タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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蜘蛛女のキス

蜘蛛女のキス

パンダの爪

不思議地底窟 青の奇蹟(東京都)

2014/08/31 (日) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

濃密な会話劇
ブエノスアイレスの刑務所に収監されている囚人の会話劇。

基本的には二人芝居で、ストーリーテラーの役割が二人、さらに場面転換と思われる時に出てくる歌い手1名、計5名でストーリーを紡ぐ。上演時間は休憩10分を挟み4時間という長編である。

 また、「不思議地底窟 青の奇蹟」 という劇場は初めてで、地下なのにさらに暗幕で囲っている。地上に出るドアは両開きの綴蓋(とじぶた)で、正に監獄のイメージ・雰囲気だった。

 自分はこの作品を映画(同名、1985年制作)で見たが、その意義深さを感じるには、まだ若すぎたかもしれない。

ネタバレBOX

自分の暮らしと政治を切り離し、未成年との性行為に及んだ罪で収監された、ゲイのモリーナ。一方、過激な反政府思想を持ちゲリラ団に加わり、反政府運動を行った咎で収監されているバレンティン。

堅く言えば、思想・信条が異なる二人が同房で過ごす日々。
その環境は、かたいベッド、粗末な食事、そして不衛生な衣服と劣悪なものばかり。
そんな状況下においてモリーナが好きな映画の話をバレンティンに聞かせ、いつの間にか交情を結ぶ。
この濃密な会話にこそ、当時のアルゼンチンの国情が見て取れる。

そして、実はバレンティンの所属するゲリラ団壊滅を図るため、刑務所長に買収されたモリーナの仕掛け。
こちらは人間の暗部を鋭く抉り・・・、監獄という小窓を通して“人間とは”、“国政とは”という極めて高次元の課題を取り上げていると思う。逆に底辺で蠢く人間だからこそ、その厭らしさが分かるのかもしれない。

今後の公演にも期待しております。
ガチ秘密基地リスト~デルタウロスの野望~

ガチ秘密基地リスト~デルタウロスの野望~

かけっこ角砂糖δ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/08/29 (金) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★

面白かった
あまり学生演劇は観ないほうであるが、本公演はシアターグリーン学生芸術祭参加作品ということで拝見した。約2時間という長編であるが見応えがあった。上演後、学生(たぶん)が考えさせるな~、との感想を漏らしていたが、その通りだと思う。
ストーリーはSF風でありながら、その描く根底は人間賛歌であろう。実に学生演劇、という感じである。
少し気になるところが…

ネタバレBOX

芝居としての観せ方は教訓色が強かったと思う。
その演出はリターンを多くすることでストーリーの流れを丁寧に描いていたが、逆に観る側が楽しむ状況の想像性を奪うことになった。
これは観客の受容性の問題かもしれないが・・・。
上演時間約2時間を考えれば、同一シーンは割愛し、状況説明はある程度観客の想像に委ね、メリハリの効いた公演にしてはどうか。

また、演技は“パワー”、“情熱”という力強さを感じたが、一方“間”、“情感”が乏しく一辺倒な観せ方になったと思う。

公演全体としてみれば、良い所(演出の丁寧さ、熱い演技)が勝った好公演だと思う。
HAPPY END

HAPPY END

劇団ORIGINAL COLOR

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2014/08/28 (木) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★

もう少し演出に妙があれば…
芝居の導入部は”ゆるくて、えぇ~”、結末は”ピリッとし、おぉ~”という、最初・最後に違和感のある演出・演技であった。
たぶん脚本は面白く、また考えさせる内容になっていると思わせるが、それを伝えきれていないところが残念であった。

