タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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弾丸黒子

弾丸黒子

劇団芝居屋かいとうらんま

OFF OFFシアター(東京都)

2020/02/21 (金) ~ 2020/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

人物が描けていないと社会性あるテーマも観えてこない。この公演を観て社会性云々というよりは、人の見方によってその事柄が違って見える ということ。その立ち位置が突拍子もなく、それ故に自由発想の間口が広い。また現代的と言うか、インターネットの普及で自分1人で情報収集ができ、他者との関わりの稀薄さをさり気なく指摘する。これってタイトル「弾丸黒子」を表しているような、いないような。
(上演時間1時間20分)

ネタバレBOX

舞台セットは、木製のテーブルと椅子のみ。それを縦や横に配置することで状況や情景を変化させる。もっとも人と(死)人との会話が中心であるから、細かな設定は不要かもしれない。むしろ、状況・情景描写よりは、そこから観える自分自身の考えや行動、過去に起きた又は起こした事件を客観的に眺めるような展開。

物語は、殺し屋・松木が人違いだと懇願する兵藤優一を射殺するところから始まる。直ぐに兵藤が生き返り、後頭部を撃たれた痕跡を見せながら話し掛ける奇想な展開へ。生者と死者が会話する、そして第三の死者も登場し話し掛けてくる。死者は松木が殺してきた亡者たちで、恨み辛みを言い出す。松木も既に死人かと思ったが、そこは判然としない。ただ松木も殺害されることから、表層的に観れば因果は巡るといった結末。それは兵藤にも当てはまり、何故死ななければならなかったのか、疑問が解ける。

さて、自分の考えや行動(範囲)はたかが知れている。生きている限りは見栄や外聞もあり、それを隠したり維持するために、時として”嘘”をついたりする。一方、死者は嘘をつく必要がないと、劇中でサラッと言う。死=不幸ではなく、見方によっては自由(解放)度が広がるかもしれない。生きていれば裏表の顔の使い分け、思考の狭さくが付きまとうが、身体的には何も(行動)出来ない。そのアイロニーが透けて観えてくる。

この物語を支えているのが舞台技術の音響_ピアノの連弾や雑音BGMなど。そして役者の演技。特に松木(贈人サン)と兵藤(ごとうたくやサン)の2人。松木の殺し屋らしい荒い声や怒声、一方、兵藤の死人らしい達観した淡々とした口調。その対比が徐々に同調していくようだ。始めのうちは、何を聞かれても互いが知らない、という拒絶に近い質疑応答であったが、いつの間にか感情豊かに変化していく。実に見事な展開である。そして、ラスト、松木が死んでいく様をスポットライトで照らすが、しばらく瞬きせず、虚空を見つめる姿は印象的だ。
次回公演を楽しみにしております。
ザ・空気

ザ・空気

劇団俳協

TACCS1179(東京都)

2020/02/21 (金) ~ 2020/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★

第25回読売演劇賞、3賞 受賞作(最優秀演出家賞、優秀作品賞、優秀女優賞)。
脚本は永井愛女史。発想のきっかけは、当時の高市総務大臣の電波停止発言らしいが……。
総務大臣による「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、電波停止を命じる可能性もある」という発言。根拠となるのが、放送法第4条と電波法第76条。この問題に真摯に向き合い痛烈に批判した風刺劇、または啓蒙的とも思える芝居。劇的にも時間(放送は今夜)と空間(テレビ局内)を限定させ緊迫感と緊密間を表し、観客に緊張感を持たせるサスペンス風な展開。支配するのは、人でも物でもなく、その場の「空気」である。そして緊張が解かれた2年後…そこに近未来の日本の姿が…。
観応え十分な作品であった。

この問題提起と思える重厚な作品を俳協のCLIMBING UP準劇団員公演として上演。
脚本は面白いが、どうしても演じる役者陣の役柄と経験・貫禄(外見的風貌も含め)不足のギャップ、その違和感が観えてしまうところが残念だ。
(上演時間1時間50分)【Bチーム】

ネタバレBOX

舞台セットは暗幕で囲い、白い簡易造作で室内(ドアがある)を、そして白い箱馬をいくつか置いてテーブル・椅子。下手側の一画に別スペースを作り、違う場所をイメージさせる。室内の違いは正面の絵柄で表す。当日パンフによれば、この準劇団員公演は「俳優としての経験を積むことを主眼としている都合上、俳優を助ける舞台装置などの演出補助要素を簡素に設定している」とある。主旨は分かるが、放送開始までの残り時間など、緊迫感を表す装置(時計や照明の諧調で日没経過)なりが観えると更に良かった。
後日追記
陰陽師

