じべ。の観てきた!クチコミ一覧

3401-3420件 / 4325件中
甲賀の七忍

甲賀の七忍

劇団三年物語

ザ・ポケット(東京都)

2009/10/24 (土) ~ 2009/11/03 (火)公演終了

満足度★★★★

一人も死なず、殺めず
服部半蔵の対甲賀策により追い詰められ、甲賀の里を出ることにした一行と彼らを狙う伊賀者及び甲賀の下忍、な構図の物語。
もともと『七人の侍』に代表される「メンバーが集まりまとまってゆく」タイプの展開が好きな上に程よい笑いもまぶしたストーリーとあっちゃあたまりませんわな。しかも「初めて観るトコに弱い」σ(^-^) のことですからなおさら…(爆)
そこにラブコメの要素まで混ぜ込んで(「マクロス」かっっ!!!)、追われる側と追う側が刀を合わせた途端に一目惚れだとか、ベタ気味の表現も楽しい。
また、分身の術での分身たちは当然姿カタチの違う役者たちが演ずるワケで、しかしそれを逆手にとり別人格として、コクることに消極的な二番目に他の二人が発破をかける、なんてアイデアには脱帽。
さらに終盤で一行が掲げる「一人も死なず、殺めず」というコンセプトも◎。

- JUN AI CODE -

- JUN AI CODE -

ATTENTION, PLEASE!

王子小劇場(東京都)

2009/10/22 (木) ~ 2009/10/27 (火)公演終了

満足度★★★

改訂版での再演を熱望
交通事故により全退行性記憶喪失(だったっけ?)となった男と画廊でゴーギャンの「我々はどこから来たのか、我々は何か、我々はどこへ行くのか」のレプリカを200万円で買うことになる男の話を同時併行的に描くのは悪くないが、その2つの関連がなかなかわからないのがちょっともどかしく、まとまりに欠ける感無きにしも非ず。
とはいえ、かつては家庭もかえりみないビジネスあるいは利益至上主義だった男が、言葉さえ失った状態から知識をつけてゆくのにしたがって無垢な気持ち・考え方となり感ずる疑問を通して利益重視の現代社会に対して警鐘を鳴らし批判する狙いやよし。ちょっとディッケンズの「クリスマス・キャロル」を連想したりもして。
そこに文明社会からタヒチへと活動拠点を移したゴーギャンの生き方も重ね合わせているのが巧い。
さらに、癌で亡くなる患者や記憶喪失の男の妻の出産など「生命賛歌」的なモノも加味されて、このテに弱いんだよなぁ…。
また、門奈理沙・美玲・五宝(漢字表記は推定)など、絵画や画家の名を人物名に使っているのにニヤリ。(ちなみに記憶喪失の男と妻の名は「純」と「愛」)
ただ、前述のまとまりに欠ける感に加えて病院内(病室を含む)で携帯を使うナースがちょっと引っかかったので、いつか改訂版での再演を熱望!

 カラクリヌード

カラクリヌード

演劇カンパニー”東京の人”

シアターブラッツ(東京都)

2009/10/23 (金) ~ 2009/10/27 (火)公演終了

満足度★★★

惑星ピスタチオを連想
若干粗削りだったり未整理だったりする部分はあるも、SFメルヒェン的なストーリーは好みだし、その世界観や表現方法、群読の巧さなどで惑星ピスタチオを連想。(パワーマイムはなかったけれど(笑)
冒頭でクライマックスの一部を見せておくので、終盤でそのシーンが再現された、というよりはそのシーンに辿り着いた時にロクスケがずっと走り続けていたように感じられるというシカケにも感心。

ナノ クライシス ポルノグラフィティ

ナノ クライシス ポルノグラフィティ

演劇集団 砂地

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2009/10/21 (水) ~ 2009/10/26 (月)公演終了

満足度★★★★★

芝居って総合芸術なんですねぇ
「なるほどロンドだわ」な構造で、不条理でワケのワカラン恋愛やセックスを浮き彫りにする戯曲そのものの面白さに加えて、翻訳臭を全く感じさせない演出(翻案?)、黒い舞台と白い布を使っていろんなシーンを見せる装置、場転時に見せる本編に関する短い映像、臨場感あふれるS.E.などが相俟って時の経つのを忘れる。いやぁ、芝居って総合芸術なんですねぇ、などと今更ながらに再認識。

似而非~え せ~

似而非~え せ~

劇団伊達組

荻窪メガバックスシアター(東京都)

