みさの観てきた!クチコミ一覧

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獣従承知(じゅうじゅうしょうち)

獣従承知(じゅうじゅうしょうち)

角角ストロガのフ

王子小劇場(東京都)

2010/12/16 (木) ~ 2010/12/20 (月)公演終了

満足度★★★★

妖しい壺の魔人
まず今回のルミちゃんワールドはいつもよりおとなしめだった。毎回のエグイドロドロしさがなかった代わりにマントヒヒみたいな壺と妖怪クモ人間みたいな魔人にヤラレル。
そして舞台セットと小道具が素晴らしい!舞台を高く積み上げたセットだったため、首が痛かった。笑)
当日に配布されたパンフレットに配役が載ってなかったのでちょっと残念だった。

ネタバレBOX

主人公・鬼頭はネガティブな人間だった。結婚相手も一番好きな相手と結婚するよりも2番手の、自分より魅力の低い人間と一緒に居るのが一番落ち着く。なんていう、どこか捩じれた男だった。

そんな彼をポジティブにしようと大きなお世話の二人組が百夜プログラムを見せて洗脳させようとした。明るい未来計画だ。鬼頭は「何でそんなことしなくちゃいけないんだよ!」と反抗するも、そんな抗いは椅子に縛りつけらえた鬼頭には何の力もなかった。

無理強いされて勝手に見せられたお話は不条理そのものだが、鬼頭の心次第で物語がぐにゃりと変化していくさまが面白い。また、壺を擦ると「呼んだか?」と魔人と呼ぶには程遠い妖怪のような魔人が登場しちゃう!一瞬、妖怪人間べム・べラの世界観かと勘違いしたほど。笑

でもって、いちいち登場するたびに「呼んだか?」「呼んだか?」と連呼するわけよ。ワタクシ、コメディかと思った!
そんな、呼んだか蜘蛛魔人は早く願いを言えと焦ってる様子。その焦りは終盤に明かされるが、最後の願いを叶えた者が魔人となって他人の願いを叶えるというオチがある。願いは叶うけれど魔人になってしまうって、あなた!それって喜びから一気に突き落とされる絶望だしょ。

初めは諦め半分でいう事を聞いていた鬼頭は「マイナスイメージ撤去法」に結局薬局、反抗し更にネガティブな思考となって百夜物語を完全にぐちゃぐちゃにして破壊してしまう。人間の性質なんて、そうそう変わるもんじゃあないという証を観たようなものだった。

前半はスピード感がなくちょっとだらけた感が。もうちょっとインパクトのある本のほうが好みかも。それでも充分楽しめたけれど。
姫子と7人のマモル

姫子と7人のマモル

ネルケプランニング

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2010/12/18 (土) ~ 2010/12/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

めっちゃオモロイ!
第一、姫子のキャラクターがいい。姫子が7人のイケメンから守られる、なんつーお話だから、どう考えてもめちゃんこ可愛い美形の姫さまみたいな女子を守るナイト。と思うでしょう?ふつう。だけれどここに登場する姫子はけっしてきわめて平凡な(?)女の子ではなかったのだった。そう・・、どこからどこまでもクビレのないおおデブな姫子さまだったのです。

ネタバレBOX

姫子は絵本作家希望の守とささいなことから喧嘩になって別れてしまう。新たな生活を目指そうと一年発起し姫子は引っ越すことに決めたのだった。だから今まであった物を整理整頓し引っ越してみたものの、6、5万円だと思い込んでいた家賃は実は65万だったと解り唖然とする。そこで彼女はルームシェアするアイデアを思いつくのだった。

早速、募集をすると守と名乗るイケメン6人が応募してきた。そこで彼らと一緒に暮らすことになったのだが、何故か彼らは彼女に勝手に忠誠を誓って守るのであった。

そうこうするうちに彼らはかつて姫子に捨てられたストラップやビニ傘、口紅、ビトンの小銭入れ、Gショックらが人間の形に代えて登場したのだと解る。これらのキャラクター達が実にコミカルで面白い。昨今のアイドルは何でも器用にこなしてしまい凄いなぁ。とつくづく感心するがアドリブでも何でもござれで大いに笑わせてくれる。これぞエンタメって感じだ。

更にオカマの京子がこれまた鮮やかにギャグかましながら笑をとる。歌あり、ショーありで全体的に関西のノリだ。西川きよしじゃあないけれどコツコツと貯めた貯金が1000万あった姫子は甘い言葉で言い寄ってきた質屋のおっさんに騙されたりしながらも、守たちのお蔭で人間の守と仲直りすることが出来て元の鞘に収まる。

そうして守は念願の絵本作家大賞を取って賞金の2000万をゲットするも借金だらけの京子や超樽の社長、姫子を騙した鈍塚らにばら撒いてしまう。こういったノリも関西系だ。笑

舞台は確かに思いっきりやりたい放題!の体で、プチ暴走しながらも生あたたか~い、はぁとフルコメディだった。これだけ楽しませてくれたら、もう一回観たいと思う。

それにしても・・姫子を静かにさせる時にペットにお菓子を与えるように「ほい、お菓子」と守らが姫子の口に突っ込む辺り、そして姫子が放つムードもなんとなく可笑しくて笑が止まらなかった。お勧め!
LIVES16「おとこうた」

LIVES16「おとこうた」

LIVES(ライヴズ)

劇場HOPE(東京都)

2010/12/18 (土) ~ 2010/12/20 (月)公演終了

満足度★★★★★

流石にコント集は絶妙!
とにかく涙を流しながら笑った!LIVESの舞台は長編よりも、こういった短編の面白さは類を見ないのだが、今回、箱も小さかったことから客席は御礼満員で椅子を設置したほど。


