りいちろの観てきた!クチコミ一覧

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勧進帳

勧進帳

木ノ下歌舞伎

STスポット(神奈川県)

2010/05/13 (木) ~ 2010/05/17 (月)公演終了

満足度★★★★

見応えのある刹那
歌舞伎の体裁と「今」という時間の感触が
したたかに組み合わされて
シーンごとに見応えのある刹那が
積み上がっていく。

歌舞伎の感触のなかに、
歌舞伎とは異なる
充実がありました

ネタバレBOX

物語の筋立てはまごうことなき勧進帳、
しかし、そこに現代的な表現が織り込まれていきます。
それは歌舞伎の遊び心という範疇を超えて
「勧進帳」という物語を表現するためのメソッドとして
前面に押し出されている。

義経たちをまつ、関所の富樫と郎党の雰囲気、
歌舞伎座のパンフレットのようなものを持ち出して
弁慶たちの姿を見つめたり・・・、
さらには、非礼を詫び一行を供応するその表現・・・。

見る側が時代という概念の階段を下りてなお迷う部分、
現代の風情に織り込まれることで直感的に伝わってくるものが、
個々のシーンの窓を開いて
物語全体を俯瞰させる力にもなっていて。

役者たちも歌舞伎と今風の表現を
それぞれに織り交ぜて
実に切れのある刹那を作り上げていました。
それは、歌舞伎役者が演じる勧進帳に比べると、
荒さはある。
芯まで滑らかに強く演じきる歌舞伎役者の舞台とは違う・・・。
しかし、その場を崩さないだけの力量が舞台に溢れ
荒さが単純な優劣にならず、
テイストの違いというか歯触りの違いのように感じられる。
今を織り込まれてやってくる刹那が
観ていて飽きないのです。

歌舞伎の世界と今の表現の折り合いが、
舞台のすべてを広げていくわけではなく、
逆にそれぞれが持つ何かを打ち消し合っている部分も
あったりはするのですが、
それでも、観る側には
勧進帳の魅力がとても斬新な質感で伝わってくる。

最後の場面、よかったです。
歌舞伎的な見せ場はなかったけれど
義経の去りゆく姿に
山道の風景が浮かび
落ちゆく者の切なさがじっくりと伝わってくる。

このメソッド、今回の洗練に加え
さらに感覚を自由に取り込める様式として進化すれば
さらに見る側を魅了するであろうと感じたことでした。







暴くな

暴くな

INUTOKUSHI

早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ(東京都)

2010/05/15 (土) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★

抜群のバランス感覚をもったてんこもり
初日の両バージョンを鑑賞。

比較的長いお芝居だけれど、
そのボリュームもごちそうに思えるほどの
極上エンターティメントでした。

ネタバレBOX

冒頭の3畳間が
相撲場風景へと一気に移り変わっていく姿がまず圧巻。
そこから、観る側を飽きさせないシーンが
ガンガン展開していきます。

ストーリーが適度にべたで、
それが逆に舞台を広げる武器になっている。
シーンの緩急のバランスが抜群。
しっかりと体を張って作り上げるおもしろさ。
コンテンツに含まれる揶揄や毒の匙加減が極上、
役者の切れ、
ダンスのヴィヴィッドさ、
ぐいぐいと進められていくシーンたちには
見る側に時計を覗くことを許さないだけの力があって。

たくさんのシーンそれぞれに
観客を得心させるだけのクオリティがあるのですよ。
上手い歌を聴かせるシーンに
上手いと思わせるだけの役者の手練があったり
格闘シーンに観客を引き入れる
舞台装置や照明のけれんもすごくよい。
シーンのキーになる部分のクオリティが
見る側にとってしっかりと担保されて、
作品がチープな感じにならず
少々お下劣なシーンの笑いすら
呑み込むだけの作品の懐が生まれていく。

観客参加型という部分も、
見る側に負担がないうえに
参加すると、これが楽しかったり。
役者自身の虚実が見えるような部分が、
普通に可笑しいし、終盤のふくらみを作る
ほどよいブレイクなっていたり。
ひたすら押し切るのではなく、
絶妙に配分されたシーン間のテンションの変化に
作・演出のセンスを感じる。

終盤には、
大きくなり始めたころの
第三舞台や新感線にも通じる
のグルーブ感や勢いがあって。

これだけのことをやっても
最後には物語全体がすっと納められて
破たんなく終わるのもとても良い。

初日の2バージョンセット、
上演時間を知って、
両方を観るのはかなりタフかなと恐れていたのですが、
1本目が終わった時点で、
2本目への食欲がふつふつと沸いていた・・。
ほぼ同じプロットの両バージョンを続けて観ても
飽きないのも凄い。

気楽にがっつりと観ることができて
たっぷりの満足感。
今後の作品でさらに伸びる余地がある気がするので
満足度の★は4つにしますが
楽しさは★5こにおまけも付けたくなるような
お勧めの一作でありました。

