タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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君が眉毛を剃った日

君が眉毛を剃った日

なば缶

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2014/10/29 (水) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★★★

心がほっこり
河童伝説で賑わっていた温泉地に、慰安旅行で訪れた事務所の人達が出逢うハートフルコメディ。登場人物は多いが、それぞれ役割があり善人ばかりである。分かり易い芝居で楽しく観られる。序盤こそテンポが緩めだが、段々とのめり込める。
また、温泉宿のセットは随分と作り込んでおり、見事である。
ただタイトル「君が眉毛を剃った日」…これだけがどういう意味か謎だった。

今後の公演も楽しみにしております。

ネタバレBOX

探偵事務所の慰安旅行。温泉宿は、大学時代の先輩が経営しており、その家族や知人・従業員達との心温まる交流。安息を求めるには、持って来いの公演である。
愛フォンブース

愛フォンブース

劇団フルタ丸

「劇」小劇場(東京都)

2014/10/29 (水) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★★★

人間観察かも…
新発売される「愛フォンブース」を買い求めるまでの人間模様。そして携帯電話に代表される通信機器などの利便性至上主義に対する批判が鋭い。
さて主筋は、実に愛すべき人間の心理・行動がコミカルに描かれている。
そぅそぅと頷くような場面が多々あり面白い。少し気になるところがあるが…。

ネタバレBOX

全体としては見応えのある楽しい公演であった。
しかし、次の点が整理できなかった。
第一は、
新製品発売の際は大勢の人が並び、メディアも来るとあった。しかし、今回は限定された人数しか並ばないという特異な状況で、携帯電話も持たない人がどうやって情報を入手したのであろう。
第二に、
このショップは、購買意欲・行動をモニタリング(少なくても二週間)していたというのが結末だが、その目的は何か。70万円弱という高価な「愛フォンブース」を無料で提供するメリットはなんだったんだろうか。

今後の公演にも期待しております。
カサブタかきむしれっ!

カサブタかきむしれっ!

演劇ユニット3LDK

ザ・ポケット(東京都)

2014/10/21 (火) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

カサブタは掻きむしりたくない
自分好みの公演であった。勘違い・すれ違いのドタバタコメディでありながら、身近な高校生活(恋愛、母娘の確執、モンスターペアレンツなど)や社会的な問題(震災、原発など)を正面から捉え、その提起も鋭く問う、という脚本・演出は実に見事であった。また、舞台セットも相当作り込んでおり、ビジュアル的にも楽しめた。登場人物は、濃いキャラクターの持ち主ばかりであるが、役者は見事に同化していた。そして誰一人浮くことなくバランス良くまとめた芝居であった。
〔山〕公演

ネタバレBOX

高校といっても農業高校という設定で、牛の出産(実習)を絡めた特殊な環境・状況における話。いろいろなエピソードが関連し、微妙な綾を紡ぎ骨太な作品に仕上げていた。そして予定調和ではなく、現実(子牛の死産)を厳しく受け入れること、東北の地で家畜による生計は難しいこと、など随所に重く厳しい事実を突きつけるが、コミカル・ポップ調の演出でそれほど暗くならず、楽しく観せるところが素晴らしい。

”かさぶた”は無理に掻きむしってはならない。じっと耐え、いつかは癒えて来るのを待つ。人間には治癒力があり、痛みや困難を乗り越える力が有るのだから。しかし、それは事を風化させることを意味するのではない。

今後の公演にも期待しております
御処河原家の瞬間(ごしょがわらけのまたたき)

御処河原家の瞬間(ごしょがわらけのまたたき)

ビニヰルテアタア

3331 Arts Chiyoda B104(東京都)

2014/10/23 (木) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★

演劇通好みの公演かも
ほぼ素舞台。衣装は黒を基調とし、場内は周囲を暗幕で囲い、さらに照明度はおとし薄暗い。場内全体が幻想的な雰囲気を醸し出していた。音響は神楽…舞はそれに合わせたような動きである。具象的な思考・動作から抽象的な表現へ徐々に変化していくようだが、観方によっては難解だと思う。自分は、4姉妹とそれに絡む男性の妖しげな動作、また姉妹の性格、生い立ち、父親との関係について、セリフの応酬で明らかになる過程が面白かった。その濃密な会話劇と挙措の美しさが印象的である。
しかし、ラストはインパクトが弱く、流れてしまったようで少し残念だ。もっと愛憎を強調した形で結んでほしかった。
今後の公演も期待しております。

