わが友ヒットラー
シアターオルト Theatre Ort
駅前劇場(東京都)
2013/03/27 (水) ~ 2013/03/31 (日)公演終了
満足度★★★
なぜ、今、この様式で、三島由紀夫なのか
駅前劇場の使い方が新鮮でした。
ランウェイのような舞台美術で照明も洗練されていて、
全体的にデコラティブな空間のイメージと違う、かなり作り込んだ
いかにもお芝居らしい演技をされていて、驚きました。
チラシのデザインもいいと思ったのですが、実際のお芝居とは一体感がなかったように思います。
三島戯曲は難しいですよね。特に長いセリフが多いですから、俳優個人の力量が試されます。
長いセリフの場面は演出の工夫がもっと必要だったのではないでしょうか。
ただ、私に合わなかっただけなのかもしれませんが…。
ココロに花を
ピンク地底人
王子小劇場(東京都)
2013/05/31 (金) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★
擬音だけの作品も観てみたい
このフェスティバルへの応募文章とチラシの文言を読んでから拝見したら、
ストーリーが全然違っていて少し戸惑いました。
携帯電話がいつ出てくるんだろうと待っていたんですが、
最後まで出てこなかったですね(笑)。
チラシのビジュアルから受ける印象と、作品の内容もかなり違いました。
SFっぽい少し不思議なストーリーは、イキウメに似てるな~と思いました。
(後で気づいたのですが、イキウメの『散歩する侵略者』を上演されてますね!)
効果音を役者さんの声で表現するのが面白かったです。漂う雰囲気が独特で、
登場人物たちのぎこちない会話にも味わいがありました。
作・演出のピンク地底人3号さんは、戯曲で会話を書くことが初めてだったと伺いました。
今までの戯曲は擬音とト書きだけだったそうで、とても興味深いです。
擬音だけの作品も観てみたいと思いました。
黒塚
木ノ下歌舞伎
十六夜吉田町スタジオ(神奈川県)
2013/05/24 (金) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★
歌舞伎の本質を伝えるポップな現代演劇
原作歌舞伎の世界観を壊すことなく、丁寧に余白を埋めて、現代に通じるお芝居にしていました。
たとえば花組芝居のように女形が登場したり、衣裳が豪華絢爛だったり、
歌舞伎のビジュアル要素を用いるのではなく、
歌舞伎の本質をポップな現代演劇にして伝えてくれたと思います。
役者さんは皆さん素晴らしかったです。
特に老女岩手を演じた武谷公雄さんの技術は非常に高いと思いました。
照明も音響も音楽も転換も良くて、あの小さなスペースで組み立て式のセットでも、
十分に歌舞伎作品として味わえました。
実際の歌舞伎では、メインの俳優以外の俳優はリアクションをしなかったりするので、
現代劇に親しんでいる私は、最初はその方式に馴染めませんでした。
でもこの作品では、俳優それぞれが舞台での出来事にちゃんと反応していたので、
違和感なく拝見できました。
原作の完全コピー稽古をやると聞いて、びっくりしました!
歌舞伎は所作やセリフの抑揚も独特ですから、
体得するために相当なお稽古をされたのだと思います。
完全コピーの通し稽古をUstreamで配信したそうですね、見たかった~。
終演後のトークも、90分やってもらってもいいぐらい面白かったです。
公式サイトにアップされた木ノ下裕一さんのラジオ番組風(笑)、音声ガイダンスも聴きましたよ!
兄よ、宇宙へ帰れ。【ご来場ありがとうございました!】
バジリコFバジオ
駅前劇場(東京都)
2013/05/29 (水) ~ 2013/06/03 (月)公演終了
満足度★★★
オリジナルの人形が魅力的
オリジナルの人形が役者さんと一緒に活躍するお芝居を続けて10周年。
駅前劇場が盛況でした。劇団のファンも大勢いらっしゃるんですね。
長男が引きこもっている家庭と、劇団解散を決めた作・演出家の
2つのエピソードから成るストーリーでした。
コントのようなネタがいっぱいで、よく笑わせていただきました。
人形の登場シーンは想像していたより少なかったですね。
もっと人形が大勢出てきて、人間と同じぐらいに演技をするんだろうと思っていました。
終演後、ロビーで販売されていたおおかみの人形が可愛かったんです。買えばよかった~!