☆☆☆★★
「ユー・アー・マイン」

「ユー・アー・マイン」

クロカミショウネン18 (2012年に解散致しました。応援して下さった方々、本当にありがとうございました。)

駅前劇場(東京都)

2010/05/12 (水) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★

緻密を大雑把に見せる力
ウェストエンドの良質なコメディを観るよう。

無理を通して道理を引っ込めるような物語の進め方が
折れずにしっかりと貫かれていて・・・。

面白かったです。

ネタバレBOX

ありえないような物語の進め方に
きちんと推進力を維持する演技があって・・・。

通常より骨を太くしたような役者たちのお芝居が
確実に笑いを回収していました。

かなり複雑な物語なのですが、
物語の仕組みを追わせるだけでなく
個々のシーンにたっぷりの笑いを含有させる無茶が
凄く良くて・・・。

力強い巻き込み感、
観客にきちんと咀嚼できるぎりぎりの無茶が
面白さを何倍にも拡大していく感じに魅入られてしまいました。


『エレベーター音楽』公演終了 ご来場ありがとうございました!!

『エレベーター音楽』公演終了 ご来場ありがとうございました!!

津田記念日

王子小劇場(東京都)

2010/05/12 (水) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★

ダイレクトな内心のスケッチ
心に移りゆくものがそのままスケッチされていくような感じに、
そのまま乗っかって見てしまいました。

ネタバレBOX

舞台上に存在するものが
何を具象化したものなのかについて、
明確な紐づけはできませんでした。

にもかかわらず、
追い詰められていく感覚や、
痛んでいく部分と、
その痛みを客観視する部分や
柔らかく落ちていくような慰安が
不思議にリアルな感覚が存在する。

互いに入れ込まれてく感じの二つの物語が
異なる色で、
特に仕付けられているわけではないのに
ちゃんと見ていて共存する。

女王様とその周辺の
おとぎ話的な世界に潜んだ刃も
壁と女性の世間話のような感覚も
世界として役者たちに支えられていて
観客がしっかりと掴まれているから。

死のイメージが醸し出され、
でも、その質感が生の中にあることが
とても残る。

なんなのでしょうね、
見る側が抗えないなかで
何かが淡々と収束していく感覚と
その見えない先の存在感に
しばらく呆然としておりました。




In The PLAYROOM

In The PLAYROOM

DART’S

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/04/27 (火) ~ 2010/05/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

同じ面白さに加えて
追加公演ということで、作品としてのテイストや見る側を引っ張り込む力は変わらなかったのですが、2度目の観劇ということもあってか、物語がさらにすっきりと伝わってきました。

ネタバレBOX

前回観たときより
物語の着地の部分が、
よりクリアになった印象。

疾走の鮮烈さをしかと受け止める終わり方というか。

何が変わったかは良く分からないのですが、
さらに進化した感じがしました。



北と東の狭間

北と東の狭間

JACROW

サンモールスタジオ(東京都)

2010/05/07 (金) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

細やかな実存感が牙をむく
舞台から醸し出される、
色とりどりの細やかな実存感が
終盤しっかりと武器になって
観る側を凌駕していく・・・。

終ってみればこの作品、がっつりと見応えがありました。

ネタバレBOX

描かれる人物たちの解像度の高さがそのまま舞台の力になっていていました。

中国人女性たちには
ぞくっと目を見張るほどのリアリティと存在感があって。
かたことの日本語や響きをしっかりと持った中国語に留まらず、
小さな仕草から表情のうごき、
さらには言動までしっかり作り上げられていて。

やくざのどこか枠をはずれたような存在感、
偽装結婚相手の男たちから滲み出してくる喪失感、
店の女性に取り込まれていく男や
やくざのしかけた蟻地獄にはまっていくバーテンが醸し出す
はまり込み感。

それぞれが役者達の演技に支えられ
しなやかで細密なテンションを舞台に作り上げる。
それも、混ざり合って舞台をひと色に塗りこめるような感じではなく、
登場人物それぞれの色がそのまま重なる感じで
観る側を巻き込んでいくのです。

その重なりに物語から発せられた光が当たり
キャラクターたちがが抱くロジックというか
もくろみや価値観のシルエットが浮かび上がります。
中国人の女性たち、日本人の社長、
偽装結婚の相手、やくざ、刑事、その店にかかわる男たちと
さらにその周りまで・・。
したたかな手法でシルエットの形状がくっきりと描きこまれた上で、
それらが次第に積み重なり、かかわりあい、
崩れていく姿が舞台上に築き上げられていきます。

中国語や演出的な作りこみで、
観る側へ届く言葉と隠される言葉が組み合わされ、
物語に切れと深さが醸成される。
したたかなつながりや示唆、
見せて伝えるものと見せずに伝わるもののモザイクから、
物語の広がりや奥行き、
さらにはためらいを失ったようなスピード感がうまれて。

