りいちろの観てきた!クチコミ一覧

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ふたりぼっち~さよならだけどさよならじゃない~

ふたりぼっち~さよならだけどさよならじゃない~

Twink

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2011/10/09 (日) ~ 2011/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★

シンプルでしっかりと楽しい
こういうのって理屈じゃないのだと思う。

なにか、演じている二人をみているだけで
その世界の嵌るような感覚のおすそわけをもらったような気がして。

二人それぞれの魅力もがっつり生きて
すごく楽しいステージでありました。

ネタバレBOX

醸し出されるイメージや
どこかチープなストーリー展開は
もろにWinkが活躍した時代の匂いを
具現化していて。

で、その時代のときめきや甘酸っぱさのようなものが
舞台から魔法のように溢れだしてくる。
性別も年齢も彼女たちとは全く違うのですが、
舞台上にあるある種の完成度が
それを、受け入れさせてしまう・・・。
舞台女優としての彼女たちの力量、
よしんばそれが少女漫画的な色に染められていても
そこに作られるぶれない雰囲気のようなものが
観る側を物語に巻き込んでしまうのです。

聴きなれた音楽と、
足腰のしっかりとしたダンスには、
観る側がゆだねられる安定があって、
お気楽極楽に見える舞台が
実はふたりの
徹したというかぶれのない演技に支えられたものであることにも
気がついて。

なによりも、
ベクトルの違う女性としての雰囲気をを持った二人が
それぞれにとてもビビッドで魅力的。
観客として、他の舞台などもいくつも観て、
とても信頼できる役者であるふたりなのですが、
それとは別腹で
Twinkとしてのふたりのファンになってしまいそう・・。

これ、形はちがっても
よしんばTwinkではなくても、
次があれば(当パンを見るあるらしいのだが)、
きっと足を運んでしまうと思います。

ほんと、楽しませていただきました。
陛下に届け

陛下に届け

ポップンマッシュルームチキン野郎

Geki地下Liberty(東京都)

2011/10/07 (金) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★★★

盛りだくさんであることは良いけれど
力技であろうがなんであろうが、笑いは取れていたし、
ちょっと拡散しすぎた感のあった物語も最後には回収されて。

だから、面白かったと言えば面白かったのですが、
長編でありながら、笑いが組み上がっていく感じがあまりなく
農耕的ではなく狩猟的な感じがしました

ネタバレBOX

奇を衒ったり、強いインパクトで押し通せば、
観る側は可笑しいので笑う。
そうやって笑いを取れることも、もちろん、
演じ手の実力だとはおもうのです。

前説の勢いなどにしても
とてもリズムのよい切れがあったし、
頭が伸びていくだの
血を吐くアイドルというのも
素敵に奇をてらっていて突き抜けてはいる。
尊きあたりのことも、ベタではあるけれど、
シニカルな視座を持っているし。
一族の血統のことなどについてのことなど、
観る側がもつ感覚をしなやかに抽出しているとは思うのです。

物語の骨格も序盤の血まみれの腕が転げた部分が、
しっかりと回収されて、
骨格も一応態をなしている。
映像の作り込みなども
それなりに踏み込みを持っていると感じる。

ただ、そこまでにいろいろに詰め込んだものたちに
有機的に広がるような感じがなくて、
足し算としてのシーンの面白さは淡々と積もっていくのですが、
それが、2乗され3乗されていく感じが生まれてこない。
観る側がぐぐっと引き込まれるような感覚、
なんというか波はそれなりにやってくるのだけれど
ビックウェイブが訪れて来ない感じが残りました。

ひとつには、ちょっとした精度の問題なのかもしれません。
これだけのものを一つの作品の力にするには
シーンを重ねるための枘の部分が
もう少しきっちり作られていないといけないのかも。
たとえば、貫かれるエピソードたちの視座、
それが誰の視点で捉えられたものなのかとか、
客観的にみるとどういうことなのかというような切り分けが
シーンの中でも、またシーン間でも
若干混在し曖昧になっていて
物語の全体像がもわっとしか立ちあがらない。
エピソードの重なりに
もっとエッジを持ったストラテジーがあって
シーンごとの意図がくっきり伝わってくれば、
キャラクターたちの歪みの可笑しさがもっと際立ってくるだろうし
ベテランアイドルの物語へのかかわりだって
養子のことだって
なにゆえに元宇宙飛行士が
売れないタレントのマネージメントをしているかという話が
投げっぱになることだって
さらに生きて、
やがては可笑しさが舞台に置かれるのではなく
観る側を巻き込むように溢れだしてくる気がするのです。
そこに落差が育まれると
尊き人の想いも
より鮮やかな感覚として伝わってくるのではないかと・・・。

個人的に、ギャグのセンスや
それを踏み込んだりひいたりするような距離感には
好きだったりする部分もあったし
爆発に晒された体の見せ方に、
作り手の鋭いセンスを感じたりもしたので
全体を通してのネジの締め方の緩さのようなものが
とてももったいなく感じられたことでした。
兎ノ刻 ートノコクー

兎ノ刻 ートノコクー

マダマダムーン

BAR COREDO(東京都)

