わが闇
ナイロン100℃
本多劇場(東京都)
2007/12/08 (土) ~ 2007/12/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
生きてるってご無体。
とても怖ろしい作品として観た。空気の張り詰め方がビリビリ。
弛緩と緊張がいい具合に展開され、3時間が短く感じる。
作者の筆の動きが見えるのはご愛敬と言ってしまえばそれまでか。
サーガとしては申し分のない傑作であると太鼓判を押したい。
照明に関して、今年一番の物を見ることができたと確信している。
何回もタッグを組んでいるからこそできる芸当なのだろう。
家族でお食事ゆめうつつ
中野成樹+フランケンズ
STスポット(神奈川県)
2007/12/14 (金) ~ 2007/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
九十年の孤独。
クリスマスの前に、壮大なクリスマス・ストーリーを淡々と短々とこなす。
90年の物語を45分でやるというめちゃくちゃな仕事だが、実に理路整然としている。
これぞ中野成樹の仕事、という一本に仕上がっていてどこまでも納得。
最後に演者によるクリスマスソングですっかり気持ちが暖まった。
なんだか、今年のクリスマスはこれで終わりにしちゃっていい気がした。
マイルドにしぬ
プロペラ犬
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2007/12/12 (水) ~ 2007/12/13 (木)公演終了
満足度★★★
水野さん、どうしたの?
水野美紀という女優の印象を変えるのには十分すぎる90分。
水野さんのはじけっぷりを、うまく乗せる河原さんのコンビネーションの妙味。
でも、そういう意外性だけじゃ、ファンじゃない人には物足りないかも。
旗揚げの意図は成功したと思うので、意外性だけじゃない次回を期待。
女の果て
ポツドール
赤坂RED/THEATER(東京都)
2007/12/05 (水) ~ 2007/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
会話の“おかしみ”
溝口演出は初なので、なるほどなるほどの90分超。
三浦演出のような抑圧がほとんどなく、よりエンタテイメント寄りになった印象。
それでいて不足感はなく、ポツドールというパッケージとして成立している。
男に対する容赦のなさと会話のおかしみが印象的な一本。
東京裁判
パラドックス定数
pit北/区域(東京都)
2007/11/29 (木) ~ 2007/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
いつの間にか共闘していた。
この題材に対して、直球ど真ん中で投げ込めるだけの本格派がいたことに驚き。
完成度の高い会話劇は、客席と舞台との境界が曖昧になるものだ。
張りつめた空気の中、闘う男たちの様を観て、境界が曖昧になるどころか、共闘している気分にさえなれた。
これぞ、観劇の至福。そう言いきりたい。
これほど、上質な会話劇を書ける人を見逃していた自分の過去を呪う。
ポストオリザの一人として、野木さんはもっと取り上げられてよいと思うのだが……。
KANADEHON忠臣蔵
花組芝居
世田谷パブリックシアター(東京都)
2007/11/30 (金) ~ 2007/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
世界一受けたい授業「KANADEHON忠臣蔵」。
刃傷やら仇討ちといった定番の場面を楽しみつつ、史実とは違う見せ場に感心しつつ。
何やら、観劇というよりは楽しくお勉強している気分の2時間半。
エンタメ分が低い分、ずーんとした男どもでお腹いっぱいといったところ。
アフタートークでは、各段の解説やら裏話やら満載。
こちらこそ、全段通しで聞いてみたい“授業”といった感じである。
14.√1.90
toi
ギャラリーLE DECO(東京都)
2007/11/27 (火) ~ 2007/12/02 (日)公演終了
満足度★★★
文芸サークルの罰ゲームのような。
現代口語演劇が言葉遊びと出会いを果たした。
“縛る”ことに縛られている感はあるが、それでも物語がなんとなく成立している。
テクストに磨きがかかったら、青年団の“アンファン・テリブル”となれるかもしれない。
ただ、テクストやアイディア先行のため、演出の仕事が特に感じられなかったのは玉に瑕か。
“次が見たい作家”の一人として記憶しておきたい。
岡田利規 新作「ゴーストユース」
桜美林大学パフォーミングアーツプログラム<OPAP>
PRUNUS HALL(桜美林大学内)(神奈川県)
2007/11/20 (火) ~ 2007/11/25 (日)公演終了
満足度★★★
その実験で得をしたのは。
チェルフィッチュ的ではあったけれど、また別のものに見えてしまった。それは、話の構造としてもそうだろうし、完成度の問題でもあると思う。
役者によってクオリティの差が大きいし、それは個体差では許されないレベルのブレであったように思われる。そこが非常に残念。
なんだか、ワークショップの“発表会”としては納得できるが、“公演”としては疑問が残る結果であり、演出家と役者は収穫があったのだろうけれど、観る側としては収穫風景を見るばかりで、空腹感しか感じなかった。
しかしながら、少しばかり味見はさせてもらって、その味はなんかぐっとくるものはあった。
岡田さんには繰り返し、OPAPをやってほしいとは思う。次の実験に期待。
AC/DC WORLD'S END SCHOOL GIRL!!!!!