様々なもくろみや想い達がメルトダウンしていくような終盤が圧巻。
追い詰められていくバーテンや
婚約者を奪われた女性、
さらには店に火をかける男の狂気に違和感がないことに息を呑む。

その中で、
もくろみで餃子を作った女となにも疑わずに美味しいといった男。
バブル崩壊の吹き溜まったような、荒みざらついた空気が満ちるなか、
掛け違ったまま近づくふたりの想いの細やかな実存感が、
そのまま武器となって観る側に襲いかかってきます。
もくろみの箍がはずれ、
座標を失った男女からあふれる不器用で生々しい愛憎のゆらぎに
ひたすら圧倒される。

閉塞し、荒んで、汚れきった物語の
終わりからからやってくる、
濃密で息が詰まるほどに純粋な愛情の瑞々しさに驚嘆し、
その質感に一気に浸潤されました。

この作品、かなり凄いです。
また、しっかりと余韻が残る作品でもありました。

★★☆☆
旅、旅旅

旅、旅旅

ロロ

王子小劇場(東京都)

2010/05/06 (木) ~ 2010/05/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

強く惹かれる
ありふれた一日の風景描写なのかもしれませんが、
その切り口が斬新。
独特のリアリティを持った肌合いを感じて
ぞくぞくしてしまいました。

ネタバレBOX

冒頭に現れる大きな果実のごとく、
家族に含まれた、どこか甘酸っぱくて瑞々しいその感覚が、
ダンスのごとく
軽々とヴィヴィッドに揺らぎつづけて。

観終わって約90分の上演時間以上のボリュームを感じつつ、
その家族の、
たぶんありふれた1日に醸し出される想いのふくらみに
どっぷり浸潤されていました。

しかも、その浸り感は外側からしみ込んでくる感じではなく、
内側で共鳴するような感覚でべたつかず軽く深い。

この視座と描写力、ぞくっとくるほど凄い。
がっつりとはまりました。

これまでの公演でも、
独特な事象への切り口と表現の豊かさに瞠目させられていましたが、
今回はまた別格。

今後、この劇団が、
どんな切り口でどんなリアリティを感じさせてくれるのか、
また一段と楽しみになりました。

☆☆☆★
パラデソ

パラデソ

タカハ劇団

小劇場 楽園(東京都)

2010/05/02 (日) ~ 2010/05/11 (火)公演終了

満足度★★★★

色が強くても・・・
それぞれの役者の色が強くても
舞台上から伝わってくるものには
やわらかくあたたかな切なさがありました

ネタバレBOX

セットがびっくりするくらいリアルで秀逸。
そのなかに
個々のキャラクターが絶妙な力加減で書き込まれていて。

宗教の匂いをエピソードに編み込みながらも、
まがまがしさをすっと消して、
「今」の登場人物たちの醒めた感覚や
取り込まれた感覚を表現していきます。

共有した時間が醸し出すノリに包まれて、
互いがいがみ合うのも、当時の秘密が暴露されたりするのも、
亡くなった男と女性たちの関係が明るみにでるのも、
まるでクラス会のヒトこまをみるよう。
あぶりだされる、
彼らがが属していた世界や
それぞれが持ち合わせた能力への挫折感や未練と、
その世界から抜け落ちた死んだ男への喪失感が
強くやわらかく伝わってくる。

そして、喪失感の先に、
彼らが生きてきて、さらには生きていく、
生きていればこその時間の質感が厚みをもって
観る側にやってくるのです。

居酒屋の娘が与えてくれる視座が秀逸。
しっかりした役者たちの演技から
個々のキャラクターの今がすっと浮かんで。

その暖かい切なさがこころに沁み込んできました。

★☆☆
2人の夫とわたしの事情

2人の夫とわたしの事情

シス・カンパニー

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2010/04/17 (土) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★

贅沢な役者の使い方
中盤あたりから、ドライブがかかる感じがすごくよい。

池谷のぶえ山の使い方など
贅沢だなあと思うのですが、
それが無駄にならずに生かされているところが、
ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏の力かと・・。

3幕喜劇、飽きることなく楽しませていただきました。

ネタバレBOX

ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏の演出作品しては
それほど長い部類でもないし
途中で休憩が2回入ることから見疲れすることはありませんでした。

1幕は比較的一般的な喜劇のテイストなのですが、
2幕目あたりからシュールさというか、
ちょっとテイストが変わってくる。
渡辺・段田の駆け引きがどこかシュールで
実によいのです。

松たか子の輝きが増してくるのも2幕あたりあら・・・。
大きめの表情や、観客を待つような一呼吸の間。
悪気のない我がままさ・・・。
突き抜ける役をこなしていくときの松は
本当に生き生きとしていて
見ていて気持ちいい