2011/10/04 (火) ~ 2011/10/09 (日)公演終了

満足度★★★★

ミステリーのテイストを生かしながら
遊び心やショー的な要素も加えた世界。

ベースの物語がしっかりしているので
観る側がその世界にしっかりと入り込んでいける。

どこか奇抜で不条理なテイストも、
物語のボディがきちんとあるので
浮き上がることなく
役者達の確かなお芝居に支えられて生きる。

はまりました。

ネタバレBOX

冒頭から、ある種のトーンが舞台上にあって。
現実と戯画の端境のような感覚。

その感覚は貫き通されるのですが
一色に染められるわけではなく
いろんな色合いがそこに編み込まれていく。

それぞれのキャラクターの見え方が
シーンごとに変化していきながら
それがあざとく感じられない。
たとえ登場人物がこの世のものではない、
妄想の世界の具象のようであっても
どこか薄っぺらさをもった探偵であっても
物語の横糸としてしっかりと機能しているので
違和感がなく、舞台の膨らみとなり、
観る側の時間感覚を奪い取っていく。

初日だったので
個性の重なりには若干淡白な部分も感じましたが、
この雰囲気は回を重ねるごとにさらに濃密になっていくのだろうと思う。

エンタティメント的な要素もあるのですが、
その裏側にある、きっちり作りこまれたお芝居の骨格を
前のめりになって楽しむことができました。

ほんと、時間があっという間だったです。
三鷹の化け物

三鷹の化け物

ろりえ

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2011/09/30 (金) ~ 2011/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★

驚愕の外連に呑み込まれない作品の底力
前半の緻密さと、後半のけれんが
上手く噛み合って・・・。

その仕掛けの圧倒的な見応えに唖然としつつも、
「こんなにおっきい」ものをも呑み込んでしまう、
舞台上の世界にこそ
強く心惹かれました。

ネタバレBOX

前半、いろんなシーンに心惹かれる。

貴き血筋の主人公にしても、
周りを取り巻くいろんなキャラクターにしても、
強い実存感があるわけではないのですが、
お芝居のリズムが彼らを観る側にすいっと置いてしまう。

表見上はそれなりにいい加減で、危さすら伴った設定だし
物語の展開も、ちょっとぐたぐたした感じが無きにしもあらず。
でも、作り手は、
勘所をしっかりと押さえたシーン構成で
広い舞台にメリハリをつけながら
物語をどんどん重ねていく。
空気を恣意的にべたにつくるところと、細かく描き出すところの
緩急のバランスが物語の広がりをサポートするなかで、
突然息を呑むほどに繊細な場面が現出したり、
かと思うとおもいっきり戯画的なシーンがさしこまれたりと
目が離せないままに休憩まで舞台が進んでいく。
秀逸な役者のお芝居に、
特殊衣裳に近いものを重ねて肥満をデフォルメしたり
観る側が突き刺されるほどに美しい肢体を突然舞台に現出させたり
前半だけで時間的には芝居一本分くらいの長さがあるのですが
全く気にならない。
そこには、澱まない舞台の流れと
熱がしなやかに現出していく。

新しく付き合い始めた彼女を土手の下に待たせて、
自転車を支えたままで別れてさえいない
かつての彼女と再会するシーンの美しさに息を呑む。
一見べたなコントのようなシーン構成の
繰り返しの中での貫きや
パン屋に編み込まれた不条理に近い設定も
物語の中にしっかりと居場所が作られて
見る側を舞台の空気の渦に巻き込んでいく。

なにげに、そこまでに
観る側を舞台に浸しているから
後半の外連が単なる見せものに終わらない。
それは、力技全開の美術というか装置ではあるのですが
でも、その装置が、単に観る側を驚かせる花火に終わっていない。
装置もロボット演劇のごとく演じ、
物語の要素にしたたかに編み込まれていて。
そこには、驚きだけではなく
作り手が具象しようとするものと、寓意と、
ウィットが伝わり残る。

劇場に入るときには
上演時間を観て少々びびったのですが、
終演時には、その時間が、世界を端折らないための
絶妙なボリューム感を醸すに足りるギリの長さに思えた。

多少遠い印象がある三鷹ではありますが、
劇場を後にする時には
十分すぎるほどに満たされて、
そんなことも全く気になりませんでした。
ハリーポタ子【5年ぶりの東京。たくさんのご来場、ありがとうございました。】

ハリーポタ子【5年ぶりの東京。たくさんのご来場、ありがとうございました。】

石原正一ショー

シアター711(東京都)

2011/09/23 (金) ~ 2011/09/26 (月)公演終了

満足度★★★★

役者全員をがっつり見せる
2時間を超える時間があっという間。

ボリューム感があるのにもたれたい。

役者の舞台を支えきる強さというか
根性のようなものに押されて、
ひたすら楽しく、
あれよあれよという感じで観切ってしまいました。

ネタバレBOX

作り手が
舞台に立つ役者全員の魅力をしっかり把握して、
それぞれが翼を広げる場所を創り出している感じ。

しかも、そこで、どれだけのものを演じられるかを、
役者たちにゆだねている感じが
きちんと実を上げ効を奏している。

それぞれの出演者の個性がしっかりと観る側に伝わる舞台、
物語はめちゃルーズでしたが
だからこその魅力がしっかりと醸し出されておりました。
『DAIKAIJU EIGA』『Rosa, seulement』

『DAIKAIJU EIGA』『Rosa, seulement』

青年団国際演劇交流プロジェクト

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/09/30 (金) ~ 2011/10/05 (水)公演終了

