春。いつかの雨の匂い/夏。つかの間の虹
劇団皇帝ケチャップ
萬劇場(東京都)
2017/01/19 (木) ~ 2017/01/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/01/20 (金)
座席G列7番
【春。いつかの雨の匂い】
基本的にはある時期のいろいろな人々を見せて横に拡がる「夏。」に対して、その中の一組の夫婦の過去とその後を見せ縦に掘り下げる「春。」と差別化したのが妙案。
最初は両作の関係を「T」の字型かと思ったが途中で「÷」かな?に代わり最終的には「十」だったか、的な。(ワカるかな?:いずれも横棒が「夏。」)
登場人物が少なく物語の軸が1本通っているだけにこちらの方がワカり易いかも(「夏。」の手法を知った上で観ればなおさら)。
で、実はこちらの断片は「夏。」にちりばめられていて、そんなことも含めてスターウォーズのep.3(シスの復讐)あるいはローグ・ワンを観るとep.4(新たなる希望)が観たくなるように、これも2作を観るとまたもう一方を観たくなるという……謀ったな!(笑)
褒め過ぎてもアレなんでちょいと釘。
夏、春とも稀に「会話」でなく「単なる台詞の応酬」になったのが惜しい。
芝居は基本的に次に〈自分が〉言うことが決められていて本人は言うべきことがワカっているけれど、実生活での会話では相手が思いもよらないことを言ったり、自分が言いたくないことを言わなくてはならなかったりするワケで、間が空いたりゆっくりになったりする……その緩急や間がないと不自然に感じられてしまう。
皇帝ケチャップの芝居は会話の中にちょっと巧い言い回しが入り、でもそれが極めて自然で大笑いを呼ぶあざとさのようなものがないというのが大きな魅力と考えるので、間の取り方など更に精度を上げればもっと良くなると思う。
あと、本作のように正続の関係ではない関連作が残念(?)なのは、「観る順を逆にして観直す」ことができないところ。
観た記憶を一旦保存して忘れて逆順で観てから保存した記憶を戻して両者を較べることができたらなぁ……などとSFチックなことも考えてしまった。(笑)
透明人間の蒸気
劇団のの
明石スタジオ(東京都)
2017/01/13 (金) ~ 2017/01/15 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/01/13 (金)
価格2,700円
かつて観たものの、日本神話絡みの部分以外の印象が稀薄で改めて観てこんなにも言葉遊びまみれでこんなにもシンプルでストレートな恋物語であることにビックリ。
本作の初演がいつ頃だったか当日パンフレットの解説で読んだこともあり、観ながらなるほど時代性が前面に押し出されているな、と思ったり、チープな美術がこの会場にマッチして芝居をくっきり浮き出させているな、と思ったり。
春。いつかの雨の匂い/夏。つかの間の虹
劇団皇帝ケチャップ
萬劇場(東京都)
2017/01/19 (木) ~ 2017/01/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/01/19 (木)
座席H列7番
価格3,300円
【夏。つかの間の虹】
登場人物が多く、まずは一見バラバラな何組かの会話が示され「どゆこと?」と思っていると次第に人物それぞれの人となりや関係性が浮かび上がってくる構造。個人差はあると思うがσ(^-^)的には好み。
喩えて言えば図柄のワカらないジグソーパズルを組んでいる感じ。最初は何が何だかワカらずに組み始めるが次第に絵が見えてくる、みたいな。
がしかし本作は最終的にいくつかのピースが欠落しているし違うパズルのピースも複数紛れ込んでいる……(笑)
なので人によっては不親切に思うかもしれない。が、示された部分を自分なりに解釈して描かれない部分を想像で補うと面白いんだな、これが。
で、乱暴な言い方をすれば全体を一貫するストーリーはないのだが、各人物の「人生のひとコマ」が見えてくるのがステキ。
あと、「猫」の使い方(序盤の台詞も伏線だね)やチラリと出るメタ表現もイイ。
芝居(に限ったことではないが)にはすべて用意されていて出てくるものを享受しているだけで楽しめるものと、観る側が想像力や思考力を駆使して積極的に参加(?)して楽しむものがあると考えるが、本作は後者。(よってハードルがやや高いと感じられる方もいらっしゃるかも?)
