「夜行万葉録」辰&未
Jungle Bell Theater
ワーサルシアター(東京都)
2019/11/06 (水) ~ 2019/11/10 (日)公演終了
満足度★★★★
7日に新作の【未】と5年前に神保町の小会場で上演されたシリース第1作の再演である【辰】を続けて観劇。
【未】
1つの縦軸に3つ(コメディ、ホラー、ハートウォーミングと多彩)のエピソードを挟んで全体で1つの物語を構成するスタイルが往年の深夜ドラマ「HeartにS」的でいつもながら巧み。
特に第2話のホラーがいかにもジャパニーズ・ホラーの系譜を踏襲していて特に好み。
【辰】
序盤のギャグパート(笑)以外はサスペンス系にトーンが統一されているのが新作の【未】との違いで、【未】は変化球も交えた投球、こちらは直球勝負。といったところか。
そんな風に対比して楽しめるのが新旧カップリングの面白さだね。
コンドーム0.01
serial number(風琴工房改め)
ザ・スズナリ(東京都)
2019/10/25 (金) ~ 2019/10/31 (木)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/29 (火) 14:00
座席J列8番
価格4,300円
事前情報通りかつての「アンネの日」の男性版と言える極薄コンドーム開発秘話。
「アンネの日」同様、場の合間に登場人物たちのモノローグによる「経験談」が入るが、こちらは微笑ましいものに感じられ(私見)、改めて女性は大変だなぁ、などと思ったり。
なお、アフタートークでの「劇中の開発室メンバーは4人だがモデルである企業では3人」「劇中、社内で呑む場面があるが、近所にコンビニなどもないため現実でも同様」などの話も面白かった。
元カレ殺人事件
劇団癖者
小劇場B1(東京都)
2019/11/07 (木) ~ 2019/11/10 (日)公演終了
鑑賞日2019/11/09 (土) 14:30
価格3,800円
カレに振られた主人公がそのカレの元カノ達を集めて復讐を謀り……な今様「黒い十人の女」コメディ編。
冒頭、その言動に「メンドクサイ女だな」と思った次の瞬間、カレ役が「めんどくせぇな」と言うほど個性が強調された主人公を筆頭に元カノたちもそれぞれキャラが立っていて、キャラ創りとキャスティングで半分は成功したようなものではないか?(笑)
そんな面々が果たす復讐は意外と穏やかであったが……からのブラックなオチも上手かった。
IMG_antigone_copycopycopycopy.ply (あるいは暴力による無意味な無のための 新しい音楽のための暴力)
お布団
アトリエ春風舎(東京都)
2019/10/31 (木) ~ 2019/11/04 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/11/01 (金) 19:30
価格2,800円
今までに観た2~3本は原典に忠実な(ふりをして後半は大胆に改変する)ものであったが、本作は原典の根幹となる部分をベースに構築した感覚か。
そうして創られたものは今の日本のアレやコレ、近代史のソレなども連想させ、さらにM.C.エッシャーの「上昇と下降」「プリント・ギャラリー」が(漠然と)脳内に浮かぶ。
それ以外にも様々なものが脳裏を過ぎり、情報過多で1回では把握しきれないほど。
できればもう1回か2回観たかったな。(陰謀かよ!(笑))
EXTEND 0 エクステンドゼロ
Performance team PADMA
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2019/11/01 (金) ~ 2019/11/04 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/11/01 (金) 14:00
座席3列7番
価格4,200円
かつてこの会場で上演したストレートプレイ寄りの「クインテット」の後日譚として始まりながらも次第に本来の肉体パフォーマンスに転ずる構成。
小規模の会場だけに「ここでそれを演りますか!?」な大技あり、逆にこのサイズだからこそできる演出(?)ありで、まぁ上手く会場を活かすこと♪
モザンビークス熱情!
