病室
劇団普通
スタジオ空洞(東京都)
2019/09/24 (火) ~ 2019/09/29 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/24 (火) 19:30
価格2,600円
本編を観ている間は確かに病室に見えていたのに、終演後に気付いてみればそこにはベッドに見立てた白木のベンチ4つと丸椅子2~3脚、車椅子2台だけしかないという不思議。
スタジオ空洞は(スタジオだけに?)奥の壁が一面の大鏡で、そこに紗の布がかかっていることでかすかに手前の空間が映っているのが見えて、それに病院の窓をイメージしたのかもしれない。(←開演前から)
そんな中で交わされる会話は時に笑えたりもするが大半は地味だったりヒリヒリするようだったりなリアルなもの。それで2時間以上を引っ張るのがまた不思議だしこの劇団らしさと言えるか。
あ、オジサンのクドい話術(?)もあったっけ。
あと、冒頭のいくつかの台詞を聞き取れないほどの音量にとどめて観客の注意力を一気に引き付けるというテクニックはズルい。(笑)
おへその不在
マチルダアパルトマン
OFF OFFシアター(東京都)
2019/09/04 (水) ~ 2019/09/16 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/06 (金) 15:00
冒頭こそタイトルに関連しているが次第に逸れてゆくオカしさ……(笑)
そうして一見おバカで跳んだ場が積み重ねられてゆくとそれなりにまとまって感じられるのが面白い。
ペンローズの三角形とかエッシャーの「物見の塔」「滝」とかは「部分部分は正しいのに全体を見ると間違っている」のだが、それとは逆に「部分部分はオカしいが、それらがまとまった全体はちゃんとしている」と言えるのではないか?(個人の感想です)
あるいなあることを隠そうと嘘をつき続けているとどこかで破綻するのと逆に、おバカやナンセンスな場が満載でも何かひとつ芯が通っていれば物語は破綻しないのか?みたいな。
本作は知的なバカ(実際は頭が良いのにバカを装う・しっかりした計算に基づいてバカを演ずる)と言えるのではなかろうか?
なお、本編前おまけ短篇の「女剣士ジェロニモ」は録音した日本語台詞に合わせてアテ振りのように演技するが、生台詞は英語というバイリンガル演劇。
しかしあの生英語、アドリブじゃないの?(笑)
こういうムチャ、好きだなぁ♪
『瓶に詰めるから果実』『プラスチックは錆びない』
埋れ木
北池袋 新生館シアター(東京都)
2019/08/28 (水) ~ 2019/09/03 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/03 (火) 17:00
価格2,300円
【プラスチックは錆びない】
事前情報から(勝手に)予期したものと異なるほぼストレートな恋愛もの、「瓶に詰めるから果実」とともに学生時代の夏休みを思い出したりして懐かしかった。
また、ごく自然に「怪獣」なんて単語が出てくるのでSSSS.GRIDMANを想起したが直後に1万人規模の被災者とか言っていたのでシン・ゴジラか……みたいな。(笑)
ってか、この世界観、前回公演「降っただけで雨」と統一されているのか。こういうの、好きだな。
『瓶に詰めるから果実』『プラスチックは錆びない』
埋れ木
北池袋 新生館シアター(東京都)
2019/08/28 (水) ~ 2019/09/03 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/09/03 (火) 13:00
価格2,800円
【瓶に詰めるから果実】
NHK学校放送の道徳ドラマや「中学生日記」の高校生版的味わいの高校演劇部夏合宿物語。
各学年毎の特徴や部活に対する想いなどが巧く描き分けられていてあれこれ納得したが、1点「芝居のウソ」として見過ごせない点があったのはひっかかる。
部長を「夏合宿で」「3年生の中から」選ぶってヘンじゃないか?新年度の始まる4月から夏合宿までの間は部長がいないの?そしてそのタイミングで選ばれた部長って大学受験と両立できるの???
普通は夏合宿で部長を選ぶとしたら2年生の中からであって、その時点で3年生は部活引退、あるいは役職退任ではなかろうか?
もしかして劇中の学校は9月から新年度なの???
