タッキーの観てきた!クチコミ一覧

2021-2040件 / 2248件中
300年の絵画と鉄仮面の姫君

300年の絵画と鉄仮面の姫君

KENプロデュース

北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)

2014/09/13 (土) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★

大人も子供も楽しめる
「ファウスト」と「アラビン・ナイト」の中で有名な「アラジンと魔法のランプ」を融合したようなモチーフの話である。ストーリーは分かり易く、大人・子供も楽しめる内容だと思う(上演時間は休憩をはさみ2時間50分)。
舞台セットは、城壁を模した二階建を中央に据え、その一階部分の真ん中に場内外への城門が造られている。そして、左右には二階へ上がる階段が付けられ、役者が縦横無尽に動けるよう凝らしている。
また、衣装やメイクも凝っており、ビジュアル的にも楽しめる。
初のミュージカルということだが、多くの女優による中東のダンス(ベリーダンス若しくはラクス・シャルキー)の動きは妖艶で見入った。
公演は、脚本・演出は見せ場の設定、単純な予定調和にしないなど、観(魅)せる工夫をしていることに好感を持った。先にも書いたが、幅広い客層を意識したエンターテイメント…素晴らしかったです。

片恋スパイラル

片恋スパイラル

私立ルドビコ女学院

サンモールスタジオ(東京都)

2014/09/17 (水) ~ 2014/09/23 (火)公演終了

満足度★★★★

元気になる
ルドビコ女学院の公演は、開校前(上野ストアハウス)から拝見しているが、脚本・演出のパターンは確立してきたようだ。そして、演技も上手くなってきており、安定感が出てきたように思う。
この公演は、アイドルが出演しており、彼女達を目当てに来ているコアな観客と、芝居を観に来た観客が不思議と融和して公演を盛り上げている。
また、先にも記したが、演出のパターン…一部と二部との間に“特別ホームルーム”と称し、作・演出の桜木さやか氏が公開ダメ出しを行う。まるでゲネプロを観ているようだ。この観客層の違いやゲネプロ風の緊張感ある演出が相まって、良い相乗効果を上げていると思う。
元気を貰いたい方は、お薦めかも…。
今後の公演にも期待しております。

図書館二居マス

図書館二居マス

GENKI Produce

笹塚ファクトリー(東京都)

2014/09/17 (水) ~ 2014/09/23 (火)公演終了

満足度★★★★

優しい気持ちになる
市立図書館で起きるちょっとした(図書館にしてみれば大変な)事件を中心に、そこで働く職員と利用者の交流を描いた心温まる話。その内容をしっかり役者が演じていた。脚本と演出が絶妙にかみ合っており、心に響く公演であった。図書館大好き人間としては、実に楽しく観劇させていただいた。
芝居は日常の出来事を坦々と描き、それが本筋になり、枝葉がつくような構成になっている。本を”音読”するか”黙読”するか?たぶん本公演は後者のような雰囲気ではなかろうか。

また、その芝居を支える舞台セットが見事で、本物の図書館の一角がそのまま舞台へ移送されたかのようだ。

些細だが気になることが…

ネタバレBOX

図書館に住(棲)み着いている「虫」(精霊のようなもの)は、図書館の本を破損させていた男(著者)の配偶者ということが、終盤明らかになる。どうしてそれまで分からなかったのだろうか?
それにしても愛嬌のある「虫」で楽しませてもらった。
幻書奇譚

幻書奇譚

ロデオ★座★ヘヴン

新宿眼科画廊(東京都)

2014/09/19 (金) ~ 2014/09/24 (水)公演終了

満足度★★★★

魅力ある設定
脚本・演出は秀逸。ストーリーは説明に記されているが、ナノ法典を巡る謎、その取扱いをどうするか協議するために招聘された人の急遽実々の駆け引き。ミステリー風な仕立てながら、単なる謎解きでは終わらせないところが素晴らしい。
劇中の激しい議論…その会話の応酬には社会、とりわけ政治・権力に対する鋭い批判が込められている。しかし、それは直接的ではなく、斜に構え皮肉たっぷりに描いている。だからこそ印象深くなっている。
さて、そんな好公演に水を差すようだが、基本的なところで疑問がある。

