ミュージカル「おとこたち」
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2023/03/12 (日) ~ 2023/04/02 (日)公演終了
実演鑑賞
ハイバイ観劇何作目だったかで出くわした「おとこたち」は少々異色作、少し配役を変えての再演でも弾けた感はなく岩井氏の探ってる感が残る。・・とは後付けの印象かも知れぬが、新装PRCO劇場に寄せる(初)ミュージカル作にこの演目を?とまず訝ったのは正直な所。最後まで訝り続けたのだが、岩井氏の信頼する前野健太氏そして出演陣に期待し、「んーー」と迷った挙句観に行った。
結論的には、この作品のドラマツルギーが最もしっくりと、飲み込めた気がした。
構成はおそらく随分改められ、初演、再演で平原テツらが作るキャラと空気感(言わばハイバイ的空気感)と大きく風合いが異なり、過去の「おとこたち」の記憶と合致する場面は前半訪れず、「そうだこれだった」と思い出したのがほぼクライマックス、葬式の場面であった(表の顔しか知らなかった旧友の葬儀に参列し、死者を冒涜するかのふてぶてしい息子に諫めた男二人が、生前の家庭内の様子を伝える衝撃の録音を聞かされる)。
冒頭の「歌」はカラオケでガナるような塩梅で(ここは記憶と朧に合致)、ミュージカルってこれ?と不安が過ぎったが、少しずつ風景が細密化し、歌も地に足の付いた、そぐわしい物になって行く。人生を俯瞰して無常観(死そして意味の揺らぎ)とノスタルジーを呼び起こすドラマであるが、語り手(ユウスケ)を含めた四人それぞれの凡庸だったり数奇だったりする人生が、同じ時の流れに翻弄され、一つの結末に行き着く存在として並列され、想念の中の記念写真に納まるラストの図と、歌に図らずも涙腺が緩んだ。
シブヤデマタアイマショウ
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2023/03/30 (木) ~ 2023/04/09 (日)公演終了
アウトカム~僕らがつかみ取ったもの~
劇団銅鑼
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/03/17 (金) ~ 2023/03/22 (水)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
銅鑼の安定感ある舞台を3、4作品観たが今回初めて映像で鑑賞。おなじみのシアターウエストで。独特なテイストがあった。理由は掴みとれないのだが、一頃もてはやされた町づくりワークショップの理想的展開の事例という感じで、参加者一人一人にもスポットが当たり、群像になっている。アウトカム(活動がもたらす結果。アウトプットよりは長期的・本質的な効果といった意味合いが強い)を評価する(事業評価)会社を作った男が「最後の営業日」でその銭湯を訪れる日から芝居は始まる。彼がそこで再会した旧友を誘いこみ、その旧友(主人公)の目を通して、事業評価を発注したプロジェクト(廃業を決めた銭湯を建屋ごと再活用する)の顛末を描写して行く、という構図になっている。このプロジェクトは町づくりワークショップの方式を用い、参加者間の関係性や、参加者個々の人生にも触れて行く。物語自体は、このプロジェクトというセミパブリック状況でのウェルメイドなハッピーエンド・リアリズム劇だが、浮世離れした感が、今の世のアンチテーゼにも思え、逆にプロジェクトを進める代行企業や出資者として参与する企業、その内情もチラッと出てきてリアル社会の縮図でもあり、そのバランスが独特。
あでな//いある
ほろびて/horobite
こまばアゴラ劇場(東京都)
2023/01/21 (土) ~ 2023/01/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
注目のほろびてだが、漸く二度目になる今作は映像で鑑賞した。現代社会の矛盾が無言の内に噴き出す様を情景化した舞台。コンクリの床と正面奥の瓦解したコンクリ壁の残骸は物理的な破壊を表し、人物によって描かれる諸相はその背後の、荒涼たる人間の心の風景。両者の関係への考察が本作の原点である事が想像される。演劇が、芸術が掬い取る使命の核心を扱っている、というのが私の感想。
入管収容所
TRASHMASTERS
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/02/17 (金) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