ネタバレBOX

どこまでもカッコ悪い「おとこうた」な物語なのだけれど、口で吐くセリフとはうらはらにあまりのカッコ悪さが際立った舞台だった。笑

或る八狼族の話・・
一匹狼を気取る輩たちがオフ会に集まった。オフ会に参加すること自体、一匹狼ではないのだけれど(笑)、それでも性懲りもなく「俺たちは一匹狼だから、ツルんで行動はしない。」とキメルも、結局薬局、外れるのが怖くて、みんなでカラオケに行くという、苦笑な物語。


或る泥棒の話・・
どんな泥棒かと思ったらルパン三世に登場するキャラクター達の集まり。とにかく似てる!笑)  特に不二子役の佐藤夏紀のあのナイスバディはなんだ?!笑) これを観るだけでもめっけもん!なのだが、マニアックな集まりというのは得てして変態呼ばわりされるものだが、全員が正当論をぶちかますも、そんな集会に能力を注ぎ働かない夫にブチ切れる妻。


或るザ・ロンリーサタンの話・・
中年の売れないヘビメタユニットがラジオ出演し、気取って見栄貼ってトークするもそのセリフを覚えられない輩に隣の仲間がブチ切れる。しかし、良く考えてみれば嘘を言って自分を装飾したとしても、それは本当の俺たちじゃない。と気づき、本当の自分たちの姿をトークし始めるが、あまりにもカッコ悪い。笑


或る王子様の話・・
これは過去にも上演されたうだつの上がらない、気持ち悪いことこの上なしの中年ホスト・ジョニーの話。今はホストもしゃべって姫を楽しませてナンボの世界らしいけれど、ジョニーはとにかく無口で姫を楽しませる能力に欠けていた。酒を飲むときの口の開き具合がキモくて可笑しい!笑


或る迷える子羊の話・・
うだつの上がらない彼女いない歴数十年の中年ら5人が初めての合コンに出席した。相手の女性5人を集めるために見栄はりまくって自分たちは全員、歯医者だと偽り、この席を設けたのだった。女性らを待つ間の5人の会話劇。ここでものすっごく可笑しかったのはキャラクターら5人がまんま日常でも、ってか素で演じてもOKみたいな風景だったことだ。いあ、こんなこと書いたらどんだけ失礼なんだよ。と思われるかもしれないが、本当だから仕方がない。笑


全体的に緩くて楽しい舞台だった。大満足でうきうきしながら帰ったのだった。

高校演劇サミット2010

高校演劇サミット2010

高校演劇サミット

アトリエ春風舎(東京都)

2010/12/17 (金) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

都立世田谷総合高校演劇部
あの名作「あゆみ」でした。ひとりの女の子が生まれてからの18年間を、6人でかわるがわる演じた舞台。

☆次回、高校演劇関東大会があります。無料ですので宜しかった観てあげてください。マニアの方が観ても相当なハイレベルですので期待できるかと思います。http://www2.odn.ne.jp/~cai42040/engeki/index.htm

ネタバレBOX

まず懐かしいと思う。同時に演じ手が変わって演出も変わってくると、また新しい物語のように感じるから不思議。
あゆみが、はいはいから始めて立っちした場面までを、6人があゆみになったり、コロ(犬)になったり、おばあちゃん、母親、父親、友人になったりと歩きながらくるくる繰り返す。その演出は実にお見事で、正に人生とはずっと歩み続けることなのだ。

幼少のあゆみ、犬を飼いたいとねだったあゆみ、犬と祖母と歩いた道のり、げんこつあめの思い出、思春期の淡い恋、祖母の死、そうして失恋・・、それらは走馬灯のようにくるくる回りながら人生という名の道のりを時には迷いながら、時にはつまずきながらも、「最初の一歩」の続きを、こんどは「続きの一歩」としてずっと歩み続けるのだ。

そうして亡くなったおばあちゃんはずっとあゆみを遠くの空から見守っているから、いまでもあゆみは元気を出したいときにげんこつあめを舐める。

序盤、あゆみの初めての立っちを演じた本橋道江の演技があまりにも絶妙だった為に、ワタクシの視点は彼女を追うことに終始してしまったが、素晴らしい役者だと心から思う。失恋した後に彼女が号泣するシーンではポロリ・・と泣けた。
本も素晴らしいけれど、演じた生徒も凄かった。
高校演劇サミット2010

高校演劇サミット2010

高校演劇サミット

アトリエ春風舎(東京都)

2010/12/17 (金) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★

都立飛鳥高校演劇部
う~~ん、惜しい。一番オイシイシーンで藍子の吐くセリフが音楽に消されて聞こえなかった。高校生藍子の内面を描いた物語。


☆次回、高校演劇関東大会があります。無料ですので宜しかった観てあげてください。マニアの方が観ても相当なハイレベルですので期待できるかと思います。http://www2.odn.ne.jp/~cai42040/engeki/index.htm

ネタバレBOX

藍子の父親は酒を飲むと妻に暴力を振るう。突然、母親が亡くなったことから藍子は父が殺してしまったのだと思い込み、外の世界に出られなくなってしまったのだった。

その時から藍子は現実から目をそらして、妄想の世界の中で生きることになり閉じこもってしまう。現実逃避だ。しかし藍子の親友はもっと酷い目にあっても絶望から這い上がり逃げないで生きていることを告白する。だってお腹にはこの子が居るんだもの・・。と。

藍子はそんな親友の告白を聞いてやっと自分の生きるべく道を確かめる。
全体的に高校生らしい演技だったが、固さもすこぅし、あったようだった。

高校演劇サミット2010

高校演劇サミット2010

高校演劇サミット

アトリエ春風舎(東京都)

2010/12/17 (金) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

山梨県立甲府昭和高等学校演劇部
とにもかくにも素晴らしい内容。ナンセンスコメディの描写もありながら、暗転後は悩める高校生の現実を描写する。その表現の仕方は斬新!

