吉良ですが、なにか?
アタリ・パフォーマンス
本多劇場(東京都)
2014/11/21 (金) ~ 2014/12/14 (日)公演終了
吉良にも吉良の物語あり
舞台というのは、残酷だと思う。テレビや映画なら、ワンカットずつの撮影で上手く編集したり組み合わせにより、その魅力が最大限に演出される。編集者の腕によっては、もう別物といったものにすらなりうる。その点、芝居はごまかしが効かない。すぐ目の前には観客がいる。息遣いや汗は全て白日の下だ。セリフをとちったら、やり直しはきかない。今日は気分が乗らないから、なんて途中で中止にすることもできない。The show must go on.やるしかない。ヴェテランも新人も、テレビで売れてるとか知られてないとか、これまでの実績とかそうしたもの全て関係ない。その舞台一回こっきりだ。真の実力が試される。役者として、ひょっとしたら人として、演技力や存在感といったものを問われる。しんどい仕事であり、思うように演じられ、決まったと思えた瞬間は、比べないほどの快感を覚える仕事でもあるだろう。
噂に名高い本多劇場は、初めての来訪。小劇場スゴロクの"上がり"であり、大劇場では最も小さな劇場の部類に入るかもしれない。演劇の聖地というような場所とも聞く。演じるのは、伊東四朗をはじめ名の売れた役者たち。懐かしい名前もあり、名はなくても腕自慢の役者も揃えて、さあ実力拝見!テーマは、季節感たっぷり「赤穂浪士」の吉良一家・・・
私の嫌いな女の名前、全部貴方に教えてあげる。
月刊「根本宗子」
テアトルBONBON(東京都)
2014/08/22 (金) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
僕は好きよ
女子というのは、自分以外の女子が嫌いなのかもしれない。
自分に自信があればあるほど、不安であればあるほど。
可愛い子も、綺麗な子も、しっかりした子も、
マイペースな子も、魅力的な子も・・・、みんなみんな。
演劇人といのは、自分以外の演劇人が嫌いのなのかもしれない。
自分に才能があればあるほど、狂気に満ちれば満ちるほど。
ほろりとさせる俳優も、若くて美しい女優も、
泣かせる役者も、笑わせる三枚目も、泣かせて笑わせる劇作家も、
金持ってる演劇人も・・・、みんなみんな。
女子であり、演劇人であり、そうして女子が大半の演劇を、
しょって立って投げ飛ばせる根本宗子は、だからすごい。
この子がエースなんだなあ、って思う。
よく揉めないなあ。
実力が抜きん出ていれば出ているがゆえに、
拮抗していれば拮抗しているがゆえに、
揉めるのが、女子であり、演劇人であると思うのだけれど。
「虚構の劇団」の客演で、お気楽に脇役やってた、
肩肘張らない根本宗子さん、良かったけどね。
でもそれでは、彼女の自信が、不安が、才能が、狂気が、
まったく納得しないのだろう。
全部ふっくるめて、この人好きだなあ。
ビー・ヒア・ナウ Be Here Now
文化庁・日本劇団協議会
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2014/07/10 (木) ~ 2014/07/21 (月)公演終了
人生を生き抜く錨
今ここにいる自分は嘘じゃない。
まがうことない真実。
それだけでいいんじゃないかな。
このところ、強い閉塞感を覚える。
どこに行ったって同じじゃないか。
どうせ無に帰るだけじゃないか。
僕はあまりに無力で、
世界をこれぽっちも変えられない。
あまりに小さく、
誰に振り返られることもない。
それでも、自分が今ここにいるのは、
すごいこと、かけがえのないことだ。
その悦びに目を向けよう。
壁にヒビが入り、青空が少し覗いた。
開かなかったドアが、開きかけた。
それを大きくこじ開けるのは、僕だ。
わたしを離さないで
ホリプロ
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2014/04/29 (火) ~ 2014/05/15 (木)公演終了
役者のエネルギーに驚き!
One for All.All for One.
ラグビーの有名な言葉は、芝居にも当てはまるかもしれない。
そういう意味で言うと、この芝居は
One for All的な要素が強かったように思う。
役者の個性を前面に打ち出すよりも、
芝居全体の完成度を重要視している感がある。
特に、結末シーンの奥行きある舞台を目いっぱい使った
俯瞰の絵は現在と過去がシンクロし美しかった。
それまで紡いできた物語が一気に結びつき、心打たれた。
そうした傾向の1つの答えは、カーテンコールで分かった。
何度目かに主演陣に連れられてきたのは、蜷川幸雄だった。
なるほど、彼の芝居だったか!