My Favorite Phantom
ブルーノプロデュース
吉祥寺シアター(東京都)
2013/04/26 (金) ~ 2013/04/29 (月)公演終了
満足度★★★
「演劇って何なんだろう」と考える時間
役者さんがそれぞれに「ハムレット」との出合いを語り、
色んな人の記憶と「ハムレット」というお芝居の断片を見せられたように思います。
音楽は出演者の1人に相当するほどの存在感と主張があって、かっこよかったです。
照明も工夫があったのでお好きな人はいると思います。
行き着く先がわからない繰り返しは計算なんでしょうね。
とらえどころがないので「いつ終わるのかな」と考えながら座っている状態になりました。
よくわからない時間と空間の中に投げ込まれ、
放っておかれて、実験データを取られているような気分にも。
観客に対するいわゆる「サービス精神」といったものは感じられなかったし、
面白いかどうかと問われると、私は「面白い」とは答えられないんですが、
「演劇って何なんだろう」と考えることができました。
私自身に全てがゆだねられていたんだと思います。
構成・演出の橋本清さんはご自分の欲望に忠実で、
本当に興味のあることだけをやるタイプなんでしょうね。
ありがちな娯楽性はなく、メッセージを伝えようとしているわけでもなさそうでした。
自分の主張を広く伝えるために演劇をやってる方は少なくないと思うんですが、
橋本さんはその逆で、難解であることも込みで
「観客が好きに感じればいい」「お好きにどうぞ」という姿勢を徹底されているようです。
アフタートークに出演者全員が出ていて、
役者さんの自己紹介だけでほぼ終わってしまったのは残念でした。
演出家の方からもっと本質的なことを話した方がいいと思います。
可愛いデザインのチラシに作品概要が載っていたので、
当日パンフレットに挟み込むと良かったんじゃないでしょうか。
トークの最後に「質問があれば訊いてください」とアナウンスして、
橋本さんも出演者もロビーに出て来られました。
観客を置き去りにせず、対話を求めていることに好感を持ちました。
左の頬(無事全ステージ終了!ご来場まことにありがとうございました))
INUTOKUSHI
シアター風姿花伝(東京都)
2013/04/10 (水) ~ 2013/04/21 (日)公演終了
満足度★★★
学園祭のような楽しさ
劇場に入ってみると、手作り感のあるパネルが目に入りました。
劇場入口の物販ブースの雰囲気も含めて、
小劇場演劇というよりは学園祭のような楽しさでしたね。
開演前の小芝居も嫌いじゃないです。
コントを積み重ねていくような内容で、舞台上でも出演者が学校ノリで存分に
楽しんでいる感じ。自分の同級生が出てたらめちゃくちゃ面白いだろうな~。
劇団員が全員20代という若い劇団なのに、
内容が「笑ってる場合ですよ!」「おれたちひょうきん族」「ぐるぐるナインティナイン」など、
80~90年代のバラエティー番組のようで意外でした。
選曲が懐かしい!みんなで考えて、がんばって作っていると思いましたし、
犬と串という集団がやりたいことも伝わってきました。
ただ、笑えなくはないけれど、コント演劇を大人の鑑賞に耐えうる完成度にするのは難しいですよね。
たとえば「表現・さわやか」のように15~20分の短編コントを
つなぐ構成にしてもいいんじゃないかと思いました。
チラシが可愛らしくて、すごく楽しそうなデザインです。
字はちょっと小さすぎる気もしますが、必要な情報が全部わかるし、
チラシだけで観に行きたい気にさせてくれます。真ん中の戦車もいいですね。
舞台美術は、チラシと関連性を持たせたら良かったのではと思いました。
キャッチャーインザ闇
悪い芝居
王子小劇場(東京都)
2013/03/20 (水) ~ 2013/03/26 (火)公演終了
満足度★★★
「小劇場演劇」をビジュアライズ
「小劇場演劇」と聞いてパっと思い浮かべたら、こんなお芝居なんじゃないでしょうか。
若い役者さんがおしゃれな衣装をまとって、声を張り上げて客席を向いてセリフをしゃべり、
やみくもに動いたり、長い暗転があったり…演劇でしかできないことを実践されて
いて、昔の小劇場のイメージがビジュアライズされたように感じました。
LEDの照明も、装置も動かすセットチェンジも見どころがあって、
特にオープニングの照明が良かったです。
なかでも一番好感を持ったのは衣装ですね。
キャラクターの背景がわかるので区別もつきやすく、一生懸命工夫されていると思いました。
ポンチョやカメラに文字を描いていたり、“先生”が着ていた変なガウンも面白かったです。
役者さんは皆さん、とてもがんばってると思いました。
女優さんが可愛いかったですし、“スピード”役の人の体のキレが良いのも印象に残りました。
たとえば劇団鹿殺しだったら菜月チョビさんと丸尾丸一郎さん、
柿喰う客だったら玉置玲央さんなど、劇団を象徴する肉体を持つ俳優が出てくれば、
“悪い芝居”をまた観に行きたくなると思います。
『熱狂』『あの記憶の記録』ご来場ありがとうございました!次回は9月!