ハイバネカナタ
シアター711(東京都)
2019/10/31 (木) ~ 2019/11/04 (月)公演終了
満足度★★
鑑賞日2019/10/31 (木)
価格3,500円
ヒーローものの動画を創ってネット公開しているグループが彼らを本物のヒーローと誤解した外国人ファンによってその母国での騒動解決のために連れて来られるが……な「ギャラクシー・クエスト」を想起させるスケールが大きいようでそうでもなかったり(爆)なストーリーの狙うところはワカらないでもないが、いかんせん上演時間が長すぎる。
観ながら「こんなネタも入れるから2時間超になるんだよ、もっと整理すればイイのに」と思っていたが、終わってみれば事前発表を10分も上回る2時間25分もの長尺、しかも開演が5分押していたし……(呆)
ま、「メタ系のネタは本筋に絡むならともかく、単に笑いを取るためだけに入れると楽屋落ちになりがち」という発見をしたのでよしとしよう。
野外劇 吾輩は猫である
東京芸術劇場
東京芸術劇場 劇場前広場(東京都)
2019/10/19 (土) ~ 2019/10/29 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/26 (土) 19:30
価格500円
原作は人間たちのあれこれを猫の視点・主観で描いているが、こちらはそれを俯瞰的に描いた感覚か。
そこに1つの役を数人で、それも交互ではなく同時に舞台上にいて演じるというまるで倉多江美の「スーパー民主主義」のような手法を使ったり(その理由は終盤で明かされる)舞台上に2人のトロンボーン奏者を常駐させての生演奏・生歌が多用されたりという「お祭りのような(私見)」演出もあり、存分に楽しんだ。
一旦は売り止めで諦めかけたが追加席で確保できてよかったぁ♪
ナイゲン 暴力団版
日本のラジオ
王子小劇場(東京都)
2019/10/23 (水) ~ 2019/10/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/25 (金)
もちろん「上からの押し付けをどこが担当するか」という単純な置き換えではなく、人物の性格などに元ネタの面影(?)があり(所属団体名も元ネタのもじり)、元ネタに近い展開や台詞はあるもののほぼオリジナルな物語で、巧みな換骨奪胎と言えよう。
その関係性は「七人の侍」と「荒野の7人」のような近距離ではなく、観ながら1999年版と2008年版の「櫻の園」か?と思ったがむしろ「十二人の怒れる男」と「ナイゲン」のようなものか、と気付く。
物語自体の面白さ、オリジナルのナイゲンを知っていればこその笑いに加えて、こんなことも考えながら観ていたので楽しいったらありゃあしない♪
あと、みんな「その筋」にいそうでありつつ、それぞれタイプの異なるこんなキャストを集めたというのもかなりの高得点。
この顔ぶれを集めた時点ですでに半分成功していたしていたと言っても過言ではないのでは?(笑)
mark(X)infinity:まーくえっくすいんふぃにてぃ
劇団鋼鉄村松
コフレリオ 新宿シアター(東京都)
2019/10/23 (水) ~ 2019/10/27 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/24 (木) 14:00
価格3,000円
黄金のコメディフェスティバルで優勝した中編を長編にグレードアップ。
初演版に新たな傍系エピソードを加えることで中心部分を裏打ちすると言うか平面から立体化したと言うかな感じで、恋愛関連の部分は前作「息つぎ……」と確かに通ずる。
また、SFではお馴染みのスケールが壮大な平行世界をごく身近なレベルの話と無理なく結び付けた「チープでゴージャス」な感覚がホントに不思議かつ巧み。
一言で表現すれば「精度が高く鑑賞に堪えうるオトナのごっこ遊び」といったところか。
長方形のフレームを複数使う美術も動かし方や配置で様々な表現ができて見事。
Monocles
ざものくるず
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2019/10/09 (水) ~ 2019/10/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/11 (金) 19:00
価格3,500円
ベテラン小説家を慕い、居候したり通ったりする小説家のタマゴ(+α)たちの人間模様。
変人だらけだし、会話に(牽制とか嫉妬とかからか?)トゲがあったりなさまは「変人揃いの人間弾薬庫」あるいは「伏魔殿」?(笑)
一見普通のやり取りなのにその裏にあれこれ意味が含まれる丁々発止の会話というのは当人たちにはしんどかろうが、客観的に観る分には愉快と言うか楽しいと言うかで、そんなあれこれを経た終盤、各人が多少は進歩した(=オトナになった)ように見えるも「なんだ、コイツ変わってないじゃん!(笑)」なのが複数いるのも上手い。