陰陽師

BACK ATTACKERS

シアターブラッツ(東京都)

2020/02/20 (木) ~ 2020/02/24 (月)公演終了

満足度★★★★

エンターテーメントのような公演。物語を観せるというサービス精神はうかがい知ることが出来るが、何か強い”思い”というものは感じられなかった。冒頭は、人間と妖怪というか魔物の対立構図のように思われたが、途中から変容していくようだ。
小難し理屈は抜き、一言でいえば楽しい娯楽劇。
(上演時間2時間弱)

ネタバレBOX

舞台は中央奥に台座のような物が置かれているだけ。そのシンプルな造作はアクションシーンのスペースを確保するため。物語は東京の山手線内の四方に結界を張り、人間(陰陽師)と妖怪の戦いを思わせるが、途中から妖怪にも善悪といった区分を示す。

善妖怪は、例えば戦時中における徴兵制に反対もしくは障碍者で戦地に出征できない者を侮蔑として妖怪と呼ぶようになった、との批判。また遥か昔から守り続けてきた”謎の箱”の存在は”パンドラの箱”(まさか男女グループの競い合いまでの深読みはないでしょうね)を連想させ、世に災いが四散し、残ったのは「希望」という展開にも思える。この世界観の広がりと東京・山手線、もっと言えば新宿歌舞伎町といった局地的な舞台背景になっていく。同時に陰陽師と善妖怪が協力し悪妖怪(あらゆる災い)を退治するといった勧善懲悪の物語へ。先の戦時中の話における非国民=妖怪という差別を観せることによって、ラストの人間と妖怪の共生を印象付ける。部分的に教訓的なシーンを挿入することで物語に意味付けをしているように感じた。そこが少しあざとらしく思えたのが残念。

陰陽師/相棒による漫才的な笑いを挿入し、除霊時に使用する小道具や所作など、観(魅)せる面白さ。陰陽師の男・女グループによる能力自慢、それをダンスやアクションシーンとして表現する。演出としては相当の遊び心を持って観客サービスを意識しているようだ。
次回公演も楽しみにしております。
Better Call Shoujo

Better Call Shoujo

シンクロ少女

シアター711(東京都)

2020/02/20 (木) ~ 2020/02/25 (火)公演終了

満足度★★★★★

シェイクスピアをはじめ、よく聞く「人生は演劇のようだ」…という比喩を思い浮かべる。ある家族の次女を中心に展開する心情と言うか心象劇のようであるが、彼女の仕事を活かした衝撃のラストシーンは二段落ちのようで見事!
この劇団紹介にある、普遍性の高いテーマに拘った創作活動。今作は話し言葉を中心に構成された小説的な脚本で、分かり易い展開。ラストの一言が衝撃的で、冒頭、彼女を認めるシーンへ繋がる見事な構成には感心させられる。
(上演時間2時間5分)

ネタバレBOX

舞台美術は、この劇団の特徴とも思える心象風景を実に巧く表す。後日追記
アジア戯曲リーディング

アジア戯曲リーディング

亜細亜の骨

新中野ワニズホール ( Waniz Hall )(東京都)

2020/02/19 (水) ~ 2020/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

台湾戯曲『また今度』観劇。
劇団名「亜細亜の骨」にたがわない骨太作品。日本初公演…次々に明らかになる事実、そこから浮かび上がる滑稽であり切なさもある人間関係、人生劇を描いた秀作。
(上演時間1時35分)

ネタバレBOX

本公演は、リーディングであるがストレートプレイで演じたらどうなるのだろうと想像が膨らんでしまう。
後日追記
往転

往転

KAKUTA

本多劇場(東京都)

2020/02/20 (木) ~ 2020/03/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

観応え十分、自分好みの公演。
上演前から台風による悪天候を知らせるアナウンス。不穏・緊張感を煽るような雰囲気作り、それによって物語の概観を巧みに演出する。物語は劇的な関連付けというよりは、普通の人々のリアルな営みが坦々と描かれている。そこに登場する人々は心に何らかの痛みを負っており、その苦悩・懊悩を輻輳させることで深みある公演になっている。もちろん緊張感だけではなく、時にクスッとするような笑いを織り込み観客の心を和ませることも忘れない。

物語全体の重厚感と場面ごとの軽妙感は、何となく違和感を覚えるところだが、妙にマッチしていることに感心する。違和感と言えば、舞台美術も歪というか奇妙な造作で、そこにも人々の悩みを観ることが出来る。同時に本多劇場という広く段差ある客席に配慮した造りのように思える。
冒頭の台詞にある、目を瞑って真っ直ぐ歩いたつもりでも…はタイトル「往転」を暗喩しているようで興味深い。そして台詞ひと言一言が日常会話であるにも関わらず吟味、洗練されているようで実に良い。
(上演時間2時間20分)