☆次回、高校演劇関東大会があります。無料ですので宜しかった観てあげてください。マニアの方が観ても相当なハイレベルですので期待できるかと思います。http://www2.odn.ne.jp/~cai42040/engeki/index.htm

ネタバレBOX

物語は高校生の教室の現風景から。

授業の内容は教師が「勉強は世界を旅するようなものだから楽しい。それは冒険みたいなもんだ。」と話す。観ているとそのナンセンスな話しっぷりは確かに面白い。

しかし物語りの真意は不登校になったともちゃんの脳内の、つまり夢の中の物語だと解ってくる。と、同時にともちゃんの親友のもとちゃんも、ともちゃんを心配するあまり不登校になっていた。

物語は彼女二人の担任と生徒らを絡めながらかつてのイマジナリーフレンド、脳内ツイッターと切なく、しかしコミカルに勧めていく。内容は盛りだくさんだ。そんな仮想現実の世界で悩みながらも現実を知り、本来の姿にもどっていくともちゃんともとちゃんの物語。

実に素晴らしい内容だった。
知るということはよく生きること。というのが心に響いた。
あなたの部品 リライト

あなたの部品 リライト

北京蝶々

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/12/14 (火) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★★

面白い!
誰でも何処かしら換えたいものはあるはずだ。だからこの物語の着眼点にも興味が注いだが、一番面白かったのは人間の本来持っている欲や業のような本質がきっちり描写してあったところだ。
役者らが待つマネキンの演出もお見事。

ネタバレBOX

マネキンを作るように義足や義手、皮膚再生、その他の部品を作って患者の要望に応える技師の西村自身が実は女だった、と後半に明かされる場面は絶妙だった。実は自分自身がかつては患者で、同僚の前川先生が西村の性転換手術をしていた経緯から、前川が西村に言い寄っていた理由も理解出来るってもんだ。笑

すると舞台で使用した膣は西村のものってことになる。笑
しかし、いったい、あの膣の小道具を何処から仕入れてきたのだろうか・・。笑

岡田夫妻の関係性、車椅子に乗った障害者とヘルパーの上下関係、二組の男女のなさぬ仲は他人がどうこういう類のものではないが、利害関係を逸脱した深層心理の描写が愉快だった。特に障害者とヘルパーの愛情は、一見、純愛のように見えたえれど障害者がリライトされて立って歩けるようになると今まで優位なポジションにいたヘルパーが自分のポジションを守るがごとく作為的に工作してしまう心理の表現がお見事だった。

リライトしても、どこまでいっても満足できない欲は個々の患者を更に憂鬱にさせる。西村自身も男になった満足感がやがて落ち着くと、今度は男らしさと強さを誇示するために新型義足を必要以上に要請するさまはむしろ悲劇を感じたが、思うに心のリライトも必要なのだ。笑

キャストの演技力にもエロい小道具にも満足して面白がってみた芝居だった。
愉快犯

愉快犯

柿喰う客

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2011/01/07 (金) ~ 2011/01/16 (日)公演終了

ワークインプログレス
おぼっちゃま君みたいなナリ。

ネタバレBOX

寿家一族のお話。代々続く富豪なお家柄の寿家はハッピー、ラッキーな事ばかりで不幸なことがない一族だった。祖母、両親、長女の鶴子、そして、まさにおぼっちゃま君状態でだめりんこな長男・亀太郎の家族構成。

しかしそんな由緒正しい家柄の幸せボケしたDNAはストレスには滅法弱いのであった。過剰なストレスを受けるとショック死してしまう男達が多々居たことから、一族の女達は男達に過剰なストレスを与えないように、また、不幸に対しての免疫が弱いため、不幸な出来事から避けるように生きてきたのであった。

しかし鶴子がショック死した場面から物語は一気にその謎を解く為に加速するのだが、とにかくアニメ的で面白い。内容は、そんなことがまかり通ってたまるかいっ!みたいな体で、いちいち大げさなのだ。でもって、いちいちキャストらの仕草が面白くてやっぱりアニメ的だ。

この後、本番まで3週間あるから内容も変わるらしいが軸は変わるはずもなく、きっと、お坊ちゃま君みたいな描写だと思う。どうせなら息子の名前はちゃまちゃまで良かったような気がする。そんなどーでもいいような愉快なお話。

-作品№7 改訂再演- 資本主義崩壊のレクイエム

-作品№7 改訂再演- 資本主義崩壊のレクイエム

OM-2

お江戸両国亭(東京都)

2010/12/17 (金) ~ 2010/12/18 (土)公演終了

満足度★★★★

追求するもの
当日配布されたパンフに「前半は抑圧された個の人間から資本主義の崩壊の芽が現われ、街が崩壊し廃墟となっていき、後半では雪のような黒い灰が降る廃墟の中で、生死を繰り返しながらレクイエムを奏で続けるというシンプルなものになっています。」という真壁茂夫の書き下ろしが掲載されている。全体的な描写は演劇というよりも総合芸術という感覚。だから感覚で感じる舞台だと思う。

ネタバレBOX

会場に入ると客席より舞台を広くとったスペースがある。やがて自転車を走らせる男、ベッドでなかなか寝付けない黒い服の女、部屋で雑誌や新聞から女の顔を切り取って机に広げる太った男が現われる。

3人は特に繋がることもなく個々の空間に存在しているところをみるとどうやら街の一角の風景だと察する。その中で太った男が顔に血糊を塗りつけて何かに苦悩するように絶望と恐怖と屈辱の混じった表情を見せながら咆哮する。まるで何かの怪獣がただ行くあてもなく虚ろにうろつき回って滅んでいく断末魔のようだ。

どこにも届かない叫び。誰の為でもない、ただ苦しみから発せられる切り裂くような叫び。ウゥオーン・・その雄叫びは高く透き通り、しかしどこか悲しげな声が会場を渡っていった。渾身の力を込め声の限りに叫び、静寂な空気を揺るがすように、その声は響き渡っていった。