満足度★★★

観る側にとって上滑る思い
DAIKAIJYU・・・、
行き場ややり場のない感情の表現としては
一定のクオリティを持ったものなのかもしれません。

ただ、テーマとなる事象に対して
造る側と観る側に共通の認識が
編みあがっていかないように感じました。

・Rosa seulement
表現としては、惹かれるものがありました。

ただ、言葉やそれを伝える仕組みの問題もあって
充分に作品のニュアンスを理解できなかったように
感じました。

ネタバレBOX

・DAIKAIJYU EIGA

先日のミナモザなどを観ているから特に感じるのかもしれませんが・・・。

舞台から抽出される感情や怒りは
しっかりと感じ取れる。
それは、演じる側の熱のようなものとして
観る側に伝わってくる。

意図もわからないではない。
そこには、作り手の日本の現状に対する
イメージが作られ、
提示される。

もし、そのイメージが観る側の抱いているものと
共振するものがあれば、
この舞台はとても秀逸な表現なのだろうなと思う・・・。

でも、その、彼らから醸される瞬発力と厚みに支えられた怒りが
観る側にとって、
ぺらぺらした看板のようにしか感じられないのです。
なんだろ、概念で作り上げた構図に
理もなく火を放ち、その感覚を燃やしたような印象・・。

武器というか、表現のメソッドは持っているのだろうと思う。
でも、つくり手が捉えた、
原発事故などへの感情や感覚は
観る側のそれと大きく乖離しているような気がして・・・。

役者の熱演に対してとまどい、
その、すれ違い感のようなものに
どうしてよいのか分からないまま
劇場を後にすることになりました。

・Rosa seulement

予備知識がない物語。
開演前に観る側に、演じ上げるものの背景を
伝えようとはしていたのですが・・・。
私にはベースになる知識の持ち合わせすらなかったので、
そのプチパフォーマンスも
今ひとつ上手く機能していないように思えた。

とはいうものの、
舞台での役者の動きには
一定の方向性があって、
みているうちに、記憶のページをめくっていくがごとく
刹那が次々に重ねられていくような感覚が生まれます。

日時、場所、人がその刹那の冒頭でコールされて、
次第にひとりの半生の感覚が浮かび上がってくる。
動作のシークエンスも、
最初は観る側にとって全く意味をもたないものですが、
やがて、その人物とシークエンスのニュアンスが明かされたとき、
時間のランダムで無機質な重なりに
想いや体温のようなものが絡まり宿る・・・。
その質感の広がりには強く惹かれるものがありました。

ただ、プロンプトのタイミングや表示の方法(時間の長さなども含めて)が
なにか不安定というか、
演技ともずれているような印象があって。

説明などを読むと即興的な創作の部分もあるのかもしれませんが、
もうすこし、作品の流れと観る側にやってくるものが
ひとつに束ねられた形での
情報があればなぁと
残念に思いました。

あと、たとえば、公演後に、この作品についての
彼らのメソッドの初心者用の種明かしがあればなぁと
思った。

終演後、
言語というより、舞台空間を
作り手と観る側で充分に共有できていない感じが残りました。

【東京バンビ】ピクルス ご来場ありがとうございました☆

【東京バンビ】ピクルス ご来場ありがとうございました☆

元東京バンビ

OFF OFFシアター(東京都)

2011/09/28 (水) ~ 2011/10/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

.笑いの先があるコメディ
勘所ではしっかりと笑いを取りつつ、
笑いだけに塗りこめられることのない、
深さをしっかりと持った作品でした。

一発芸的な笑いもあるのですが、
シチュエーションが作られた上での可笑しさが
物語を編み上げていく。

観終わって、コメディという範疇では収まらない
感覚のリアリティや感慨が残る秀作でした。

ネタバレBOX

冒頭のトイレ設備の瞬殺ネタや、
物語を俯瞰するような語り。
ちょっと駄目っぽい男三人が集まった舞台の絵面には
サクっとした笑いに満ちた
トホホ系のコメディのイメージしかなかった。

ところが、小学校の同級生の妹という女性がやってきて、
札束のはいった分厚い封筒を押しつけていくところから
物語が意外な方向に展開していきます。

その同級生のキャラクター設定は
かなり凄まじいものなのですが、
役者の作り上げる彼の世界には観る側に有無を言わせぬ説得力があって、
舞台上の他のキャラクターたちを根こそぎ巻き込んでいく。
一旦舞台の世界に取り込まれてしまうと
その展開に無理がなく、
伏線もがつがつと効いて、
笑いの先にキャラクターたちの感覚が鮮やかに浮かび、
観る側に積もり広がっていく。

居酒屋のシーンが実に秀逸。
気づまりの中から
それぞれのキャラクターに仕込まれていたものが
予想外のあらぬ方向に溢れだす。
それぞれのキャラクターの貫きにきちんと理があって
ドミノの倒れていき方に無理やあざとさがなく、
場には幾重にも膨らむ歯止めを失ったような
おかしさとペーソスが醸し出されて。

単に友人の彼女の本当の姿が開示されるだけではなく
そこからさらに物語の骨格の一つに広がったり
献身的な妹の内心の決定的な開示に繋がったり。
仕事場であるコンビニの雰囲気を醸すワイルドな客の女性が
意外な形で中盤以降の物語を支えたり。
観る側に先を読ませない伏線の張り方や展開や、
しっかりとボディーと踏み込みをもった笑いから
すっと溢れだすキャラクターの心情に心をつかまれてしまう。

キャラクターたちが醸す笑いが、
ワンショットではなく別なシーンにその色を変えて
観る側にやってくることで、
コメディとしての豊かさもがっつり広がっていきます。
コンビニ店員が廃棄弁当をもらう定番の理論武装として
地球環境を語るうざさに苦笑していると、
それが、余命いくばくもない相手にぶつけられて
凄みを持った笑いに塗り変わる。
主人公の友人の恋人が
実は主人公も学生時代にお世話になった
現役のデリヘル嬢だったという展開も切なく笑えるのですが、
そのデリヘル嬢が使い捨てにされず
後半「チェンジ」を宣言される展開に
物語の裾野がさらに広がって。