火宅の後

火宅の後

猫の会

「劇」小劇場(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

私小説劇
昭和の文豪・檀一雄をモデルにした私小説劇と言ったところか。作家の創作精神に翻弄される家族やその周りの人々を描いた話。あくまで作家の内面を掘り下げることをメインにした芝居として受け止めた。そして創作活動における狂気・破滅的な精神構造をよく現していた。と言っても作家自らの内省というよりは、第三者の視点を通しているので、苦悩の在りようは断片的(例えば「書けない」という直接的な表現)にしか伝わらない。
逆に狂言回しが作家の苦悩を代弁もしくは倍加させ、芝居の精神的支柱になっていた節がある。
いずれにしても、役者の演技力が伴わなければ成り立たない公演だが、見事に演じきっていた。実に見応えのある公演であった。
今後の公演にも期待しております。

イブとイブとイブとイブ

イブとイブとイブとイブ

劇団MAHOROBA+α

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2014/10/25 (土) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★

初見の劇団…
着想は良かった。この面白味を上手に表現できていれば、と思うと少し残念である。まず、非常事態における焦燥・不安という、漠然ではあるが”先行きが気がかり”が伝わらない。また、その状況からの脱出”オチ”が安易すぎて納得感・満足感が乏しい。人類滅亡に直面した時、平時のような常識や建前が通じるか、生身の人間の葛藤が観たかった。そのために、演技は表面を取り繕うのではなく、緊迫感溢れるものが求められるだろう。演出はシリアス、ポップという明確な区分けは必要ないが、少なくとも視座があると…。
また、演出効果として密閉状況を作り出す場面だけは、パントマイムだけでなく音響効果も併用して、重厚な特殊空間を想像させてほしかった。
冒頭記載したように、発想を大きく膨らませたら相当面白い公演になったと思う。
今後の公演に期待しております。

 片恋。

片恋。

演劇ユニット ランニング

ザムザ阿佐谷(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

清々しい
舞台は大阪の食堂…、上手は食堂内、下手は近所の空き地にベンチという二分割セットである。よく作り込んでいたように思う。
現在と過去が交錯しながら23年間という長い年月の純愛「片恋」を描いた話。淡々とした高校生活にスパイスを利かせるため、不良を登場させドタバタ・コミカル風にしたり、別のカップルを盛り込んだりの工夫を凝らしている。それでも何の変哲もない生活を芝居にするのは結構難しく、観せるには役者の相当な演技力が必要になってくる。客演している井保三兎サン、藤桃子サンはさすがに安定感があったが、個人的には、為近あんなサンに注目した。彼女はルドビコ女学院シリーズ(開校前公演も含め)3回拝見している。同シリーズは等身大の女子高生役だが、今回は多少訳ありの役どころ…、成長著しいと思う(偉そうにすみません)。
また、音楽は昭和の時代に流行した歌謡曲…懐かしく聞き入った。
最後にキャスト紹介の件。人物映像・スーパーは下手奥の白壁と思しき所へ映写していたが、上手側からは見にくいので、工夫が必要であった。
芝居はとても心温まる好公演であった。今後にも期待しております。

未開の議場

未開の議場

カムヰヤッセン

王子小劇場(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

漂流議論か…
観客席は舞台(さながら議場)を対面から見下ろすような雛壇式である。
地元の活性化を目的としたフェスタ開催に向けて話し合う商店会(青年部)の様子を観覧するという感じである。その議論は一見漂流するがごとくまとまりがない。舞台には13名がおり、その性格・職業・立場の違いから意見の同調・対立を通してストーリーが進んで行く。「建前」「本音」と「理屈」「感情」という本能・表現を上手く描いていた。人間の喜怒哀楽が垣間見えて面白かった。
映画「12人の優しい日本人」(中原俊監督・三谷幸喜他脚本)を連想した。この映画は、アメリカ映画「12人の怒れる男」(シドニー・ルメット監督)のパロディーで、どちらも法廷に関係するが、本公演は別内容であるが、話の展開手法は同じであろう。
全体的には、実に見応えのある会話劇だった。