たぶんこれが抑圧された個の人間の表現なのだろう。太った男がその抑圧から開放されたいと、もがくように紙片を投げるシーンでは飛び散った幾千もの紙片が空中を彷徨い、ひらひらと降りてくるさまは圧巻で美しい光景だった。

そして後半は舞台セットを高く積み上げての芝居があったが下からは見えにくい。セリフも良く聞こえなかった。その後、セットは下げられチェロキー族の祭りのようにドンドコドドド・・ドンドコドドド・・とドラムをパーカッションする。インディアン嘘つかない。」みたいな響きが欲しかったのでワタクシ的には太鼓のほうが良かったのだが・・。笑


真壁は「演劇は人気を得ることでもなく、あるいは金儲けの価値に縛られることでもなく、ましてや権力を得ようとすることではありません。人間がまっとうに生きようとする行為をひたすら行うことなのです。」とあり、ワタクシも大いに同感だが、文章の全体を熟読すると、真壁自身が哲学的でひじょうに真面目な人だというのは理解できる。しかし、すこぅし異議がある。
こういった公演を打つにはそれなりの金もかかるということで資本がなかったら公演も打てないのが現状だ。そうして集客力があり観客の支持を得るということは演劇の質も良いということになりはしないか、また成功を夢見るから人は向上するのではないか、とも思う。だから資本主義の半分は良いことと考えて受け入れているのだが。

全体的に芸術的な作品だと思う。演出の技巧には圧倒さた。力強く破壊力もある好みの作品だった。次回も観たいと思う。



空洞メディアクリエイター

空洞メディアクリエイター

芝居流通センターデス電所

テアトルBONBON(東京都)

2010/12/15 (水) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★★

屈折度120%
毎回思うのだが、万人ウケする舞台ではない。こういった暴力的な物語を嫌う観劇者もいるはずだから、お勧めは決してしないが、たまに変わった舞台でもみたいな~。と考える人にはいいかもしれない。
ちなみにチョコレートをわざわざ購入してまでも持っていく必要はない。説明文には「芝居中に役者と観客がチョコレートを舐める、いわゆるチョコレートタイムシステム導入!皆様、各自好きなチョコレート持参でお越しください。」とあるが、チョコレートを持参しても終演後、外で勝手に食べな。みたいな感じだった。苦笑!

ネタバレBOX

風音の幼少から大人になるまでの家族や友人達との関わりを描写した物語。

風音は両親から過剰な溺愛を受けて育つ。しかし両親の愛情は風音の周りに居る全ての者達を排除し風音の友達や事柄を結果的に奪い取ってしまうのであった。

だから風音はずっと一人で孤独だった。がんじがらめで窮屈な思いをしていた風音は両親が嫌になって家出をしてしまうが、その先で知り合ったチワワを慕い武道を教わって強くなるも、チワワは決して「その鍛え上げた拳を喧嘩に使っては行けない。」と諭しながら武道精神を教え込む。

しかし、父は風音をみつけるとチワワが愛娘・風音を誑かしたと言い張ってバットで嬲り殺してしまうのだった。何かに付けて風音の周りに居る者を悪と決め付けて暴力を振るう父。その過激な愛情から逃げたい風音。

やがて風音は盲目の女と出会う。これを黒江という。盲目がゆえに感覚だけが研ぎ澄まされて見えないものが見えた黒江は有能なギャンブラーとなるも負けないギャンブラーには既に対戦相手が居なくこちらも屈折していた。そんな黒江に出会った風音は彼女の家で唆されてギャンブルをするも負け越して前歯を抜くマシーンで前歯を抜かれてしまう。

毎回の事だがここの劇団は危ないマシーンを使うのが大好きらしい。前回は電動ノコだった。苦笑! この辺りから舞台は益々過激になって、危険度が高まるが、どうやら舞台で導入される人の殺し方は九州の惨殺事件や、妻がウオッカを夫の鼻から流し込んで殺した事件からアイデアを頂いてるらしい。

終盤、憎んでいた父親と風音のバトルがあるが、まるでゾクの喧嘩上等!みたいなナリだった。そんなだから帰りは原チャリで、ぱらりらぱらりら・・ぱらりらぱらりらと風を振り切って帰りたくなっちゃたわさ。笑

バイオレンスでデンジャラスでホラー的で18禁な舞台だけれど、これだけ壊れたら既に驚異的で不動だとさえ思った。笑  アフタートークは鹿殺しのチョビだったが二人の話は九州の殺しに関する事件に終始し、二人ともこっそりとネットで気持ち悪くなりそうな事件を読むのが趣味だという。流石は鹿殺しとデス電所だな・・。と妙に納得したのだった。笑
でもって、竹内の言うことにゃ、「今回はいつもより増して終盤は爽やかです。」なんつって言うし、それを受けてチョビも「そうですよね。爽やかですよね。」なんて返して・・、どんだけだよ!とKYな身びいきさに突っ込みたかった。笑

ゆめゆめこのじ / Madam river and Mr.sofa

ゆめゆめこのじ / Madam river and Mr.sofa

AND ENDLESS

笹塚ファクトリー(東京都)

2010/12/09 (木) ~ 2010/12/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

夢はかな・・
セットの作りこみが上手い。障子の後ろから照らされる照明、導入音楽、衣装、全てがプロに徹した技だった。特に照明と音楽の見事なタッグにはヤラレタ。更に今回の見どころは殺陣だが、刀捌きの速さと刀がクロスした瞬間の音の響きに魅せられ、特に土方(西田大輔)と中村半次郎(村岡大介)の太刀格闘シーンでは刀が見えないほどの速さに鳥肌が立ったほど。大絶賛!過去にチャンバラシーンを数多く観てきたがこれほどの太刀捌きを観たのは初めて。圧巻だった。かなり練習したのだろうと今更ながらにその努力に拍手を送りたい。今までの中で最高傑作でした。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