ま、こんな面々が身近にいたらたまらないだろうけれども……(笑)
調和と服毒
Ammo
上野ストアハウス(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/22 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/21 (月) 14:00
価格3,500円
2017年9月の「光、さえも」と同様「美とは何か?」についての論争が主題だがあちらが現代(近代?)を舞台にしていたのに対してこちらは16世紀というのがミソで、キリスト教が「でしゃばって」くるのが大きな違い。
9月に観たこゆび侍「ガリレオの生涯」と同様に「異端(審問)」という言葉が出てくることに時代性を感じた。
美に関する論争に部外者(パトロンとはいえ美に関して言えば部外者であろう)があれこれ口を出すことに「笑の大学」やロデオ★座★ヘヴンの「日本演劇総理大臣賞」も想起したりも。
『花と爆弾~恋と革命の伝説~』
劇団匂組
OFF OFFシアター(東京都)
2019/10/23 (水) ~ 2019/10/27 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/23 (水) 19:00
価格4,000円
明治のジャーナリスト、文筆家、婦人運動家・社会主義運動家である菅野スガの半生。
テーブルと4脚の丸椅子、それに黒い戸板(?)1枚というシンプルな装置と各場面の「時と場所」の示し方、そして場に応じて語り手(複数)をも使った立板に水の如き流暢な語り口が何とも見事。
なので音楽面とある小道具でちょっとひっかかったモノもあるが(そこも含めて)愉しく観ることができて満足。
なお、主人公たちの「運動」は「国民に主権を!」的な内容と言えよう。
漢字も正しく読めず原稿を使い回す史上最悪の主席宰相とその一派が国民から主権を奪う改憲を目論んでいる今、タイムリーな演目かも、とも思った。
息を止めるピノキオ
filamentz
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2019/10/18 (金) ~ 2019/10/23 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/20 (日) 18:00
価格3,800円
ピノキオをモチーフとした「ロボットものSF」。
2013年5月の劇団銀石による初演時に「RUR」を連想した関係でロボットとはいえいわゆる機械人形ではなく人造人間のようにとらえて観ていたら「ネジや油」などモロに機械とする台詞が出てきてギャフン。(笑)
そしてそんなテクノロジーにもかかわらずゼペットの家(研究所?)が深い森の中というメルヘンチックな設定がステキ。「SF風お伽噺」といった雰囲気?
奇妙な旅の旅のしおり、この世の果て
ウテン結構
d-倉庫(東京都)
2019/10/09 (水) ~ 2019/10/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/10 (木) 19:35
価格3,500円
複数の層構造で構成される劇団内幕系。夢の中と言うか胡蝶之夢的と言うか「この場はどの層?どっちの層?」と惑うのがまた楽しからずや。
まじめな隣人
BASEプロデュース
BAR BASE(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/24 (木)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/22 (火) 15:00
価格3,000円
鬼の居ぬ間ににおける望月作品は近代日本の過酷な労働などを描いたものだが、本作は近未来のとある状況下を3人の人物によって語るもので、上演時間が短いこともあり一見オーソドックスで派手さ(?)はない。
がしかし、物語の背景となる設定が(身近(?)な上にないとは言い切れないだけに)ゾッとする。
政府与党(と言うより主席宰相?)が目論んでいる「アレ」が実現するとこのようなことになる、という警鐘と受け取った。
私家版 孤島の鬼
K'srutan produce
新中野ワニズホール ( Waniz Hall )(東京都)
2019/10/09 (水) ~ 2019/10/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/11 (金) 14:00
価格3,200円
原作を読んだのは中学生の頃なのでWikipediaのあらすじで復習(予習?)してもピンと来なかったが、観始めたら原作を忠実かつ簡潔に舞台化したようでアイテム(?)や語調がモロに乱歩調であったこともあり記憶が一気に蘇る。(原作と語り手を変えたそうだが、さすがにそこまでは思い出せず)
また、通路を使った演出や衣装の工夫によるシャム双生児の表現も巧み。
ナイゲン
果報プロデュース
