、とにかくヤクザには向いていない熊八に焦点が当たる回でございます。
冒頭とラストに全く同じように繰り返されるオープニングとエンディング。エンディングの方にはさらに続きがあって、ハリウッド映画のエンドロール終わった後のスペシャルトラックみたいな驚きが。これ見て最初のシーンがなるほどと理解できるっていうか、かっこいいシーンの続きはこんな現実だったのかと。彼の泥沼人生スタートの瞬間を観客全員で目撃してしまう羽目になります。
そんな魅力的な熊八さんですが、彼がその昔所属していた月輪組に不思議な新入りが入ってきます。愛情溢れる兄貴がどこから見つけてきたのか、熊八同様ヤクザなんかとても務まらなさそうな人物。彼は伝説の劇団の元脚本家だったのです。
努力の秀才くんが頑張って努力して苦しんで悩んで脚本を書くという苦悩を、人としてどうなのコイツは?という超越した天才気質を持っている小娘にあっさり踏み越えられちゃうシーンがなかなか見ものでした。天才の精神構造と苦しんだ努力の秀才の両方の気質を体験していないと、なかなかここら辺をうまく伝えるのが難しいところだけど、そこをやんえみの破壊的で感覚的に(見える)演技で、いとも簡単にバーンとお客に見せつけて、全てではないけど、なんかその感覚の凛片は理解させてもらった気分になれましたよ。

寂し部シリーズでは前回もそうだったけど、脚本家(演出家という言葉や人間は出てこないけど演出も含めて)が紡ぎ出す物語が登場人物に生命を与え、それはとてつもなく大きい愛と覚悟を持って産み出さなければ、取り組んではならないという壮大なテーマが根底に流れているような気もしました。
人が生かされて活躍する芝居って、演劇ってなんなのさ?!というところに毎回ガチンコで取り組む羽目になる寂し部だからこそ、活きる話なのかもしれませんね。

今回も、安定の散らかり具合の寂し部事務所ですが、相変わらずわけがわからないものだらけですけど、イマドキのよくあるお芝居とは違って、とても立派なセットを組んだり立派な照明だったりは「しません(笑)」
もう敢えて確信犯で今時の主流に逆らってチープに開き直って役者のパワーで見せてるのを売りにしてるんじゃないかという気迫すら感じます。

今回はトイレに行くのが大変な、中野あくとれにて公演です。今日まだあと二回公演ありますよ!
寂し部っていう名前が気になってしょうがないアナタ、演劇に魂売って人間のクズになってしまった人物を見てみたいアナタ、もう見に行くしかありません!最後はいつものように幸せな気分で劇場をあとにすることができると思いますよ(^^)

第11回公演『一人』

第11回公演『一人』

劇団天然ポリエステル

タイニイアリス(東京都)

2015/02/26 (木) ~ 2015/03/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

劇場愛に満ち溢れています(笑)
3月いっぱいで惜しむらく閉館になってしまう、タイニィアリスのラストスパート月間を飾る劇団として、アリスを実家のように利用していた天然ポリエステルが放つ、「劇団寂し部」シリーズ第3弾。
残念ながら3月いっぱいでタイニィアリスはなくなってしまいますけど、天然ポリエステルのタイニィアリスへの愛はとてもヒシヒシと伝わってくる劇場愛に満ち溢れた作品として仕上がっていますよ。

寂し部シリーズと言ったら、ああアレね♪、と「寂」ぐらいでも聞いたらすぐ予約入れたくなっちゃうぐらい独特の、バカバカ面白ワールド全開なお話ですが、寂し部ってなあに?というこれから見る方のタメにちょっとネタばらしすると、、、
漫画で学園部室物ネタっていうのがあるじゃないですか。まあこの場合は演劇部ですね。
その高校生ぐらいのノリをそのまま社会人になっても果てしなく続けているタダ者ではない人達が集結してしまったのが、このビルに入居している劇団寂し部というわけです。
そこで繰り広げられる一般人には理解しがたい独特な世界を、怖いもの見たさに垣間見ようと興味本位で劇場にやってきたお客さんは毒にあたって、少なくとも2時間は素晴らしい幻覚を見ることができるという仕組みになっております。症状が重症だと夢に出てきたり、私もあっち側に行ってみたいとか思ってしまうかもしれませんが、人生を彼らのように棒に振らないために、客席から生暖かく見守っているぐらいにしておいたほうが身のためかもしれません。

今回フォーカスされるのが、いいところのお坊ちゃまなのに、身分を隠してこのグダグダな世界に身を置こうと決心して頑張っている浅利君。
御曹司で約束された将来があり、お母様に決して頭が上がらない彼には彼なりの大きな葛藤を抱えていまして、代わりがきかない必要とされる存在になりたいと言う切実な望みを持っています。
沢山の愉快な仲間に囲まれているのに彼の内心はひとりぼっち。
本当に必要とされているのか?いつも悩む毎日なところに、お母様が勝手に決めてきてしまった婚約者騒動に、さらに劇団寂し部が公演を打つ予定の劇場が閉館になってしまうという話が出てきて、新宿ニ丁目にある、どこかの劇場の状況と同じことが起こっている模様です。

その劇場には幽霊がいるというウワサがあり、私も以前この劇場を利用させてもらった時にお目にかかったことがあるような気がするのですが、劇中では、私が観劇したステージでは、まさしく新宿二丁目ならでは!のイケてる幽霊さんが出てきて、巻き起こる騒動に油を注いだり、収束に向かって色々活躍したりと大活躍なのですが、この幽霊の相棒が台本の原稿を書くためのパソコンを水浸しにしてくれちゃったりと、なかなか過激な騒動を引き起こしてくれるという展開で物語が進んでいきます。

おなじみのメンバーのお約束のアクション以外にも、ありえないアイドルや、葛藤を抱えているお笑い芸人やら何やら決して広いと言えない舞台にわけわからないキャラクターが勢揃いして、気がついたらあっという間の1時間45分です。多少演技が雑なのも、寂し部としてのキャラ演出なんじゃないの?という気もしてくるぐらいに違和感が無く一体感を味わえますね。

今回は、出番が少なくて逆に気になる下の階の奥さんですが、なかなか重要なポジションとしてお客さんを錯乱させてくれるのが面白いところ。今のどっちだよ?って言うのを見分ける楽しみもあるかもしれませんよ。

今回これほどまでにタイニィアリスへの愛が満ち溢れている作品はなかなかないでしょう。劇中のセリフのように、劇場がなくなったって、脚本の中に果てしなく生きている。って言う揺るぎないアイコンとして、この劇場は、これからも色褪せることなくみんなの記憶の中でずっと生き続けるというステップに突入したと考えれば、惜しい残念という気持ちだけではなく、それなりに受け入れられるかもしれません。

幽霊さんたちは、きっと歩いて行ける近所の劇場とか、電車に乗って下北沢の劇場あたりにでも引っ越して住み続けるでしょうから、彼らに対しての心配も、するだけ野暮というものでしょう(笑)
過去にタイニィアリスに熱心に通っていたお客さんや、ここの舞台を踏んだことがある人にとっては、必見の芝居ですよ!

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