ネタバレBOX

柳井氏の緻密な構成は素晴らしいが、次の点が分かり難い。
そして、この疑問はストーリ-を展開する上で重要だと思っている。

第一に、何故、元新聞記者・面堂氏(現うどん屋主人)が招聘されたのか。
確かに以前、ナノ法典に関わっていたが、長い時を経ているのに招聘された理由はなにか。
第二に、何故、ナノ法典が読めるのか。専門家・安西氏(日本考古学研究所の研究員)でも読めなかった。

この物語は、結果的に面堂氏がストーリーテラー的な役割を果たしたように見受けられたが、先にも記したように何故招聘されたのか、という疑問が解けないと展開できないような気がする。
時間的制約があったのだろうか…今は専門外な立場にいる人間を招聘するということの説明をしておく必要があると思う。

物語全体は緻密に構成され、演出も適度なアイロニーがあり面白い。しかし、その冒頭部分が曖昧な気がする。
素晴らしい公演は、足元から破綻しかねない、まさしく薄氷の上に成り立っている感じがした。

今後の公演にも期待しております。


流刑の島ー監獄の唄ー

流刑の島ー監獄の唄ー

平熱43度

萬劇場(東京都)

2014/09/11 (木) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★

怒涛な感じ
「流刑」という刑罰に処せられた罪人の話。この芝居では女性罪人を対象にして描いているが、その女性の扱いには別の意味合いが隠されていた。その真の狙いとは…。
舞台セット、衣装は独特で面白かった。特に彼岸花が咲き乱れていた。そのいわれは、「彼岸(死)」を意味すること。彼岸花の花言葉は、「あきらめ」「再会」「独立」ということで、真さにこの公演を象徴しているかのようだ。
社会・法制度や権力への抵抗という重厚な面を見せながら、その描き方は女性罪人との恋愛が中心になる。硬軟の側面を持たせた内容・演出だが、その行く末は…。

ネタバレBOX

この物語の女性罪人は、看守の慰みものであること、そして子を宿し労働力を得ること。現代で言えば人権蹂躙、権力の横暴といった事になる。

さて、彼岸花には、もう一つ「悲願を達成する」という意味もあるそうだ。だから本公演は、最後まで描ききらず続編を示唆する終わり方になっている。花言葉には「情熱」もあるそうだが、「流刑の島」の未来に大きなうねりが生み出されるのだろうか。

本公演と続編とで完結するのか定かでないが、壮大な物語であり、その表現はエンターテイメントとして優れたもの。

ところで、舞台は流刑の”島”とあるが、台詞には”網走”と具体的な地名があげられていた。当時、網走は”流刑の島”という認識だった?
また、「この夏日に雪を降らせたら、あなたの女になってあげます」とあるが、彼岸花の咲く時期は本公演(9月中旬)の頃からでは…。

今後の公演にも期待しております。

【ご来場ありがとうございました!】「姦~よこしま~」【次回は12月本公演】

【ご来場ありがとうございました!】「姦~よこしま~」【次回は12月本公演】

ロ字ック

スタジオ空洞(東京都)

2014/09/13 (土) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★

驚いた!
オムニバス三話で、シチュエーションは違うが人間(女性)の建て前が崩壊し本音とエゴだけが炙り出される。その過程が実に上手く、というかデフォルメ感が半端ではない
女性の本音会話であるが、下ネタも飛び交う内容に内心「大丈夫か~」と心配した。と同時に普段面と向かって聞けないエグい話、女性の心の内をそっと覗いた感じである。
素舞台、客席は入口側に簡易雛壇になっている。一話は二人芝居、二話・三話は三人芝居で、基本的には会話劇なはずだが…独特な世界観に見入ってしまった。
因みにタイトル「姦~よこしま~」は、女三人による隠微な空間を意図したのだろうか。それであれば、掴み狙いは成功したようだ。
本公演も期待しております。