王子小劇場(東京都)
2019/10/16 (水) ~ 2019/10/21 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/16 (水)
【総論】
既知の登場人物でも新たなアプローチであったり、何度も観ていながら改めて気付いたことがあったり、「十二人の怒れる男」を観ている時と同様よく知っているからこその「来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ……キタ~~~っっ!!!」があったり、もちろん元々好きな「議長の覚醒」「監査の葛藤」「3148の2度にわたるイジり」も「これこれ、これだよ」と堪能。
【各論】
今回の監査は声が低めだし、序盤では冷徹と言うか感情がないと言うかな感じで、それが「あの採決」で感情を表に出し、さらにクライマックスでは「ああなる」ので、「笑の大学」の向坂(検閲する男)に通ずる気がした。
また、終わり近くでの議長の台詞が「十二人の怒れる男」の「あの台詞」の変形だとやっと気付く。この2点はこの前週に観たロデオ★座★ヘヴン「日本演劇総理大臣賞」のおかげかも。
夏にfeblaboナイゲンを観た時は前年の前夜祭事件を描いた「ナイゲン・-1」と3148が監査になった「ナイゲン・+1」思い付いたが、しばらく文化祭が開催されず久々に再開する年のナイゲン(←2008年版「櫻の園」的な)もありうるのでは?とも思った。
3年生ですら文化祭を経験していなくてああだこうだ右往左往、とか、どさまわり的な生徒(OBである兄から楽しさを聞いていた?)が「文化祭はやらなくちゃいけないんです!」と強引なほどに主張するとか。
feblaboナイゲンと言えばこの夏のハワイ庵、本作の道祖神、この2つは配役を知って意外な気がしたが、どちらも「今まではなかった」その役になっていての可能性と言うか奥深さと言うか、そういったものを感じた。「スタンダードな作品」ってのはそういうモンだよね。
ツイッターで流れてくる感想を見ると、この果報ナイゲンがナイゲンとの出逢いとなった方が少なからずいらっしゃるようで、ナイゲンの裾野が広がったことがファンとして嬉しい。山本プロデューサー(山P?(笑))の狙いがバッチリだね。
『パンパンじゃもの、花じゃもの』
劇団天然ポリエステル
小劇場B1(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/19 (土) 16:00
価格3,300円
諸事情鑑み髪編のみ観劇。
元華族のお嬢様が闇市でのピンチから救ってくれた街娼グループの仲間に入れてもらい……な物語。
全体の雰囲気は昭和30年代の日活映画で、気っ風の良い姐さんがいたり裏切りがあったりするのは女性版任侠もの、登場人物や傍系エピソードを増やし悲劇的にすれば椿組の花園神社野外劇、両家の子女が新しい生き方を見つけるのは風と共に去りぬだし、落語の人情噺的なところもあるか?と、いろんな要素を見出しつつ楽しむ。
ちなみに匕首、拳銃、ヤクザの親分などが登場することから序盤で悲劇の香りを嗅ぎ取ったのは椿組からの連想であり、結果は杞憂に終わって胸を撫で下ろす。(笑)
レネゲイズ
Nana Produce
赤坂RED/THEATER(東京都)
2019/10/11 (金) ~ 2019/10/15 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/15 (火) 14:00
座席I列12番
価格6,000円
高木式現代宗教論にして「現代の神話」?(笑)
鵺的における高木作品は内部のエネルギー(?)が表皮を突き破って爆ぜるのに対して本作ではそれが内部に沸々としたまま留まっているような。
静かなのに大きなナニカが蠢いている感覚はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のタッチに近いか。
「先生」がああなるまでを描いた「エピソード0」と、後日譚な「その後のレネゲイズ」があって不思議ではない……というか、観た人それぞれにそれがありそう。
『アイラブユー』『日本演劇総理大臣賞』
ロデオ★座★ヘヴン
王子小劇場(東京都)
2019/10/03 (木) ~ 2019/10/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/09 (水) 19:00
【日本演劇総理大臣賞】
昭和中期、ある劇団の稽古場風景と初の演劇総理大臣賞の選考会議の様子を交互に見せ……な物語。
二つの流れにはそれぞれ原典となる戯曲があるだけでなく、選考過程で語られる戯曲にも元ネタがあり、それらを知っている身には頬が弛みっ放しで執筆中の柳井さんも楽しんでいらしたのではないか?と推察。
しかしそれらを使って今の世の中への警鐘も鳴らしているので立派なオリジナルと言えよう。(某戯曲ネタ)
劇中の最終場の稽古を見る刑事の表情が(前の場を受けて)また良かった。