蜘蛛女のキス
パンダの爪
不思議地底窟 青の奇蹟(東京都)
2014/08/31 (日) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★★
濃密な会話劇
ブエノスアイレスの刑務所に収監されている囚人の会話劇。
基本的には二人芝居で、ストーリーテラーの役割が二人、さらに場面転換と思われる時に出てくる歌い手1名、計5名でストーリーを紡ぐ。上演時間は休憩10分を挟み4時間という長編である。
また、「不思議地底窟 青の奇蹟」 という劇場は初めてで、地下なのにさらに暗幕で囲っている。地上に出るドアは両開きの綴蓋(とじぶた)で、正に監獄のイメージ・雰囲気だった。
自分はこの作品を映画(同名、1985年制作)で見たが、その意義深さを感じるには、まだ若すぎたかもしれない。
ガチ秘密基地リスト~デルタウロスの野望~
かけっこ角砂糖δ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2014/08/29 (金) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★
面白かった
あまり学生演劇は観ないほうであるが、本公演はシアターグリーン学生芸術祭参加作品ということで拝見した。約2時間という長編であるが見応えがあった。上演後、学生(たぶん)が考えさせるな~、との感想を漏らしていたが、その通りだと思う。
ストーリーはSF風でありながら、その描く根底は人間賛歌であろう。実に学生演劇、という感じである。
少し気になるところが…
HAPPY END
劇団ORIGINAL COLOR
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2014/08/28 (木) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★
もう少し演出に妙があれば…
芝居の導入部は”ゆるくて、えぇ~”、結末は”ピリッとし、おぉ~”という、最初・最後に違和感のある演出・演技であった。
たぶん脚本は面白く、また考えさせる内容になっていると思わせるが、それを伝えきれていないところが残念であった。
のらん
TEAM 54 Produce
博品館劇場(東京都)
2014/08/29 (金) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★
大塩平八郎…
“のらん”、だそうだ。シャレたタイトルから推察できるように、ポップ調の楽しい演出である。30人の男優だけの歴史群像劇…時代は江戸・天保8年のこと。当時の大飢饉に際して庶民の側に立った大塩平八郎、その名は日本史教科書に必ず出てくる。
さて、本公演の平八郎はどちらかといえばカッコ悪いが、どこか愛嬌のある人間くさい描かれ方である。時代背景や“乱”を詳細に描くわけでもなく、さりとて人間性を深堀することもない。また、時代劇にある殺陣もない。しかし、しっかり2時間30分程観(魅)せてくれる。娯楽時代劇に徹底した制作だから、歌やダンスをふんだんに取り入れたエンターテイメント作品に仕上がっている。
フライヤーの「実話を元に描くアラフォー全力投球のヒストリック・コメディ!」はウソではない。
アムステルダムの朝は早い
劇団半開き
王子小劇場(東京都)
2014/08/27 (水) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★
興味深い
留置場と拘置所の違いは漠然とわかっていたつもりだが、その施設の間には行政管轄の違いだけではなく、もっと大きな違いがあるようだ。学生の時、民事訴訟法、刑事訴訟法という講義があったが、民訴=眠訴、刑訴にいたっては履修したかも忘れてしまっている。しかし、この公演を観て”驚訴“または”恐訴“した思いだ。
さて、人間「魔が差す」ことはあるだろう。この公演は、普通に生活していた人間の透けた間が生んだ、取り返しのつかない話。そして「真が射す」こともなく、現代日本における法・制度の悪弊、しかし、そこでは常識や道理が通じない恐怖がよく描かれていた。