ねじまき島エレキテル

ねじまき島エレキテル

アナログスイッチ

シアター711(東京都)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★

楽しかった!
フライヤーの説明を読むと、サバイバル若しくはホラーものかと思ったが、ゆる~いハートフルパンチが、優しく身体を包むように効いてくるような公演だった。
また舞台セットは、孤島にある建物内の雰囲気を作り込んでいた。
本公演は、東京・下北沢と九州・福岡の二都市で公演するという。

ネタバレBOX

ハートフルだが、登場人物は、ほとんどがアンドロイドだから血が通うわけではないが、なぜか人間以上に人間らしい。わずか三日間の夏休みの話だが刺激的な思い出になる出来事…その体験を通して人との付き合いを学ぶ人間少年。人型アンドロイドが登場するが、とても未来とは思えない。
些細なことはあるが、公演全体から観客に楽しんでもらう、そんな姿勢が貫かれているようで好感が持てた。
近々は、福岡公演を頑張って欲しい。また、次回の東京・下北沢公演も決まっているとのこと。今後の公演にも期待しております。
【全公演終了しました。ありがとうございました】カムバック!矢板のガールズ♪

【全公演終了しました。ありがとうございました】カムバック!矢板のガールズ♪

らちゃかん

小劇場B1(東京都)

2014/09/10 (水) ~ 2014/09/14 (日)公演終了

満足度★★★★

下北沢公演…さすがです
らちゃかん の下北沢初の公演…素晴らしかった。
地元・矢板の女子高生がアイドルを目指し、その後、紆余曲折を経て20年振りに再会した。さらに…。

さて、らちゃかんらしいハートフルコメディだったが、今まで観てきた芝居と少し違うような気がした。
それはそれで面白かった。

ネタバレBOX

今までのらちゃかんは、ドタバタの疾風感があった。コメディと言うことを前面に出し強調していたようだ。しかし今回の公演は、少し抑制した落ち着いた感じがした。より自然体なコメディになった。
もう一つ、以前は被りものがあったと思うが、本公演ではキジの剥製オブジェこそ登場したが、無理やり感は気にならなかった。

本当に観ていて”笑い笑い“の連続で楽しませてもらった。
次回公演も期待しております。
ギンノキヲク 2.5 (第25回池袋演劇祭【豊島区長賞】受賞記念公演)

ギンノキヲク 2.5 (第25回池袋演劇祭【豊島区長賞】受賞記念公演)

ラビット番長

コア・いけぶくろ(旧豊島区民センタ-)(東京都)

2014/09/06 (土) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★

シリーズもの…面白い
ラビット番長の人気作品で、今回は第25回池袋演劇祭_豊島区長賞受賞の記念公演(本作はGREEN FEST2013 BASE THEATER賞を受賞+α)である。

舞台は特別擁護老人ホーム「紀陽の里」の入所者、そこに働く職員およびその家族のほのぼのとした”ホーム”ドラマである。芝居は暗くならず、あくまで前向きな展開で、生きる活力を感じさせる。いわゆる”生きる”とは、という深刻な命題を描くのではなく、観て楽しめる娯楽を追及したような芝居である。

さて、近々「ギンノキヲクFINAL」が上演される予定であるから、シリーズものもお終いか?
このシリーズ公演を観ると、なぜか映画「男はつらいよ」を思い出す。こちらは相当長く続いた国民的映画だが、それに通じるところがあっただけに、FINALは残念である。パターンは同じだが、泣き、笑いがあり、最後は感動させる。