夏休みの友たち
ハグハグ共和国
萬劇場(東京都)
2019/08/28 (水) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/08/30 (金) 14:00
座席I列7番
価格3,500円
後半でビター(あるいはハード?)に転じたりもするが、「何か忘れたものを取り戻す」ために小学生時代に林間学校で泊まった山小屋(現在は民宿)を訪れる者たち、という状況がなんともノスタルジック、「オトナ向け児童文学」のような味わいで良かった。
レティクル座の反撃オムニバス~乱れ撃ちの弾~
レティクル座
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2019/09/11 (水) ~ 2019/09/17 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/12 (木) 19:30
【ハートチーム】
コント系のドクロチームに対してこちらは芝居系と好対照で一人芝居・二人芝居に池亀脚本、SFホラーに病院サスペンス(ただしともにナンセンス)と多彩な中、傘の小品が特に好み。
レティクル座の反撃オムニバス~乱れ撃ちの弾~
レティクル座
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2019/09/11 (水) ~ 2019/09/17 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/11 (水) 19:30
価格2,500円
【ドクロチーム】
過去作品に書き下ろし1編を加えた短編集……というよりもむしろコント集。会場が会場だけに「セルフ新宿コントレックス」的な?(笑)
アレやソレを擬人化するか!なものを含むブッ跳んだ発想は池亀三太作品に相通ずるような気もする。
ヘニーデ
AURYN
中野スタジオあくとれ(東京都)
2019/09/12 (木) ~ 2019/09/16 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/13 (金) 14:00
価格2,800円
マジック好きのマスターのもと、マジックの交流会が開かれるバーでの物語。
マジックの劇中への取り込み方・活かし方が巧みでキャスティングに説得力があった。
また、この少し前に観たフロアトポロジー「ツノノコ、ハネノコ、ウロコノコ」同様、ある部分が何かの隠喩ではないか?と深読み(あるいは誤読)をした……ってか、あれと通ずる部分があると思った。これも世相によるものか?
ガリレオの生涯
こゆび侍
新宿眼科画廊(東京都)
2019/09/07 (土) ~ 2019/09/16 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/10 (火) 14:00
価格3,300円
三越劇場のような「ザ・劇場」な会場向けの戯曲(私見)を刈り込み、演出・美術などでよくぞ小劇場風(内容だけでなく会場も含む)に落とし込んだものだ、と感心。
また、劇中での経年を示す演者の年齢表現と機材持ち込み(!)による照明も見事。
「それでも地球は回っている」という決め台詞(笑)以外実はあまり知らなかったガリレオの周囲の人々やあれこれに与えた影響など「そうだったのかぁ」と知ることができたのも収穫。
いわゆる「古典」な戯曲をこんな風に小劇場風にアレンジした公演がもっとあってもイイのではないか?などとも思った。
なお、原題は「ガリレイの生涯」と知ってビックリ。
悪魔を汚せ
鵺的(ぬえてき)
サンモールスタジオ(東京都)
2019/09/05 (木) ~ 2019/09/18 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/05 (木) 19:30
座席F列3番
価格4,800円
初演時はどうなることか、と緊張し固唾を呑んで観ていたと思うが、それで概要を知った上で観たこともあり、冒頭のある人物のヤなヤツっぷりの極端なことに頬が弛み、以降も状況やキャラの極端さや高木さんの「横溝愛」(ある一族を中心とした話で、関係者間の想像を絶する関係が次第に明かされるなんていかにも横溝(笑))、更に他のお客さんの反応にニヤニヤして観る。
また、初演の駅前劇場と較べて間口の狭い会場を「そう使いましたか!」と想わせる舞台美術、演出にも感心。(例えば初演時はあの部屋に加えて上手に中庭的な部分があったと思う)
舞台美術と言えば、奥の間の長押の上に飾られている歴代家長の肖像写真、犬神佐兵衛と夏目漱石(のそっくりさん)がいると思ったのはσ(^-^) だけではあるまい。(笑)
【勝手にキャッチコピー】
いちばんヤなヤツだぁ~れだ?
いちばんクズなのだぁ~れだ?
いちばん悪いのだぁ~れだ?