ネタバレBOX

少し気になるのは、外国人によるレイプ事件について、物語をデフォルメする狙いから描いたと思うが、人種差別に受け取られないかという危惧をもった。劇中にもあったが、一時が万事そうではない、という趣旨の言葉が印象的であった。
ゴーゴリ/作  「外套」 "The Overcoat"

ゴーゴリ/作  「外套」 "The Overcoat"

プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2014/10/21 (火) ~ 2014/10/22 (水)公演終了

満足度★★★★★

絶賛
この公演は随分前から観たいと思っており、念願が叶った。と同時にやはり観て良かったと思うほど素晴らしかった。当日は大雨にも関わらず「満員御礼」が掲げられ、それでも観たいという観客のためにパイプ椅子が用意されるという盛況振りである。
さて、ゴーゴリ作「外套」をモチーフにしており、「魂の彷徨」「精神の解放」という人の深層に触れ、それをコミカルに演じる。この劇団は、公演先の言葉で上演することを特長としており、今回は当然”日本語“であるが、見事な台詞回しである。台詞は、言語“音”として捉え、それを発声するというもの。この方法で日本は9カ国目というから凄い。

ネタバレBOX

原作「外套」のあらすじはシンプルであるが、今作はその後の展開を中心に描いている。シンプルゆえに愚直な主人公の哀れさ、無念さがストレートに伝わる。その純粋な思いが見事に描かれ感動!感動!の連続である。
とても素晴らしい公演である。
Jupiter【ジュピター】

Jupiter【ジュピター】

アブラクサス

王子小劇場(東京都)

2014/10/16 (木) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★

話の展開が唐突だった
1964年の東京オリンピック前後のキャバレーを舞台にした話。そして、このキャバレーに突然現れた義理の妹との顛末が、後半のストーリーを牽引する。しかし、その展開は唐突・強引という印象である。
時代背景・状況の説明不足もあったが、なにより公演で何を伝えたかったのか、その点が不明確だったようだ。
描きたい内容が二分(前半は斜陽したキャバレーの風俗ドラマ、後半は医療行政や社会批判を通した人間ドラマ)したようで、その関連性を上手く処理出来たら面白かったと思う。公演全体を通して大きく又は強く訴求するものがあると魅力的だったと思う。
また、個人的には潰れる寸前と繁栄時期のキャバレーの対比を描き、その落差を観せることで、印象付けて欲しかった。

次回公演にも期待しております。

みわたすかぎりのセカイ

みわたすかぎりのセカイ

Cooch

劇場HOPE(東京都)

2014/10/17 (金) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

フライヤー…
デザインと説明文に上手く誘導され、望外の喜びを得ることが出来た。この説明からすると悲惨な出来事、愛憎劇を連想した。もちろん書かれていることは、ほぼその通りであるが…。
脚本は、終盤までその事実を包み込み展開させ、なるほどと感心した。また演出は結末を面白く、また効果的にする伏線を張り巡らせている。全体的にポップ調ではあるが、描きたい内容は伝わった。

ネタバレBOX

崩落事故で亡くなったのはペットの犬で、その引取りにきた飼い主の話。
フライヤーのデザインはどう見ても人間の足、説明文は「沢山の客の命が失われた。遺体安置所には未だ身元の解らないままの男女の遺体」とあれば、”人間”が事故死と思うだろう。ずるいと思いつつも、先入観で観ていたので、結末には意外性があって楽しく拝見した。

今後の公演も望外の喜びをお願いします。
hope ~希望

hope ~希望

劇団だっしゅ

萬劇場(東京都)