ネタバレBOX

舞台美術と物語の関連付けが巧い。それは配役(シチュエーションごとに記載)ペーパーで知ることができる。
後日追記
成り果て

成り果て

ラビット番長

紀伊國屋ホール(東京都)

2020/02/07 (金) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

初演(「グリーンフェスタ2016賞」受賞)、再演(「第29回池袋演劇祭大賞」受賞)も観ているが、本公演は先に受賞した時の劇場より少し大きな紀伊國屋ホールだ。全体的に上手くまとまった感じであるが、身近な緊密間というよりは少し距離感のあるような印象。それだけに緊密=親密を好むかどうか。その意味で身近な勢いか、距離ある整いか、舞台によってこうも印象が違うとは…やはり演劇は奥が深い。
(上演時間2時間強)

ネタバレBOX

舞台セットは、三方向から観せる。何の変哲もない舞台が、中央扉を両開きすることで上手・下手に話を振る。その上部に対局場面を設ける。舞台は上下の2階建てであるが、その雰囲気は上階の勝負という静寂、下階の生活という活気といった対照的な観せ方。将棋のタイトル戦は、盤上をTVで映す時は天井からカメラを回すが、この芝居ではその逆、上階で俯瞰するような位置取りをし、さらに下手側モニターで盤上を見せるというリアルな工夫。上手扉側が、森将棋道場の そして奨励会会員であろうメンバーが騒がしく指手研究をしている。一方下手側は、物語の本筋...森家の家族や幼い時から出入りしている天野兄妹の話。初演時は、この三方向の演出のバランスが少し悪く集中力が分散されるように感じたが、本公演ではまとまりがあった。

物語はいくつかの話を実に巧みに構成...一つは、プロ棋士とコンピューターに搭載された人口知能との対戦。人口知能が自己進化するという、将棋というアナログ世界とデジタル世界という異次元対決を持ち込む。もう一つは、プロ棋士になれず挫折した人間...その男を通してみた生き様。そこには夢を追い続けて、その人間味が溢れているところ。この両極をしっかり描き、芝居としてまとめあげている点が素晴らしい。

途中、コンピューターの自己進化に”嫌悪”的な描きも見えたが、この人口知能、人類にとっての存在価値を問うような...。しかし異なる役割は優劣を争う存在ではなく、それぞれの役割を果たすという根本的なこと。また母子家庭で育った兄・妹の将棋世界での生き残り方を感動的に観せる。それぞれの想いが伝わる演劇の醍醐味、しっかり受け止めさせていただいた。

最後に物語を印象付、牽引するための工夫が好い。泣き笑いを強調させるような舞台技術ー照明効果としてのピンスポットや階調、効果的な音楽を用いるなどー多くの人に楽しんで観てほしい、そんな思いを感じさせる丁寧な公演であった。
次回公演も楽しみにしております。
苺と泡沫と二人のスーベニア

苺と泡沫と二人のスーベニア

ものづくり計画

上野ストアハウス(東京都)

2020/02/05 (水) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★

今を生きる27歳の女性達の姿を描いた公演。物語は屁理屈ではなく感情、それも恋愛感情を中心にして展開していく。構成は本筋と脇筋があるように思えるが、本筋と思える主人公-海沢みなみ と實方研二郎の恋愛模様が上手く表現出来ていないのが残念。逆に脇筋である みなみ の高校時代からの友人達の姿を通して27歳の女性の考えなり行動の一端が分かり易く描かれているが表面的だ。
(上演時間1時間30分)

ネタバレBOX

舞台セットは、上手側に居酒屋テーブル席、中央は一段高い段差を設けた深夜スナック?、下手側は壁際に椅子2脚のみ。柱のようなもので空間を区分しているが、居酒屋・スナックという場所を作り込んでいない。このセットはシーンに応じて居酒屋、スナックという空間を共有していることから、それぞれの空間を固定させない工夫。

物語は、2人が付き合いだして6年が過ぎ、最近お互いの気持が解らなくなってきた。そろそろ”結婚”という言葉もちらつき始めたが、何となくチグハグした気持と行動。その結果、みなみ は別れることを決心し、新しい恋愛へ…。この本筋が、何故気持が解らなくなってきたのか、その描き方が弱い。一方、みなみ の高校時代の友人5人は27歳の等身大の女性を描く。と言っても早い段階で自己紹介(名前と職業など)をするだけで、それ以降も1人ひとりを掘り下げた描きがないため群像劇にもならない。2人の恋愛でも群像劇でもない中途半端な印象だ。ここに映画と演劇の観せ方の違いがある。フライヤーにある”私たちのたしかな賞味期限”という、20代半ばの焦燥のようなものが透けて見えるだけで、切実度は弱い。