ツノノコ、ハネノコ、ウロコノコ
フロアトポロジー
オメガ東京(東京都)
2019/09/04 (水) ~ 2019/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/04 (水) 19:00
価格3,800円
ある属性を持つ少女たちが隔離されている山村を女性ジャーナリストが訪れるが……な状況から始まる物語。
実際の事件や歴史上の出来事を想起させるパーツを使いながら皆まで語らぬ余白のある物語につきもしも「ソレ」が日本で起こるとしたら、とか少女たちは何の隠喩か、とか深読み・誤読し放題(笑)。
また、近未来SF風味なところはいかにもフロアトポロジー。
とはいえ物語世界は近未来のように受け取れるが当日パンフレットのあらすじにある架空の元号がSで始まるので「この世界と決して交わることのない平行世界」を宣言しているのかな、と深読み。
また、廃墟っぽさの漂う舞台美術は前回公演と通ずるというか、同じ世界観で妙に実在感があったりも。下手奥の石のブロックで作られた壁の質感たるや……(驚)
贋作 春のめざめ
もぴプロジェクト
ザ・ポケット(東京都)
2019/08/30 (金) ~ 2019/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/02 (月) 19:30
座席L列9番
ドグラ・マグラをベースにした「マークドイエロー」(2017年)ほど原典に近くはないが、事前にWikipediaで「春のめざめ」の「内容」の項を読んでおいたので「ここはアレか」と思うところがあり、観終えて再度Wikipediaに目を通して頷く点が増えた。
また、ある閉鎖集団に新たな人物が加わることで起こる変化、という点でデール・ワッサーマンの戯曲「カッコーの巣の上を」を連想。
ところでタイトルに冠した「贋作」は一般的な「がんさく」という読みでイイのかな?それとも野田リスペクトで「にせさく」?(笑)
とある20
ミート★ボーン
パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)
2019/08/29 (木) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/31 (土) 19:00
価格3,500円
脱サラしたマスターが始めて20年近くなる大衆喫茶、アルバイトの娘と軽妙洒脱な(?)会話をしているところに大量の荷物を持ったワケあり風の客が来て待ち合わせだと言うが……な物語。
まずはマスターとバイト娘の会話で笑わせ、待ち合わせだと言う大荷物の客が現れてからはライトミステリーになり、その客の相手が現れたかに見えた後は不条理系で終わるという多彩な(三段ロケットのような?)構成が良かった。
ユスリカ
東京夜光
小劇場 楽園(東京都)
2019/08/28 (水) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/29 (木) 19:00
価格3,000円
冒頭に「病んでいる」人物が登場するが、話が進むにつれて病んでいる人物が増えてゆき、終盤には「この中で一番マトモなのは誰だろう?」状態に。
そうして描かれる捻じ曲がったある家族の姿、ラストで微かな光が見えるのがせめてもの救い。
装置はダイニングテーブルとそれ用のベンチ的長椅子だが、ともに脚がなく天井からワイヤーで吊るされており、時々揺れるのが気に障るが、それは「不安定に揺れ動く家族の姿」を象徴しているのかも?と気付いて納得。
なお、この日の昼に観た第27班「潜狂」もこれもチラシが黒を基調としたモノトーンなことに当日朝に気付いたが、まさか内容がダウナー系という共通点まであろうとは……(笑)
潜狂
第27班
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2019/08/23 (金) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/29 (木) 14:00
価格3,000円
音楽スタジオに通う5人の人物に関するエピソードが併走し、やがて……な物語。
出だしこそ笑いがあったりするが次第にシリアスに転じ、行き着く先は桟敷童子の悲劇より救いの少ない(いや、ラストのアレはある意味救いか?)「ヤな芝居」(笑)。(←決して本気で嫌なのではない(為念))
そこに至る過程で脳内に浮かんだものは
・いっぱいに水が入ったコップにまだ一滴ずつ落ち続けるしずく
・燃え尽きそうな蝋燭の火を新しい蝋燭に移そうとする状況(「死神」トリビュート(笑))
・スパークが飛んでいるところに徐々に伸びて行くガソリンの筋
・ローリングコインタワー
など
また、かつてよく読んだ五木寛之の音楽を題材とした作品群も思い出す。
満ち足りてしまうと鬼気迫る演奏ができなくなるので担当するミュージシャンを不幸に追い込むプロモーター(マネージャー?)……みたいな話、なかったっけか?