たぶん、細かい齟齬はあると思うが、先に記載した法制度、行政という枠構造への鋭い批判、一方、自己の曖昧な感覚に基づく道徳感や正義感は、法という枠内では意味を持たない。正義とは、その基準は何か(国によって違う)という主人公の叫びは考えさせられる。とても興味深い公演だった。
最後に、総じて若いキャストだが熱演で見せてくれた。
この公演は、劇団”半開き“以上の“八分開き”で、今後の公演が楽しみである。
赤と黒=RED&BLACK
劇団ドガドガプラス
浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)
2014/08/22 (金) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★
「ピンクと黒」…のような
○○商業高校における歴史認識からの発展話。芝居にダンス・歌を織り交ぜた舞台というところだろうか。その混合舞台の中で2名の玉石が舞台を牽引する。もちろん「中田有紀」と「ゆうき梨菜」である。
スタンダールの「赤と黒」の主人公:青年ジュリアン・ソレルが大女優に成長していく樹里杏 逸涙(中田有紀)になり青春・恋愛・野心・嫉妬という人間ドラマ。そしてフランスの支配階級の腐敗を鋭く批判した小説は、この舞台では日本の満州における映画を通じた文化浸透に関与する樺島芳子(ゆうき梨菜)に置き換わり・・・面白く観せてくれた。
さて、タイトル「赤と黒」ほどに際立ったコントラスト(階級間差)は観られず、むしろ華やかな舞台女優の内なる絶叫のように感じた。その意味では”赤”ではなく、妖しい華=ピンクというイメージであった。
ところで、冒頭書いた○○商業高校は、実在する高校名に酷似しており、その高校の演劇部は某演劇祭に参加することになっている。本公演の出演者に関係あるのだろうか。
空 -SORA-
劇団ZAPPA
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2014/08/21 (木) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★
面白い!
「天」チーム観劇。典型的な娯楽時代劇…幕末における勝海舟とその父(小吉)の物語だが、父と子の話を交錯させ、さらに時代背景を絡め物語を紡いでいく。
父子の話が別々に進展するが、終盤それが結びつき見事な結末へ…。また、公演全体がポップな感じであるが、“勝海舟”のエピソードとして有名な場面は、時刻期限を設けた約束事を織り込み緊迫感を持たせた。緩急ある演出は実に見事であった。
最後は、公演タイトル「SORA」という言葉が生きてくる粋な仕上げ。
終電車脱線す
劇団俳協
TACCS1179(東京都)
2014/08/27 (水) ~ 2014/08/28 (木)公演終了
満足度★★★★
面白い…それなのに無料だ
準劇団員公演…椎名麟三:作「終電車脱線す」は、見応えあった。
毎回、準劇団員公演は素晴らしく見逃せない。(Bチーム)
さて芝居の時代背景は、終戦から2年後の物資不足の頃である。
老朽化した終電車が山林で脱線し、乗っていた客と乗務員の心理状態…極限状況に直面した時の物語である。
人間の弱さ、脆さ、欲望、狂気が垣間見える作品である。
ただ少し気になることが…。
この秀逸な公演が”無料“というのだから驚きだ。(上演時間50分)
Bz@maybeせかい
コジョ
pit北/区域(東京都)
2014/08/21 (木) ~ 2014/08/24 (日)公演終了
満足度★★
「ファウスト」に対するアンチテーゼをもっと…
ゲーテ「ファウスト」がモチーフのようだが、設定状況・描写が粗かったように思う。台詞におけるアンチテーゼという件はなんとなく分かるが、舞台として観(魅)せるには難しかった、というのが第一印象である。
公演を観ながら「人間の歩みは、過去・現在までは連続、しかし未来は必ずしも連続するか?不連続になるかもしれない。そして、きれいごとだけでは」など、変に哲学的なことを考えた。
なにしろ主人公の行く先は…
ままごとの次第
インプロカンパニーPlatform
ザ☆キッチンNAKANO(東京都)
2014/08/21 (木) ~ 2014/08/24 (日)公演終了
満足度★★★
タイトルも気にして