ネタバレBOX

当初、SF・異次元世界の雰囲気を出しつつ、実はバーチャル世界観を見せてくれた。そこには興味深いエピソードがちりばめられており、1つひとつをとって見れば自分の性格的なものに当てはまるかもしれない。たとえば、「シャイで女性と話すのが苦手」、「しっかりサポートする役目を果たす」などである。
脚本は芝居全体をバーチャルで包み、オチをつけて観せてくれた。導入部にあるセリフ「繰り返し」が暗示していた。この”バーチャル・メモリ・システム(仮想記憶方式)を利用したストーリーは面白かった。
一方演出は、その(魅)せ方が足りなかったと思う。場面転換にメリハリがない、もしくはその方法がワンパターンのように思われた。たとえば、舞台上(または舞台裏も使用)をクルクル回るだけで、目先の変化がない。観客へのアプローチに変幻を持たせることで集中力・感情移入を図ってほしい。
また演技は、総じて淡々としており、魅力ある人間像が描けていないように見えた。最後のオチに結びつけるには、もっと人間らしく(見)魅せ、実はバーチャル内の存在というギャップ感を上手く演じて欲しかった。
脚本の書き込みが演出・演技に十分伝わらない、それこそ絵空事になっているようで残念でならない。
次回公演を期待しております。
のらん

のらん

TEAM 54 Produce

博品館劇場(東京都)

2014/08/29 (金) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★

大塩平八郎…
“のらん”、だそうだ。シャレたタイトルから推察できるように、ポップ調の楽しい演出である。30人の男優だけの歴史群像劇…時代は江戸・天保8年のこと。当時の大飢饉に際して庶民の側に立った大塩平八郎、その名は日本史教科書に必ず出てくる。
さて、本公演の平八郎はどちらかといえばカッコ悪いが、どこか愛嬌のある人間くさい描かれ方である。時代背景や“乱”を詳細に描くわけでもなく、さりとて人間性を深堀することもない。また、時代劇にある殺陣もない。しかし、しっかり2時間30分程観(魅)せてくれる。娯楽時代劇に徹底した制作だから、歌やダンスをふんだんに取り入れたエンターテイメント作品に仕上がっている。
フライヤーの「実話を元に描くアラフォー全力投球のヒストリック・コメディ!」はウソではない。

ネタバレBOX

主人公は、元・町奉行組与力という侍であるが、その人物像は優柔不断で頼りなく描かれている。しかし、その取り巻きの人々は平八郎を尊敬しており、何くれと世話を焼いている。
多分、実話と違うであろう人物像を前田耕陽が魅力的に演じていた。

フライヤーにある 「総勢30名の男だけで送るどうしようもない失敗ばかりの物語~前田耕陽芸能30周年記念公演」 を十分堪能した。
アムステルダムの朝は早い

アムステルダムの朝は早い

劇団半開き

王子小劇場(東京都)

2014/08/27 (水) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★

興味深い
留置場と拘置所の違いは漠然とわかっていたつもりだが、その施設の間には行政管轄の違いだけではなく、もっと大きな違いがあるようだ。学生の時、民事訴訟法、刑事訴訟法という講義があったが、民訴=眠訴、刑訴にいたっては履修したかも忘れてしまっている。しかし、この公演を観て”驚訴“または”恐訴“した思いだ。
さて、人間「魔が差す」ことはあるだろう。この公演は、普通に生活していた人間の透けた間が生んだ、取り返しのつかない話。そして「真が射す」こともなく、現代日本における法・制度の悪弊、しかし、そこでは常識や道理が通じない恐怖がよく描かれていた。
たぶん、細かい齟齬はあると思うが、先に記載した法制度、行政という枠構造への鋭い批判、一方、自己の曖昧な感覚に基づく道徳感や正義感は、法という枠内では意味を持たない。正義とは、その基準は何か(国によって違う)という主人公の叫びは考えさせられる。とても興味深い公演だった。
最後に、総じて若いキャストだが熱演で見せてくれた。
この公演は、劇団”半開き“以上の“八分開き”で、今後の公演が楽しみである。

赤と黒=RED&BLACK

赤と黒=RED&BLACK

劇団ドガドガプラス

浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)