軽い重箱
殿様ランチ
新宿眼科画廊(東京都)
2017/01/10 (火) ~ 2017/01/17 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/01/10 (火)
恒例のお年玉的(いや、おせち料理的か?(笑))短編オムニバス2プログラム。
Aチーム(10日マチネ)の4編はコントやコメディでなく、ほぼ日常(あるいは某業界)の1コマのスケッチながら「ありそー!」満載で、ごくわずかにデフォルメすることでそこはかとない可笑しさが漂うのが巧い。
Bチーム(12日マチネ)は「あー、これこれ♪」なシリーズものに始まりドタバタ気味の2編目でも笑わせた後に一転し、心の動きを読ませる3編目と人情系の4編目を配することにより「ドラマ編」な印象。
なお、開演5分前頃から流れる「いわゆる諸注意」のアナウンス(になるのか、アレは?(笑))もラジオ番組を模したスタイルの凝ったツクリで面白い。
HEIAN MCZ
定時残業Z
ザムザ阿佐谷(東京都)
2017/01/07 (土) ~ 2017/01/09 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/01/08 (日)
価格3,000円
史実の翻案や言い換えが巧みなNEO HEIANのラップバトル。
平安期の歴史や文学などに詳しいとより楽しめるようなツクリだけにちょっと悔しい。予習をして臨むべきであったか。(いや、楽しくなかったということではない:為念)
ところで中盤のラップのない部分に中弛み感が漂ったのはラップの楽しさの反動か? その辺をうまくツマんで上演時間が2時間を切る(1月8日昼の実測上演時間は130分)ようであればもっと良かったのでは?
虚仮威
柿喰う客
本多劇場(東京都)
2016/12/28 (水) ~ 2017/01/09 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/01/07 (土)
座席Q列9番
価格1,000円
2016年のクリスマス・イブ、「妻」のある身である「僕」が深夜に呼び出されて訪れた「彼女」の部屋で聞かされたのは彼女の祖父を中心とした大正時代の東北の村と「ある風習」にまつわる話……な物語。
その異色の取り合わせ(+α)によるレトロなファンタジー感と現代パートの結末(=全体の結末でもある)の切れ味のよさが好み。
ぬるい体はかたくなる
深夜ガタンゴトン
王子小劇場(東京都)
2017/01/05 (木) ~ 2017/01/09 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/01/06 (金)
病院の霊安室に出入りする人たちが織り成す人間ドラマ、森田芳光、相米慎二、大森一樹などの映画に通ずる味わいにシュールな笑いでアクセントを付けた感じ?
登場人物たちがそれぞれ単一指向ではなく多面性を持った人として描かれているので人間臭いと言うか実在感があると言うか……なのが巧い。
しかしペーソスもありつつ基調はユーモラスなんだから客はもっと笑ってもイイんじゃないか? けっこうリアルな舞台美術に気圧されて笑うと不謹慎に感じられてしまうのか?
なお、劇場入口の階段を下りて突き当たった所(受付が設置されていることが多い)の「装飾」にもニヤリ。客席につく前から芝居の世界の入口になっているんだな。
メビウスの劫罰
空想天象儀
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2016/12/09 (金) ~ 2016/12/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/12/09 (金)
価格2,500円
内容・表現方法・タイトルが三位一体となったパラレルワールド系。
パラレルワールドものが好きな身としては「このテがあったか!」だし、パラドックスもあるような気がしつつ巧妙にはぐらかされる(爆)し、広瀬正の「マイナス・ゼロ」に通ずる感覚はあるし、で面白かったぁ♪
ありえたかもしれない発表
H-TOA
gallery to plus(東京都)
2016/10/14 (金) ~ 2016/10/16 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/10/15 (土)
価格2,000円
自由が丘の飲食街の一角、路地に面した建物の地下にある時空を超えるゲートを抜けた先にある他銀河の惑星で観る地球とその惑星の関係は宮澤賢治から長野まゆみへ伸びた線をさらにずっと延ばした先にあるような印象。
客席入場前の世界観告知(「説明」ではない)からもうその気になり、つい前日に観た「コズミック☆フロント」(銀河鉄道の夜を最新の物理学で読み解くヤツ)が脳内で甦るっていう。
楽園王25周年『物語』
楽園王
駅前劇場(東京都)
2016/10/21 (金) ~ 2016/10/23 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/10/21 (金)
出だしの2つの場面の関係性は?と考えさせることで中身に急激に引き込み、しかしそれが巧妙に仕掛けられた罠だと明かされた終盤の「やられたぁ!」感が殆ど快感。
他の部分も含めてホント綺麗に騙されたわ。その構造は落とし穴もある迷宮?みたいな。
オチも鮮やか(そこでも騙された)だし、はった伏線を後から悟らせる手法にも感服。面白かったぁ♪♪♪
煩悶耽溺無色の青年が積み上げる模範と成功、とそれに喰らわす一撃
the pillow talk
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2016/08/05 (金) ~ 2016/08/07 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/08/06 (土)
価格1,800円
ある高校のギター部(活動は軽音部的)の1年を描いた面白うてやがて哀しき共学校版「けいおん!」。
ダメ男の事例を各種取り揃えているので笑ったり呆れたりハラハラしたりする中、時々古傷をかきむしられたりもするのが巧妙。
一方、ダメ男見本市(爆)な男優陣に対して女優陣は複数が態度や見かけで二面性を見せてくれて、そんなところが女優系としての見どころだった。
なお、中心的人物の言動に「お前、自分を棚にあげて何言ってんだよ!」とハラハラするのは歪「夢叶えるとか恥ずかし過ぎる」と二夜連続(笑)
落ちこぼれアイドルだった私が社長になって1年で会社を立て直した10の方法
ガラス玉遊戯
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2016/07/27 (水) ~ 2016/07/31 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/07/27 (水)
価格3,000円
いつもの(?)ビター風味かと思いきや痛快ファンタジーにちょっぴり感動もまぶしてちゃんと落ち着くべきところに落ち着くのはさすが。
物語はワカり易く人物設定/役割分担も的確かつやはりワカり易く、肩肘はらずに観ることができたし、何より面白かった。
憎まれ役的な2人の人物に、ある大好きな有名作品を連想したりも……。
厄病神とジレンマ
ジョナサンズ
【閉館】SPACE 梟門(東京都)
2016/06/01 (水) ~ 2016/06/05 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/06/01 (水)
価格2,500円
説明過多でも説明不足でもなく、観客に想像の余地を与える語り口の匙加減が巧く、マイナス×マイナスがプラスになるような終盤がステキで「幸せとは?」なんてことも考えさせられた。
10歳が僕たちを見ている
第27班
アトリエヘリコプター(東京都)
2016/04/15 (金) ~ 2016/04/24 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/04/16 (土)
価格2,800円
前半に冗長感無きにしも非ずながらある時点以降グッと迫ってくる「等身大の25歳たちの物語」、終盤の若干強引な部分が気にならないでもないが、ギリギリ「芝居の嘘」か?