インプロ(即興劇)は、その機転・発想の豊かさが芝居に表れる。前説から既にインプロ導入部となり、観客の心をつかむ。この前説はやや緊張気味でその後を心配したが、それは杞憂に終わった。
さて、インプロは端的に言えば観客から”お題”をいただき演じていくもの。それゆえ普段の練習が大切だ。当日パンフには、インプロ練習の「勧誘案内」が入っていた。本公演はその不断の稽古が実を結んだと思う。
開演まで観客の男女比や年齢層は分からない。しかし本インプロは大方の人が理解し納得できるオチを見せてくれた。
次回公演も楽しみである(ちなみに、エレベーター内で次回公演(2015年3月予定)に出演する女優の方と一緒になったが、テンションと同時にハードルも上がったと心配していたが…)。
実満足度は★3.5
安部公房の冒険
アロッタファジャイナ
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2014/08/23 (土) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★★
安部公房…人間ドラマ
新国立劇場_小劇場、舞台セットは下手に仕事場兼若手女優とのラブ場面、上手は家庭生活と妻との夫婦関係の場面に見立て、同時並行に二人の女性との間を揺れ動く様を観せる。人間、安部公房の魅力が濃縮された公演であった。
唄のある風景
ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ
浅草木馬亭(東京都)
2014/08/20 (水) ~ 2014/08/24 (日)公演終了
満足度★★★★
懐かしい歌謡史が…
イッツフォーリーズの心温まる公演で楽しめた。したまち演劇祭参加作品で上演場所は浅草・木馬亭である。浅草・五重塔通りにある木馬亭は、昭和の匂いがプンプン。そして内容は、”したまち”に相応しい日本歌謡の世界を旅するもの。劇団得意のミュージカルであるが、歌われる曲は大正、昭和に流行した、いわばその年代には懐かしいものばかりである。
さて、会場内は小学生の子供からお年寄りまで幅広い世代の観客が一体となって楽しめる、そんな優しさに包まれた芝居(90分)だった。
海との対話
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2014/08/20 (水) ~ 2014/08/24 (日)公演終了
満足度★★★★
難解だが、力強い印象
「難解な芝居だ」というのが印象である。観客が素で観て分かるという、普通の芝居ではないと思う。その見せ方やセリフが独特だ。さらに字幕が映し出されるがその内容も理解し難い。しかし、どの場面も迫力があり印象深い公演であった。
TangPeng30 B Group-(石榴の花が咲いてる。)×劇団11×プレス
SAFvol.8 TangPeng30-B
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2014/08/19 (火) ~ 2014/08/26 (火)公演終了
満足度★★★
シアターグリーン学生芸術祭参加作品(短編B)
まだ芸術祭期間中であり、また各作品の感じ方が違うため★評価は控える。
評価★(追記2014.9.9)
『家路をたどる』(桜美林大学)★2.5
契合するようなテーブルを前にした兄弟姉妹5人のゆる~い会話劇。芝居全体が緩い。
『僕とキミの自転車周遊記』(明治大学)★3
日の出を見るため、男女二人乗りの7.5キロのサイクリングストーリー。オーソドックスな作り。
『距離感を見誤る#』(東京学芸大学)★2.5
雰囲気はデカダンだが、若さ溢れるパフォーマンス。表現内容は理解困難だったが…。
『穴の中 或は、■の中』ご来場ありがとうございました。
演劇ユニットG.com
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2014/08/13 (水) ~ 2014/08/17 (日)公演終了
満足度★★★★
二律背反か…
素舞台に5ヵ所のたて穴が開いており、その中から人物が出入りする状況は不思議だ。穴の中はどのような生活空間になっているのだろう。興味津々だ。
さて、ビルの何階(地下か?)かに穴が空いたフロアーと見立て、住人が4名(男女各2名)ともう一方…。そこに宅配ピザのアルバイトが迷い込んだ。