先に深刻な命題…云々を書いたが、そうは言っても社会問題(例えば労働環境、介護現場の大変さ)をチクリ!この大上段に構えず、サラリと描きたいことをしっかり伝えるあたりは流石である。

今後の公演を楽しみにしております。

ほだす -刻み続ける時計-

ほだす -刻み続ける時計-

劇団いまそかり。

シアター711(東京都)

2014/09/04 (木) ~ 2014/09/08 (月)公演終了

満足度★★★

説明不足かも…
古書店が舞台で、そこの主人と間借人が織り成す話。
そして冒頭から公演のキーとなる「鍵」が役者の手に握られている。
公演のキーとなるのが、二つあるドアのうち一方だけ選択(開けられる)できるということ。
さしずめ“人生は一度だけ”、ということだろう。
絆す(ほだす)という言葉は、人からの愛情なりでヤンワリ束縛されることらしい。
しかし、本公演は“運命”または“宿命”という言葉が合うような印象を受けた。

どちらにしても人間の渦巻く欲望、エゴ、そして厭世的な面も垣間見えて面白かった。

ネタバレBOX

古書店は親の代から受け継いでいるが、今の時代に流行らなく経営は苦しい。その古書店には売れない(書けない)作家、写真家の卵など、夢を捨てきれない住人が住んでいる。また、親の代からの駄目使用人も…。そんなゆるーい環境に、以前住んでいた男が立ち退きの交渉人として現れ、自分は成功者だと吹聴する。

夢をあきらめ現実路線へ、または夢を追い続けるのか、揺れる気持ちの住人達の右往左往が面白く描かれている。

そして今後、人生はどう生きていくか。どのドアの「鍵」を選択するのだろうか。示唆に富む内容の公演だった。
しかし、その面白さが十分伝わらない、というか印象が薄い。印象にあるのが、役者のパントマイムだけではさみしい。
今後の公演に期待しております。
Unbreakable-アンブレイカブル

Unbreakable-アンブレイカブル

演劇レーベルBo″-tanz

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/09/04 (木) ~ 2014/09/09 (火)公演終了

満足度★★★★

壮大な話
パンフに「この作品はあからさまにフィクションです」との注釈が・・・、切実感があるのは、現在の日本が抱える発電エネルギーを確保するため、そのあり方を模索する姿が見て取れるからだろう。
その現実に天使というファンタジー性を持たせ、リアリティ感を和らげている。

それでも本公演は、壮大な人類の未来への考察を描いた叙情詩のように見えるのは自分だけだろうか。

ネタバレBOX

本公演によれば、洪水は 「天界」に背いて降臨した堕天使(グリゴリ)を殲滅する目的で行われたという。
そのグリゴリは人間の娘と交わり子を宿すだけでなく、魔術の恩恵で人間界を豊かにした。その一方、富をめぐる争いが生じ、貧困・飢餓が生まれた。

また人間には御せないエネルギー創性技術(ネフィリム)までもその魔術に含まれていた。ここにグリゴリを抹殺する暗殺天使が送り込まれ戦いが始まる、というもの。

ダークファンタジーという謳いは大げさではない。しかし、芝居中で脱力するような場面もあるが、洒落だろうか。
ダークを貫いた方が良かったと思う。2時間を超える公演は観客が飽きる?ということへの配慮・サービスであれば不要である。

脚本に込められた力・メッセージは、いかにフィクションと力説しても現在の日本を見てしまう。その想像性を掻き立てるに十分な演出もしている。

そして、役者はその脚本の持つ意味、演出の絶妙な効果(例えば、ポスト・レコーディングなど)を十分伝えてくれた。芝居の全体的なレベルは高く、秀作だと思う。

今後の公演にも期待しております。
HOTEL CALL AT

HOTEL CALL AT

メガバックスコレクション

南大塚ホール(東京都)