バジリコFバジオ
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2007/11/16 (金) ~ 2007/11/20 (火)公演終了
満足度★★★
セカイ系の墓場。
なんだかセカイ系の墓場みたいだな、と。墓場というかゴミ処理場。
知識のひけらかし方が、中二病っぽくて逆に好感。もっと整理してほしいけど。回収するのが大変だーっ、てのが後半メチャクチャ伝わって、同情できなかった。
ミュージカル、意外や意外に好きになっちゃった。なんか、嫌いになれない。
……次も観ちゃいそうだな。
おこめ
毛皮族
本多劇場(東京都)
2007/10/13 (土) ~ 2007/10/21 (日)公演終了
満足度★
今回は事故だったと思い込む。
初・毛皮族。
たぶん、後半が毛皮族の持ち味なんだろうな、と推測。全然嫌いじゃないけれど、中途半端。
もはやショーとして成立していないじゃん、と思っちゃう。
今回は事故だと思って、次回……また事故ったら嫌だな。
ゆらめき
ペンギンプルペイルパイルズ
吉祥寺シアター(東京都)
2007/10/17 (水) ~ 2007/10/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
珠玉のファミリー・アフェア
PPPPにしては、いつものような思考の飛躍(わかりにくい)が見えず、それを目で追える(わかりやすい)。
ドラマとして地に足がついているから、落ち着いてドキドキできる。こんなPPPPも悪くない。
それでいて、PPPPのいつもの雰囲気やメンバーの良さは相変わらず。
坂井真紀が好演。次もPPPPで観たいくらい。
ワールド・トレード・センター
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2007/10/20 (土) ~ 2007/11/06 (火)公演終了
満足度★★★
「過去」への傲慢?
劇中の随所に「それは今だから言えるんじゃないか?」と問いたくなるような台詞が見かけられる。それは傲慢に過ぎないと思うのは、思い過ごしか。
それにしたって、現地を知っている作者だからこそ描けるものであったろうし、それは十分に伝わっている。
でも、どことなくリアリティに乏しいのは、僕の想像力の問題だろうか……。
ED VASSALLOが熱演。彼なしにこの芝居は成立しなかっただろう。
傀儡 くぐつ~純愛の章~
劇団花鳥風月
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2007/10/31 (水) ~ 2007/11/04 (日)公演終了
砂漠の音階
風琴工房
シアター風姿花伝(東京都)
2007/10/30 (火) ~ 2007/11/04 (日)公演終了
満足度★★★
先達に勝るものは?