NAGISA 巨乳ハンター/広島死闘編
サムゴーギャットモンテイプ
シアター711(東京都)
2019/08/28 (水) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/28 (水) 19:30
価格3,100円
2年前にRAFTで上演した中編の増補改訂長編版と言えよう。(あるいは一昨年のものは「パイロット版」?)
「チェキ」や「グループライン」が存在する「戦後間もない」「1973年」という設定からして「このドラマはフィクションであり、時代考証その他、かなり大幅にでたらめです」とオープニングで打ち出される「浮浪雲」(1978年)を彷彿とさせて好き♪(爆)
そうしてパイロット版から継承した「そのテの作品のあるあるネタ」パロディ満載で大いにバカをやりまくった上に巨乳は時間を止めたり戻したりの能力を持つなんてナンセンスな設定を終盤で明かしながらも「過去を変えようとしても阻止する力が働く」なんてSFのお約束をちゃんと守っているのは本当にバカでイイ。(笑)
ま、何にも残らないけどね。(更爆)
あと、ドーナツ状の大きい盆の使い方が巧かったなぁ。これは特筆モノ?
No.2
神保町花月
神保町花月(東京都)
2019/08/22 (木) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/27 (火) 19:30
座席H列6番
大学時代に演劇サークルの同期だったレンタとユウジ、社会に出た彼らであったが、それぞれに演劇サークルの新人公演稽古からの来し方を振り返り……な物語。
20歳の国“卒業公演”と銘打たれた2018年4月の「青春超特急」以来に観た竜史作品、これもやはり「青春劇」ではあるが、(主に)大学生の青春であるし、それよりも従来の青春真っ只中の視点で「青春」を描くのではなく社会に出てから「青春」を振り返る視点で描くことで「卒業」前とは一線を画すと言えよう。
新生・20歳の国の公演も待ち遠しい♪
第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』
DULL-COLORED POP
いわき芸術文化交流館アリオス(福島県)
2019/07/06 (土) ~ 2019/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/08/26 (月) 19:00
座席H列6番
【第三部「2011年:語られたがる言葉たち」】
事前に「最初から涙が止まらなかった」との感想を目にしていた通り、震災被災者の「伝えることができなかった言葉」があふれる冒頭部分は衝撃的。
その後も被災者と彼らの声・姿を取材して特集番組を制作しようとするテレビ関係者が織り成す物語は心に響く。
被災者の「その後」だけでなく報道のあり方にも言及するバランス感覚が絶妙。
また、ある場面での片や凛とした、片やドスの利いたお二方の声の対比が効果的で印象に残った。眼福ならぬ「耳福」か?
あと、福島ドキュメンタリー映画「1/10 ~Fukushimaをきいてみる」も思い出した。
第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』
DULL-COLORED POP
いわき芸術文化交流館アリオス(福島県)
2019/07/06 (土) ~ 2019/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/26 (月) 16:00
座席H列6番
【第二部「1986年:メビウスの輪」】
かつての反原発派リーダーが町長となり原発の安全性を訴える……という表面だけとらえると裏切り・寝返りのような印象を受けるが、その本人を主人公として描く物語からは何らかの力(運命とか歴史の流れ、的な?)に抗えずそうせざるを得なかったように受け取れて妙に納得。
また、飼い犬モモ(の霊)が人々の言動を批判することに漱石の「吾輩は猫である」を連想。このパートが何とも良い雰囲気にしていた感じ。
第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』
DULL-COLORED POP
いわき芸術文化交流館アリオス(福島県)
2019/07/06 (土) ~ 2019/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/08/26 (月) 13:00
座席H列6番
【第一部「1961年:夜に昇る太陽」】
「その後」を知っているだけにやきもきする展開や子供役の人形を操る演者の表情の巧みさなど前年の先行上演の時に思ったことに加えて、終盤、東京に戻る孝と見送る家族が、単に一つの家族の姿であるだけでなくこれから先の未来に希望を抱いていた「あの頃の日本」そのもの(の象徴)だな、と気付く。
改めて観ることができて良かった。