3幕目になると
妻と二人の夫の
突き抜け方にも磨きがかかって・・・。

こういう積み上げ方をされると
見ている側としても空きが来ない。


1幕の新橋耐子や2幕の池谷のぶえの使い方はがっつり見ごたえあり。
観終わって、ほくほくと満足できるお芝居でありました。


アンポテンツ

アンポテンツ

劇団チャリT企画

王子小劇場(東京都)

2010/04/28 (水) ~ 2010/05/02 (日)公演終了

満足度★★★★

世界を表すに足りてしまう人数
タイトルから観ると昔々の安保闘争が背景になっているのでしょうけれど、
そこからうまく青臭さを抜いて
したたかに現代にも通じる世界に仕立てていました。

役者たちひとりずつが
世界を背負ってしまう。
キャラクター達が具象化する
世の中の様々な層に
しっかりとした裏付けが感じられて・・・。

基礎をがっつり持った茶番を楽しむことができました。

ネタバレBOX

中産階級や無産階級、政治・警察などなど・・・。
それらが、とても下世話に置き換えられていく姿に
ぞくっとする。

とてもしたたかに作られたベタ感が
現実を凌駕するような感じに息を呑みました。

圧倒的な門の存在や
人を食ったようなボタンの存在。
そのどこか古い感じが
とても生き生きと見えるのです。

過去にうまく今を投影する手腕の確かさ。、
それを劇団として表現のバリエーションにさらっと取り込むのが
けっこう凄いことに思えて。

いやあ、おもしろかったです。

☆★★
パンラが野毛にやって来た★GA~!GA~!GA~!

パンラが野毛にやって来た★GA~!GA~!GA~!

studio salt

OFF OFFシアター(東京都)

2010/04/24 (土) ~ 2010/04/29 (木)公演終了

満足度★★★★

雰囲気を切り取る力
以前の作品に比べて物語性のようなものは薄く、
むしろ動物園の雰囲気を切り取る力に
その卓越を感じる作品でした。

ネタバレBOX

ソルト的コメディということでしたが、
コメディの枠組みでこの舞台を捉えると
メリハリに足りなさを感じました。

しかし、動物園という世界を正門ではなく
勝手口から眺めて描写していく力は
とても確かなものに思えました。

多分モデルになったであろう
桜木町からぷらぷらと坂を上ったところにあるその動物園へは、
私も何度か行ったことがあって
それが無料であることに驚き、園内の意外(褒め言葉)な充実に
さらに驚いたことがあるのですが、
この舞台を観ていると、そのことがすっと思い出される。
しかも檻の外側からではなく
格子の内側の感覚を伴って
その雰囲気やささえる人たちの空気が
とても緻密に伝わってくる。
浮世絵などでも、
波の間や作りかけの桶の内側に富士山が描かれることで
富士山の印象が一気に広がることってあるじゃないですか。
それと同じように
動物園の風景をちょっと違う角度から描くことで、
山の上の動物園での感覚に
すっと奥行きが生まれる。

多少ベタとさえ思える
絵空事の物語で時間を流していく中で
動物園というある意味特殊な世界のリアリティを現出させていく
作・演出や役者たちのスケッチ力に
すっと捉えられる感じ。

ひよこのエピソードからやってくる現実の質感、
飼育員たちの動物に対する想いと
プロとしての割り切り方・・・。
そこにある動物への愛情が、
動物園の存続という政治的な風合いや、
さらにはダンスの進化と撚り合わさっていくのを観ていると、
単なるコメディとは別の、
動物園という世界の思えてくる。

そして、物語の枠組みが淡白だからこそ
バイアスの掛かっていない
動物園での命の軽重の概念が
ゆっくりとやってきて、心に残るのです。

いろんなバリエーションでの表現ができる
この劇団の底力を感じたことでした。

背伸び王(キング)

背伸び王(キング)

コマツ企画

小劇場 楽園(東京都)

2010/04/21 (水) ~ 2010/04/25 (日)公演終了

満足度★★★★

がっつり押された
初日を拝見。
導入部分から
会場をコマツ企画色に染める力。

がっつりとエッジの効いたキャラクターと
切れを持った舞台の展開。

失笑を導いたり、ドキッと踏み込んだりもあるのですが
決してグタグタではない。
ある種の美学が舞台にあって
舞台全体を包括するようなトーンに
観る者が深々と持っていかれてしまう。

もう、ほんと、たっぷり楽しませていただきました。

ネタバレBOX

4人の役者たちの力は
十分承知済。
それがわかっていても
さらに飲み込まれるような厚みが舞台に生まれて・・・。

その魅力をがっつり生かす
太さとしたたかを持った仕掛けが随所にあるのです。

彼らをしっかりと煮込んでつくった極上のスープを出汁にして
様々な風景が供されていくのですが
一方で物語の外枠がしっかりと作られていて
個々のキャラクターの色が混ざり合わずにそこにある。