2014/08/22 (金) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★

「ピンクと黒」…のような
○○商業高校における歴史認識からの発展話。芝居にダンス・歌を織り交ぜた舞台というところだろうか。その混合舞台の中で2名の玉石が舞台を牽引する。もちろん「中田有紀」と「ゆうき梨菜」である。
スタンダールの「赤と黒」の主人公:青年ジュリアン・ソレルが大女優に成長していく樹里杏 逸涙(中田有紀)になり青春・恋愛・野心・嫉妬という人間ドラマ。そしてフランスの支配階級の腐敗を鋭く批判した小説は、この舞台では日本の満州における映画を通じた文化浸透に関与する樺島芳子(ゆうき梨菜)に置き換わり・・・面白く観せてくれた。
さて、タイトル「赤と黒」ほどに際立ったコントラスト(階級間差)は観られず、むしろ華やかな舞台女優の内なる絶叫のように感じた。その意味では”赤”ではなく、妖しい華=ピンクというイメージであった。
ところで、冒頭書いた○○商業高校は、実在する高校名に酷似しており、その高校の演劇部は某演劇祭に参加することになっている。本公演の出演者に関係あるのだろうか。

空 -SORA-

空 -SORA-

劇団ZAPPA

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2014/08/21 (木) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★

面白い!
「天」チーム観劇。典型的な娯楽時代劇…幕末における勝海舟とその父(小吉)の物語だが、父と子の話を交錯させ、さらに時代背景を絡め物語を紡いでいく。
父子の話が別々に進展するが、終盤それが結びつき見事な結末へ…。また、公演全体がポップな感じであるが、“勝海舟”のエピソードとして有名な場面は、時刻期限を設けた約束事を織り込み緊迫感を持たせた。緩急ある演出は実に見事であった。
最後は、公演タイトル「SORA」という言葉が生きてくる粋な仕上げ。

ネタバレBOX

[SORA」の直接的な音は、長屋の娘の名が「そら」という。その娘は段々と記憶が無くなる病だという。その娘に何か強烈な印象を残そうと”空”に飛ぶことを試みること。そして、弱者としての庶民が下ばかり向いて、の対語として空を見上げろとの激励語。
空を飛ぶ場面は、西郷隆盛との会談時刻に間に合わせるシーンと、娘「そら」が彼女に想いを寄せる青年と一緒に飛ぶシーンの2回である。この時、舞台上には多数の障子が並び、さながら羽ばたくイメージになり印象深い。
さて、海舟は幼いころの記憶から父に嫌悪感を抱いていた。しかし、父の友人から真相を聞きわだかまりが氷解していく。
ラストは、海舟が誕生したシーン。舞台中央で小吉が赤ん坊を高く抱き上げて、周りを多くの人が手を上げて祝福したところで終幕。そこに色々な思いを込めた”SORA”が観える。
自分の勝手な思いであるが、子・海舟を通して政(まつりごと)を、父・小吉は市井の人々の生活を…立場・視点を変えることで、当時の状況・世相を上手く描いたところに好感を持った。
終電車脱線す

終電車脱線す

劇団俳協

TACCS1179(東京都)

2014/08/27 (水) ~ 2014/08/28 (木)公演終了

満足度★★★★

面白い…それなのに無料だ
準劇団員公演…椎名麟三:作「終電車脱線す」は、見応えあった。
毎回、準劇団員公演は素晴らしく見逃せない。(Bチーム)

さて芝居の時代背景は、終戦から2年後の物資不足の頃である。
老朽化した終電車が山林で脱線し、乗っていた客と乗務員の心理状態…極限状況に直面した時の物語である。
人間の弱さ、脆さ、欲望、狂気が垣間見える作品である。
ただ少し気になることが…。

この秀逸な公演が”無料“というのだから驚きだ。(上演時間50分)

ネタバレBOX

乗客は、会社員(既婚)、ダンサー(人妻)、女小商人、男工員、老人、中年女、浮浪児(女)と乗務員2名の9名が、夜の山林で救助を待つがなかなか来ない。焦り、不安、恐怖で段々と精神が苛まれ…。人間のエゴが見えてくる。
人間ドラマであると同時に、戦後日本の姿を描いた社会ドラマでもある、と思う。極限状態における車掌の「全ては戦争が悪いんだ」という叫びは、当時の日本の混乱世相を現しているようだ。

さて、気になったのは次の2点である。
人間性が見えてくるのが早すぎる気がする。脱線から1時間経過した時から異変が見えてくるが、そんなに人間の心は敏感なのだろうか?