さて、本公演は二律背反の様相を呈しながら展開するが、終盤におけるアルバイトの激白が圧巻である。一見ネガティブな主張だが説得力があり見応え十分である。
ひなたのなかのこども
風雷紡
d-倉庫(東京都)
2014/08/13 (水) ~ 2014/08/19 (火)公演終了
満足度★★★★
骨太作品だが
初見の劇団であったが、見応えのある公演だった。その印象は調査し綿密に練り込んだ骨太な作品だと思う。下山事件が題材だが、人間ドラマを主軸に置く見事な公演だ。
さて、自分が生まれる前の事件ゆえ、リアル情報は持ち得ていない。自分が知っている下山事件は1981年公開の映画「日本の熱い日々謀殺・下山事件」に負うところが大きい。その頃は俳優座に知り合いがおり、同劇団の公演を観ていた。映画は俳優座も関係しており所属俳優が多く出演していた。その映画は同年の日本アカデミー賞で多くの賞を受賞するほどの傑作だったと記憶している。
さて、本公演も下山事件の沿革を辿るが、その手法は探偵が事件を追究するというもの。この件も映画と同じ(映画は新聞記者が取材)。舞台の雰囲気は当時の状況を彷彿とさせるような美術・音響効果で堪能した。
改めて、本公演も脚本・演出はもちろん、役者の演技も素晴らしく、秀逸なものだと思う。
しかし、気になることが…
(ネタバレBOX)
暁の風に夢笛響いて
COTA-rs
萬劇場(東京都)
2014/08/15 (金) ~ 2014/08/17 (日)公演終了
満足度★★★
芝居としては、う~ん
フライヤーからエンターテイメントな作風が感じられたがテーマの描き方が平面すぎた。もう少し寸善尺魔の中、復活の曙光が見えるというような冒険活劇がほしかった。公演全体が緩い。物語は未来という設定ながら過去イメージ。いくら廃れた世界といっても違和感は払拭できない。また、廃れた後であればその理由を説明して物語を展開するなど工夫に欠ける。芝居にもう少し丁寧さが必要だと思った。
役者陣の一生懸命さは感じるが、それだけでは観(魅)せられない。
パフ
劇団しようよ
王子小劇場(東京都)
2014/08/15 (金) ~ 2014/08/18 (月)公演終了
満足度★★★
不思議な感じの公演
具体的なモチーフは、三宅島・雄山の噴火をイメージした。そして物語に出てくるジャッキーという“生きもの”は、映画「ロック」(実話らしい)を思い出した。上演後、作・演出の大原渉平氏と話をする機会があり尋ねたところ、三宅島は意識したが、映画のことは知らなかったようだ。もっとも映画は、自分が本公演と重ね合わせたものであるが。
さて、この公演の演出は一見ファンタジー、そして舞台美術は手作り(パペットも含め)のようで温かさがある。しかしテーマは示唆に富んでいたようだ。
居間 オブ ザ デッド
ワイアールジャパン
劇場HOPE(東京都)
2014/08/14 (木) ~ 2014/08/17 (日)公演終了
満足度★★★
ゾンビもの…本質は硬質
自分にとってゾンビのイメージは、何かの力によって死体が蘇って街を徘徊する…いわゆるダークで怖い存在だ。公演は、ゾンビを登場させているが、明らかに本質は別なところを描いている。当日パンフに演出家・成島敏晴氏は、「話は難しいけど実は簡単に解決出来てしまう、けどそれがなかなか難しいというややこしい事がテーマ」と記している。
さて、公演のタイトルだが、ゾンビのイメージを決定付けたアメリカ映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデット」に似ているのだが、意識したのだろうか。
さて、公演の本質は…。
ひょっとして乱で舞ー
時々、かたつむり
小劇場 楽園(東京都)
2014/08/14 (木) ~ 2014/08/17 (日)公演終了
満足度★★★
ひょっとして、乱悔いか
劇団ホームページ、当日パンフで作者変更の知らせとお詫び。脚本が1ヶ月前になっても出来ていない。その状況で公演を中止せず敢行したと…。しかし、内容的には厳しいものになった。
アイデンティティも含め、自分のコピー(芝居では「印刷」と表現)を出現させ…というような物語だが、テーマの深堀やそうなる必然性が弱い。辛うじて骨組みだけ構成し、肉付はこれからといったところだ。