時は明治維新。新しい夜明けを夢見た坂本竜馬、桂小五郎、中岡慎太郎、西郷隆盛、中村半次郎、土方歳三は薩長同盟を結ぶべく翻弄するが、そんな男衆が通い詰める花街が舞台。

ここでは春を売る女、つまり女郎を夢と呼ばれる。夢らと男たちのコミカルな場面から始まるこの物語は前半はコメディ満載のお笑い中心だが、後半はシリアスなシーンへと展開される。上演時間3時間だったが、ずっと飽きることなく鑑賞できたのは、やはり構成と脚本、キャストらの秀逸な演技力だと思う。美人ぞろいの女優陣の女郎っぷりや話し方、立ち振る舞いも妖艶だった。

こうして身体を売る夢らにも惚れてしまった男ができ、誰が殺されてもおかしくない怒涛の時代の中で、自分の惚れた男が生きていてくれさえすれば・・と殊勝にも思う夢らであった。それが夢達の希望であり、新しい時代へのまっすぐな夢でもあった。

しかし、そんな思いもうらはらに惚れた男は殺されてしまう。花街の女たちの見受け話や梅毒にかかってしまった情景を絡めながら、それでも「京は女で作っている」という自信を掲げ、太夫らの犠牲的精神と言うに言われぬ恋心の襞を強く描写していたように思う。

それにしても西郷隆盛が石川五右衛門のようなキャラクターになってるのには苦笑しちゃったよ。笑
明治維新のあの時代の芝居は時として重くなりがちなテーマだが、割に軽いタッチでキャラクター達をコミカルに仕立て上げたのは良かったと思う。
全体的に楽しめるエンターテインメントだった。魅せるところはきっちり魅せて素晴らしい出来だった。拍手!
同窓会へようこそ

同窓会へようこそ

龍昇企画

Space早稲田(東京都)

2010/12/12 (日) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

記憶にない生徒
「おたふく」に集った同級生ら6人と仲居のお話。物語は大笑いはないものの、苦笑!失笑!の類はある。なんせ五十代半ばの人たちの同窓会の話だ。だからキャストらは当然五十代半ばを思わせる人たちだ。しかし、新谷役の山本は三十代でしょう?とタカをくくっていたら、なんと53歳というから、人間の見た目ほどあやふやなことはない。なんせ彼は脱いでも三十代を彷彿とさせるマッチョな肉体なのだ。笑)


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

40年も前の同級生達は序盤、自分達の近況を報告しあいながらも会話は弾みビール瓶片手にマイク代わりにしてカラオケ大会を始める。勿論、歌う歌は古い。笑
ピンクレディーは50過ぎてるとか、由美カオルって70?とかバカを言って、こきおろしながらもノリノリだった5人だったが、山口だけが陰気に隅っこに座っている。

しかしここに集った同級生らは山口を思い出せない。失礼な話だが同窓会でも思い出せない人って必ず一人や二人は居るものだ。一人が思い切って山口に尋ねたのをきっかけに山口は集った5人に、中学生当時、さんざん苛められて不登校になり、それから7年間引きこもりになったことを告白する。

苛められた側と苛めた側の対比の不条理だが、苛めた側はそれほど重大だと考えないところに今回の溝がある。更にいじめに関しての教師の対応があたかもいじめられる側に起因があるかのごとくの処置だった。

山口は50過ぎた今、心のここの部分にひっかかりがあって、過去の浄化をする為にこの場を設けたのだが、いじめた大人達は「既に終わった昔のこと」と軽くあしらうと同時に陰険な山口を5人は詰りだす。そうして中学生の頃のように1:5になって大人になった今もいじめの構図は変わらないのだ。

やがて激高した山口は包丁を取り出して脅すと、5人は包丁を取ろうともみ合って折り重なった末に山口を刺し殺してしまう。そんな山口を放って、世間の目を気にするあたり、この劇の末恐ろしい人間の本質が見え隠れするのだ。

弱いものいじめ。それは大人になっても社会でも会社でも立場の違いはあっても、あるはず。
そんな可笑しくて悲しくて切ない不条理劇だった。

面白い!観に行って良かったとつくづく思う。




ゼロイチ

ゼロイチ

劇団K助

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2010/12/09 (木) ~ 2010/12/12 (日)公演終了

満足度★★★★

2つの物語
第一話はコメディ。第二話はシリアス。この両極端な物語はあるきっかけで始まった物語だ。どちらも解りやすいベタな内容。第一話は男の見栄から事が重大になり、第二話は少女が書いた一通の手紙によって少年が救われる物語だった。強いて言うなら第二話がひじょうに好みだった。

当日パンフにはキャストと出演者情報が羅列されていたが、出来たら第一話と二話のキャストと役は別々に右側に、情報は左側にと分けて記入してほしかった。芝居を見ながら役をパンフで照らし合わせて追っていくので、その方が見易いのだ。また、STAFFの記入欄もなかったのでひじょうに残念だった。舞台美術は誰とか照明は、演出は、脚本は、音響は?と割にチェックしてるのだから。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

物語はテラー役があるきっかけを作って進ませていく。芝居の合間と暗転にテラーは説明を付け加えてより一層解りやすくさせていた。

一話・・二人の男性教諭は密かに、好意を抱いている森永先生と付き合ってみたいという心持ちであったが、二人はモテナイがために自分たちの見栄に引きずり回され、ついに森永先生と結婚するといった仮想現実を作り上げてしまう。更に一人の教師に同じく見栄の為に結婚を示唆した告白をしてしまったからもう大変!