外側の世界を作ることでの
空間の広がりは
単に物語の世界だけではなく、
役者の個性と演じるキャラクターのボーダーを
あいまいに取り去っていきます。
役者から見える物語と物語にずかずかと編み込まれる
役者が持つイメージのデフォルメが
醸し出す世界は
地下の劇場空間から溢れだすほどに濃密で・・・。

役者間での空気や距離感の作り方と崩し方、
さらに密度の上げ方や、弛緩のしかた、
それぞれが観る側の目を見張らせるほどの切れを持って
観る側を巻き込んでいく。
もう、時に息苦しさを感じるほどの濃さ。

でも、その雰囲気に包まれながらも、
舞台におかれたカバンの伏線一本で物語を固めてしまう
作劇の剛腕ぶりにも感心してしまうのです。

まあ、これまでのコマツ企画作品に感じていた、
さらにもう一歩踏み込んだような広がりや
透き通ったまがまがしさの先に垣間見えるピュアな感覚は
ありませんでしたが、
それが悪いということではなく、
その味加減に作り手の秀逸なセンスを感じる。
裏に仕組んだ繊細な匙加減や工夫の積み重ねで
そのあたりにマッチした濃度や広さを、
作品に合わせて調節していけるのも
作・演出の力かなと思ったり。

観終わって、作り手の圧勝感があった。
完全に観る側が彼らの世界に染められて・・・。

まあ、べたな言い方ですが、
したたかにがっつりの1時間強に浸りこんでしまったことでした。

☆☆★★
武蔵小金井四谷怪談

武蔵小金井四谷怪談

青年団リンク 口語で古典

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/04/17 (土) ~ 2010/04/29 (木)公演終了

満足度★★★★

外枠を借りたり、形式にのっかったり
突飛に思えても
裏地がちゃんと張られている感じが
それぞれの作品にあって、
その世界がぐぐっと広がる。

役者のお芝居にもしなやかな奥行きがあって、
たっぷりと楽しんで観てしまいました。

ネタバレBOX

・武蔵小金井四谷怪談

入口は、確かに四谷怪談の現代版で、
後ろに投射される物語のダイジェストと
すり合わされているのですが、
でも、たちまちそこに剥がれのようなものが生じて、
なにか風変りなテイストの物語へと
変化していきます。

場を示すように照らされる後ろのパネルや
文字情報として展開する本家の物語のダイジェスト。
それらが、芝居の「場」の概念を
観る側に押し込んだりもするのですが、
舞台自体は四谷怪談から確実に乖離していく。

しかも、「て」などでも拝見した繰り返しが重ねられて、
物語が見事にふくらんでいくのです。

そこから浮かんでくるのが
父娘の心の通い合う部分だったり
娘の彼氏へのそれぞれの想いだったり・・・。
キッチンで料理をしながらの
父と娘の会話もなかなかにキャッチー。
菜箸の動き一つで作られる
その家庭の空気がぞくっとくるほど秀逸だったりする。

繰り返しの部分で
最初の不自然な感触が物語の奥行きに変化していくのにも
わくわくして・・・。
舞台上の熟成に伴って後方の文字情報が
次第に小さくなってくのもおかしくて。

娘の芯の強さや揺らぎ、
娘の友人のどこか素直で天然な感じ、
企みに取り込まれてしまう彼氏の純粋さや、
父親の娘への愛情までが、
どこか、「とほほ」な茶番劇の皮をかぶりつつ、
驚くようなリアリティをもって浮かんでくるのです。
その描写力に囚われて、
飽きることなく見続けてしまいました。

役者が4人とも大好演、
古典を蹴飛ばしてもびくともしないほどの存在感で
それぞれの世界を作り上げておりました。

・落語 男の旅 大阪編

この作品、確かに落語でした。
素に近い照明のなかで
岩井を標榜する役者が語る冒頭などは、
正真正銘立派な枕。

そこから噺が導かれて
地語りで物語に観る側を引き込んでいきます。
私が観た回では
途中で役者が物語を見失うハプニングもありましたが(仕込みかも?)
落語であってもそういうことは稀にあって、
そのあたりでの演者の立ち往生は
場を和らげる効果になったりする。
同様の空気がかもし出されたのも
この舞台が落語のフォーマットを
しっかり踏襲していたからかと。

やがて、噺が本編に入って
飛田新地のちょんの間を経験する男3人と
そこの女性、さらにはやり手婆までを
男ふたり女ひとりが鮮やかに演じ上げていくのですが、
四谷怪談同様役者の出来が本当によくて。