物語で印象的なのは、女性の27歳というのは恋愛や仕事にも微妙な年代であるということ。年齢をもって容姿や思考を云々する理屈よりも、優等生面の友人の不幸を面白がる、SNSで絡まなくなる(連絡なし)などリアルな感情表現が面白い。例えば高校時代から優等生で仲間内で唯一結婚している浅野京子、彼女は地方銀行に勤めたが、合併の影響でリストラされ再就職は難しいという状況。そして夫からは離婚を迫られるという悲哀、それを面白がる姿も…。また保育士の給料が13万という台詞から、経済的に生きづらい実態を語る。こちらの脇筋が27歳女性-賞味期限-が実にリアルに伝わる。その意味で本筋と脇筋が上手く絡まれば、もどかしく表現し難い感情がもう少し伝わると思う。

物語の途中でダンスや歌(カラオケ)といった観(魅)せるサービス? 物語を分断しない工夫をしながら挿入する。舞台セットの色使い(白いテーブル・椅子、赤い敷物、段差ある上部はピンク)や外観、物語の展開の印象はポップ調。明るく元気な芝居は楽しめた。
ちなみに、たびたび出てくる苺ケーキは、その昔言われたクリスマスケーキ(25日→女の25歳過ぎ)の売れ残りの比喩であろうか?
次回公演も楽しみにしております。
舞台「盆栽」

舞台「盆栽」

ALPHA Entertainment

渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール(東京都)

2020/02/05 (水) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★

登場人物は6人、そのうち日本人は1人(女性)。他はアメリカ人、イギリス人といった設定である。正確に言えば日本人も結婚しており日本国籍ではないかもしれないが…。物語は生まれ育った環境、それぞれの国の伝統・文化の違いを、「盆栽」を介して浮き彫りにする。「盆栽」が日本人の心の象徴なのか分からないが、何かを介在させて 生活習慣、考え方などの違いを描くことで、夫婦のありようを考えさせる。
物語に必要な介在物は「盆栽」でなくとも説明出来ると思うが、その何かを利用して夫婦、隣人にまで広げた人間洞察・関係を巧みに描き出す。些細なことでの口論を盆栽ならぬ仲裁をする人がいないことから会話が漂流するように漂い、行き違い、誤解など そのかみ合わない様が実に面白い。
(上演時間1時間30分)

ネタバレBOX

舞台セットは主人公夫婦 ベン(森岡龍サン)とミカ(大谷麻衣サン)が住む集合住宅のダイニングキッチン。中央にダイニングテーブル、上手側にキッチン、下手側にソファーと”盆栽”がある。もちろん小物等も充実しており、セットを事細かに説明しきれないほどだ。
物語は日常を描いていることから、時間的な経過は照明の諧調によって表す。また音響等は会話劇であることを意識している。その意味で、舞台技術は物語のコミカルな丁々発止とは異なり、現実感そのもの。舞台セットと技術というしっかりした枠があるから、物語が日常という世界に収まる。そして日常の夫婦関係における確執や軋轢が浮き彫りになってくる。登場する人物の性格や仕事、その立場などが騒々しい会話の中で自然と説明させる上手さ。

面白いのは、アメリカ人である夫ベンが良く言えば大らか、悪く言えばマイペースといったところ。妻ミカ(日本人)は、物事に細かく、決まりごとを建前にする、といった設定のようだ。この夫婦をアメリカ、日本人の代表のように描く。冒頭の目覚まし時計に関するうん蓄はその典型的な会話。
逆に「盆栽」の精神的な効用を説くのはベン、ミカは興味もない様子。何かの価値判断は、人それぞれ、日本人(ミカ)≠盆栽にしないところに、この物語の妙がある。
後日追記
クリシェ

クリシェ

ティーファクトリー

あうるすぽっと(東京都)

2020/01/29 (水) ~ 2020/02/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

自分では、完成度の高い舞台芸術を観たという印象だ。脚本、演出、照明・音響といった舞台技術はもちろん、役者の演技力が素晴らしかった。
タイトル「クリシェ」は、サスペンス映画の名作へのオマージュ、紋切り型のメロドラマのことらしい。タイトルを意識した公演は観応え十分だ。
(上演時間1時間50分)