また、小商人が生きている姿をラストシーンに再登場させる必要があったのか。この描写の意味が気になった。
Bz@maybeせかい

Bz@maybeせかい

コジョ

pit北/区域(東京都)

2014/08/21 (木) ~ 2014/08/24 (日)公演終了

満足度★★

「ファウスト」に対するアンチテーゼをもっと…
ゲーテ「ファウスト」がモチーフのようだが、設定状況・描写が粗かったように思う。台詞におけるアンチテーゼという件はなんとなく分かるが、舞台として観(魅)せるには難しかった、というのが第一印象である。
公演を観ながら「人間の歩みは、過去・現在までは連続、しかし未来は必ずしも連続するか?不連続になるかもしれない。そして、きれいごとだけでは」など、変に哲学的なことを考えた。
なにしろ主人公の行く先は…

ネタバレBOX

主人公は自殺するが、そうなる心の変化の過程が分かり難い。いろいろなストーリーが入り込んで、究極は何を描きたいのか、今回では完結しないのだろうか、など疑問が残る公演だった。

主人公は人がよく優しいが、他方、無関心・無頓着というキャラのようだ。そして、会社の同僚で友達だと思っていた男に妻を盗られた。
自殺し幽界でメフィストフェレスと約束を結ぶことになるが、ゲーテの詩劇「ファウスト」をそのまま準えても難解であろう。ちなみに原作では、メフィストフェレスはファウストを誘惑し魂を売ってもらう約束で従者になり手助けをしながら旅をする、というものだったと思う。

さて、公演では幽界(または現世に戻った)に神(?)、神父、尼僧、怪物から自分の子、元妻、妻を盗った男まで登場してくる。それぞれが現れてくる必然性とその伏線がなく、また、あったとしても分かり難く、唐突に登場してくるという印象である。もう少し脈絡を付けて、納得できたらよかった。結末も”善人面から自我に目覚め、気持に正直になる”という仮面の告白のような展開だ。

変化の状況説明が不足しているような気がする。この公演には続きがあって…と思うのは、中途半端でありながら余韻が残るからである。
そうであるならば、次回公演が楽しみである。
ままごとの次第

ままごとの次第

インプロカンパニーPlatform

ザ☆キッチンNAKANO(東京都)

2014/08/21 (木) ~ 2014/08/24 (日)公演終了

満足度★★★

タイトルも気にして
インプロ(即興劇)は、その機転・発想の豊かさが芝居に表れる。前説から既にインプロ導入部となり、観客の心をつかむ。この前説はやや緊張気味でその後を心配したが、それは杞憂に終わった。
さて、インプロは端的に言えば観客から”お題”をいただき演じていくもの。それゆえ普段の練習が大切だ。当日パンフには、インプロ練習の「勧誘案内」が入っていた。本公演はその不断の稽古が実を結んだと思う。
開演まで観客の男女比や年齢層は分からない。しかし本インプロは大方の人が理解し納得できるオチを見せてくれた。
次回公演も楽しみである(ちなみに、エレベーター内で次回公演(2015年3月予定)に出演する女優の方と一緒になったが、テンションと同時にハードルも上がったと心配していたが…)。
実満足度は★3.5

安部公房の冒険

安部公房の冒険

アロッタファジャイナ

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2014/08/23 (土) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

安部公房…人間ドラマ
新国立劇場_小劇場、舞台セットは下手に仕事場兼若手女優とのラブ場面、上手は家庭生活と妻との夫婦関係の場面に見立て、同時並行に二人の女性との間を揺れ動く様を観せる。人間、安部公房の魅力が濃縮された公演であった。

ネタバレBOX

安部公房は小説家というイメージが強く、劇作家としての印象はあまりない。しかし、下世話な表現をすれば”身の上”と”身の下”の虚実織り交ぜたエピソードを散りばめ、人間(男)、安部公房の人物像を浮き彫りにした。
まず、”身の上”では、自分の脚本の演出面に対する不満、海外の高評価への破顔、国内における酷評に対する憤慨など、第三者評価に一喜一憂する姿が人間くさい。また”身の下”では、若手女優と交情し、一方妻とも夫婦関係を続ける。この身勝手で優柔不断な安部公房役の佐野史郎が実にいい。そして妻(辻しのぶ)と若手女優(縄田智子)の女性の性、嫉妬、驕慢が切ないほど伝わる演技も見応えあった。
黒木瞳主演の映画「化身」(1986年、原作・渡辺淳一)を思い出した。設定は文芸評論家とホステスの違いはあれど、段々魅惑的になっていく女性に溺れ、やがて…。この文芸評論家が安部公房、ホステスが若手女優に置き換えれば、と勝手準えてみた。
有名作家・戯作者である安部公房の半生を描いた人間ドラマ…実に面白かった。
ちなみに安部公房、渡辺淳一とも「前立腺がん」だったようだ。
唄のある風景