2009/10/21 (水) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★

内容は○だが他で☆2つ減点
描いた「さくら」と亡くなった子供の人形を作るよう依頼された腕の立つ人形師の話・「人形師」という中篇2本でチラシの惹句は「ちょいとふしぎな 二つの江戸ばなし」。
民間伝承や江戸の巷間話に材をとったストーリー、古典文学っぽい雰囲気も漂わせて「世にも奇妙な物語・江戸時代編」みたいな…。
旗揚げ公演『闇に咲く華 GOEMON'S SECRET』の娯楽アクション時代劇とはガラリとオモムキを変えての「サテライト公演」、イイんじゃないっすか?
ただ「さくら」の終わり方、賭けに勝った場合に立たせるのは1日限りだったのでは?
あの後にヒロインが手痛いしっぺ返しを食らうことを暗示しているととるべきなのか? あるいは「生身の人間の方が人ならざるものよりもよっぽどズルくてコワい」というオチ?

なお、☆については受付開始時に予約者票が整理できていなかったことと開演が10分押したことについて一言も触れなかったことで2つ減点

『RING~DESTINY~ 』

『RING~DESTINY~ 』

FEVER DRAGON NEO

笹塚ファクトリー(東京都)

2009/10/22 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★

昭和の熱血スポ根少年マンガかっっ!!!(笑)
時々挟まれる登場人物のモノローグのベタさ加減を筆頭とした「昭和の熱血スポ根少年マンガ(梶原一騎原作とかね)かっっ!!!」なノリは確信犯?(笑)
「巨人の星」「あしたのジョー」「タイガーマスク」(いずれもアニメではなく原作)などで育った身としてはそれが懐かしいことといったら!(爆)
8人の選手(うち2人は現役レスラーでもある)はたたきあげのベテランはもちろん、アマレス出身の天才肌、韓国の軍隊出身、アイドル系、負け続きから力をつけてきた者、柔術系、キックボクシング系などそれぞれ個性が描き分けられて見事。
また、彼女たちの団体の社長やトレーナーなど男優陣は主にコメディリリーフというキャスティングも○。
内容はプロレス界では「あ~、あるある」や「ありそー!」なエピソードを絡めつつ年末の大会(の開幕)までを描いており、かつて同じ団体に所蔵していた先輩と後輩の関係などでは『ロッキー』なども連想。
なかなか面白かったわさ。

死すべき母の石

死すべき母の石

劇団桃唄309

テアトルBONBON(東京都)

2009/10/15 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★

舞台上に音響ブース(!)
久々に実家に帰ったら母が殺されていたフリーターや、寸借など小規模の詐欺を行うグループなど、複数の話をザッピング感覚で見せるスタイルで、黒を基調とした舞台と直線的かつ抽象的な装置、場転時に流れるリズムを強調した音楽、時として「逆回転再生」もあるダンスっぽい雑踏シーン、それに一番大きな特色であるところの舞台上に設置された音響ブース(!)などからクラブDJイベントのような雰囲気が全体を包んでいるのが斬新。
また、使用曲の「レフト・アローン」や「はいからはくち」にもツボを突かれる。

ペンパル狂時代

ペンパル狂時代

B-amiru

OFF OFFシアター(東京都)

2009/10/20 (火) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★

コント集+中篇コメディ
まずオープニングに登場するのが「さそり」と「おろち」だし、オープニング・クレジットに「short drama live」と表示されるし、ということで基本的にはショートコント集のオモムキ。
もうホントに「しょーもねー!(注・貶しているのではない、ウケているのである)」笑い満載で小難しい理屈とは無縁、ひたすら「あは、あは、あはは」と笑っていればイイという。
そんなコント集を経ての中篇コメディ「ペンパル教」で、それまでに出たネタ(の一部)を拾いつつ、憧れのおねーさんに近付きたくて正体を隠してそのペンパルとなり次第にキモチがエスカレートして行く女子中学生ナツメを描いて締めくくるのが鮮やか。教祖とその信者がナツメの幻想だったというオチも◎。

Equal

Equal

進戯団 夢命クラシックス

萬劇場(東京都)