ただし、僕はAll for Oneの方が好きなのである。
主演3人がそれぞれ魅力的だっただけに、
アイドル映画や歌舞伎まではとはいかないものの、
見せ場的シーンが見たかった。
多部未華子には、相変わらず末恐ろしさを感じさせる。
無色のようでいながらクセはあるし、
大人しく優等生的ように見え、得体のしれない感を秘める。
木村文乃は、TVドラマやこの芝居のポスターでは、
憂いを帯びた令嬢的の印象を受けていたけれど、
実際はニュートラルな感じのすっきり美人さんだった。
令嬢的役の木村文乃をどこかで見てみたい。
三浦涼介という人を僕は知らなかったのだけれど、
頼りなさと男らしさを演じ分ける色気ある俳優さんだった。
それにしても、三幕構成で幕間も含め4時間は長い。
三幕では、途中退席の方もちらほら、
5時ちょうど頃には時計のアラームは鳴るわ、携帯のアラームは鳴るわ・・・・・・
ただ本当は5時15分に終わるものが、結果的に5時半となったのは、
スタンディング・オベーションで、
カーテンコールが繰り返されたからでもある。
婆VS女子高生
月刊「根本宗子」
BAR 夢(東京都)
2014/05/03 (土) ~ 2014/05/18 (日)公演終了
あなたも好きね
学生時代憧れたのは、
全共闘の時代の学生の日々であり、物語だった。
ちょうど自分の親の世代。
わが父母は、いずれも全共闘とは
カスリもしなかったようだが。
シナリオの根本宗子という女子は、まだ20歳くらい。
それにしては、40代から50代の心持ちをよく知ってる。
開演前のキョンキョンの歌や、その他の歌にしても、
40代以上が好むものばかりだ。
たぶん彼女の親の世代。
何かしらのこだわりや影響があるのかな。
バーを貸し切ってのお芝居。
20人ちょっとの観客の前で、数人の役者が芝居するって、
ある意味これ以上ない贅沢だ。
インターネットの時代。
片手で全世界にコンテンツを配信することが可能。
かたやスマホ片手に世界の最新コンテンツが楽しめる。
そう考えると、見てる方も演ってる方も、スキモノぞろいだなあ。
酒と涙とジキルとハイド
ホリプロ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2014/04/08 (火) ~ 2014/04/30 (水)公演終了
女はみかけじゃない
女性観が変わっちゃいそうだ。
僕は一体、今まで何を見てきたんだろう・・・
ここ一週間で、鴻上尚史と三谷幸喜の芝居を観た。
鴻上尚史の舞台は、心にジャックナイフを突き立てる。
心のさざなみを抱え、足早に家路をたどることとなる。
それに対して三谷幸喜のお芝居の後には、
ワインでも飲みたくなる。穏やかで優雅な気分だ。
池袋・東京芸術劇場は雰囲気があったし、
客層も、小劇場とは違って、ゆったり感に満ちていた。
三谷幸喜お得意のシチュエーション・コメディ。
ジキル博士と助手がいる研究室に、
婚約者と役者がやってきて、ドタバタ劇が繰り広げられる。
登場人物はたった4人、舞台も研究室から動かず。
にも関わらず、入れ繰り・立ち替わり・入り交じり、
これだけの物語にしちゃうんだから凄い。
ジキル博士に片岡愛之助、役者に藤井隆。
そして婚約者に優香。何と言っても優香!
映画「偉大なるしゅららぼん」を観た。
奇想天外の話をどう映像化するのとともに、
最近とみに美しい深田恭子の姿を観たかったからだ。
意外にも、凡庸な美しさだった。
深田恭子と優香は、
同じ事務所のライバルと聞いたことがある。
深田恭子は女優然とした雰囲気がある。
現実生活に生きていられないオーラが溢れている。
一方の優香は、抜群のプロポーションと、
人柄の良さを売りにするタレントさんといった感じ。
だった・・・
「女は、誰もがみな女優だ」という。
僕はそれに付け加えたい。
「女優は、誰もがみな女ではない」
女優は性別を越え、強い意思を持って、
自らの道を切り拓く人だ。
優香は女であるけれど、女優ではないと思っていた。
けれど彼女は紛れもない女優だった。
小さく可愛らしい顔!
素晴らしいプロポーション!!
そして根性と魂、強さ。
楽しみな女優さん。
グローブ・ジャングル
虚構の劇団
座・高円寺1(東京都)
2014/04/04 (金) ~ 2014/04/13 (日)公演終了
満足度★★★
僕の劇団
第三舞台は、憧れの劇団だった。
大人気でなかなかチケットを取れず、
唯一見ることができたのが、
「朝日のような夕日をつれて」だったと記憶する。
素晴らしいシナリオ、テンションの高い芝居、
大会場の観客が呼吸をともにするような感覚。
鴻上尚史のエッセイで紹介された、
お客さんの感想からは、
劇団とその観客が切磋琢磨する様子が伝わってきた。
けれど、僕がやっと東京での日々を手に入れた頃、
第三舞台はその活動を停止してしまった。
鴻上尚史が若手の劇団を作ったと聞いて、
見に行ったことがある。
「天使は瞳を閉じて」だったと思う。
ああ、シナリオが素晴らしいと感じた。
その後、同じ劇団を何度か見るも、
言葉と演技に魅了されながらも、
どこか上滑り感を覚えていた。
けれど今日、その「虚構の劇団」
演じる「グローブ・ジャングル」は素晴らしかった。
初めて見たとき、容姿先行の感のあった
小野川晶は主演女優の風格が漂っていた。
美しさの中に凄みとコミカルが同居していた。
これまで劇団を支えてきたコアの俳優と、
新人・客演が相まって、複層的な深みがあった。
かつての第三舞台が観客とともに歩んだように、
僕もこの劇団と真剣勝負してみたいと思う。