配信で鑑賞。
タイトルがいつもの謎掛けのような文字列でなく、ストレート。加えて今回は配信を実施するとあり、どことなく「特別回」の公演だな、と読み取った。ネットのサイトの有料動画が、「テーマの普遍性・緊急性に鑑み」無料公開される事があるが、それに近いものか。。
入管問題に踏み込んだ芝居であり、その大部分は入管で亡くなったスリランカ人ウィシュマ氏の「死」に至る経過を辿ったものと言って良い。入管職員の理不尽な対応と「何も説明できてなさ」のこれ以上無い解説に芝居はなっていて、身も蓋も無い現実を露わにし、観客に突きつける。後は観客それぞれがこの現実を受けて何をするか、である。
物語上の「救い」は芝居の中には無い。しかし明白な「誤り」が存在し、今なお改められずに放任されている「事実」が共有される事自体は(つまりこの上演が実現した事は)希望であり救いである。
今作の特徴は、入管側の人物を思い切って舞台上に上げたこと。入管に勤める人間の中にも良心がある、という配慮もした上で、結局「収容し続けていること」の根拠が薄弱である現実を冷徹に描いたものと私は評価した。
「敵」を軽く見せてもいないし、ことさらに「悪」に仕立てて溜飲を下げてもいない。この芝居のような現場で、上司に「抗う」人間は、多分いない。だが水面下ではどうか・・。その水面下の感情が表面化していたらウィシュマさんはどうなったか(助かったのではないか)・・その「願い」が表面化した部分がフィクションである。人を死なせてはしまったがその事実から何かを改めねばならないと考える人間が内部から出て来れば、昨日とは違う入管の姿を明日目にする事ができるかも知れない・・。
長谷川景演じる職員の心中の苦悶と、最後に上司に対して取った言動は、私たちが非道な入管に対峙して夢想の中で思い描いたものでもある。
実際の入管はもっと殺伐としてドライでああいう場面は実際には生じない。上からの指令か外圧でしか組織の変容は起きない。従って私たちが何をするか、である。
少女仮面
糸あやつり人形「一糸座」
赤坂RED/THEATER(東京都)
2023/03/17 (金) ~ 2023/03/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
コロナで長らく据え置かれた公演の一つ。天野天街演出による糸あやつり人形劇「少女仮面」とまみえた。バタバタの日々の中、観劇日が訪れたので体だけ運び、座席に身を沈める。
赤坂REDの後方席はやはり遠く、しかも糸操りの人形は舞台床に近い場所で動くので視界から外れる事も多い。そして台詞の応酬はBGMとなり、眠りに落ちる。
ただ・・問題は観劇上の条件というより、何かが足りない。決定的に足りない。あ、そう言えば、と気づけば天野天街演出と言えば「これ」というあのシリトリ台詞や、照明・音・映像等を駆使したドラスティックな転換、そして何と言っても場面の執拗なリフレインが、無い。。
これにハッと気づいた時は逆に衝撃。「え~~」と心の中で声を上げたが、冒頭近くで一人で台詞を何度か繰り返すくだりが一度あったきり、最後まで天野演出のミラクルな瞬間は訪れなかった。
糸あやつり人形の魅力に最初に圧倒された「高丘親王航海記」と、同じ演出の天野氏のものとは思われず残念感は拭えなかったが、一つには、少女仮面のテキスト自体の長さ(刈り取りの難しさ)がリフレインの余地を許さなかった、そしてコロナを意識した時間上の制約、など推測する。かつて観た「高丘・・」はテキストにしても短かく、先々で異形の生物に出会う直線的なストーリー、幻想譚で、人形のみの人形劇。
一糸座が得意とする?人間の俳優と人形のコラボは演目を選び、両方のギャップを埋める演出的工夫が不可欠。「少女仮面」では主役の春日野と少女を人形(一糸座の親子)が演じ、喫茶店マスター、甘粕など重要な脇を丸山厚人、大久保鷹らが演じた。だが役者というより文化財的な意味合いを帯びる大久保氏の存在感や、役者として回せる手練れの丸山氏を排し、あの特徴的で懐かしいフランスの歌(題名忘れた)を流しても、催して来ない(数年前の梁山泊公演で李麗仙が登場したが、どうにかあの歌が本領を発揮できる条件に到達できていた)。それを安易に使ってしまってる感もある。汗みどろで情念の炎を吐き出す生身の演技が上げる熱量こそアングラに必須なもの。
「人形を遣う」必然性、利点をどこに見出すかは、中々難しい問いだが、そこに戻ってしまった。
和解