風姿花伝に冬の研究室が確かに存在していた。見事。
あたたかで静かな空間に、妙な自己主張が漂うとムッと眉を顰めてしまう。
抑制が巧く効いていないのかな、と余計な心配をしてしまう。
アカデミックな静かな演劇というと先達・青年団を思い出すが、先達を超える要素は特に見当たらなかった。
その青年団の山内さんが出ているから余計にそう思わされたのか……。
“風姿花伝でやる”ということを意識したプロジェクトは非常に好感。
今後も風姿花伝使用団体には検討願いたいものである。
Oh!電気ボーイ
劇団 兄貴の子供
シアターシャイン(東京都)
2007/11/01 (木) ~ 2007/11/04 (日)公演終了
満足度★★★★
枠に収まりきらん。
荒削りである。不器用な僕が鉛筆を削ったって、もっと上手く削れる。
だから、演劇にこなれていない感じが、妙に気持ちいい。
まわりの人が演劇に仕立て上げようとしていて、いじらしい。
70分というコンパクトさも大いに評価。
取りあえず、次も観たい。
野鴨
メジャーリーグ
THEATRE1010(東京都)
2007/11/01 (木) ~ 2007/11/30 (金)公演終了
満足度★★★★★
そこに隙はない。
劇場に入った瞬間に空気の違いに驚く。そこは地上10階、紛れもない森があった。
そこで展開される、ピンと張りつめた隙のないドラマ。なるほど、古典作品の普遍的な重みだ。
そして、隙のない役者陣。彼ら一人一人が悲劇を悲劇たらしめている、というのがしっかり判る。誰一人その枠から外れているものはない。
……完璧だ。
いやむしろわすれて草
三条会
三条会アトリエ(千葉県)
2007/11/09 (金) ~ 2007/11/13 (火)公演終了
満足度★★★★★
どこまでもずるい男たち。
関美能留という人は、戯曲選びが本当に巧い。三条会のメソッドをぶつけて壊れない作品しか出てこない。ずるいなぁとも思う。その“ずるうま”が、前田司郎にも通用してしまうのだから脱帽である。
アトリエ公演という楽しさも効いている。俳優・関美能留……怪優であった。ずるい。
それにしても、本家『生きているものはいないのか』より、三条会『むしろ忘れて草』の方が、五反田団っぽく見えるのはどうしたことだ。
陰漏(カゲロウ) <<劇場版+画廊版>>
乞局
ギャラリーLE DECO(東京都)
2007/11/07 (水) ~ 2007/11/11 (日)公演終了
満足度★★★★
それでも匂い立つ。
シンプルな舞台でも乞局になっているのに一安心。あの空間でもそれなりに匂い立っているんだから十分じゃあないかなという印象。
ずいぶん親切なラストのおかげで、危うく感動しちゃったりしたんだけど、それはもはや趣味の問題。ファミリー・アフェアとして、好ましい作品に仕上がっていたと思う。
でも、劇場版で観たかった……それは正直な所である。
ついでに余談。
ルデコに限って言えば、あそこで“劇場のホスピタリティ”を求める方が酷ではないかと。そもそもお客さんに親切な劇場とは思えないので。劇場じゃないんだから、仕方のないことだけれど。
ポエム
猫のホテルプレゼンツ 表現・さわやか
駅前劇場(東京都)
2007/11/01 (木) ~ 2007/11/12 (月)公演終了
満足度★★★
どこか生暖かい気持ちで。
全体が揺れるような笑いというのはほとんど無い。それでいて、会場の空気は冷めている訳じゃあない。言うなれば、生暖かい。
誰かがどこかで笑うのが遠く感じる時もあれば、逆に自分が思い出したかのように笑える瞬間がとてつもなく楽しくもある。
でも、やっぱりこのメンバーであることを思うと、不発弾に過ぎないとも思う。不発弾上等っていう方はぜひ。
博多湾岸台風小僧
劇団桟敷童子
吉祥寺シアター(東京都)
2007/11/06 (火) ~ 2007/11/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
台風小僧に連れ去られろ!
“叩ける演出家”という記事を読んだこともあり、美術には大いに期待していた。
何はともあれ、吉祥寺シアターが大変なことになっている。この劇場をここまで団体の色に染め抜けていると感じたのは初めて。それはもはや貪欲とすら言っていい。特にラスト……そこまでやるか! 吉祥寺に一度でも行ったことある人には特にお勧めしたい。
話も役者も、実に熱い。2時間後には博多弁がうつってしまうこと請け合いである。