2009/10/21 (水) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★

反戦系のテーマを娯楽性も持たせながら
中国の「南方大ソウ国」と「東方キン国」の戦のさなか、そこには戦を終結させようと考えている者もいて…という史劇系ストーリー。
単純な勧善懲悪ではなく、どちらが正しいという二元論では語れない国同士の戦いというスケールの大きな物語を、対立する両陣営に反戦グループも絡ませた3つの勢力をうまく使いながら全体の流れを制御するストーリーテリングが巧み。
そんな大きな動きの中に友人や仲間を想う気持ちもシッカリ織り込んでいるのも上手い。
初見であった『花音 -canon-』(07年6月)や『ブロッサム セレナーデ ~よしのと魔王~』(08年4月)もそうだったように、反戦系のテーマを娯楽性も持たせながら語るのが本当に巧い。
また、南方の四神獣(だったっけ?)と呼ばれることになる反戦グループの4人の衣装の基調色が朱・黒・白・青(緑)という小ワザにツボを突かれる。
もちろん、それぞれ異なったオリジナルの武器を使うことにも、その武器デザインも含めて感心。

渡辺美弥子一人芝居:ある女4

渡辺美弥子一人芝居:ある女4

電動夏子安置システム

サンモールスタジオ(東京都)

2009/10/22 (木) ~ 2009/10/22 (木)公演終了

満足度★★★★

友近の芸をもっと芝居寄りにした感覚
10分程度の短編を3編。バーのママ、合コンに臨む女性、店の常連の図々しい老女をそれぞれコミカルにデフォルメしつつ描いてオチまで付けるのは友近の芸をもっと芝居寄りにした感覚で大変楽しい。

深情さびつく回転儀

深情さびつく回転儀

電動夏子安置システム

サンモールスタジオ(東京都)

2009/10/16 (金) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★

コミカルなタッチとSF的世界の融合
基本的にはコメディながら、前回公演『Perfoemen IV ~Inferno~』とは味わいが異なり、四次元系SFのテイストやルーレットに関連した法則・ルールも加えて、さながらアタマの体操…どころかアタマの中距離走みたいな。(笑)
このコミカルなタッチとSF的世界(およびそれに付随した心地好い理屈っぽさ)の融合というのは奇しくも前々日に観た『純真回路』と通ずるものアリ。こういうの、好きだなぁ。
その一方で、触ると外見と中身が入れ替わってしまう(ここで入れ替わる方々の演じ分けと言うかなりきりぶりと言うか、それもまた見事)だの、近づくと互いに引き寄せあうだの、他者の心の声を口に出してしまうだの、理屈っぽさとは無縁のひたすら笑わせるためだけの設定もあり、この取り合わせが何ともオカしい。
結末は事前情報通り6種類あり、どう考えてもあと5回も観に来ることはできないので、上演台本を購入。
思った通り途中までのルーレットの出目は台本指定ながら、終盤で分岐点が2箇所あり(ここでのルーレットはガチとのこと)最初の分岐点で3つに分かれてからさらにそれぞれ2つに分かれるシカケになっていて、σ(^-^) の観た回は分岐Bルートから結末4にたどり着くパターンでありました。

VOYAGER ボイジャー

VOYAGER ボイジャー

無頼組合

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2009/10/16 (金) ~ 2009/10/19 (月)公演終了

満足度★★★★

ダイナミックな構図がイイ
「無頼組合<番外編>無頼十番勝負 四ノ巻」と銘打たれており、ハードボイルド系の本公演とは違った味の芝居を見せるシリーズ、今回は3話オムニバス…と言うか、同じ時間の中で3つの異なったストーリーが同時進行する(しかし互いにリンクするワケではない)スタイル。
この3つの取り合わせが巧く、動的な女性ラリードライバーの話と静的な喫茶店内の客とマスターの会話劇を併行して描き、さらにその遥か上空の月では宇宙飛行士が救援(あるいは死)を待っているというダイナミックな構図がイイ。
また、地上で展開される2つで、特殊な血液を時間内に届けるために一刻を争うドライバーと、かつて別れた息子との永い年月のギャップを埋めようとする実の父親を描くことで「速度」と「長さ」という「時」の2つの性質をクローズアップしているのも上手い。
さらに、喫茶店の親子だけでなくドライバー側の物語にも血液を盗んだ青年やそれを追う女性刑事などの親子関係を絡めていて○。
そんなこんなで千穐楽スペシャルで役者紹介もあったカーテンコールを含めて130分のチョイ長の上演時間も体感的には長く感じず。

モロトフカクテル【公演終了、次回公演は来年4月@楽園】

モロトフカクテル【公演終了、次回公演は来年4月@楽園】

タカハ劇団

座・高円寺1(東京都)