見せるものと見せないものの切り分けもしたたか。
そこがどのような病院なのか、
引きこもりの男性の生活の実態、
同室の患者の心情、
前述の、コンビニの客の正体や妹の献身を裏打ちするものにしても、
その表わしかたに無理やずるがなく、
観る側を一歩先んじる力があって。
その切り分け力は、別の表現力ともなって
人の生き、死ぬ感覚までも
浮かび上がらせる。
死を待つ同級生とそうでなかった者の対比の
淡々とした鮮やかさに息を呑む。

そして、物語は、
やがて曖昧に置かれたコンビニの店長の心風景をも
描き出していきます。
投げかけられた
「ボランティアに行って、恐ろしくなって戻ってきたような」という比喩が
ぞくっとするほどにまっすぐ
死に直面した同級生に対する彼の距離感や心情に重なる。
一人ずつの生きる感覚や死への想いが
笑いたちの先に鮮やかに広がって。

物語を包括するような語りの挿入や
タイトルの、ハンバーガーに添えられたピクルスが
舞台の世界に大外の枠組みとなって。
いくつもの場面で何気に食べられていたハンバーガーが
最後に舞台を引き締める。

要所要所がきっちり作り込まれた
コメディとしての魅力に加えて
ビターさや透き通った感覚を内包した
コメディという範疇に収まりきらない舞台の質感が醸し出されて、
がっつりと掴まれてしまいました。

過去に観たこの劇団の作品も決して悪くはなかったのですが、
そこからさらに、何段階も進化して、
MCRの主宰を役者としてしっかりと機能させて・・・。

秀作だと思います。
ホットパーティクル

ホットパーティクル

ミナモザ

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2011/09/21 (水) ~ 2011/09/27 (火)公演終了

満足度★★★★

空気の肌触りの記録、そして混沌の普遍性
作り手の日々の描写であり、
作り手の事実が秀逸なお芝居によって
描きだされ提示されていくのですが、
その世界にはさらなる奥行きがあって。
単純な、極めて個人的な記録にとどまらない、
彼女が感じるその時間の肌触りにこそ
強く捉えられました。

役者も、一人の人格にとどまらず、
時間の感覚や舞台の枠組みをしっかりと背負いきって。

物語のコンテンツは
観ていて単純に共感できるものではありませんでしたが、
そこにある空気には
抱えきれないほどのことが起こった時、
人が直面し、あるいは陥る感覚の普遍を感じることができました。

ネタバレBOX

阪神大震災や9.11の時にもそうだったのでしょうけれど、
社会にしても個人にしても、
その懐に収め得ないほど大きなものを渡されたとき、
まずは立ちすくんでしまうのだと思う。
でも、止まってしまうことはできないので、
それが何だったのかも理解できないまま
とりあえずは動き出す。

ましてや、今回の震災においては、原発のこともあり
未だに霧散していかない澱みのようなものを感じていることも事実・・・。

作り手は、彼女自身がその日々に纏ったものを
自らを描くことで具象化していきます。
きっと、作り手ですら最初は、
描こうとするものを掴みきれていなかったのだと思う。
言葉の枠に納めることはできないテイスト・・・、
観る側とて、駅のエスカレーターがとまり、
テレビにACの広告があふれ、
どこに抜け出ていいのかもわからないような
あの感覚がなんだったのかを自分に対してさえ説明できない。
そのテイストを
現実と描きたいものを分離しない(あるいはできない)まま、
自らが背負ったものごと役者にゆだねて
積み上げていく。

役者たちも
作り手とその周りの人物たちの刹那ごとの空気を
強い実存感を醸しながら演じ上げていきます。
時間は極めて個人的な事象の表現の態で語られ、
事象の内側で表現しえないものについては
物語の外側にある作劇の過程までも晒して・・・。

観る側にやってくるものには、
どこかばらけた感じもあり、
シーンの意図がすっと入ってこなかったり、
どうにも痛かったり
肯定的にうなずけない部分もあって・・・。
でも役者たちの演技に込められた、
時間を現わすということからさらに踏み込んだ
表現へのリヒドーや献身に浸されるなかで、
気が付けば、
一時に抱えきれないほどに大きな事象が
個人に咀嚼されていく過程の質感が
しっかりと観る側をとらえているのです。

ジョンレノンのようになりたいと彼女は言います。
その言葉はどこか唐突に置かれ
終盤に再び語られる。
最初にその台詞を聴いた時には、
突飛に思えたし意味がよく伝わってきませんでした。
でも、舞台上の時が過ぎ
再びその言葉が語られた時には
咀嚼できなかったニュアンスが
すっと浮かび上がり、
フリーズしていた時間がすこし溶けて
何かを湛えたような感覚がやってきて。
彼女の思索の過程や時間軸の奥行きが垣間見えた。

感動したとか言うのとは少し違う。
中途半端な感覚が残ったのも事実。
そこにあるものはなにも解決していなし、
舞台が行きつく「今」とて
きっとゆっくりと凪いでいくなにかの過程にしかすぎないと思う。
でも、抜けきれない閉塞感に身をゆだねるなかで、
作者の時間に、
同じ空気の中で時を過ごした自分の座標のようなものが重なって、
やがて、自分の立ち位置に想いが至る。
そこには、観る側にとっても掴みきれなかった何かが
実存感とともに現れていて。

どこか雑然としているし、
生々しいし、
痛々しさすら感じる舞台・・・。
でも、劇場を去るときには
作り手がそこまでに背負い、晒し、
さらには役者が献身的に演じたからこそ舞台上に表現しえた
混沌に織り込まれた普遍を
しっかりと受け取ることができました。
コーヒー、キライ