2014/10/16 (木) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★

タイトルが…
終盤の一場面とその後に続くテロップのみに繋がる。フライヤーに大きく印刷されている「幸福満載商店街」の街再開発に関する話はどうなったのか。前説で「建築」に係わる話をしているが、その結末が中途半端な描き方になったようだ。また、タイトル「hope~希望」を連想させる話は終盤になってクローズアップしてくる。この関連付けが強引だったと思う。

演出は自由奔放で、さしずめ空高く飛んだ凧が風に揺られるが如く、不安定である。そして、どこに着地するのか定かではない。
このふわふわした浮遊感をどう捉えるかによって観方が違ってくるだろう。
自分としては演出上、多少の遊び心はあっても良いが、物語として主筋があって観劇したという印象が欲しかった。

戯曲冒険小説・歳月よ老いさらばえた姫たちよ

戯曲冒険小説・歳月よ老いさらばえた姫たちよ

劇団レクラム舎

小劇場B1(東京都)

2014/10/15 (水) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★★

難解に挑むが如く
冒険…学生時代にあこがれた言葉。あえて危険に身を置き、成功するかどうかの成否が確実ではないが、”スリル”と”興奮”という刺激を求めて挑戦する。漠然としているが、なんとなくカッコよい。
しかし、そんな思いとは裏腹に現実の生活にどっぷりはまり、数十年が経った。
そして、清水邦夫原作の「戯曲冒険小説」を拝見したが、結構難解かも…。

演出は同様の動作を繰り返さないよう、すでに舞台上の衣装とともに用意(陳列)されていた。原作を知っていれば合点がいくだろう。
演技は、ベテランが行っているので安定感があったが、擬声音(例えばビールの栓抜音等)が頻繁にあり耳障りに思った。実際、小道具もしくは擬飲料を使用したほうが良かった。

見応えのある公演でした。

ネタバレBOX

ストーリーは大筋以下の通りだろう。

今日も男はハイヒールの万引きに失敗して帰ってくる。妻は土蔵の前で亡き夫が万引きしてきたハイヒール見ている。男は余命いくばくもない妻が前夫の伝記を完成するために、前夫と同じ冒険をし、そのスリルと興奮を感じることによって、前夫が惹かれてやまなかった冒険心をつかもうとしている。

 彼女の前夫は水産学の研究者で、奇魚を求めて世界中を回っていたが、某国の内戦に巻き込まれて死んだ。妻は亡き夫の伝記を書くため通っていた図書館の司書と1年3ヶ月前に結婚した。

 男がまた万引きに失敗し、喫茶店で靴屋の主人につかまるが、隣席でその話を聞いていた外套を来た男に万引きが成功する秘訣を教わる。外套男が語る盗みに関するスリルと興奮を例える冒険話はまるで妻から聞いた前夫そのものだった。外套はいったい誰なのか…?

余韻がある終わり方で、観客が思い思いに感じることになる。
さて、「愛」と「冒険」に関わる「女」と「男」の「想い」と「情熱」が交錯する。
清水邦夫の珠玉の名作を楽しみました。

次回公演も楽しみにしております。
湯浅桂樹の頭ん中

湯浅桂樹の頭ん中

神田時来組

ART SPOT LADO(東京都)

2014/10/11 (土) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★

脳内探訪
本名・岩佐圭二(演出)とペンネーム湯浅桂樹(脚本家)という同一人物の公演である。さて、芝居は湯浅氏が考えていること…脳内探訪といった趣旨で観劇してほしいとの前説があった。また、続けて定番の諸注意があった。人間の3大欲「性欲」「睡眠」「食欲」に絡めて、「場内ではむやみに脱衣しない」「鼾は遠慮して」「飲食禁止」ということ。
さて、内容はオムニバス3話であるが、1話、2話が各15分、3話が60分というバランスの悪い構成である(本人弁)。
自分のイメージは、1話「性欲→妄想」、2話「睡眠→幻想」、3話「食欲→奇想」というもの。