一瞬のうちに嘘は噂を呼び、これをきっかけに教員室は大騒ぎになるも当の森永先生には婚約者がいたという。しかし一度沸騰した噂は既に男性教諭らの意思とは反対に大きなうねりとなって愚かな人間たちを飲み込むほどになっており、その加速した勢いを止めることも出来ない人間の滑稽さを描写していて愉快だった。

ここでの豚と犬の物語への参加は必要なかったように思う。



二話・・小説家は自分の過去に対してあまりいい思い出がない。それは幼少の頃の家庭環境に起因していた。母が連れ込んだ男が母のヒモだったこと、何かにつけて男にDVを受けたこと。やがて男は貯金通帳を盗んで出て行ったこと、母はその男を追いかけ刺殺した事。それらの血塗られた出来事は、ぽつねんと残された少年の心を絶望へと追いやり、まるで巨人の手で押されてほの暗い洞窟に押し込まれでもしたかのように闇にもがいて沈んでいた。

そんな孤独の日々を送りながら少年は、この絶望に満ちた世界から消えてなくなりたい。と考え自殺を決意するも窓にコツン!と当たった小さな石ころが少年の運命を救ったのだった。
母が帰ってきたのだと勘違いして外に飛び出した少年は公園のベンチに置かれた少年宛の一通の手紙によって生きる希望を貰うのだが、これを書いた少女は心臓病の為に今は亡き人になっているという設定も泣かせるし、学校で埋めたタイムカプセルから出てきた少女の日記にもロマンを感じる。

二人の少年少女が望まない数奇な運命によって揺さぶられた出来事は少年の心には奇妙なストレスとなって蔓延し将来に託したい物語もなかったが、少女の日記が明らかにされると、余命もない少女が未来に対しての希望を捨てていなかった事にも感銘させられる。

そうして少女の思いやりを知った小説家はこれから書く小説は少女に捧げようと決めるのだ。本当に美しい物語だった。
人生の分岐点に女神が微笑むかどうかのちょっとしたきっかけで人生が変わるというのも、やはりロマンだ。

キャストらの演技力もキャラクターの立ち上がりも◎




py.

py.

コメディユニット磯川家

pit北/区域(東京都)

2010/12/10 (金) ~ 2010/12/12 (日)公演終了

満足度★★★★

やっぱりキャラクターはアニメ的
とにかく面白い!そして笑える。ただただ笑える。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

小生意気そうなおっさんピカチューやら、マリオキャラクターやら、お馴染みの名探偵ドコナンやら、キャラクターの立ち上がりは、まんまアニメの世界感。

実はコメディの場合、アニメネタのほうがやっぱ一般的で笑えると思う。全部で6コントを上演したがとにかくどれも面白い。その中にエロネタも仕込まれてて緩く笑える内容だった。

会場でこりっちの「観てきた」に書き込んでくれたら100円のキャッシュバック!を実施していただけあって、物凄い書き込みの量だぁ。たぶん新規のユーザーも増えるはずだ。流石、関西の劇団だけあって怒涛の勢いだが、こりっちのユーザーらの当選率は下がるというもの。苦笑!

ひとりごとターミナル

ひとりごとターミナル

劇団フルタ丸

こった創作空間(東京都)

2010/12/10 (金) ~ 2010/12/12 (日)公演終了

満足度★★★★

バスターミナルでの風景
最近のフルタジュンは調子がいい。こんな褒め言葉をサラリといえるほど舞台は面白い。説明しよう!調子が良いというのは舞台だけではない。フルタ君の身体は未だにすくすくと育っており、いわゆる育ち盛りなのだ。もしかしたら冬眠まえの熊が一気に食料を貪るごとくな勢いなのかもしれない。だから舞台に立ったフルタ君はテディベアそのものだった。笑

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

ゲームで育った世代は他人とコミュニケーションをとるのが苦手だったりする。そのせいか、バスターミナルの待合ベンチから始るこの物語もそれぞれの男女が独り言のようにつぶやくシーンから展開する。

6人の男女はまったくの他人だが少しずつ関係していて、その繋がりを一人ずつ見せる描写もコミカルで面白い。個々のドラマはやがて6人のドラマと発展していく伏線のばら撒き方とその後の伏線の回収も絶妙でオムニバスとして進ませ、きっちり一つの物語として成功させているところは流石だと思う。

独り言で始まりひとりごともどきで終わるここでの6人は自分が望むような人生を決して歩んでないが、そういう現実なのに悲壮感はなくて、むしろ清清しく感じてしまう。だから不思議とこれらのキャラクター達を一人も嫌いになれないという好意的な感覚が観客にも生まれてしまうのはやはり、脚本の秀逸さにあるのかもしれない。

そうして終盤は究極のひとりごとコミュニケーションをなんとな~く確立させちゃうところもコメディだった。笑

観劇後、なんだか温かな気持ちになって夜風に吹かれた。いい物語だと思う。

TIC-TAC 終了いたしました。御観劇くださった方々、出演者、スタッフに心から感謝しています。アリガトウゴザイマシタ。

TIC-TAC 終了いたしました。御観劇くださった方々、出演者、スタッフに心から感謝しています。アリガトウゴザイマシタ。

anarchy film

新宿歌舞伎町特設劇場(東京都)

2010/12/08 (水) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

孤独がゆえに
会場は大入り満員で階段に列を作っていた人々をみると早めに行って席を確保した方が賢明だ。

相変わらずヨリコジュンの描く世界感は破壊力がある。そして毎回、感じることだが、自分より弱い者に暴力を振るったり、自分で抱えきれない苦痛の吐き出し口として、他者を苛めて穴埋めする行為は器の狭い男の象徴みたいなものだが、こういった精神的に弱い男を描くのが上手い。上演時間2時間20分。

ネタバレBOX

ヤンハルトの父親は電車の中で母に暴力をふるい、その母を助けた車掌は父親を犬のように縛って犬小屋に住まわせる。更に車掌はこれをいいことにヤンの家庭を乗っ取るかのように住み着いて我が物顔に振舞うのだった。これに嫌気をさしたハルトは家を出て実家の干乾びた井戸に住み着くが、この井戸の中での物語りが今回の芝居の主軸だ。