佳境に入ってくると
演劇的な様々な手法がぐんぐん生きて
良質な落語を彷彿とさせるような
グルーブ感がやってくる。
豊かな変化、密度のメリハリがしたたかにそこにあって。
よしんば、配役がめまぐるしく移っても、
演劇的な上下がしっかりと切られているから
観るものが惑わない。
二人の役者がユニゾンで
2つのキャラクターを両方演じるくだりなどでは、
笑いに導かれながら
同時に滑稽さを凌駕するその場の雰囲気に
がっつりと取り込まれる。

ことが終って外に出た風情にも
細やかな表現力があって・・・。
さらには、落ちを極めて落語的にすっと収束させる
その風合いも実に良くて。

落語というフォーマットだからこそ伝えうるニュアンスを
見事に舞台に乗せた作り手と
それらを舞台上で具現化した役者達の力に目を見張りました。

軽い質感が残っているにも関わらず
しっかりとした充足感に満たされて。

懐かしくてとても新鮮な感じに
強い魅力を感じた舞台でもありました。

☆★★
息つくとき

息つくとき

ワワフラミンゴ

3rd Stone Cafe(東京都)

2010/04/14 (水) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★

ふんわりくっきり
マチネを拝見。

どこか噛み合わなかったり
不条理ともおもえる会話なのに
そこからくっきりと
感性のほとばしりが見えるような・・・。

冒頭の数分で観る側のスイッチが切り替わり、
そこからはあれよあれよと、
登場人物たちからやってくる
驚くほどに瑞々しい感覚に
浸されてしまいました。

ネタバレBOX

役者たちの中間色を抑えたような演技は
どこか硬質で、
せりふや動作にくっきりと色がついていて。
不必要な間や遊びを排して置かれていく
感情や雰囲気が
言葉やしぐさに凝縮されている感じ。

で、その硬質とも感じるしぐさや会話から
驚くほどまっすぐで瑞々しい
女性たちの感覚がやってくるのです。

アダルトコミックや小説の回し読みに潜む
好奇心と羞恥心と連帯感の綾織り。
トイレットロールで手を拭く
ちょっとはみ出した感じ。
彼氏を見つける下心と恋心の中間にある
不思議な浮遊感。
ぽわっとするもの、木の触感。
日々の時間から切り取られた
いろいろ、いろいろ・・・。

キャラクターが空間に重ねていく
エッジのしっかり効いた感覚から
ふんわりが醸成されていく不思議。
そのふんわりたちの瑞々しい鼓動が
観る側に柔らかい揺らぎを導いて・・・。

この世界、間違いなく中毒性がある。
もっと見続けたい表現たちでありました。

☆★★
ともだちのそうしき

ともだちのそうしき

RONNIE ROCKET

大吉カフェ(東京都)

2010/04/17 (土) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★

像を浮かび上がらせる力
二人の男たちの話の中にあって
どこかもやっとしていた部分が、
次第に形を持っていく。

そのやり方にはどこか力技というような部分もあるのですが、
展開していく二人の世界に
あざとさがないのがとてもよかったです。


ネタバレBOX

会場についてびっくり・・・。
まあ、なんというか
かなり古めのふつうの民家。
24席限定というのはそのひとまに座れるぎりぎり人数だったのですね。

母屋で友人のお通夜があるので
その離れで時間を過ごすという設定。
高校までの友人と大学に入ってからの友人が
偶然顔を合わせて
故人のことを語り始める中で
観る側にもいろんなことが伝わってくるという展開。

客入れ時からすでに男が寝ている。
舞台の部屋と客席の部屋のふすまが
間隔をおいて一枚ずつ外されていくのですが
その過程でゆっくりと観る側が
その場所の空気に浸されていく。
前回公演でも
男が寝ているシーンから始まったことを思い出したり。

二人の男たちが
お互いを探るように話しだす。
共通の話題といえば故人のことだけ・・・。
しかも、二人の話がどこか噛み合わない。

そこからの距離の詰め方が
この舞台のだいご味。
故人のことが語られるなかで
むしろ、思い出を話すふたりのそれぞれが
ゆっくりと照らし出されていく。
ライトに照らされてくっきりと見えるのではなく
故人のエピソードからの照り返しで
しだいにそれぞれの姿が観る側に浮かび上がってくる。
故人と過ごした時間から
彼ら自身のすごした時代が観る側に広がっていくのです。

故人のエピソード自体は
笑いを誘うほどに力技な部分もあるのですが、
浮かび上がってくる彼ら自身が過ごした時間や今は
観る側がすっと受け取ってしまうほどに
自然でちょっと痛くて、
なによりも血が通った感じがして・・・。

その描き方のしたたかさに
がっつりやられてしまいました。



ORGAN 【ご来場ありがとうございました。次回公演は9月中旬】

ORGAN 【ご来場ありがとうございました。次回公演は9月中旬】

elePHANTMoon

サンモールスタジオ(東京都)