ネタバレBOX

1.事故PR

事故で鞭打ち症になった患者が来院し、治療を求めるが医者の非常識な「治療」理屈とエロい女性が現れて混沌とした状況になる。

2.師走にDON
リアル・サンタクロースがクリスマスに恋人と過ごせず、彼女から浮気を疑われ…。事実を打ち明けて誤解を解こうとするが、そこにトナカイも現れて殺人事件に発展する。

3.茜荘
シュールな内容で印象深い。ネオ西暦になった未来の話であるが、なぜか現代的である。さて未来では血液型という概念が無くなった。血液型(種)の保存という目的のために殺戮を行った男。ミステリー要素も濃く見応えがあった。
シチュエーションが、男女が無人島で過ごす過程を撮影する、またはカップル誕生も期待するという、現代に通じる娯楽映像企画でありながら、ストーリーが進展するに従い殺人事件が発生するという奇想さ。多様性を求めるという大義名分に隠された理不尽な行為。この無軌道の先にあるものは繁栄か絶滅か…芝居はここでジ・エンドである。
御ゑん祭

御ゑん祭

バンダ・ラ・コンチャン

青山円形劇場(東京都)

2014/10/09 (木) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★

見事なコラボ
近藤芳正が出ずっぱりというのが謳い文句の公演…共演した劇団との融合した芝居は見事だった。そしてなぜか初初しい少年・童貞役が多かった。ベビーフェイスのため少年から実年齢以上の役まで幅広く演じる器用さ。その特長を如何なく発揮した公演だった。
また、ベテランらしく円形劇場の特殊性(周観客)を熟知し観(魅)せていた。

後日追記

ギンノキヲク FINAL

ギンノキヲク FINAL

ラビット番長

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2014/09/19 (金) ~ 2014/09/23 (火)公演終了

満足度★★★★★

問題提起は鋭く、作風はコミカルの妙
人は生まれた時から死ぬ運命にある。人の一生とは何か、まさしく”生まれ出る悩み”である。そして、多くの人は「死」を迎える前に老いという期間を少なからず過ごすことになる。
いずれ人は老いるが、その時にこの芝居にあるような特別養護老人ホームに出会えれば、と思わせるような心温まる物語。
現実には重苦しいテーマであるが、あえて明るく介護の仕事を描き、職員の人たちが遣り甲斐を持ち生き活きと働いていることに安心感を覚える。一方で介護を巡る環境・労働条件の厳しいこともしっかり訴える、という社会派の側面も見せてくれた。介護…それは高齢化社会において行政はもちろん個人の生活においても大きな課題である。それは、家族を介護することは、仕事以上に大変であったと悲哀をもって語ったことに凝縮されている。全体的にコミカルな作風であるが、その底流にある問題提起は鋭く、大変見応えのある公演であった。

一遍

一遍

風雲かぼちゃの馬車

相鉄本多劇場(神奈川県)

2014/10/09 (木) ~ 2014/10/14 (火)公演終了

満足度★★★★

踊念仏…持ち味を十分に発揮
一遍上人が武家出身ということは知らなかったが、信仰は踊り念仏を通じてということは授業で教わったような…。ミュージカルらしく仕上げるには格好の題材だったと思う。風雲かぼちゃの馬車という劇団の持ち味が十分発揮できていた。またキャスト陣の有髪の僧姿も魅力的だった。
ちなみに、「一遍上人」は2012年に映画化(主演:ウド鈴木)され、話題になった。

ネタバレBOX

武家社会から仏門へ…この選択には家門の結束・継承があったようだ。物語的には武家社会への執着は描かれなかったが、仏門における確執は峻厳だったようだ。仏門という世俗とかけ離れた世界における対立(仏法問答)をもう少し観たかった。懊悩から(時宗)開眼までの道程…、一遍という傑物への成長を問答という状況説明・台詞で深めて欲しかった(海外公演だと、言葉の違いもあり難しいとは思うが)。

今後の公演にも期待しております。
暗転セクロスw

暗転セクロスw

暗転セクロスw 制作委員会

上野ストアハウス(東京都)