コーヒー、キライ

あひるなんちゃら関村と味わい堂々浅野の二人芝居

ラ・グロット(東京都)

2011/09/24 (土) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★

素敵に緻密なウィットとラフさ
瞬発力をもった笑いもあるのですが、
じわっとくる笑いが実に秀逸。

したたかに密度をもったお芝居で
知らず知らずのうちに深く物語に取り込まれて。

良質なコメディ。
上演時間もほどよく、
説明に書かれている通り、
さくっとたっぷり観ることができました。

ネタバレBOX

シンプルな会話劇、
ちょっぴり唐突な設定ではあるのですが、
びっくりするような外連があるわけでもない。

でも、細かいジャブのようにやってくる
キャラクター間のいろんなズレのようなものが、
いろんな距離をもった笑いとなってじわじわと効いてくる。

刹那の笑い、
場面の可笑しさ、
シーンを跨いで仕掛けられた笑い。
さまざまなリーチをもったその編み込みが
観る側をじわじわと取り込んでいく。
兄妹に設定された二人の空気に安定感があるから、
観る側が、
いろいろなはずされ方やかみ合わなさを
とまどいではなく、
したたかに醸されたウィットとして受け取ることができる。

物語が進む中での
シチュエーションや
それぞれのキャラクターの貫きと変化のバランスが絶妙。
決してタイトさを感じる密度ではないのですが
よどみやゆるみがないので、
ここちよくしっかりと舞台の流れにのせられてしまう。

なんだろ、上手く表現できないのですが、
ある種の完成度というか粋に近いものが
舞台上にしっかりとあって・・・。
こういうお芝居って、はまる。

作品のクオリティをしっかり感じ、
良質な作品を観た後のほくほくするような感覚と主に
劇場をあとにすることができました。




沼辺者

沼辺者

浮世企画

ワーサルシアター(東京都)

2011/09/22 (木) ~ 2011/09/26 (月)公演終了

満足度★★★★

エッジが効いていてくっきりと
マチネを拝見。

タイトルだけ見ると、
なにかドロドロとした愛憎劇の印象だったのですが、
とてもエッジの効いた作劇で
たっぷりと楽しむことができました。

ネタバレBOX

物語の見せ方が上手いなぁと。

晒すものと隠すものが、
キャラクターごとにしたたかにつくられていて、
その場に必要なものが、
きっちりと作られ観る側に示されている。

そのキャラクターたちの雰囲気、
実は冒頭から著しく変わっているわけではないのです。
その分、観る側に印象の揺らぎがなく、
役者たちの膨らませる雰囲気にまっすぐに取り込まれていきます。

しかも役者たちから滲みだしてくるものには
エッジがしっかりと効いていて
男たちが醸し出すものには、キャラクターに応じた
底の浅さや深さがしなやかに作りこまれていて、
かっこよいものはかっこよく、だめだめなものは駄目駄目に、
くっきりと描かれている。
その伝わり方に無駄がないというか、
見ていてもたれがないのが
とてもよい。

女性たちにもそれぞれに
物語を際立たせるに十分な魅力があって。
設定のなかで男性たちが惹かれるものが
概念としてではなく
観るがごとくというか実存とともに観る側にやってくる。

なんだろ、それぞれのシーンがくっきりしているので
見る側が澱みなく、物語の展開に運ばれていく感じがあって。

だからこそ、
終盤の展開にまで至った時、
鮮やかな切れに
息を呑みました。
キャラクターたちの姿が翻るように
鮮やかに開示されていく。
そこには、力みがなく、
すっと観る側をつかまえるような質感があって・・・。

ラストには観る側の時代感覚までもなにげに覆されて・・・。

前回公演とは全く異なる
作り手の物語る力、
さらには役者や舞台の流れを見せる力を
たっぷり楽しむことができました。

がっつりと、面白かったです。






『非国民文化祭』

『非国民文化祭』

笑の内閣

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2011/09/18 (日) ~ 2011/09/19 (月)公演終了

満足度★★★★

偏りを表現する偏りのない力
素直に笑えたし、
こういう笑いに必須の突き抜けもしっかりと感じることができました。

なによりも、ジャンルをものともせず、
タブーに縛られない描写の切っ先と
それを具現化する引き出しの豊かさに
惹かれた・・・。

東京で定期的な上演ができれば、
コアな客がしっかりつくのではと思いました。

ネタバレBOX

冒頭の、原発ネタに
がっつりとやられる。

最初はどこか薄っぺらい感じの
コントかなと思ったのです。
で、現実にどこか薄っぺらいコントの態ではあったのですが、
その薄っぺらさや、表層的な表現に
不思議と違和感や引いた気持ちが起きない。

やっていることは
たとえば文字に落とせば、恐ろしくだらないことなのですが、
でも、気が付けば、そのくだらなさが
今の原発問題の質感にしっかりと置き換わっている・・・。
エロい道具を制御棒に見立てたり
火照った体を水で冷やしたりと、
やりたい放題の
その世界の表現の不謹慎さや下世話さが
そのまま原発問題の根幹にある、
ある種の利害やイデオロギーの胡散臭さとして
見る側に置かれていく。
失笑の切っ先を、しっかりと問題の本質に塗り替えるしたたかさに
前のめりになってみてしまう。