2010/04/07 (水) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

レシピエント編、淡々とした強さ
ドナー編に続いてレシピエント編を鑑賞。

キャストの変更があったようですが
その影響を感じることはなく、
淡々とした世界に現れる
逃げ場のない世界に浸されました。

ネタバレBOX

ドナー編とほぼ同じ舞台なのに
どこか開放感を感じます。
そこでは年に一度のバーベキューが
行われるらしい・・・。

冒頭から、淡々としたトーンで
登場人物感のニュアンスが積もっていきます。
その中から、彼らがここに集う背景が
次第に明らかになっていく。

家族の臓器を提供した側の想いと
受け取った側で風化してくもののギャップが
次第に姿を現していく。

命を与えられることによって
生きることへのの制約から解放されようとするレシピエント達、
命のかけらを与えることによって、
家族とのつながりを守ろうとする母娘。
それぞれの望むことの相違に
本来中心にあるべき、命本来の重さへの価値観が
すっと消えていくのです。

さらには、家族を死に至らしめた男の存在が
物語の構造にエッジを作っていく。

役者たちのお芝居が
その滅失感に
しなやかな理を編み込んで、
気がつけば、観る側がその感覚に
深く浸されているのです。

まるで、マニュアルどおりに機械をメンテナンスするように
亡くなった兄との関係を維持する母子の姿。
予想どおりにやってくる事態に
どこか崩壊感がなくて、
そこから見えてくるモラルのブランクに愕然となる。

しかも凄く自然に感じられる母娘のすがたに
なにかがしみとおってくる感覚があって
観る側をゆっくりと戦慄させるのです。

ドナー編とレシピエント編、全く違う色であり、
なおかつ心の同じ部分に深く残る。

マキタ作劇とそれを支える役者たちの技量に
がっつりやられた2作でした。

☆☆


八百長デスマッチ/いきなりベッドシーン

八百長デスマッチ/いきなりベッドシーン

柿喰う客

タイニイアリス(東京都)

2010/04/15 (木) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★

切れと豊かさの両立
初日を拝見

両作品ともに、
圧倒的に研がれた表現だからこその
豊かな軽さがあって・・・。
舞台にあるものが
拡散せずにすべて観る側にやってくる。

個々作品の上演時間の短さが
まったく感じられない充実に
目を見張りました



ネタバレBOX

・八百長デスマッチ

二人のユニゾンが基調となって
小学校一年生の入学式から
新生活の感覚が描かれていきます。

二人の役者の芝居からやってくるものは
明らかに異質・・・。
それぞれから透けて見えるものもトーンまでがかなり違う。
にもかかわらず、一体感が積み重なっていくのです。

しかも
戯画的なシーンの積み重ねに
昔からの友人との
ライバルとか友情とか愛憎の感覚が重なる。
笑えたりもするのですが、
可笑しさのあとには、まったく別の感覚が残っていて。
それが観る側の深いところを柔らかくしっかりと揺さぶる。
観ているうちに、ボーダーをまたいで
別の感覚に引き込まれた感じ。
作者の企みに見事にはまってしまいました。

さらに、若干精度が上がる余地があるのかもしれませんが、
観る側を凌駕するのには十分の出来。

堪能いたしました。

・いきなりベットシーン

この作品は再見。初演は王子小劇場で観た記憶があります。

一人芝居を凌駕するような、その疾走感と
物語性にがっつり惹かれた作品。

再演ではそこに伸びやかさというか
丸みまでが加わって・・・。
見栄を切るときのぴんと延びた四肢が
キャラクターの好奇心や前向きな表面に
観る側を引きずり込んでいきます。

さらに、初演時に比べて、
単に勢いで走るだけでなく
その鮮やかさにふくらみができたことで
単に彼女自身の内心だけではなく
周りからみたキャラクターの雰囲気が
よりしっかり感じられるようになって。

ジェットコースターにのせられて
上昇と落下を味わう感覚にも似ているのですが、
そのデフォルメのなかに
「八百長・・・」同様の観る側の感覚との重なりが
確実に存在していて、
激しく動く舞台の中でぶれないベースが
鮮やかに浮かび上がってくる。

役者の進化に加えて
柿演劇の真髄をみたような気がしたことでした。

PS:休憩時間の予告編にも見入ってしまいました。こういう試み、大好きです。なにかわくわくしました。

☆☆★






ぼくらのアイドル

ぼくらのアイドル

味わい堂々

OFF OFFシアター(東京都)

2010/04/16 (金) ~ 2010/04/21 (水)公演終了

満足度★★★★

うまくとらえている
タイトルに偽りなしで、「アイドル」という存在の
質感を良く捉えていて・・・。

どこかコミカルな感じや
ちょっとシニカルな視点の入れ込みかたもよく
時間を忘れて観てしまいました

ネタバレBOX

初日ということで、
若干のトラブルもあったようですが
観ている方にはあまり気にならなかったです。

音楽の使い方が、ベタなのだけれど
しっかりとはまる。
この人の曲を選んだセンスがなにげに凄い。
時代的にごった煮的な部分もあるのですが、
それをすべてひっくるめて雰囲気にしてしまうような