ネタバレBOX

舞台セットは、正面に豪華なソファーとテーブル、上手側にピアノやサイドボード、下手側に二階部への階段が設えてある。後方に立てた棺桶と更衣室のような立方型スペース。登場人物の幼女期はドール人形を用い、現在と過去との肉体(美貌)的な違いと独特で幻想的な雰囲気を醸し出す。
物語は、”元気な死体”がストーリーテラーを担い、同時に物語の謎解きをする探偵の役割を果たす。豪邸に住んでいる元女優2人。しかしまだ現役として、そんな自意識の下、プライドも高く我が儘。この人物を還暦を迎えた「女優」2人(加納幸和、川村毅)が実に面白おかしく、時に切なく演じる。後日追記
パズル

パズル

A.R.P

小劇場B1(東京都)

2020/01/28 (火) ~ 2020/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初日観劇。
物語は、いくつかの場面をピースとして はめ込むような展開で、まさしくタイトル「パズル」である。例えば、後方モニターに「権謀術数」「疑心暗鬼」等の文字が映され、そのイメージシーンがカット割りというか繋ぎ合わせのように描かれる。それぞれが独立して描かれるが、これがどう収斂されていくのか、実に巧い導入である。舞台セットや台詞から後々重要な関連が…そんな関心を抱かせる巧みさ。
当日は、関東地方に降雪予報、実際は降雨・寒風であったが、観劇後は心温まる、そしてコメディとしての醍醐味がしっかり味わえる笑作、いや秀作である。

この劇場は2方向から観劇でき、場内スタッフは出入り口から左側が観やすいと案内していたが、ミニ椅子だったため あえて右側の席(当日は自分だけ)へ。入口近くのコーナー付近であれば、それほど観難くないと思う。逆にこちら側でなければ観られないであろう役者の表情が間近で観ることができ、さらにはカーテンコール(写真撮影も可)では自分だけに挨拶してもらったようで少し嬉しかった。
(上演時間1時間45分)

カラカラ。

カラカラ。

劇団もっきりや

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2020/01/23 (木) ~ 2020/01/26 (日)公演終了

満足度★★★★

鋭く重い問題提起をしたような公演。説明文にある原因不明の病気が発症し、患者はカラカラにひからびて体内発火を起こすという。国は患者を隔離し施設内だけで生活させる。何となく日本であったある病気と国の対応を連想させる。原告は国を相手取り裁判を起こし国家賠償を勝ち取ったと記憶している。
時々、笑いを誘う台詞もあり、観せることにも配慮した好公演。
(上演時間1時間35分)

ネタバレBOX

舞台セット…周りは暗幕、正面奥は紗幕があり別場所を表し、客席側は上手・下手にそれぞれ施設長の執務机・医師の診察机が白シーツに被われている。その白黒といった雰囲気が怪しく、物語の概観を表しているようだ。

先に記したカラカラ病の体内発火は本当なのか?デマ、噂のたぐいで風評そのもの。それによって理不尽にも施設に隔離され、生活範囲を制限する。何となく日本におけるハンセン病を連想させる。施設内という場所だけではなく、就学・就労・結婚差別(公演では遺伝子レベルの病のため妊娠不可)など様々な差別や偏見などがあったと聞く。それは物語の台詞にある善良な市民によってである。さらに言えば身内でさえも患者を隠蔽せざるを得なかったらしい。

本公演では「自由」の論議として「liberty」「freedom」を持ち出し、自由を主張する、要は自由を勝ち取らなければならないのが前者であると。「自由」と一概に行ってもその権利獲得の有・無が施設内・外にある「自由」の違いである。そこにアウシュビッツ強制収容所の”働けば自由”という歪曲した論議まで飛び出す。

「差別」「自由」を強調した物語だが、さらに「特別」という隠蔽手段・手法を描いている。臭い物に蓋をするだけではなく、そうした環境下における「特別」な計らいで隠しておきたい事柄を正当化する嫌らしさ。根拠のない差別や制限、さらに怖い国家権力による「紙一枚」による理不尽な強制”力”をまざまざと描いた批判劇。
今の世はインターネットを通じて情報が瞬時に得られるようになったが、その内容は混合玉石、必ずしも全てが正しいとは限らない。逆に言えば虚偽で人を陥れるようなものもある。国の施策に注視し、自分で考え行動する、そんな当たり前のことが風評によって左右される怖い世の中であることを痛感。
次回の公演も楽しみにしております。
『大人の銀河鉄道の夜』

『大人の銀河鉄道の夜』

お茶の間ゴブリン

上野ストアハウス(東京都)