唄のある風景

ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ

浅草木馬亭(東京都)

2014/08/20 (水) ~ 2014/08/24 (日)公演終了

満足度★★★★

懐かしい歌謡史が…
イッツフォーリーズの心温まる公演で楽しめた。したまち演劇祭参加作品で上演場所は浅草・木馬亭である。浅草・五重塔通りにある木馬亭は、昭和の匂いがプンプン。そして内容は、”したまち”に相応しい日本歌謡の世界を旅するもの。劇団得意のミュージカルであるが、歌われる曲は大正、昭和に流行した、いわばその年代には懐かしいものばかりである。
さて、会場内は小学生の子供からお年寄りまで幅広い世代の観客が一体となって楽しめる、そんな優しさに包まれた芝居(90分)だった。

ネタバレBOX

青年が入った喫茶店、そこの女主人と言葉を交わすうち、自分はピアニスト兼作曲家であるが、悩みがあるので聞いてほしいと。それは過去の名曲に捉われオリジナル曲が書けないというもの。そこからは劇団の真骨頂である。昭和から大正へ遡りながら奏でられる流行歌の数々。その歌い手が登場しエピソードも散りばめながらほのぼのとした笑い。青年はいつの間にか時空を旅して…、気がついたら喫茶店で夢想していたという設定で、芝居ではよく使われる手法だが、観(魅)せてくれた。
ちなみに会場内では、駄菓子やコロッケ(なぜコロッケかは観てのお楽しみ)などを配るというサービスまであった。本当に下町を感じさせる演出は見事でした。
最後に、笠置シヅ子役の勝部祐子さんの演技には笑わされた。上演後に話をした際、普段は真面目なんです~と。役者陣は達者な方ばかりです。
今後の公演も楽しみです。
海との対話

海との対話

東京演劇集団風

レパートリーシアターKAZE(東京都)

2014/08/20 (水) ~ 2014/08/24 (日)公演終了

満足度★★★★

難解だが、力強い印象
「難解な芝居だ」というのが印象である。観客が素で観て分かるという、普通の芝居ではないと思う。その見せ方やセリフが独特だ。さらに字幕が映し出されるがその内容も理解し難い。しかし、どの場面も迫力があり印象深い公演であった。

ネタバレBOX

会場配置は入って左側が舞台、右側が客席になっており舞台面よりいくらか高くなっている。舞台側は客席に対して平行に磨りガラスがあり、舞台を前後に仕切っている。ただし磨りガラスは中央部分だけがなく、低位のステージが設置。客席ひな壇から見下ろしたその無空間から裏(奥)が見える仕掛けになっている。
芝居は、基本的に表(前)舞台で行うため、演じる役者が奥から出てくる。さしずめ奥は楽屋のようである。
場内は薄暗く役者にスポットライトをあてることで観客に集中させる。当日パンフによれば、本公演は12エピソード(場面)からなるそうだが、それぞれがリリックのような描き方である。個人的には何かストーリーを掴むとか表現を理解しようとしても難しいと思う。観たままを”感じる“に徹すると場面ごとが印象深い。表舞台は人間の孤独・煩悩、性癖などの「苦」を、そして裏(奥)舞台は楽しげに談笑、飲酒している姿は「楽」という感じである。自身を内省し対話する。そして内なる「苦」に立ち向かうファイティング…。このアクションがカッコイイ。
TangPeng30 B Group-(石榴の花が咲いてる。)×劇団11×プレス

TangPeng30 B Group-(石榴の花が咲いてる。)×劇団11×プレス

SAFvol.8 TangPeng30-B

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/08/19 (火) ~ 2014/08/26 (火)公演終了