すべてはハルトの孤独な精神から生まれた物語だが、こうなった理由は数年前にハルトが苛めた友達に起因する。友達はハルトに仕返しをする為にこの物語を仕組んだのだった。

序盤、井戸をねぐらにするハルトのもとに暗い穴倉のような入り口から登場する多くの輩はまるで死人のように白塗りな人々だ。これらはゆっくりとスローモーションで登場するが、その描写は幽霊屋敷の絵画を観ているようでさまになっている。笑

彼らはキュルキュルと騒ぎ立てハルトは仰け反るも、その風景はまるでちょっとした小さな遊園地だ。その中でハルトにとってショックな出来事が次々と始る。

それは父親の死、ハルトと近親相姦をしていた妹の死、ハルトの恋人の裏切り、ハルトの裏切り、どこまでも真っ直ぐなスミカ、爆弾の製造・・。これらのすべてはバンブースノーと言われたヨウ・ユキタケから始まり、やがて列車の中でハルトの母親がヨウから貰った時計(爆弾)を不倫していると誤解した父親のDV行為を沸点に、チン!と時刻は刻まれてしまう。

序盤、ワタクシはこの世とあの世の時間軸がぐにゃりと曲がって交錯しているのかと勘違いしたがどうやら、多くの輩はヨウが雇ったものだと終盤に種明かしがある。

明日から連れてきた人々の壊れ具合がこの劇団の見どころでもあるが、人間の欝な捩れ具合が絶妙な描写で、退廃的でもある。しかしその根底には孤独な一人の青年が「誰か自分を必要としてくれー。」という喘ぎも聞こえ、その心理はきっと観客も同じだとも思う。

井戸のセットの作りこみが絶妙、音楽導入、屈折度、全て好みの作品だった。終盤おの電車のセットも魔法のように早変わりする。強いて言うなら2時間以内にまとめて欲しかったが、それでも皆、いい仕事をしていた。

次回も楽しみな舞台。
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エムキチビート

シアターサンモール(東京都)

2010/12/08 (水) ~ 2010/12/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

夢とうつつの狭間
間違えてサンモールスタジオの方に行ってしまったワタクシは、シアターサンモールだとやっと理解してびっくら仰天!だ、大丈夫なのか?!こんなでっかい会場で。なんつって心配しちゃった。笑)・・会場に入るとセットが美しくて感嘆したがそこは仮想現実の世界。物語は案外コミカルに進ませ笑いのコネタも満載ですんごく楽しめる。終盤は泣かせどころもあって会場はすすり泣きが聞こえた。

ネタバレBOX

過去に列車の事故で幼馴染のナユタを失ったハジメはショックの後遺症からPTSDを引き起こし幻覚に悩まされていた。この病気の治療法としてオンラインゲームを利用したセラピーを受けていたハジメはオンラインの仮想空間でログインしたプレイヤーたちが集る広場で戯れる。ここが今回の物語の場所だ。しかしこの場所は終盤の展開から列車の中と考えたほうが観やすい。

自分のせいでナユタが列車事故にあって死んでしまったと思い込んでいたハジメはログインしてナユタを探し出し、謝りたいと考える。

序盤、仮想現実の広場で多数のアバターたちがハジメの周りで雑多な争いを繰り広げ、この時にこれまた雑多なコネタを披露する。数々のネタは面白い。観客もワタクシもこの時はハジメが生きていてPTSDとナユタの為に足掻いているとしか思わなかったが、終盤になって列車事故で亡くなったのはハジメのほうで大惨事から一人だけ生き残った少女がナユタだったと、どんでん返しをくらう。

現実の世界でナユタはハジメと同じようにPTSDを引き起こし同じように自分のせいでハジメが死んでしまったと思い込んでいた。そして広場に集っていたアバターらとハジメと関わった現実の世界で生きていた人たちは列車事故で亡くなっていたという種明かしが後半にあるので、広場は車両の中と想像した方がしっくりくるのだ。

ハジメは自分が生きていると思い込んでいたがナユタと逆転していたと知らされるとナユタの心を癒そうと努力する。そうしてナユタがトラウマから開放されて明日への希望を捨てずに頑張って生きようとする姿勢が清らかだった。

物語の中で劇団が登場するがこれはかつてのエムキチビートのリアルな風景のような気がしてならない。書くという仕事とそれらを支える劇団は魂が削がれるほどの努力をしていると思うがあまり多くを望まず頑張ってほしいと心から思う。

魂が作ったフィクションの世界、その美しさは透明なブルー。
マイルド・セブンティーンズ・スター

マイルド・セブンティーンズ・スター

椿組

ザ・ポケット(東京都)

2010/12/08 (水) ~ 2010/12/12 (日)公演終了

満足度★★★★

学園ものってそれだけで
懐かしいやら苦いやらで郷愁をそそられるけれど、今回のお話はイマドキにはありえない高校の喫煙室とフリースペースが舞台。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

愛煙教師にも、嫌煙教師にもそれなりの言い分があるわけだけれど、煙草が苦手なワタクシなどは煙草を吸いたがる人種が不思議で仕方がない。あんな煙に500円もの金額を払って上手そうに吸って何が楽しいのかが解らない。カツどんが喰える金額だ。だったら野焼きでも行って思う存分煙をすってついでにさつまでも焼いたらどうだ、なんて思う。

ここの高校では教師らも生徒らも本質は似たようなもので、学園祭に向けておにゃんこを練習する生徒に本気になって指導する教師の一生懸命さが可笑しい。生徒の練習風景をかつての自分に投影させて懐かしむ辺り、教師はやはり加齢したのだと自分自身で納得する。