2020/01/22 (水) ~ 2020/01/26 (日)公演終了

満足度★★★★

自分の人生は自分のもの、そんな当たり前のことが分からなくなる時がある。その時に現れるのが上野公園、国立科学博物館前のSL銀河鉄道である。その(始発)駅は既に廃駅になっている「博物館動物園駅」から飛び立つと…。人生の岐路 迷ったとき、いろいろな人からのアドバイスを受けるが、最終的に決めるのは自分だ。それまでの地位や名誉、さらには美貌などもいつかは無くなり衰える。それに しがみ付くことなくしっかり考え生きていく。かと言って迷い考え過ぎて決断できない、それも何かの時機を逸してしまう。
そんな「大人の思考」...銀河鉄道の旅というファンタジーな世界観で堪能させる秀作。
(上演時間1時間50分)

ネタバレBOX

舞台セットは形状の異なる箱馬が並べられ、物語が展開するたびに置く位置や組み合わせを変え情景を演出する。後ろは市松模様の床、後景は少し高い箱馬が見える。そのシルエットは高層住宅をイメージさせる。箱馬に刻まれた彫刻模様への照明は、幻想的な効果=銀河への旅立ちを印象付けるもの。ただ銀河鉄道のイメージはこのシーンだけ。出来れば、暗転時に大掛かりでなくても豆電球の点滅などで雰囲気作りが出来ないだろうか。これも小ネタにある、小劇場的な制約か大人の事情だろうか?

物語は岡田奈津美(大手企業OL)と飯田梨花(水商売 Bar)という2人の女性が、キャリアか恋か、もっと言えば自分は何をしたいのか?そんな悩める姿を通して、誰もが経験するような思考を共感させる巧みさ。もちろん、この物語のタイトルから「銀河鉄道999」を連想させ、さらに「銀河鉄道の夜」や「青い鳥」といった基の物語の枠組みを上手く盛り込んでいる。もともと寓話性が強いが、本公演はパロディとして上書き、敢えてそれを強調する手法で独自の演劇スタイルを構築しているところが好い。
後日追記
なにをシェアするハウスター

なにをシェアするハウスター

チームホッシーナ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2020/01/22 (水) ~ 2020/01/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

常識や普通って何?誰か第三者の目を通して見た、感じたあやふやな基準によって縛られるのか。そんな意味深な問題提起をするような物語。逆に言えば、シェアハウスの住人は自由人、第三者から見れば少し変わった人たち。しかし変わっていると思うことが「常識」「普通」といった先入観、偏見によるもの。何となく理屈っぽく思えたが、それでも人物設定の妙とその個々人の立場、キャラクターを立ち上げた役者の演技は面白かった。
そしてゲスト(木村花代サン)をこのように演出するとは…笑いの中にも、しっかり観せ聴かせていた。
(上演時間1時間50分) 

ネタバレBOX

舞台セットは、シェアハウスの建物外観を表す木材支柱。中央手前にダイニングテーブル、椅子、後方にソファーという団欒空間。木枠による構図や室内ブランコを持ち込むことで空間的な広がり、そこに”自由”というイメージを持たせる。一方、テーブルやソファー、収納BOXなどは暮らしといった日常を演出している。その歪というか不思議なバランス感覚は物語の概観をイメージさせており、巧みな演出だと思う。さらに空間的な広がりは客席通路を用い室外も演出する。物語の展開を分かり易く、そして内的心情を表出している。役者は個々人のキャラクターを立ち上げ、ミュージカル風として楽しませるサービス精神も好かった。

物語は母、娘が女性専用のシェアハウスに入居することによって起きる騒動を寓話的に描いた秀作。登場人物に負わせた性癖、立場、環境による偏見や差別を通して、何が「普通」かを問う。観せ方はユーモアを交えた描きであるが、そこに潜む問題提起は広範で鋭い。登場人物はゲイを通じて性的少数者(LGBT)、帰国子男(日本人だが英語で話し、アメリカでは外国人として差別)、コスプレオタク(いつまでも追っかけ独身?)、男性(恋愛)依存の傾向など、いろいろな”癖”のある人々だが、それが世間に理解されず受け入れてもらえないもどかしさ。その不寛容さが、少数の性癖者等にとっては息苦しい社会(世間)になっている。

一方、マンガ「めぞん一刻」に登場する美貌の管理人・音無響子さんといったイメージの大家兼管理人が普通の人の代表しているようだ。そしてハウスで起こった事件を通して、普通=何か目に見えない(世間体?)のようなものに縛られ自由に振舞えないといった悲哀が透けてくる。
ちなみに説明にあるセーラー服のスカートが嫌(否)という理由が”何となく”というもの。もう少し説得力のあるとよかったが…。
次回公演も楽しみにしております。 
イヨネスコ『授業』