満足度★★★

シアターグリーン学生芸術祭参加作品(短編B)
まだ芸術祭期間中であり、また各作品の感じ方が違うため★評価は控える。
評価★(追記2014.9.9) 

『家路をたどる』(桜美林大学)★2.5
契合するようなテーブルを前にした兄弟姉妹5人のゆる~い会話劇。芝居全体が緩い。

『僕とキミの自転車周遊記』(明治大学)★3
日の出を見るため、男女二人乗りの7.5キロのサイクリングストーリー。オーソドックスな作り。

『距離感を見誤る#』(東京学芸大学)★2.5
雰囲気はデカダンだが、若さ溢れるパフォーマンス。表現内容は理解困難だったが…。

ネタバレBOX

『家路をたどる』(桜美林大学)
母の再婚について話し合う子供5人(10代後半~30歳前)の様子。その会話の「間」や「テンポ」がぎこちない。テーマは何だろう。”家族という枠の中の個人のエゴ”というイメージでよいのだろうか。演出は、契合するテーブルを移動することで場面転換を図っていた。セリフの主客によって座る位置を変えていたが、それは目先のことだけ。逆にその動作は目障りとなり、演出を陳腐にさせると思う。短編を意識しテーマと演出が上手く結びついていれば…残念でならない。

『僕とキミの自転車周遊記』(明治大学)
舞台中央に自転車が一台設置。20歳代の男女が二人乗りして、海まで日の出を見に行くサイクリングストーリー。ペダルは女性がこぐ。走行距離は7.5キロで短編30分の舞台設定にはちょうどよい。物語に大きな変化はないが、久しぶりに会い近況を淡々と話し合う姿は微笑ましい。また、騒音の音響や信号に見立てた照明色など、細かい演出も良かった。暫しの別れを前に、少し切ない思いが滲みでていた。

『距離感を見誤る#』(東京学芸大学)
自分にとって、この公演は意味不明のまま未消化に終わったという感じ。例えば、唐突に子供のころに遊んだ「缶けり」や「ダルマさん転んだ」が演じられるのは?また上半身縛られた女性が下手から上手を立膝で何度も行き来する動作は?
キャスト数が14名と多く、常に舞台上に全員居るから芝居としての空間利用が制限される。一方、狭隘になった空間でぶつかりそうにダンスをするさまは迫力があった。なんとも不思議な公演であった。
『穴の中 或は、■の中』ご来場ありがとうございました。

『穴の中 或は、■の中』ご来場ありがとうございました。

演劇ユニットG.com

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2014/08/13 (水) ~ 2014/08/17 (日)公演終了

満足度★★★★

二律背反か…
素舞台に5ヵ所のたて穴が開いており、その中から人物が出入りする状況は不思議だ。穴の中はどのような生活空間になっているのだろう。興味津々だ。
さて、ビルの何階(地下か?)かに穴が空いたフロアーと見立て、住人が4名(男女各2名)ともう一方…。そこに宅配ピザのアルバイトが迷い込んだ。
さて、本公演は二律背反の様相を呈しながら展開するが、終盤におけるアルバイトの激白が圧巻である。一見ネガティブな主張だが説得力があり見応え十分である。

ネタバレBOX

穴住人の一人(博士)が不老不死の薬学研究を行い、完成したかに見えたが、実は不完全なもの。
一方、拉致されたアルバイトは逃げるため、必死な工作を行うが上手くいかない。生命の危機に直面した激白が感動的である。「限りある”生“を精一杯生きるため夢を持ち、努力するのだ」と。不老不死を望むのではなく、死を認識していくことが生きる糧になるという、一見矛盾した思考を突き付けられた。”生“が有限であるからこそ、「夢」「目的」はいつまでに何を達成するかを明確にして歩み続ける。不老不死のように”生“が無限であればどうなるだろうと…。
カタストロフィーかと思ったが、第5の穴から神様?出現。個人的には、そのシーン以降は主張がぼやける気がするので不要だと思う。
今後の公演にも期待しております。
ひなたのなかのこども

ひなたのなかのこども

風雷紡

d-倉庫(東京都)