工藤俊作プロデュース プロジェクトKUTO-10
こまばアゴラ劇場(東京都)
2023/03/15 (水) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
昨年初めて観た工藤俊作(kutoh)プロデュースの前作は、関西の3人の書き手(その一人内藤裕敬氏が構成演出担当)によるオムニバス。イベント的公演をやってるものと勝手なイメージがあったが意外に普通の芝居(と言うのも変だが)、ストレートプレイである。もっと意外なのは、劇団公演のような繊細な作品性があった。阪神淡路大震災と、その後にあったという(架空の?)震災が影を落とすある家族の時間を跨いだドラマ。後半、生者と死者の境界、時間の境界を超越した時空へ移行し(その瞬間は死んだはずの長男を姉弟が迎え入れ賑やかな会話が始まる事で明瞭に分かる)、その境界を超えた対話によって初めて出来事や関係性が明らかになる、というテキストである。
送りの夏
東京演劇アンサンブル
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/03/17 (金) ~ 2023/03/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
大納得の舞台。劇場の活用もうまい。
劇団は主宰を失ってより演出担当は持ち回り、というか企画により都度決まっている印象であるが、このかんの舞台を通して演出家三木元太氏の存在感は定着している(自分の中では)。美術担当を兼ね、納得させられる事が多い。
本作は自分はあまり知らないが作家のデビュー近い頃の作品が原作。児童演劇を主な活動の場とする若手劇作家に脚本依頼し、舞台化した。
海辺に近い、奇妙な集団生活を営む家へ、母を追ってやってきた娘のある夏の物語。完全に空隙を突かれた内容で、人物らの感情とそれを受け止める娘のリアクションが砂糖水のように喉を通って入って来る。久々に涙腺が大幅に緩んだ。
娘の感性が物事や他者の感情を受け止めて行く過程を観客はなぞって行く。その一つ一つに人間の可能性を実感させる。「出来すぎた話」がそうでもなく入って来るのが不思議である。
レプリカ
ハツビロコウ
シアター711(東京都)
2023/03/14 (火) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鐘下作品の回のハツビロコウ。古典作品の舞台から推しても松本氏の処理(テキレジによる「現在劇」化)は大きいが、秀作がまだまだ眠っていそうで嬉しい。本作は鐘下らしい「極限状況」を舞台に据えながら、サスペンスの要素があり、娯楽作品として純粋に面白く、踏み込んだ人間描写が現象の「背後」に想像を届かせ、観客の五感を刺激する。圧倒的に強い相手と、それに対し無力な存在(今回は以前ストーカー被害に遭って田舎に父と共に移って来た若い女性)という非対称の状況を固唾をのんで見守る作品というと映画「暗くなるまで待って」(テイストは全く違うが)。このドラマが成立する要件であろう、端正と艶を備えた俳優を配した。
ラストは一つのオチではあるが、そこまでで十分にサイコな(精神の)世界を堪能した舌には、「現実社会のリスク」を指摘するラストは特段必要を感じなかった。が、非常にまとまりよく完成度が高い。
Don't freak out
ナイロン100℃
ザ・スズナリ(東京都)
2023/02/24 (金) ~ 2023/03/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
時~々観るナイロン100℃。「しびれ雲」を観たばかりでスルーしていたが今回は劇場がスズナリとはうっかり。公演の終り間近の昼公演を当日券にて観劇した。凝り具合がよろしい。無二の世界に思えたが徐々に「アングラに寄せてるな」と楽曲(全員で歌う歌もあり)で思い当たった(音楽が鈴木公介氏なら意図的なのは明白・・白塗りもその含みがあったのね)。
舞台は一軒家の女中部屋。猟奇な世界観(江戸川乱歩とか)。完璧に作り込まれた濃密な空間で趣向も憎かったが、最後にケラのテイストが出て少々残念がった。
長く女中をしている所の姉妹(松永玲子・村岡希美)の風情が秀逸。とりわけ村岡女史はThe Shampoohat「砂町の王」で目にして以来その存在感にやられているが、その舞台や際どい役を堂々こなした「娼年」の事など思い出させる。みのすけをはじめ役者力とオーラを間近に浴びる贅沢な舞台でもあった。
行きたい場所をどうぞ
秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2023/02/23 (木) ~ 2023/02/28 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
瀬戸山氏の青年劇場書き下しは今作も十代女子が主人公。新鮮な風を感じる感性に導かれてちょっとした旅(だが真の意味での「旅」)をする。AIロボット(少女型)との二人旅の舞台はAIが人間の生活や産業の各所に導入された近未来社会、とは言ってもAIがもたらしかねない資本と雇用人口の熾烈な分断、といった深刻な状況よりは、自我(状況を判断し自己の行動を決定する土台)が芽生え、人間に近い感情を持ち始めているAIというファンタジックな想定。非人間性が社会を侵食するディストピアとは対照的な、異種の人格が人間界に参入する「多様性」の未来への想像力に観客は感化され、感動が湧き起こるのだろう。
しゃぼん玉の欠片を眺めて
TOKYOハンバーグ
駅前劇場(東京都)
2023/03/03 (金) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ハンバーグの同作初演を観ているが、良い作品であった。今回の再演では中心となる老齢の人が初演の男性(三田村周三)から女性(矢野陽子)となり、配役も一新した事もあるだろうが、より示唆的で「現代」を重ねて見る作品になった。
祖母の退化論
PARA/布施安寿香/和田ながら
PARA神保町2F(東京都)
2023/03/17 (金) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
SPAC舞台でも存在感を認める女優、布施安寿香氏は数年前鳥公園に客演しその鋭くかつ大らかな演技に感服した。この一風変わった企画(しかも入場料はそれなりに高い)に出かけたのは、プラスよくは知らないが一定評価のある和田ながら氏、そして決め手は謎の作家・多和田葉子のテキストに取り組んだものである事。(謎、と言っても著作は多く、翻訳家という出自を対象化し遡及することから執筆業は発したらしい、というぼんやりとした認識がある。ただ読むと入り組んだ思索に誘われ、凄みがあるが複雑で読了した事がない・・遅読のせいもあるが。)
舞台は圧倒的であった。一人称の語りが、様々な光景を見せる。物語は展開する。入れ子状態にもなり、主体はシフトするが人格は一つ。役者の肉体は喜々としてそれを体現し、観客と存分に共有する。105分の一人芝居。
『キレナイ/Dear Me!』
ラゾーナ川崎プラザソル
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2023/01/21 (土) ~ 2023/01/29 (日)公演終了
実演鑑賞
「Dear me! 」も「キレナイ」に続いて拝見していたが随分日が経ってしまった。WELLMADEな話ではあるものの、終盤私は興が冷めた。時代的な問題、というか、限界というか。
保育園に出入りする人間には親たちの他にこの保育園を建てる青年園長に出資をした旧友(見た目からして反社。子どもが泣く)とその同僚らしきイカツイ男が連れでやって来る。何しに来るでもないが「旧友の仕事ぶり」を「出資(無利子の融資)した者として」にかこつけて、癒されに来てる模様。
この存在がラストでちょっとしたどんでん返しをやるのだが。。
蜘蛛巣城
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2023/02/25 (土) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
観る動機はもちろん黒澤監督の同名映画で、「どん底」もそうだが海外戯曲を日本に置き換えた傑作の躍動を味わいたく観に行った。演出が赤堀氏とははっきり認識しておらず全ては観劇当日に、という構えで臨んだのだが、よく見れば演出をはじめキャスティングも、変わった取り合わせ。企画が固まった経緯が気になる。その印象を裏付ける舞台でもあった。詳細後ほど。(余力があれば)
The Writer
ゼロコ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2023/03/03 (金) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