2014/09/06 (土) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

深淵なるかな
[HOTEL_CALL AT] という古城風のホテルに宿泊した人達の話。
南大塚ホールにセットしたホテルロビーを模した舞台セットは見事である。メガバックスコレクションはいつも素晴らしい舞台美術を見せてくれる。

さて、公演はテンポよく展開するが、実際は時間が止まっているような錯覚を起こさせる。そして、このホテルの宿泊客は、現在の生活環境を語るだけで、その生い立ちや人間性を深堀しない描き方である。

そもそもこの客達は・・・

ネタバレBOX

既に死んでいる。
このホテルは死者が持っていた「未練」「後悔」「罪悪感」「憎しみ」等の思いを全て置いていく場所らしい。
その思いが遂げられた者から、その先にある川(河)を渡り、あの世へ旅立つという。そういう状況であることを知らされながらも、まだ生きたいと願う人たち。
その生きたい理由は様々であるが、その人にとっては切実なもの。

ここで意地悪なゲームが支配人によって提案される。
宿泊客の中で一人だけ生き返らせるという。
その選出方法は多数決というもの。
いかに生きたいかを猛烈にアピールする…最終的には、駆け落ちした二人(現世では三人か)が生き返ることになる。
なぜ二人に…今後再演されるであろう秀作だから、観てのお楽しみとします。

因みに自分は、ホテルの従業員になりその先には行きたくないかも。
今後の公演にも期待しております。
お披露目~浮気編~

お披露目~浮気編~

日本コメディ協会

駅前劇場(東京都)

2014/09/06 (土) ~ 2014/09/08 (月)公演終了

満足度★★★★

笑った~
各30分のオムニバス4話。
短編であるが、どの話も「起・承・転・結」という流れを踏まえているから分かりやすい。
コメディの常套であるすれ違い、狼狽、誤解がドタバタとしっかり描かれ、笑い笑いの連続であった。と同時に男性目線で見ていたから、自分がその場(立場)に居るようなドキドキ感があった。
まさしく感情移入していた。

今後の公演が楽しみである。

グレーテルの妹

グレーテルの妹

シアターノーチラス

OFF OFFシアター(東京都)

2014/09/03 (水) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★

少し中途半端かも
結婚をまじかに控えた女性宅に謎の女性が…。
女3人の黒い思惑が透けて見え、そのキッカケを作ったのも謎の女

という設定だから、女性は怖い。芝居は、女性達の思惑・誤解・食い違いによって炙り出される本性・・・、厭らしいブラック・コメディのようで面白かった。
 また別の筋として“家族とは” という恒久的な問いかけも描かれていると思うが、車の両輪のごとく、何時まで経っても“女性の思惑” と “家族とは” が明確な意思をもって交わらず、中途半端な演出になった感がある。

ネタバレBOX

結婚を控えた女性宅。
そこに兄夫婦、ウエディングドレスを作ってくれる親友女性とその主人。
そこに謎の女性がスルッと入り込み、とめどのない話を始めた。
そのうち、今度結婚する女性のフィアンセがストーカーだと言い始める。

知り合ったキッカケ、付き合いだした経過、ストーカーされて怖い思いをしている現状を説明する。この闖入者(ちんにゅうしゃ)のごとき謎の女性の言葉に狼狽え、フィアンセに対する疑心暗鬼が生まれる。一方、義姉は自分が年下ということもあり、小姑に家を出て欲しい。親友女性は、夫がかつて主人公と付き合っていたことを知っており、早く結婚してくれないと安心できない。そして、謎の女の目的は・・・分からない。

 一方、認知症を患っていると思われる主人公の父親の存在。街中を散策(その昔は森であったようだが)し、独り言をポツリポツリ。この徘徊のような行動の直接的な意味はなにか。