2014/08/13 (水) ~ 2014/08/19 (火)公演終了

満足度★★★★

骨太作品だが
初見の劇団であったが、見応えのある公演だった。その印象は調査し綿密に練り込んだ骨太な作品だと思う。下山事件が題材だが、人間ドラマを主軸に置く見事な公演だ。
さて、自分が生まれる前の事件ゆえ、リアル情報は持ち得ていない。自分が知っている下山事件は1981年公開の映画「日本の熱い日々謀殺・下山事件」に負うところが大きい。その頃は俳優座に知り合いがおり、同劇団の公演を観ていた。映画は俳優座も関係しており所属俳優が多く出演していた。その映画は同年の日本アカデミー賞で多くの賞を受賞するほどの傑作だったと記憶している。
さて、本公演も下山事件の沿革を辿るが、その手法は探偵が事件を追究するというもの。この件も映画と同じ(映画は新聞記者が取材)。舞台の雰囲気は当時の状況を彷彿とさせるような美術・音響効果で堪能した。
改めて、本公演も脚本・演出はもちろん、役者の演技も素晴らしく、秀逸なものだと思う。
しかし、気になることが…
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

次のことが気になった。
第一に、主人公の現視点と探偵の追究視点があり、それが交錯して物語が展開する。事件が起きたのが昭和24年7月で、まだ日本がGHQ統治を受けている。対外的には共産主義への警戒、国内的には景気浮揚が重要であるかの描き方だ。その縮図として、日本国有鉄道(国鉄)内における対労働組合(国労)と経営再建(人員整理)だったようだ。その複雑な社会情勢が伝わらない。主人公の人間ドラマにしては、取り巻く情勢の中で苦悩した姿が弱かったと思う。例えば、GHQからの呼び出し場面、組合幹部との交渉場面(少なくとも駅舎へのビラ掲示、赤旗掲)など緊迫した場面がほしい。
第二に、なぜ探偵は追究することにしたのかという動機面がしっくりこない。依頼主の思惑は後日明かされるが、当初、金銭面だけだったら面白くない。当時の国鉄三大ミステリー事件(他は三鷹事件、松川事件)の中で、下山事件に興味を示した理由はなにか。
第三に、なぜ今、下山事件を扱うのだろうか?敢えて意味を持たないかも知れないが・・・。思惟か恣意か、はたまた私意なのでしょうか。事件当時の状況が、今まさに対外警戒(領土問題)と景気回復(派遣きり)を意識したと・・・深読でしょうか。隠れテーマがあるとすれば、芝居屋風雷紡恐るべし。
今後の公演にも期待しております。
暁の風に夢笛響いて

暁の風に夢笛響いて

COTA-rs

萬劇場(東京都)

2014/08/15 (金) ~ 2014/08/17 (日)公演終了

満足度★★★

芝居としては、う~ん
フライヤーからエンターテイメントな作風が感じられたがテーマの描き方が平面すぎた。もう少し寸善尺魔の中、復活の曙光が見えるというような冒険活劇がほしかった。公演全体が緩い。物語は未来という設定ながら過去イメージ。いくら廃れた世界といっても違和感は払拭できない。また、廃れた後であればその理由を説明して物語を展開するなど工夫に欠ける。芝居にもう少し丁寧さが必要だと思った。
役者陣の一生懸命さは感じるが、それだけでは観(魅)せられない。

ネタバレBOX

人間性が画一的な善人(物分かりが良い)ばかりで繋がりに面白味がない。例えば主人公(タクミ=香央里)とその兄の両親は、先生(元「天の国」諜報将軍)に殺されたが、何故か二人とも尊敬した様子である。また、新たに派遣された諜報兵(SADA)と簡単に親交を結ぶことなど不自然である。命の尊さは疑わないところだが、それをどう上手く表現(教訓的にならないよう)できるか。若手俳優が頑張っていることから、脚本・演出の充実を期待したいところである。
今後の公演を期待しております。
パフ

パフ

劇団しようよ

王子小劇場(東京都)