暗室の鍵を一人の生徒が管理している緩さはやっぱり芝居なのだが、その暗室で淫らな行為をする生徒の風景を透かしガラスで見たかった。

一方で保護者自身の家庭のことを教師に責任転嫁させる光景は「あー、いるいる、そういう保護者!」なんて妙に納得した。笑

人間的な生き方と喫煙に対する個人の生き方とを問題にするのは全然違うと思う。ここ数年禁煙者にとって、やっと日の目を浴びた感はある。それまでは禁煙者は長いこと、じっと黙って隣の喫煙者に眉間に皺を寄せながら我慢してきたのだ。

自宅で吸うのは構わないが、公で吸う場合「健康」うんぬんよりも他人の迷惑を考えたなら公権力が介入して当然のことだと思う。

ちなみに大人は行儀良くて真面目ってほどでもない。ワタクシは学園ものの舞台は好きだが、学生に戻りたいなんてこれっぽっちも思わない。窮屈で強制的で軍隊みたいだと常々感じていた学生よりも大人の方がよほど自由で楽しいってもんだ!笑

高校生・中島アスカを演じた根岸は29歳というから物凄く驚いた。中学生でもイケルその童顔と、初々しさは神がかりだと感心した。チャリT企画の内山奈々は相変わらずの飄々とした空気感を放ち、その存在力は地蔵のようだった。当日パンフに写ってる奈々ちゃんは高校生の頃の写真でしょうか?ものすっごく若い。

笑いもありキャストらのキャラクターも楽しい舞台だった。舞台上で歌われた尾崎豊の歌がツボ。
いとしの儚【公演終了!ありがとうございました!】

いとしの儚【公演終了!ありがとうございました!】

劇団俳協

TACCS1179(東京都)

2010/12/08 (水) ~ 2010/12/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

儚という名に秘められた儚い散り方
全体的にアングラ色の濃い舞台で天涯孤独の博打うちの鈴次郎と儚の情愛に満ちた物語だった。序盤、舞台に登場した鬼にヤラレル。笑
つまり、この世とあの世の狭間の物語。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

博打の神に日本人形のような妖しげな趣のある着物を着用した姫なるものを登場させるあたり、そしてその姫が振る鈴の音のなんとも物寂しい情景や鬼の出現、八戒みたいな坊主の妙海、バカ殿様・・・、いやはやこりゃあ物語に吸い込まれるようにその世界にどっぷり浸かって楽しんじゃったよ。

場は賭場と女郎屋がメインな男衆の大好きな設定なのだけれど、女郎屋のお鐘を演じたあさぎ野瑤子の女将っぽいフテブテシさや儚を演じた三宅真衣の幼児期から女に移り変わる絶妙なバランスの演技は最高だった。

これらを主軸にワキを彩る鬼たちの鬼とは思えぬ人の良さも披露しながら、鬼とのカケに勝った鈴次郎は美しい女を手に入れる。これが世界一の女「儚」だが、「儚」の作り方が、これまた悍ましいのだけれど赤子から100日で大人の女に育つという設定も面白いと感心した。

元々、粗暴で無学の鈴太郎が儚を育てるうちに人としての情が備わっていく風景は現代の人々が子供を育てながら己も育つみたいな感覚で観ていて微笑ましかった。

しかし鈴太郎は宝のサイコロを無くしてからとことんツキの神様に見放されてしまう。一つを手に入れると一つを無くすという原理のごとく負け越し借財しやがて儚までも博打のカケに取られ女郎屋に売り飛ばされてしまうのだった。

生まれてから100日経たずに男と交わると水になってしまうという儚は女郎屋でも男と交わる前に、独自の手練手管でイカセテしまい挿入するまえに男を撃沈させることを覚える。こんなことから「させず太夫」と人気になったが、これまたこの人気がアダとなってしまう物語は実に上手いのであった。

やがて・・100日目の朝を迎えず抱き合う鈴太郎と儚の激情は桜の花びらとなっていつまでも鈴太郎の上からはらはらと舞い落ちて、その画はまさに儚い風景だった。

お笑いあり、涙あり、魑魅魍魎うずまくフィクションの世界はワタクシの心を虜にし、ひたすらその世界観に感動し、更にキャストらの演技力、キャラクターの立ち上げ方、演出、照明、音響、美術、衣装、どれをとっても完璧で、ただただ「いい仕事をするなぁ・・」と見惚れたのでした。

大満足だった舞台。

ホーム ~はじめてテレビがきた日~

ホーム ~はじめてテレビがきた日~

音楽座ミュージカル

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2010/12/05 (日) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

家族とは絆とは
大層な当日パンフレットを頂いたけれど、役名が書かれていないのは残念だった。舞台セットの作り、照明、音楽は流石にプロ!相変わらずキャストらの歌唱力には大満足の舞台だった。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

昭和30年代の、明日の幸せを夢見ていた激動の時代を見事に描写していた舞台だった。その後やってくる空洞の時代までを生きた家族らの物語。

哲郎はめぐみの失踪後、めぐみの母親・豊と広子の三人で暮らすことなるも、豊とめぐみは血の繋がりがなかった親子だと知らされ、また、広子も血液型の相違から自分の本当の子でない事も知らされる。しかし、哲郎は、家族とは何も血の繋がりだけではないということを身に持って感じていた。

それは、哲郎自身がめぐみに出会えなかったら、何もなかった。何も始らなかったということだ。この広い世界で巡り会えた幸せを噛み締めて、血の繋がりのない母親の面倒をみて、血の繋がりのない広子を育てた哲郎の心意気に感動した舞台だった。

一方でいずみと宏の悲劇な永遠の愛にも感動し、ゆさぶられた。ああ、何故こうも人生って上手くいかないんだろうな・・。と

終盤、広子の花嫁姿を見送り、舞台の上にぽつねんと立つ父親の背中が妙に美しかった。それにしても・・、めぐみが失踪した理由に最後まで触れないで終わったが、最後まで気になってしまった。もやもや・・・笑



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