この所殆ど例外なく眠い身体での観劇、序盤に厳しい時間があったが(笑いはよく起きていて客席の声で目覚める事数回、だが笑った原因は分からず)、ほぼ通して興味深く見れた。
「二人目」が登場した時は「手品じゃん」「どうなってんの」と純粋に驚いたり、先を予測する余裕がないのがよかったようで、作家の脳ミソの中(もしくはうなされて見る幻)を覗き見る無言芝居を楽しんだ。
掃除機
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)
2023/03/04 (土) ~ 2023/03/22 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
家の中の各エリアが歪つに曲がり(端に向かってせり上がる)、上手奥にDJ然と立って音(掃除機等)を出したりする環ROYのブースがあり、その他は舞台手前の上手下手や奥に向かって開けている。
言葉を聴くと岡田利規の文体なのだが、居心地の悪さが残る。大した事もない事を大したように言っている、と聞こえてしまう時の、アレだ。そこで改めて資料を見ると、演出は岡田氏ではない。そうか・・と思う。
どうにか台詞の座りの悪さを乗り越え、パターンを掴む。「父」役をモロ師岡(メイン)、他に二人が同じ衣裳を着て同じ「父」を演じる。(SPAC「授業」(演出:西悟志)がやっていた最高にシュールな方法。延々と喋ってる役でないのでSPAC程に弾けないが。) 栗原類の役が掃除機だと判るのには時間がかかった(冒頭の喋りで「掃除機の目線」という台詞があり、自分=掃除機と自覚して言っている、とは聞こえなかったのだ)。
「姉」の引きこもりの精神性が、痛々しくかつ逞しく伝わって来るのが本作の肝だ。姉がしばしば舞台上から姿を消すが、「ずっと居る」という演出には出来なかったのか・・何かこの芝居の核になるものが欲しかった気がする。
人形の家
SPAC・静岡県舞台芸術センター
静岡芸術劇場(静岡県)
2023/02/11 (土) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
久々の静岡芸術劇場で初めての「人形の家」観劇。作品は戯曲のみ読んでいたが細部はごっそり抜けていて、ラストの決断の直前まで、ノラは「人形」らしく妻らしく振る舞う時間を生きていた。
舞台を日本に置き換え、能舞台風に設えた室内、着物姿が目に心地よいが、役名等は原作のままだ。それで成立しているのは宮城總らしい様式の妙による。その他気の利いた趣向・演出がちりばめられ、心中ニヤッとする事も多い。この戯曲はイプセンの社会劇の連作の端緒であり「演劇史を変えた」と言って過言でない記念碑的作品と言われるが、その評に違わず「生まれたばかり」のような初々しさがあり、この作品の魅力となっている。
ノラの旅立ちにも重ねられる長い現代演劇の旅が、ここから始まったというような。。
ノラのたきいみき、彼女がその視線を向ける「像」としての夫(ベイブル)、ノラと対照的な旧友(葉山陽代)が好演。
「君といつまでも~Re:北九州の記憶~」
北九州芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2023/03/03 (金) ~ 2023/03/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ユニークな企画。面白い。個人的には懐かしい地名や北九州弁を楽しみにしていたが、大いに聞けた。
元々方言じたいが芝居に一定の効果をもたらすが、耳に心地よく、倍加である。そして、地元の言葉でしか出せないニュアンスもしばしばあり、ほくそ笑む。女性が夫を諫める光景も。この距離感、東京ではお目にかかれそうもない。
占領の囚人たち
名取事務所
「劇」小劇場(東京都)
2023/02/17 (金) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
同日午後に観た別の芝居が「鬼気迫る」人間ドラマを狙ったものだったので、リアリティの圧倒的なギャップに愕然とする。こちらは実話(現在進行形)を元に構成された、「刑務所」の話。パレスチナ自体が「刑務所」と言える実態に、改めてこの事実の性格(無関心でいる事は重罪であること)を突きつけられる。演劇としての面白さと、感動がありつつも、見せられているのは現在進行形の現実、という得難い感覚は、しかし演劇の本質に触れてもいるのかも。「今ここ」を離れた演劇ほど感動のないものはないのだから。