その切れ味は、マルクス主義や某大手宗教団体、
さらには右側の思想や「尊きもの」の匂いを
見事に舞台上に切りだしていきます。

それらを信奉する人々にとっては
あからさまな揶揄にも思えるのでしょうけれど、
でも、その思想自体を真っ向から
批判しているというわけでもない。
ただ、それらが含有する
自らの美化や
他を排除する独善や胡散臭さを
笑いに作り替えているだけ・・・。
よしんば表層の表現がどこかぺらぺらであっても
そこには、軽薄さを編み上げる芸術性というか力量を
しっかりと感じ取ることができるのです。

だから、熱海殺人事件のパロディをやっても
ミミックには留まらないなにかが伝わってくる。
彼らの表現にとって、現実の置き換えはむしろ果実のひとつにすぎず
内包された極めて演劇的な力が支えうる表現は
様々なベクトルをもった作品を創りえることがわかる。

今回の彼らの公演は
エンターティメントの部分を十分に持ちながら
一方で、彼らの広い間口の
ショーケースてきな側面もあるのかなとも
思いました。

悩殺ハムレット

悩殺ハムレット

柿喰う客

シアタートラム(東京都)

2011/09/16 (金) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

圧倒的
今回は古典ということで、
物語の骨組みがすでに観る側にあることから
個々のシーンに役者たちが醸し出すニュアンスの鮮やかさが
あっという間に観る側を凌駕してくれて・・・。

そこから一気に疾走する
圧倒的に豊かで鮮やかな舞台でありました。

ネタバレBOX

シェークスピア戯曲のもつ面白さが
あらかじめ用意されているということで
作り手は物語の骨格を組み上げる手番に力を削がれることなく
戯曲を読み解き、個々のシーンが担うニュアンスの表現を
ぞくっとくるような感性で作り上げていく。

品格に包まれて置かれるのではなく
ダイレクトに伝わってくる台詞の意図、
抜き身のような今様の言葉から
あけすけに、ダイレクトに伝わってきます。
個々のキャラクターたちが背負うロールのニュアンス。
それは言葉にとどまらず、身体の表現や
刹那の表情の誇張や
舞台全体に作られる空気として伝わってくる。

もちろん、物語の構成としてのロールの軽重はあるのですが、
場面を創るということに関して
軽いロールを振られた役者がみあたらないのが凄い。
戯曲に描かれた役柄の大きさや色に縛られることなく、
ひとつずつのキャラクターの刹那が
観る側にがっつりと入り込んでくる。

禍々しいだけではない父の亡霊が纏う華、、
悪に染まりきらず揺らぐ(褒め言葉)クローディスの内心、
エロいという言葉を背負いうる母、
そして、ひたすら重厚に悩むのではなく、
リアリティを持った苦悩の質感を醸し出すハムレット。
清純なだけはなくちゃらいだけでもない無邪気さを持ったオフェーリア。
絶妙な思慮の深度とまっとうな感覚を感じさせるレアーティーズ。
宮廷内のたくらみの匂いを編み上げるボローニアス。
ホレイシオの作りだす実直さと悲劇の現場の疲弊感。

彼らと遜色ないというか、時には競い合うように
ローゼンクランツやギルデンスターンそれぞれの
人物像や男っぽさが、役者の美しさに阻害されることなく
むしろ切れというか味方となって浮かび上がってくる。
マーセラスとか墓掘りから滲み出してくるにび色の印象に
役者の震えが来るような表現力と舞台への献身を感じる。
バナードーが組み上げる冒頭のトーンの確かさが舞台の安定を生み
オズリックの作りだすトーンが、
坩堝のような思惑の先に定まった惨劇を
ぞくっとくるほどしなやかに形骸化させて・・・。
イングランド使節が一瞬で観る側に渡す悲劇の外側の質感の軽さが
物語の片端の枠組みとして機能していく。
                              
そして、終盤でのフォーティンブラスの物語の受け取り。
そこには、もう、言葉になしえないようなテイストとともに
浮かび上がるある感覚が編み上げられていて。

戯曲に編みこまれた、
登場人物たちの肌触りが
古典の枠組みに縛られない、
戯曲の意訳とニュアンスの描写力の具現として
役者たちの秀逸な演技から溢れだしてくるとき、
役者それぞれのときはなられたような演技の広がりの先に
不滅の名作の骨組みと舞台を満たす感覚の実存感が
一つに重なる。
それは、作り手がきっともくろんでいるがごとく、
役者を見せる舞台として
圧倒的に観る側を取り込んでいくのです。

これ、かなうことなら、是非にもう一度見たい舞台。
かなうか?

お裁縫とセックス

お裁縫とセックス

海ガメのゴサン

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/09/14 (水) ~ 2011/09/18 (日)公演終了

満足度★★★★

同じトーンを保ちつつ
3つのお話を同じトーンで作り上げていたことで
観る側が散漫にならずに
個々の作品を楽しめました。

それぞれに深さやベクトルの異なる短編でしたが、
作品の個性を気負わずに
舞台の色に適度に染めて
観る側に供する作り手のポリシーはぶれずに貫かれている感じ。

場内のゆったりした雰囲気も、
その語り口もなかなかによかったです。

ネタバレBOX

どの作品にも
常ならぬ世界へのちょっとした踏み込みがあるのですが、
そのベクトルが、
作品によって絶妙に違うのが良い。

滑稽な作品、どこか下世話な作品、ちょっとシュールな作品。
それが一つにおさまって
観終わってある種のトーンが醸し出されておりました。

ゲストの日替わり男優(私が観た回は須貝英さん)
によっても色が変わるような部分も多々あって。
それも魅力かなとおもったり。
秘密裏にどうぞ

秘密裏にどうぞ

ガレキの太鼓

都内某所、とある一軒家(最寄駅、京王線下高井戸駅)(東京都)