イヨネスコ『授業』

楽園王

サブテレニアン(東京都)

2020/01/21 (火) ~ 2020/01/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

未見の不条理劇…自分にとってこの公演が今後の同作品の基準になる。たぶん、本公演は文章でいう倒置法のような描き方になっているのではないか。つまり結論が先になり、その説明を順々に展開していく。そうすることで難解と思われそうな公演を解り易くする演出的な工夫である。確かにその面は良かったが、逆に不気味に逆転していく立場と言った不条理の醍醐味が弱くなったように思えたのが残念だ。
(上演時間1時間20分)【Aチーム】

ネタバレBOX

舞台は一方向(2段)からの観劇。上手・下手側の中間に白線が引かれ、基本的に左右対称の配置。長テーブルを挟んで椅子2脚。壁には額縁と時計が掛けられている。そして部屋番号のような表示があったが、女中マリー(小林奈保子サン)の台詞から犠牲になった生徒の人数のようだ。
冒頭は、上手側に生徒1(杉村誠子サン)が手錠をしたまま うつ伏せに倒れているところから始まる。犯人は個人授業を受け持っていた教授(岩澤繭サン)が激怒して刺殺した。

本来「授業」の登場人物は教授と女子学生、そして女中の3人らしい(正確には解らない)。しかし本公演では生徒1・2と2人登場させ、物語に幅(1人の生徒に算数と言語学の授業をするところを生徒2人の場面に分割)を持たせ不条理を際立たせようと試みているようだ。そして教授は血気盛んな女性教師と設定している。そこに同性同士、年齢的に近い教える側と教わる側の微妙な立場を確立する。

下手側スペース、生徒2(日野あかりサン)は手錠をしたまま、言語学的な講義を受けている。分かったような分からないような珍妙な台詞が威圧的に述べられ困惑している。生徒は教授の狂騒的な饒舌に辟易し歯痛?を訴え始める。
次に上手側スペース、生徒1は博士号の試験に合格するため、教授の個人指導を受けている。授業は初歩の算数から始まり、生徒1は教授の出す足し算の問題には正答するが、引き算になるとその概念を理解していない。だんだん教授はイラつき女子学生に対して威圧的になる。教授・生徒「支配・被支配」の立場が際立ち、教授は生徒に対して攻撃的になり、生徒は意気消沈していく。こちらも歯痛を訴える。

生徒の出来の悪さに逆上した教授は、生徒をナイフで刺し殺す。教授は打ちひしがれた様子だが、女中はもうんざりと言った雰囲気。なぜなら、この日、40人目の犠牲者だからだ。この生徒1がうつ伏せになっていた冒頭シーンへ回帰(実際は別の犠牲者。38人目と40人目)させているかのようだが…。本来の「授業」は教授と生徒の態度というか精神的立場が逆で、それが授業を通じて徐々に支配・被支配へ逆転していく展開、その不条理の構図が観えてくると…。本公演は冒頭から(女)教授の狂騒が描かれ、場景の変化という見せ場が弱かったという印象で勿体なく思う。
次回公演も楽しみにしております。
「朝日のような夕日をつれて」

「朝日のような夕日をつれて」

株式会社STAGE COMPANY

本所松坂亭(東京都)

2020/01/14 (火) ~ 2020/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

物語は説明から「ゴドーを待ちながら」をベースに2つの世界が交錯しながら進んでいくと…この物語に主人公は姿を現さないのだろうか。その主人公が抱える不安や寂しさが舞台上にいる男優5人によって浮き彫りにされていく面白さ。作は鴻上尚史氏、演出は逸見輝羊氏である。当日パンフに逸見氏は、つかこうへい 作品の演出しかしたことがないと記している。つか作品らしい熱量ある演出・演技であるが、やはり別ものであり それはそれで十分楽しめた。
卑小なことだが気になるというか…。
(上演時間2時間弱)【EXver.】 

ネタバレBOX

暗幕で周りを囲った素舞台。それだけに役者の力量が問われるが5人とも熱演。演技は良かったが、1人だけ汗だくで顔から汗が滴る。最前列で観ていたが、何故か気になった。
後日追記
『nine write』

『nine write』

ARC(An Reve Connecter)

新宿スターフィールド(東京都)

2020/01/15 (水) ~ 2020/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

木を隠すなら森の中…そんな言葉を連想させるような物語。物語はサスペンスミステリーといった展開であるが、場景は怪(妖)しげな雰囲気を漂わす独特な世界観。謎解きとしては少し解かり難く、自分が観た回では、終演後に観客数人がキャストに確認していたほどだ。公演全体としては雰囲気とキャストの演技に魅せられた、と言った印象だ。
(上演時間2時間)【Bチーム】 後日追記