劇団チョコレートケーキ
サンモールスタジオ(東京都)
2013/03/23 (土) ~ 2013/03/31 (日)公演終了
満足度★★★
意外な演出、人間らしい会話が欲しい
『あの記憶の記録』『熱狂』の順で拝見しました。
両方とも客席は男性が多くて集中力が高かったです。
『あの記憶~』では泣いてる人がいっぱいいらしゃいました。
劇団の世界観が好きな人がいて、固定のファンがついているんですね。
『熱狂』はお客さんの年齢層が高く、有名劇評家も何人かいらしていました。
枝光本町商店街
のこされ劇場≡
枝光本町商店街アイアンシアター(福岡県)
2013/03/23 (土) ~ 2013/03/30 (土)公演終了
満足度★★★★
ふと、また観たくなる、また会いたくなる
まず、街を探訪するだけで楽しかったです。
そこに住んでいる人がいて、土地に染みついているものがあることを実感できました。
枝光に住んでいない人(のこされ劇場≡の劇団員)が作っているという構造も面白いですね。
街に縁のない人がつくる街の物語。
街を愛していないとできないことだと思います。
商店街で働く方々が出演されているのは、
最初にさいたまゴールドシアターを観た時の感覚に近かったです。
なぜか、プロの俳優とは違う、少々たどたどしい演技をする姿に胸打たれるんですよね。
生きてきた年輪が重要なのだと思います。
この作品では、目の前でしゃべっているのは市井の人だけど、俳優でもある。
そして観客の私自身も物語の登場人物の一人になる、面白い体験でした。
俳優に自由に質問ができるので、公演の進行が参加者の采配次第なのも新鮮でした。
時間が決まっているような、決まっていないような…、偶然を装っているかというと、そうでもなくて…。
ジャンル分けが難しいですが、演劇って何だろうと考えるきっかけにもなりました。
明確な意図を持ってルートを決めて観客を案内し、最後にあの場所に連れて行って帰結させるのは演劇の演出と言えると思います。
人に会うと心が動いて、恋情のような気持ちが生まれますよね。
ふと、また観たくなる、また会いたくなるんじゃないでしょうか。
そんな後を引く感覚があります。
北九州まで行った甲斐がありました。
月の剥がれる
アマヤドリ
座・高円寺1(東京都)
2013/03/04 (月) ~ 2013/03/10 (日)公演終了
満足度★★★
心つかまれる一瞬を逃してしまった
プレビュー翌日の初日に拝見しました。
作家に言いたいことが沢山あるのだろうと思い、必死でメッセージを探したけれど、一番の核心部分を探り切れなかった…そういう気持ちが残りました。
観る日によって振幅が大きく出る作品なのかもしれないと思いました。
出演者の人数が多いので、本番の舞台上で役者さんを動かしてみてわかることもありそうです。
初日の幕が開いてからどんどんと変化していくのは演劇の醍醐味で、映画やテレビではありえません。
いま作って、1日ごとに進歩するのは、演劇が生きている証拠であり、武器のひとつだと思います。
世界観のあるチラシが目を引きました。ただ、長文の文字が小さく、色も薄くて読みづらかったです。
ずっと同じデザイナーさんが作っているんですね。
こんなチラシ文化は演劇ならではですし、効果的に使っていると思いました。