2011/09/10 (土) ~ 2011/09/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

時間にゆとりをもって
前回ののぞき見で、
座席のことは承知済みだったので
時間をたっぷりとって
3編全部と巻き込まれを体験してきました。

もう、わくわくしてしまいました。

ネタバレBOX

のぞき見といっても
物語の切り取り方はそれぞれにことなっていて、
観た感じも違って飽きない。

しかも、どの作品にも雰囲気の表層だけではなく
そこから垣間見える登場人物たちの想いが
したたかに描きこまれていて・・・。

まあ、エロかったり、さびしかったりもするのですが、
それも含めて、3作品それぞれの世界に
しっかりと取り込まれてしまいました。

巻き込まれも本当によく工夫されていて
観客では通常体験できないような
演劇の感覚にしっかりと捉われて・・・。

ほんと、楽しませていただきました。
花と土/ファーファーファーファー,ファーラウェイ

花と土/ファーファーファーファー,ファーラウェイ

monophonic orchestra

百想(re:tail別館)(東京都)

2011/08/31 (水) ~ 2011/09/12 (月)公演終了

満足度★★★★

日曜日のお昼
9月4日、11日と2作を続けて拝見させていただきました。

民家の2階という風情のギャラリーなのですが、
なんだろ、洒脱な風情があって
場の空気感に物語がしなやかに絡まって。
しかも、両日ともお天気がお芝居に味方までしてくれて・・・。

それぞれに、
心満ちる休日の午後の観劇となりました

ネタバレBOX

・ファーファーファーファー、ファーラウェイ(1週目のみ)

男女の15年を綴る物語。紙コップをピッチに見立てて、ほぼ、電話での会話のみで二人の日々描き出していきます。

それぞれのシーンは断片的なのですが
場に時間を担う密度があって、
なおかつ時間の遷移がとてもスムーズ。
それは
男女の刹那の想いをすっと切り取る戯曲の秀逸と、
役者の醸し出す感情の深さと切れのなせる技なのですが、
だからといって、それらがあからさまにならず
ボディブローのようになって観る側を取り込んでいくことに
演出の力を感じて。

途中、一瞬だけ、二人の関係性を離れ
女性だけの時間が現出する部分があって
そこだけに若干の違和感を感じる部分がありましたが
でも逆にいえば、
それを気づかせるほどに、
物語全体に二人の時間が作りこまれていて。

また、そのなかでの男女の感覚の移り変わりも
概念ではなく、
役者から滲み出てくるものをそのままに受け取って
広がっていくような感じがあって。
守山さんからすっと現れる感情が
時々の感情とずっと貫かれる想いに
ある種の立体感を与えて
交差する二人の世界を実直に観る側に俯瞰させる・・・

30分弱の上演時間なのですが、
観る側には二人の15年が
きちんと重さを広がりを持って置かれている。
観終わって、ちょっと魔法にかけられたような気分(誉め言葉)に
なりました。

・花と土(2週目のみ)

まずは、開場から開演までの
舞台空間の絵面に取り込まれる・・・。
窓辺に座り書類のようなものに目を通す女性。
マチネで観たので、
窓の外の陽の光のうつろいや、
風の気配も、
すべて借景となって、
女性の自然体の時間を際立たせていく。

なんというか、そこには素の女性の
飾らない気配のが集約されていて
見惚れる。

そのベースを持って物語が始まるから
秀逸な演技から育まれる女性のどこか不安定な感情の生々しさに
強く取り込まれてる。
決して接する側が心安らぐ感じでなないのですが、
でも、それも含めての女性の存在感に
観る側が舞台にあるがごとく染められてしまう。

夫婦に流れる時間、
満たされていること、あからさまな優越、
そして手のとどかないこと・・・。
すべてを思い出させる望まない来客への
妻の嫌悪が解かれ広がるにつれて
夫に内包された苛立ちまでもが導き出していきます。

漠然とした閉塞感と
行き場を失った生を育むことへの渇望が、
花を摘む狂気の告白に踏み出す、
その肌合いに息を呑む。
冒頭の時間と、そのシーンが重なって
村上さんが醸し出す女性くささ(誉め言葉)というか
素の女性の所作の美しさと裏腹に内心抱く業のようなものに
圧倒されてしまって・・

ただ、物語の終わりについては
好みが分かれるかも知れないとは思うのです。
「罰」という伏線の回収され
すっとクローズするところから生まれてくる強さもたしかにありました。
ただ、その収束には、
積み上げられたトーンがすっと厚みを減じられるような部分もあって。
もう少しだけ物語の収束に
すそ野があってもよかったかもとも思いました。

・僕の兄の幸福な結婚

ひとり芝居、
演じるというよりはエピソードを語るという感じが強くて、
でも、冒頭のフレンドリーでラフな語り口に気を許していると
そのまま、語り部のリズムにあれよと取り込まれてしまう。

お兄さんの人物描写がべたにされていないところが
うまいなぁと思う。
必要なことしか観る側に語られていなくて、
でも、浮かんでくる人物像が
物語のなかでしっかりと存在している。