若い頃の佐藤浩市がリアルタイプのジャイアンを演じたりしているようでもあったな。(笑)
なお、20日に再見。
【勝手にキャッチコピー】あの頃の友だち……あの頃の夢……………25歳たちのスタンド・バイ・ミー
グランメゾン・アカシア
the pillow talk
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2016/05/27 (金) ~ 2016/05/30 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/05/28 (土)
価格1,300円
「〇〇家の7日間戦争」なホームドラマ(あるいはビター風味ホームコメディ)、 修羅場で笑える不思議さ、幕切れの巧みさよ!
ともすればあんな目に遭っていたかも知れない、と身につまされたと言おうか、パラレルワールドにはあんな目に遭っている自分がいるのでは?と心配したと言おうか…(笑)
舞台となるリビングルームがそれなりにきっちり作られているのでそこから扉ごしに続いている他の部屋も想像できるのか?
「(戦場に)行けたら、行くね。」
santacreep
RAFT(東京都)
2016/05/18 (水) ~ 2016/05/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/05/19 (木)
どこかズレたり噛み合わなかったり、なケラ風味の会話をする人々の日常に笑いながらも忍び寄る戦争の影の不気味さを感じ、やがて……な秀作。
音楽に喩えて言えば、楽しい曲調なのにかすかに不穏な通奏低音が流れていて、時々不協和音が鳴る…みたいな?
わたしたちの算数 あるいは 握手を待つカワウソ、とても遠い犬
アムリタ
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2016/03/25 (金) ~ 2016/03/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2016/03/25 (金)
価格2,500円
山の中の小さな村から無限に広がる大宇宙まで、また、過去から未来まで、自在にズーム/移動すりのは「トリップする」感覚?こういうの、好みなんだなぁ。
主宰から伺ったあるキーワードによる先入観もあり、幼い頃「それ」について考えた時に感じた虚無/孤独/虚空を思い出した。
つきまとう教室
深夜ガタンゴトン
王子小劇場(東京都)
2016/01/13 (水) ~ 2016/01/17 (日)公演終了
いつかエンドロールで(再演)【終演しました、ご来場ありがとうございました!】
20歳の国
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2016/06/15 (水) ~ 2016/06/19 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/06/17 (金)
価格3,000円
観ているこちらが照れ臭くなるほどに真っ直ぐな男女5人の青春群像劇。
しかし考えてみると「文化祭大作戦」にしても「保健体育」にしても…いやむしろ20歳の国の作品全ての根幹を成すものを抽出するとこうなるのではないか?
登場人物の少なくとも1人には(←だいたい複数かと)共感したりかつての友人を重ね合わせたりできる人物造形が巧みにしてズルい(笑)。
また、時として劇中の時期が前後するが、観ていてそれに戸惑うことがない演出/演技なのもイイ。
なお、喩えれば初演版は地デジ化前の4:3画面のテレビドラマ、こちらはそれの劇場映画版、みたいな印象。
新宿ゴールデン街劇場とSPACE雑遊(しかも横長)の演技エリアの広さの違いからか?(笑)
脱兎の見上げる、
荒川チョモランマ
高田馬場ラビネスト(東京都)
2016/02/25 (木) ~ 2016/02/29 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/02/25 (木)
価格3,000円
前作とは打って変わったホームコメディ。
長田主宰の御家族がベースとのことで、どこまでが事実でどこまでが虚構か推測しながら観るのも一興?(笑)
また、あー、この人はそんなイメージあるよねぇ♪…なキャスティングも見もの。
懐かしき単館レイトの(ブレイクするかどうか危うい若手女優主演の)青春もの映画っぽい幕切れも鮮やか。