ネタバレBOX

セットは、上手側に大きな時計、正面には緋色カーテンと窓、下手側に絵画という不気味な雰囲気の山荘内。登場人物分の椅子が置かれ、シーンに応じて配置を変える。
山荘の主人が”ある物語”を書いてほしいと依頼。もちろん謝礼は高額だが書く内容は条件付き。ある災害を背景にすることだが、ここに集まった全員はその事件に関わっているという曰くつき。
スノー・ドロップ

スノー・ドロップ

感情7号線

劇場HOPE(東京都)

2020/01/11 (土) ~ 2020/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

2020年と2026年の時間軸の違う物語と、さらに時間の概念とも言えるような別次元を描いた技巧的な作品。
時間軸が表層的な物語とすれば、別次元の話はどうして2020年と2026年の思いが繋がっているのかを説明する挿話的なシーン。それは時間軸にある物語として観るというよりは、失われた時間をどう描くか、その”思い”の大切さを表している。さらに2020年の観点と2026年の観点で描いているから、どの時点なのか考えて観るのが煩わしく思える。それでも公演に通底する優しさ、温かさは伝わる。
(上演時間2時間弱)【Bチーム】 後日追記

ストリッパー物語

ストリッパー物語

URAZARU

オメガ東京(東京都)

2020/01/15 (水) ~ 2020/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

つかこうへい の「ストリッパー物語」は未見だったから、自分ではこの素晴らしい公演が今後の基準になる。ストリッパーとそのヒモの究極の愛情物語。人に後ろ指さされようが蔑まれようが愛する人のため、その一途な思いが圧倒的な迫力をもって描かれる。その熱き、そしてピュアな思いが観客の魂を揺さぶる力作。冒頭の妖艶にして力強いダンスパフォーマンスが公演全体を象徴しているかのようだ。
全てにおいて、本当に観応えがあった。
(上演時間2時間)【青組】 2019.1.28追記

ネタバレBOX

舞台セットにはいくつかの箱馬があり、それを組み合わせることで時々の状況を作り出す。物語の表層はストリッパーとそのヒモの愛憎劇であるが、なぜか離れられない女と男の奇妙な縁が描かれる。それは理屈で論じるようなことではなく、生身の人間が生きている それだけで素晴らしいと思わせる力強い物語だ。もちろんヒモの娘の夢を投影してかつての自分の夢を語る、そこに生きる-夢や希望といった未来志向が見えてくる。しかし事情があって果たせなかった夢を…。

本筋はストリッパーの明美(月海舞由サン)とヒモのシゲ(高橋ひろしサン)、脇筋がヒモの娘・美智子(酒井瑛莉サン)との心情やストリッパー小屋の人々との交流を上手く織り交ぜることによって、本筋の2人の愛憎が鮮明に浮かび上がる。つかこうへい作品らしく、独特な(力強い)台詞回しが印象的だが、本公演の魅力は、動静二面を巧みに交差させ平面的な描きにしないところ。例えば、現実のシーンは人物がその性格、立場や情況に応じて罵詈雑言、心情吐露を荒々しく動的に強調するが、一方、娘からの連絡は手紙といった情緒ある静的に描く。現代のようなインターネットという手軽な通信手段ではなく、「手紙」を巧みに取り入れることによって一定の期間が必要、その静止/朗読が昭和という時代背景と相まって哀愁とも思える絶妙な余韻を残す。

堕ちるところまで堕ちる、その怠惰というか惰性的な台詞とは裏腹に愛憎に潜む”真情”を認め合う、それは形を変えた純愛にも思える。場末のストリップ小屋を舞台にしているが、なぜか格調高く清々しく思えるような公演。もちろん時代に合った音楽選曲、心情・状況を演出する暖色系照明など舞台技術も効果的であった。
次回公演も楽しみにしております。
寓話のゴーグル

寓話のゴーグル

Pave the Way

劇場MOMO(東京都)

2020/01/13 (月) ~ 2020/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

物語が進むにつれて内容が深堀されていくような重層的な公演。冒頭は在り来たりに思えたが、タイトルにある寓話は主人公の深層心理を表し、ゴーグルはその透視アイテムといったところ。何となく観せ方がセンチメンタルのようにも思えたが、一方、この場に集められた無くて七癖の人々の悩み、その思いが単純な”お涙頂戴”ものと一線を画す。そこにこの公演の面白さがある。
(上演時間2時間)【Aチ-ム】後日追記

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