この話は2週連続で聞いたのですが、
なにか飽きのこないエピソードで、
2回聞いたから深まるってなものでもないのですが、
ついついしっかりと耳を傾けてしまう。

腕のいい噺家さんの高座などでもそうなのですが、
物語を聴かせるというよりは
観る側をその空気に遊ばせるみたいな芸の力が
さりげなく物語に観る側を浸していく。

なんということはないのですが、
演じ手の語り口がしっかりと残ったことでした。

・今日のおわりに

くじびきで、当日の役割を定めてのリーディング。

これも2週にわたって。
そりゃ、一週間目のほうが新鮮に見入ったのはあたりまえだけれど
2週目も構造や聴き所が分かっているが故の楽しさがありました。

指差しで流れる時間、しりとりが作り出すリズム、
それが、独りよがりにならず
観る側の感覚を丁寧に巻き込みながら膨らんでいく。

派手な展開はないのですが、
でも、その家族の記念日になるようなエピソードが
ルールの力でポップに醸し出されて。

2週連続でどこか暖かい気持ちになりました。
不識の塔

不識の塔

劇団野の上

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/08/19 (金) ~ 2011/08/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

遅くなりましたが
非常に印象の強いお芝居でした。

でも、その強さのなかに、キャラクターたちの味わいがしっかりとあって、
心に残りました。

ネタバレBOX

死の床での呼吸の演じ方が恐ろしくリアルで、
父親の最期のころを思い出す。

正妻や女郎の妾の風情にしても
医者にしても、
どうにもこうにも生々しい実存感があって・・・。

でも、それが、きちんと喜劇の領域をとりこんでいるので
凄惨さだけが残るのではなく、
キャラクターそれぞれの生きる匂いのようなものが
すっと浮かび上がってくる。

役者がきちんと豪胆さと繊細さを作り出していて
観る側がただ委ねるだけのようなかんじになっていることも
作品のインパクトを強くしていて・・・。

ほんと、面白かったです。
準決勝

準決勝

あひるなんちゃら

駅前劇場(東京都)

2011/09/02 (金) ~ 2011/09/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

いろいろと円熟
センスの塊のようなお芝居で、
いちいち嵌ってしまいました。

作り手も、
演じても、
とても熟している印象をもちました。

ネタバレBOX

いろんな方がかかれているように
物語の設定にしても
シーンごとの仕掛けにしても
物語の展開にしても
観る側の予想を半歩上回るずれや踏み出しや外し方があって。

半歩だから見るほうも許容してしまうのですが、
それが次第に積もって
もう抜けられなくなってしまう。

個々のキャラクターに掛けられたバイアスのようなものにしても
狂言回しの黒岩さんの貫き方にしても、
ぶれがなくぶれていて、
観る側を閉じ込めてしまう力になっていて。

なにか、凄みすら感じたことでした。
夏も

夏も

ロロ

SNAC(東京都)

2011/08/31 (水) ~ 2011/09/04 (日)公演終了

満足度★★★★

想いを抽出する仕組み
想いがピュアに伝えられるための
したたかな仕組みがあって。

それがあざとさにならず、
広がりになっていくところに
作品が持つ力を感じました。

ネタバレBOX

個々のイメージや仕組みそのものが
著しく斬新というわけではない。
男女の入れ替わりにしても、
映画などで取り入れられた手法だし、
妖精の存在にしても、よくつかわれる手法だとは思うのです。
でも、
そのことが舞台にあるものを陳腐化させるわけではなく、
むしろ、観る側に舞台にたいしての親和感を創り出していて。

だから、そのベースから溢れだしてくるものに
違和感を感じない。
多少突飛に思えたり、強いデフォルメがなされた表現もあるのですが、
それらが醸し出すものは
重なりあい、
観る側の何かを共振させてくれる。
しかも、役者たちの表現の切っ先にぶれがなく
現れてくるものの解像度が
なにげにぞくっとくるほど高い。

最終的に伝わってくるものが
とてもダイレクトな色合いをもっているので
ついついそのまっすぐさに目を奪われてしまうのですが、
でも心に残ることは
単純に純化された想いではない。
混沌に埋もれた想いの現出していくもどかしさや
その想いの行き場までがひとつの印象として観る側に置かれる。

作り手の手腕によって磨かれた
したたかな語り口に醸し出された、
インパクトの強さにとどまらない、
高揚感をもったひろがりに心を満たされました。
HELLO!

HELLO!

表参道ベースメントシアター

表参道GROUND(東京都)

2011/09/02 (金) ~ 2011/09/04 (日)公演終了

満足度★★★★

シーンで語る時間
初日というかプレビューを観ました。

シーンの作り方やつなぎの秀逸が
舞台に不要な重さを与えず、
物語が自然な感じで観る側に置かれたように思います。

ネタバレBOX

一つずつのシーンが
とても丁寧につくられているように思う。
あからさまな説明台詞などないのに、
その場に見えているものが浮かび、
それぞれが秘めているものが
観る側に共有されていて。

そこに、マネージャーヤアルバイト役によって盛り込まれた
うまく機能して
ドラマの質感が軽くても、
その時間を過ごす感覚が、
とても自然に降りてくる。

もっと満ちて奥行きがあってもよいなという部分も
確かにあるのですが、
でも、逆にそこを語らないことで
物語に対する視座が安定したような気がする。

サクっと観ることができて、
しなやかに残るものがある
作り手のセンスが生きた作品だったように思います。
モガっ!~記憶はだいたい憶測。

モガっ!~記憶はだいたい憶測。

富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ

富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ(埼玉県)

2011/08/26 (金) ~ 2011/08/27 (土)公演終了

満足度★★★★

楽しい
ツアーの間中、
ずっとわくわくしていました。

楽しかっただけではなく、
いろんなパフォーマンスにちゃんと記憶に残るものがあって。

とても素敵な、機会があれば是非に再演してほしい企画でありました。

ネタバレBOX

パフォーマーの方たちのクオリティの高さが
最大の強みかと。

バッタものではない
きちんと力をもった演者たちの力に
いろんなアイデアやウィットも安っぽくならずしっかりと生きて。

楽しいうえに見応えがありました。

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