 結局、フィアンセに問いただすが、ストーカーの認識はなく、自殺しようとした(謎)女性を見守るうちにストーカーと勘違いされたと・・・。ストーカーの被害者と行為者の意識の違い、そして 「許嫁(いいなずけ)を本当に愛しているのか?」という問いに対する答えが 「分からない」 という虚しさ。その分からない感覚が自分にも伝染したのだろうか、実に不思議な公演であった。
少年口伝隊一九四五

少年口伝隊一九四五

劇団天動虫

pit北/区域(東京都)

2014/09/01 (月) ~ 2014/09/02 (火)公演終了

満足度★★★★

朗読劇から…
井上ひさし氏が、新国立劇場研修所の研修生のために書き下ろしたのが「少年口伝隊一九四五」である。

この芝居は朗読劇であるが、今回は女性6名による動きも取り入れた公演に仕上げていた。自分が見た回は、会場が狭いこともあるが満席でトラブル席も使用したと思われる。その観客に応えるため汗を滴り落としながら熱演していたのが印象的である。

なにより自分が感動したのは、若い女優がこの題材を選んだこと。そして、役者を代表してジョニーさんが、
「この舞台のため広島原爆投下の8月6日、長崎原爆投下の8月8日、そして15日も稽古に励み、覚悟をもって公演した」 と述べたことには感動した。

芝居に関してはいくつか・・・

ネタバレBOX

大きくは次の2点が気になった。

第一点は、その衣装である。戦時中であればそれらしい舞台衣装で演じて欲しかった。

第二点は、舞台セットである。大脚立は演出上必要だったと思うが、舞台空間に張り巡らせた三角旗は何を意味するのだろうか。まるで運動会かお祭りの飾り付けのようで違和感があった。

上記のことは、単にビジュアル的なことだけではない。
この台本は、俳優、観客を含め、その舞台空間にいる全ての人に戦争の恐ろしさ、無残さを知らしめる“力”があるのだから、その威力を見せつけて欲しい。
CHANGE

CHANGE

f.tプロデュース

Geki地下Liberty(東京都)

2014/09/03 (水) ~ 2014/09/08 (月)公演終了

満足度★★★★

恋愛シチュエーション
ありそうな恋愛シチュエーションの三様態を別々に描き、微妙に交錯しながら展開する物語。

脚本・演出は藤原珠恵氏で、だからなのか女性の立場・視点による描き方だと思う。そこに登場する女性は精神的に強く、またしたたかである。
しかし、心底は優しくどこか愛らしい。やはり女性演出家の応援メッセージが込められている、そんな印象を受けた。

 さて、公演の舞台セットには驚いた。舞台はBarの店内であるが、その装飾は見事であった。上手がカウンター、中央にテーブルセット、下手は自由空間という配置で、場面状況に応じて利用する場所を変えるが、その演出は妙である。

 そこで繰り広げられる恋愛とは・・・。

ネタバレBOX

オムニバスではないが、ストーリーを整理する上で三話を区別してみた。

1.脚本家の女性と劇団の男優は恋人同士だが、最近その男が劇団の後輩女優と付き合いだし、その女優から言い寄られ二股交際をしている。脚本家の女性はそれに気づき、3人で話し合い(脚本家は別れる覚悟)をし、恋人関係は解消。

2.会社上司と不倫関係にある女性が、後輩社員に上司の動向を聞きながら、上司の離婚を心待ちにする。しかし、その上司の妻が妊娠し別れるつもりがないことを知らされる。Barでの愁嘆場がすごい(因みに上司も妻も登場しない)。

3.九州から上京してきた、男女4人のうち2人は恋人同士。女性は舞台となるBarで働き出すが、実父が病に倒れ、その資金援助のため風俗店へも・・・。その事情を知らない男は友達から風俗話を聞き、別れる決意をし、女性は九州へ帰った。