アイドル側のどこかマンガちっくな描き方と
それにはまる側の実存感の対比がとてもしたたか・・・。
アイドルに対するイメージの絶妙な薄っぺらさが
きっちりと作りこまれていて・・・。
一方でアイドルを観て楽しいと思う気持ち、
追いかける側の心情や
夢の与えられ方、引き込まれ方に
あっと目を見開くようなリアルさがあって。

押入れを開いて
アイドルに楽しさを与えてもらう表現や、
アイドルが人生の中心になってしまうような感覚が
とても鮮明に観る側に伝わってくる・・・。

結末のシニカルな部分が
作品をすっと引き締めて・・・・。

この劇団の、
癖になるようなテイストを
たっぷり味わうことができました。




私のこの目で【ご来場誠にありがとうございました!】

私のこの目で【ご来場誠にありがとうございました!】

劇団スカラベ

シアターブラッツ(東京都)

2010/04/09 (金) ~ 2010/04/11 (日)公演終了

満足度★★★★

歌を聴くだけで・・・。
満たされるものがありました。

物語も、
台詞がわかりにくい部分があることを差し引いても
よく練られていたと思う・・・。

ただ、もっと良くなる余地はあると感じました。

ネタバレBOX

とにかく、役者達の歌唱力が圧倒的。

一人ずつが異なる味わいをもった歌唱で
物語やその場を紡いでいくのですが、
それぞれがあるレベルを超えた技術をもっているので
違いが優劣にならずきちんと個性となる。

国内で上演されるミュージカルに散見する
出演者間たちの優劣が目立っての興ざめが
この舞台には全くありませんでした。
出演者たちの表現の違いが
しっかりと舞台としての表現の豊かさに結びついていくのです。

芥川テイストについては、特に強く感じたわけではないのですが、
物語の切り取り方や絡み方は悪くないし、
歌と物語もしっかりと同じベクトルで表現されていたように思う。
演出の黒澤氏も、実直に仕事をした感じ。
オフっぽい雰囲気もなかなか居心地よく
休憩込の2時間も、観る側を満足させた上で
もう一口欲しいと思わせるような
絶妙な尺かと・・・。

ただ、ここまで作りこめるのだったら
音楽はぜひとも生にして欲しい。
ミュージカルでの歌って
確かに伴奏の枠の中で歌い始めるのですが、
ある段階から伴奏と歌の主従が逆転するようなところがあって・・・。
特にココ一番での歌手の力量の見せ所を伴奏がサポートしていくという
ミュージカルの醍醐味が、
録音だと完全に死んでしまうのです。

枠の外側に出る力量のない役者なら、
それでもよいのかもしれませんが、
まさに見せ場というところで
伴奏に縛られての歌は、ある意味痛々しくすら思える。

伴奏を入れるために、たとえば木戸銭がもう2000円高くても
この面子なら文句はいいません。
それだけの力がある役者達だと思うのです。

★★

ESCAPE

ESCAPE

温泉ドラゴン

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2010/04/07 (水) ~ 2010/04/11 (日)公演終了

満足度★★★★

個々のシーンには見応え
二人芝居、
登場人物の力関係とか距離感には
見応えがありました。

でも、ぎりぎりのところで
観る側を騙しきれなかったという
印象もありました。

ネタバレBOX

入場するとすでに二人の役者は板についていて・・・。
片方は椅子に縛られ、片方は日本刀とともに眠る。
ひとめで二人の関係がわかります。

やがて、物語が始まる。
まるで、小さな糸のほつれから隙間を広げていくように
囚われた男の説得が始まる。

そこから最初の逃亡を企てるまでのゆっくりとした時間が最初の見せ場。
息が詰まるような説得に息を呑む。
また、ストロボを使った逃亡のシーンも
すごくシャープでぞくぞくくる。

そこから物語は再度逃亡をめざそうとする囚われた側と
躊躇する監視していた側のせめぎ合いになります。
満ちては引くような空気にたっぷりと揺さぶられる。
様々な話に伏線が張られて・・・。

ただ、ちょっと伏線の張り方が露骨だったかなという気がするのです。
いくつかの言葉が十分にこなれきれずににおかれる感じだったので
物語の末がなんとなくばれてしまった。
また、ドアが初めから開いていたという終盤のつぶやきも
余計。
つじつまは合うのでしょうけれど、
それは一方で不自然な感じがしたり・・・。

そうはいっても、見応えは相応にありました。ハードボイルドな感じは
理屈抜きに観客を魅了する力を持っていて。
二人の間を満たす空気のデリケートな変化は
観る側をしっかりとつかんでいたし・・・。

それだけに、詰めの部分が惜しまれる舞台でありました。




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