満足度★★★★★
劇場愛に満ち溢れています(笑)
3月いっぱいで惜しむらく閉館になってしまう、タイニィアリスのラストスパート月間を飾る劇団として、アリスを実家のように利用していた天然ポリエステルが放つ、「劇団寂し部」シリーズ第3弾。
残念ながら3月いっぱいでタイニィアリスはなくなってしまいますけど、天然ポリエステルのタイニィアリスへの愛はとてもヒシヒシと伝わってくる劇場愛に満ち溢れた作品として仕上がっていますよ。
寂し部シリーズと言ったら、ああアレね♪、と「寂」ぐらいでも聞いたらすぐ予約入れたくなっちゃうぐらい独特の、バカバカ面白ワールド全開なお話ですが、寂し部ってなあに?というこれから見る方のタメにちょっとネタばらしすると、、、
漫画で学園部室物ネタっていうのがあるじゃないですか。まあこの場合は演劇部ですね。
その高校生ぐらいのノリをそのまま社会人になっても果てしなく続けているタダ者ではない人達が集結してしまったのが、このビルに入居している劇団寂し部というわけです。
そこで繰り広げられる一般人には理解しがたい独特な世界を、怖いもの見たさに垣間見ようと興味本位で劇場にやってきたお客さんは毒にあたって、少なくとも2時間は素晴らしい幻覚を見ることができるという仕組みになっております。症状が重症だと夢に出てきたり、私もあっち側に行ってみたいとか思ってしまうかもしれませんが、人生を彼らのように棒に振らないために、客席から生暖かく見守っているぐらいにしておいたほうが身のためかもしれません。
今回フォーカスされるのが、いいところのお坊ちゃまなのに、身分を隠してこのグダグダな世界に身を置こうと決心して頑張っている浅利君。
御曹司で約束された将来があり、お母様に決して頭が上がらない彼には彼なりの大きな葛藤を抱えていまして、代わりがきかない必要とされる存在になりたいと言う切実な望みを持っています。
沢山の愉快な仲間に囲まれているのに彼の内心はひとりぼっち。
本当に必要とされているのか?いつも悩む毎日なところに、お母様が勝手に決めてきてしまった婚約者騒動に、さらに劇団寂し部が公演を打つ予定の劇場が閉館になってしまうという話が出てきて、新宿ニ丁目にある、どこかの劇場の状況と同じことが起こっている模様です。
その劇場には幽霊がいるというウワサがあり、私も以前この劇場を利用させてもらった時にお目にかかったことがあるような気がするのですが、劇中では、私が観劇したステージでは、まさしく新宿二丁目ならでは!のイケてる幽霊さんが出てきて、巻き起こる騒動に油を注いだり、収束に向かって色々活躍したりと大活躍なのですが、この幽霊の相棒が台本の原稿を書くためのパソコンを水浸しにしてくれちゃったりと、なかなか過激な騒動を引き起こしてくれるという展開で物語が進んでいきます。
おなじみのメンバーのお約束のアクション以外にも、ありえないアイドルや、葛藤を抱えているお笑い芸人やら何やら決して広いと言えない舞台にわけわからないキャラクターが勢揃いして、気がついたらあっという間の1時間45分です。多少演技が雑なのも、寂し部としてのキャラ演出なんじゃないの?という気もしてくるぐらいに違和感が無く一体感を味わえますね。
今回は、出番が少なくて逆に気になる下の階の奥さんですが、なかなか重要なポジションとしてお客さんを錯乱させてくれるのが面白いところ。今のどっちだよ?って言うのを見分ける楽しみもあるかもしれませんよ。
今回これほどまでにタイニィアリスへの愛が満ち溢れている作品はなかなかないでしょう。劇中のセリフのように、劇場がなくなったって、脚本の中に果てしなく生きている。って言う揺るぎないアイコンとして、この劇場は、これからも色褪せることなくみんなの記憶の中でずっと生き続けるというステップに突入したと考えれば、惜しい残念という気持ちだけではなく、それなりに受け入れられるかもしれません。
幽霊さんたちは、きっと歩いて行ける近所の劇場とか、電車に乗って下北沢の劇場あたりにでも引っ越して住み続けるでしょうから、彼らに対しての心配も、するだけ野暮というものでしょう(笑)
過去にタイニィアリスに熱心に通っていたお客さんや、ここの舞台を踏んだことがある人にとっては、必見の芝居ですよ!