この話を中心に、Barのママの娘、ママに言い寄る男などが絶妙なタイミングで会話に加わり、面白おかしく、またペーソスある仕上げにしている。

結末だが、脚本家は劇団を辞め、テレビ業界へ転職しバリバリ。 不倫女性は動向を探らせていた後輩男性と結ばれ、懐妊した様子。 九州へ帰っていた女性は、用事があってBarへ姿を現し、そのころ別れた男が売れっ子芸人になり、その声がラジオから流れ・・・。ハッピーエンドの雰囲気である。

これらを見守るママの態度がシニカルだが、ちょっとした仕草、言葉の投げかけが優しい。女性の逞しい生き方、一方、優しさ、寂しさが垣間見える好公演でした。
マナナン・マクリルの羅針盤

マナナン・マクリルの羅針盤

劇団ショウダウン

シアター風姿花伝(東京都)

2014/09/05 (金) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

群像劇ではない
京都生まれの大阪育ちの劇団が、その大輪を咲かせようと東京・池袋演劇祭に参加した公演である。

実質2時間10分(途中休憩10分)の一人芝居を二日間7公演行うという。自分が観た回の公演時には、観客がお揃いのTシャツを着、客席中央に陣取っていた。
それだけ愛された劇団の公演は見応え十分であった。

ネタバレBOX

18世紀初頭に実在した海賊の海洋冒険浪漫活劇。当日配布のパンフによれば登場人物は10名、それに加えト書き、状況説明など全てを一人で担う。
しかし、その演じ方は一様ではなく、登場人物が想像できるような情感溢れる演技であった。
要所に説明が加えられるからストーリーは分かりやすい。大衆に楽しんでもらう、そんなサービス精神が底流にあるような気がした。

さて、舞台セットは、上手がフリースペース、下手に帆船デッキを模した木組みが置かれている。雰囲気は海洋物語に相応しい。また物語の臨場感を持たせるため、音響・照明などの技術も効果的な役割を果たしていた。大阪公演の舞台は、このシアター風姿花伝より狭かったようである。
それだけ林遊眠さんが動き回る範囲が広くなったということ。
観客にしてみれば迫力ある立ち回りのある活劇が見られたが、役者は大変だったと思う。本来、群像劇であるような内容であるが、一人芝居でもその魅力は十分魅せた。

終演後、観客の見送りに出てきた彼女と話をしたが、その小柄さに驚いた。いかに舞台ではその存在の大きさを見せつけたか。

さて、蛇足になるかもしれないが、次の2点が気になった。
第1に、一人芝居の宿命であるが、途中で声が掠れて心配したこと。
第2に、演出だと思うが、途中で水分、栄養ドリンクを補給するところがあった。帆船ウィーダ号のデッキに腰掛け、手にしたものは・・・観客から「○○ーゼリー」 という“ツッコミ”が入る。林遊眠さんが苦笑していた。
今後、東京公演では仕込み演出は通じなくなるだろう。もう一段高い工夫が必要だと思われる(この場面が偶然であれば杞憂であるが)。
UNKNOWN HOSPITAL

UNKNOWN HOSPITAL

壱劇屋

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2014/08/30 (土) ~ 2014/09/02 (火)公演終了

満足度★★★★

難解かも
舞台の雰囲気はオドロおどろした感じで掴みは上々だったと思う。
しかし、その後の展開は難しく、混乱してしまった。

また、関西の劇団ということから公演途中で“笑い”をとる場面があったが・・・公演の流れが滞ったように思える。

ネタバレBOX

精神病院での“虚構”または“虚実綯い交ぜ”の世界観を描いたストーリーだろうか。

当日配布パンフから
「『病院』をテーマに劇団員全員でアイデアを出し合い、纏めて、形にしました。・・・そしてエンターテイメント作品へと進化させたつもりです」 
とある。

登場人物が代わる代わる医者、看護師、患者と立場を変え、誰が本当の役柄か分からなくなる。
公演途中で、その立場・役割を整理する“作業”を行った。
この作業こそが”笑い”をとる場面である。あくまで自己申告(思い込みも含め)だが、医師、看護師だと思うものがそれぞれ上手・下手に分かれる、そう幼い頃の遊戯をみているようだ。