2014/08/15 (金) ~ 2014/08/18 (月)公演終了

満足度★★★

不思議な感じの公演
具体的なモチーフは、三宅島・雄山の噴火をイメージした。そして物語に出てくるジャッキーという“生きもの”は、映画「ロック」(実話らしい)を思い出した。上演後、作・演出の大原渉平氏と話をする機会があり尋ねたところ、三宅島は意識したが、映画のことは知らなかったようだ。もっとも映画は、自分が本公演と重ね合わせたものであるが。
さて、この公演の演出は一見ファンタジー、そして舞台美術は手作り(パペットも含め)のようで温かさがある。しかしテーマは示唆に富んでいたようだ。

ネタバレBOX

当日パンフには、幼い頃親しんだ怪獣映画の記憶や当時へのノスタルジーなど諸々の要素を詰め込んで創作した旨のことが書かれている。さて、脚本はピーター・ポール&マリー楽曲「パフ」をモチーフに作ったとある。公演全体がリリックで優しさに包まれているようだ。
しかし、その描く内容は鋭い。島内住民はみんな知り合いで好きな人たちばかりだが、近頃は抽選で火星に移住してしまう人が多い。さびしい思いをしながらもジャッキーと遊ぶ。しかし、とうとう島の火山噴火で脱出せざるを得なくなり、自分と兄が先に避難船へ、その後両親が続くはずだったが…。そしてジャッキーは乗船できず。
究極的な状況下における非理を問う公演だが、その演出はギニョールを用い婉曲に表現しており好感を持った。
居間 オブ ザ デッド

居間 オブ ザ デッド

ワイアールジャパン

劇場HOPE(東京都)

2014/08/14 (木) ~ 2014/08/17 (日)公演終了

満足度★★★

ゾンビもの…本質は硬質
自分にとってゾンビのイメージは、何かの力によって死体が蘇って街を徘徊する…いわゆるダークで怖い存在だ。公演は、ゾンビを登場させているが、明らかに本質は別なところを描いている。当日パンフに演出家・成島敏晴氏は、「話は難しいけど実は簡単に解決出来てしまう、けどそれがなかなか難しいというややこしい事がテーマ」と記している。
さて、公演のタイトルだが、ゾンビのイメージを決定付けたアメリカ映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデット」に似ているのだが、意識したのだろうか。
さて、公演の本質は…。

ネタバレBOX

人間(界)は“他の界”を攻撃し絶滅させてきた。辛うじているゾンビ(界)や魔法(界)は、隠遁生活を余儀なくされている。この件は別にゾンビを引き合いに出すまでもなく、人種・人権差別そのもの。個人的には好きなテーマだが、敢えてゾンビにする必要性があったのだろうか、という疑問が残った。ゾンビのイメージは”死者の蘇り”であり、血みどろの形相をしているというもの。しかし、父親の若かりし頃、人間の娘と恋仲になり、そのことが人間に知られて”家族を殺された”という。この公演は、自分にとってイメージのギャップが大きく感情移入が出来なかった、もっといえば違和感を覚えたことが残念であった。
今後の公演を楽しみにしております。
ひょっとして乱で舞ー

ひょっとして乱で舞ー

時々、かたつむり

小劇場 楽園(東京都)

2014/08/14 (木) ~ 2014/08/17 (日)公演終了

満足度★★★

ひょっとして、乱悔いか
劇団ホームページ、当日パンフで作者変更の知らせとお詫び。脚本が1ヶ月前になっても出来ていない。その状況で公演を中止せず敢行したと…。しかし、内容的には厳しいものになった。
アイデンティティも含め、自分のコピー(芝居では「印刷」と表現)を出現させ…というような物語だが、テーマの深堀やそうなる必然性が弱い。辛うじて骨組みだけ構成し、肉付はこれからといったところだ。

ネタバレBOX

舞台最初と最後のダンスの意味は、アフタートークで明らかになる。当日の観客は誰も分からなかった。芝居に込められた作者の思いは伝わらないということだろう。ちなみにロボットダンスのような動きは「印刷&シュレーダー」している様子らしい。「印刷」は違法と知りつつ行為を行い、不要になったら裁断するという身勝手さ。しかし、「印刷」が行動している間は、自分(オリジナル)は行動(姿を見せられない)できないという不自由さがある。その不合理は、自分の愚かな行為によって招いたもの。その恐ろしさを描いた芝居だと思うが、その本質的な訴えは理解し難い。本当に残念な公演であった。

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