1
短編集 ふきだまる
劇団あばば
とにかく「好き」だった
連作短編集であり微妙に人や世界が繋がっている作品
他にあまり見ないタイプの物語で余白と余韻が残心となり心を刻む自意識の会話劇
必ずこっちの思う通りには行かない言葉と展開が気持ち良かった
特に「告白」は今年の短編で一番好きな作品だった
「告白」の良さは他者を他者としつつも自分よりも大切に感じ始めた時の揺らめきのそれが感じられて
そこに観測者がいることがまた重要で、君といるときの1秒は永遠というのをこういう形で表したことにとにかくやられた
世界は自分と自分以外の他人しかいなくて、他人というのはnot(自分)という自分を否定する存在で
でもそのカッコに入り込んでくる人がたまにいて
その肌感、自分に触れてくるかもしれない存在
それを感じさせてくれた
また「サナトリウム」もとても良い作品で
別に劇的なことが起こるわけでもない淡々さなんだけど
言葉の使い方の上手さと最後に来るあの言葉こそが
ずっとそこまで溜めていた「人物」の結晶であり
時間を凝縮して心に触れる感情だった
2
共演者
2223project
伴奏が無い中でソリストたちが奏でる感情の音、音、音
時に協和し、時に不協和なそれら
舞台の上で自身を主張しないとかき消されてしまう危機感を感じる
大きな音の張り合い、伴奏もいつしか荒々しくなってやがてぶつかって大きな音、一つ
良い音楽を聴いた時の様な快感だった
笑ってモヤついて感情が揺さぶられる
わかりやすくそれを与えてくれるメインの女優4人の素晴らしさ
そう、この作品はとてもわかりやすい
だけどその想像を超えて心を掴みにくる
エンターテインメントでありファンタジー
面白さこそが演劇における最強のステータスだと示す作品
3
余白の色彩
こわっぱちゃん家
とても面白かった
恋愛について真正面から色々な角度から光を当てられた舞台上
全てが丁寧で上演時間が必要なのも納得できた
どのエピソードも適度に笑える部分があるのが良かった
群像劇では有るのだけれど、それぞれのキャラたちのメリハリと役割がはっきりしていて
観ているうえで飽きない工夫がされていたなと思う
どの恋も応援したくなって、どっちの立場も理解できて頑張れって思わず拳を握ってしまう作品
4
間
中野坂上デーモンズ
いつだって僕ら観劇者は作品と作品の間を生きる存在
そんな間の僕らをも現実世界から引きずり下ろして舞台と舞台の間に入れてしまうスピード&パワー&リズム
中尾さんと尾崎さんのやりとり本当に良かった、泣いてしまった。どんな道へ行こうとも、立っていようとも間でしか無いんだよ、次の前のどこかとどこかの
あと安藤さんはやっぱり良い。叫びと動きと感情が全てにフィットする
5
『国府台ダブルス』
filamentz
卒業式実行
軸の置き方という意味ではこれは再演じゃなくてリブート
重要な部分でのポールシフトが起こっていて、物語性に強く重心を移していた
作品としての完成度で言うと初演版の方が高いと思うが、ショーマストゴーオンの値は増してドタバタ感は高まったかなと思う
卒業式というお祭り感を盛り盛りにした構成と人の配置
主要人物の動機をよりハッキリとしてリアルなものをモチーフにしている所から一歩踏み出してフィクションのコメディへと
とっ散らかってる感じがもっとギュッとしてる方が好みかな
ポジションの方程式が語るコメディ
いざ生徒総会
初演とほぼ台本が変わっておらず
その代わり舞台が大きくなったことによる変化が強かった
3話の監査大和田さんの小さい身体が大きな舞台をしゅんと動くことによるダイナミズム
5話の生徒総会に合った規模感
そしてその変化も飲み込む台本の面白さ
やっぱり最高の作品
6
劇団晴天の「曇天短編集」vol.2
2223project
いやぁ好きだったし面白かった!
あらすじだけだったら凄いありふれた筋なのに
対話と会話と感情を組み合わせるとこんなに笑えて泣けるのかと
特に「晴れたよって言われても」が好きで芝らしかった
凄い泣いてしまった
大丈夫じゃなくても大丈夫なんだよって言ってやりたかった
誰かがいなくなるってことはそれだけのことなんだよって
でも僕は生きているしでも死ぬかもしれないし
大丈夫だって言ってもらいたい、そんな気持ちになって色々もらえた気になれた作品
7
Better Call Shoujo
シンクロ少女
救われてなくて良かった
大人の正論とか、善人だらけの世界だったり、理解のある会話だったり
全部全部何も救わなくて良かった
会場は笑ってたけど僕は一つも笑えなかった
だって全部嘘だから
でもなんだか涙が落ちて
最後に鳥肌が立った
でも全部嘘なら良かった
8
「河西裕介」短編作品集vol.1『人間賛歌』
sleepwalk [スリープウォーク]
「女」チームのベンジーがとても良かった
読めるようで読めない
哀しいようで笑える
そうじゃないのに過去と未来を繋げて見せる
観客に二人のその後を見せてくれる本当に良い作品
鶴さんと影山さんがとにかく素晴らしかった
9
みんなの捨てる家。
アナログスイッチ
芯のしっかりした善い作品だった
歳をとって思い出が増えているせいか普通に泣いてしまった
みんなが集まると、とりあえずお茶を出すようなあの光景は故郷なんてない自分にも帰ってきた気にさせる
なんかなんとなく両親の顔が見たくなった
本当に良い物語だった
思い出とは懐かしさを心に擦り付けるものか
過去に縛りつけるものなのか
明日を生きるために必要なのか
いつか生きてた自分によって今の自分は出来上がってて
そこには必ず誰かがいて
僕にもきっと忘れてる人がいる
忘れてた時間がある
少しだけ思い出そうかなと思わされる作品だった
10
好きな子として、生きていく
怪奇月蝕キヲテラエ
キヲテラエの職業モノやっぱ好きだ
将棋を指すし観る将なので詳しい業界が題材だったんだけど、iPadで棋譜取ってるとことか細部までリアリティあって唸った
もちろん演劇の嘘で正確じゃないとこもあるけどそれも含めて楽しい作品になってた