“洒落がわからない”、と思われるかもしれないが、最初の掴んだ雰囲気を最後まで大切にして欲しかった。
ブラックジャックによろしく

ブラックジャックによろしく

トウキョウ演劇倶楽部(活動終了)

六行会ホール(東京都)

2014/09/03 (水) ~ 2014/09/08 (月)公演終了

満足度★★★★★

骨太な熱血ドラマ
研修医が困難を乗り越えながら成長していく熱血ドラマ。

六行会ホールという広い舞台だが、敢えてシンプルなセットにし、その立ち振る舞いには 「動」 「静」 のメリハリを効かせた素晴らしい演出だった。
照明は薄暗く、台詞を言う役者ヘライトを当てることで観客の目を集める。
それゆえ役者の演技の善し悪しが舞台の出来・不出来に直結する。

本公演は、人間の尊厳を内容とした重厚な脚本であるが、それを見事に表現していた。

ネタバレBOX

10年前の医療現場の状況が緊迫感をもって描かれていた。と同時に医療に携わる者の過酷な労働環境に対する痛烈な批判。

フライヤーには、「超一流の永禄大学附属病院の研修医・斉藤英二郎、月収わずか3万8千円。同大学医学部卒業後、3ヶ月で初めて患者を持つ。研修医・斉藤は理想とかけ離れた日本の医療の矛盾に苦悩しつつも、懸命に日々を送る!」 
と書かれているが、さらに大学病院の封建的・閉鎖的な体制への疑問も描き込まれる。

 さて、仮に 「生・死」 に 「勝・負」 という概念を持ち込んでもそれは意味がないことだと思う。人は必ず死ぬから、初めから負けは決まっている。
それでも生きている、生きたいと思う。その思い、願いが十分伝わる芝居である。
書くことは簡単だが、その状況に直面したら・・・。

 結論は決まっている終末医療にどう決着をつけるか、医師という立場だからこそ悩み苦しみ、その先にある苦渋の選択・・・見事に結実させた“緩和ケア科” に感動した。
=侠= 君、逃げたもうことなかれ

=侠= 君、逃げたもうことなかれ

サンハロンシアター

「劇」小劇場(東京都)

2014/09/02 (火) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

タイトル「侠」とは…。
タイトルだけ見たら義理人情の世界かと思わせるが、その想定は良い意味で裏切られた。
話は、デパートのお客様苦情専門部署での出来事だ。

話の展開は違うが、映画 「ミンボーの女」 (1992年公開 伊丹十三監督)とオーバーラップした。さて、反社会的勢力に対する姿勢が厳しくなっている昨今、時代背景・状況も透けて見えて面白かった。

ネタバレBOX

ある地方都市にあるデパートのお客様苦情部署にいる九条室長が主人公。単に苦情に対処すると言っても、一筋縄でいかない内容ばかり。

ここで描かれたパターンは3つ程(接客態度への難癖→賠償要求)(賞味期限切れ→代替品要求)(単なる嫌がらせ→要求?)だが、実際は千差万別であろう。

自分は業種こそ違えど、その部署に在籍したことがある。
『内容は“苦情”だが、部署名は“お客様サービス部”である。自分の(営業・接客)姿勢は正しいのか、その映す鏡が歪んでいては正しい判断が出来ない。その鏡を磨くのがお客様の“声”だ』 という。
理屈はそうかもしれないが、何時間も不平・不満・苦情を言われる現場の人間からしてみれば、きれいごとの教訓など・・・、と当時は思っていた。
そんな思いが脳裏を過ぎり苦笑した。

公演は苦情を切り口にしながら、人間との関わり、人材教育の厳しさなど、実に示唆に富む内容で好感が持てた。

今後の公演にも期待しております。

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