2014/10/09 (木) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

恋(濃い)芝居
オムニバス風であるが、テーマ(性)とシチュエーション(館)は共通しており、その観せ方は上手い。性欲に絡めた男女の心理描写がデフォルメされてはいるが、本能に近いところを突いていると思う。建前は合縁奇縁、本音は愛執肉欲…といったところだろう(休憩チーム)。

ネタバレBOX

ラブホテルらしき部屋での性欲(愛)を表現した201~206号室までの6話。
話は一応部屋ごとに簡潔するが、微妙につながりを持たせるという、演出の巧みさ。
・第一話は、合コンで知り合った男(童貞)・女(処女)がSEXする迄の過程。未体験同士のドタバタ<純愛劇>
・第二話は、ホテトル嬢を呼んだところへ遠距離恋愛中の彼女が…いつの間にかホテトル嬢と彼女が発展し<同性愛>
・第三話は、タイムスリップしてきた新鮮組(土方歳三、沖田総司)の男色と思いきや、沖田は女性という設定の<倒錯愛>
・第四話は、コンビニ強盗から女店員を守りたい男バイトの奇行が生んだ<変質愛>
・第五話は、亡き妻を想い、自殺しようとする小説家と女ピザ配達人の<痴情愛>
・第六話は、友人夫妻とのスワッピング。実は不妊治療(受精)のための<生命愛>

ちなみに第五話に出てくるピザ配達の女性が、各部屋へ誤配する設定になっている。そして小説家は204号室の強盗が撃った銃弾が壁を貫通し…念願通り死ねた。
いずれも何らかの愛を描いたものであるが、下卑ることなく、軽妙な演出に思わずニヤリとしてしまう。とても楽しい芝居でした。

今後の公演も楽しみにしております。
ひまわり~日はまた昇る~

ひまわり~日はまた昇る~

ThreeQuarter

中野スタジオあくとれ(東京都)

2014/10/11 (土) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★

丁寧な芝居
細部まで説明した丁寧な脚本・演出という印象である。冒頭は裁判シーンおよび人質立て篭もり事件があり、シリアスなドラマをイメージしたが…。
物語はご都合的なところや強引な展開もあるが、それ以上に観せる”力”があり面白かった。なにより散りばめたネタもしくは張巡らせた伏線をすべて回収し納得してもらうよう努めているところに好感を持った。約2時間の公演は見応えがあった。

ネタバレBOX

説明を引用させていただくが、「詐欺にあった一人の青年は、詐欺師事務所の門を叩く。 今度は自分が騙す側になる」ということだが、詐欺師事務所が求人広告を作成するか?実はこの事務所は弁護士事務所だったとか?そして、実際は詐欺紛いのことはしていない…など、二転・三転は当たり前の脚本で驚く。しかし、芝居は人への優しさに溢れた素晴らしい内容で感動できる。
なお、演技はもう少し観客が感情移入できるようにお願いしたい。

今後の公演も楽しみにしております。
俺たちの劇 ~東京編~

俺たちの劇 ~東京編~

ENBUゼミナール

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2014/10/04 (土) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★

もう少し膨らませてほしい
台風の影響で雨が激しく降っているにもかかわらず、立ち見まででる盛況ぶりだった。結構仲間内だったかもしれないが、劇団側は嬉しかっただろう。

さて、公演であるが大きく二つの流れのある話だが、その関連性は薄い。できれば説明にある”劇団”をメインにしたストーリーを膨らませてほしかった。
居酒屋の件は、ストーリーテラー的な役どころの「ちひろさん=南帆子サン」だけでよかった。

ネタバレBOX

劇団を主宰し存続させていく苦労、脚本家としての能力の限界など、苦悩する姿がよく出ている。
それだけに居酒屋で相席になり、合コンのようになった女性達の話(その内の一人が外国人と結婚する)はまったく関係ない。それよりも自分達劇団の喜び、悩み、悲しみ…希望を状況とセリフで表現してほしかった。劇中劇のようになるかもしれないが、それでも興味が持てる。もっと主筋を大切にし、本当に描きたい内容に絞った芝居のほうがわかり易いと思う(ENBUゼミナールであっても)。

今後の公演に期待しております。

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