満足度★★★
「演劇って何なんだろう」と考える時間
役者さんがそれぞれに「ハムレット」との出合いを語り、
色んな人の記憶と「ハムレット」というお芝居の断片を見せられたように思います。
音楽は出演者の1人に相当するほどの存在感と主張があって、かっこよかったです。
照明も工夫があったのでお好きな人はいると思います。
行き着く先がわからない繰り返しは計算なんでしょうね。
とらえどころがないので「いつ終わるのかな」と考えながら座っている状態になりました。
よくわからない時間と空間の中に投げ込まれ、
放っておかれて、実験データを取られているような気分にも。
観客に対するいわゆる「サービス精神」といったものは感じられなかったし、
面白いかどうかと問われると、私は「面白い」とは答えられないんですが、
「演劇って何なんだろう」と考えることができました。
私自身に全てがゆだねられていたんだと思います。
構成・演出の橋本清さんはご自分の欲望に忠実で、
本当に興味のあることだけをやるタイプなんでしょうね。
ありがちな娯楽性はなく、メッセージを伝えようとしているわけでもなさそうでした。
自分の主張を広く伝えるために演劇をやってる方は少なくないと思うんですが、
橋本さんはその逆で、難解であることも込みで
「観客が好きに感じればいい」「お好きにどうぞ」という姿勢を徹底されているようです。
アフタートークに出演者全員が出ていて、
役者さんの自己紹介だけでほぼ終わってしまったのは残念でした。
演出家の方からもっと本質的なことを話した方がいいと思います。
可愛いデザインのチラシに作品概要が載っていたので、
当日パンフレットに挟み込むと良かったんじゃないでしょうか。
トークの最後に「質問があれば訊いてください」とアナウンスして、
橋本さんも出演者もロビーに出て来られました。
観客を置き去りにせず、対話を求めていることに好感を持ちました。