2009/10/15 (木) ~ 2009/10/18 (日)公演終了

満足度★★★★

後半にはどっぷり引き込まれる
学生自治会が使っている部室からの退去を命じられたことから始まる現代の学園紛争と、部室に残されていたかつての学生運動華やかなりし頃の闘士のノートにまつわる物語。
学生運動もかつての政治的闘争から学費値上げ反対なんてものを経て今やほとんど「コップの中の嵐」的なものになってしまったのね、な目線で観ていながら、ノートの主であり、現在の闘争もひそかに支持している「モロトフカクテル」の存在が次第に大きくなってくる後半にはどっぷり引き込まれているという…。
かつての闘争の中心であった2人の人物も登場させ、時として現在とクロスさせたり共同作業をさせたりする演劇的手法も○。
そうしてさらにあさま山荘事件との関連をも明かし、実は以前は逃げ出していた「モロトフカクテル」も立ち上がる結末は骨太で、1年ちょっと前に観た(初見)『ボクコネ』とはガラリと異なり、どちらかと言えばこちらの方が好きかな。
しかし最後の曲は「この広い野原いっぱい」(漠然とエヴァを連想)よりも「友よ」の方が合っていたのではあるまいか?
また、お目当ての広澤草は「寝ている部分も含めて」(本人談)ほぼ出ずっぱりで、その意味でも満足度高し。(おまけに3列目の中央という非常に観やすい席だったし)

純真回路

純真回路

OZab

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2009/10/14 (水) ~ 2009/10/18 (日)公演終了

満足度★★★★

心地好い理屈っぽさが独特
心理学実験の被験者として男女4人が30日間の共同生活を送った最終日(プロローグは初日・初対面の様子)に2人の侵入者(?)が加わったことで広がる波紋を描いたもので、何故か学生服(やけに似合っている(笑))やセーラー服(ほとんどお約束?(爆))それに髷(!)など、被験者4人のうち3人が妙な扮装をしていることからも推測できたように基本的にはコメディ。
が、後半で記憶の操作・移殖(というより転送?)などP.K.ディック的なSF要素が加わることで心地好い理屈っぽさ(笑)が加わって独特の感覚になるのが面白い。
また、開演を告げる曲が電気グルーヴの「モノノケダンス」だったことにもツボを突かれる。

蛮幽鬼(ばんゆうき)

蛮幽鬼(ばんゆうき)

松竹

新橋演舞場(東京都)

2009/09/30 (水) ~ 2009/10/27 (火)公演終了

満足度★★★★

どうにか合格
最近の新感線系作品は、苦手なタイプだったりσ(^-^) とは相性の良くない脚本家の作品だったりと2連敗で「仏の顔も三度か?」と思って臨んだら、さすがに今回はどうにか合格。しかし第1幕だけで通常の芝居1本分(110分)ってなげーよ!
とはいえ、サジの本当の狙いは何なのかという疑問を抱かせて前半を切りあげ、それも含めて第1幕で仕込んでおいた伏線を次々に開花させて予想外の結末まで突っ走る第2幕(75分=カーテンコール含む)はワクワクドキドキな上に観応えたっぷり。

ネタバレBOX

ちなみに気に入ったキャラは惜春。事態の大半が彼の緻密に練られた策略・計算によるものというのが何ともステキ。
σ(^-^) も事前に計画をジックリ立てるタイプなので共感…ってかむしろ羨望かもなぁ。
また、「殺す時でも笑みを絶やさない」サジ役に堺雅人を起用したのは上手いっちゅうか何ちゅうか、ハマり過ぎでズルいくらい…(笑)
しかし、もともと笑顔の人なのに、さらに目尻にメイクでカラスの足跡まで書いているとは念の入ったこと…。
その堺と早乙女太一・上川隆也による三つ巴戦の殺陣も見事。様式美的な美しさとスピード感が同居して、これだけで料金の2~3割分(もっとか?)のモトはとったな、的な?(笑)
あと、クライマックスで流れる「一滴(ひとしずく)の愛」の、「人はどうして争う悲劇を繰り返すのか?」のような意味の歌詞にも感銘を受ける。(これで料金の1~2割かも…)
ぼんやり劇場 特選会・秋

ぼんやり劇場 特選会・秋

KUSARE芸道R

シアターブラッツ(東京都)

2009/10/15 (木) ~ 2009/10/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

堪能いたしましたぁ
大塚ジェルスホール時代に上演していた「ぼんやり劇場」シリーズの旧作2編&書き下ろし新作をメインに、コマーシャルサーカス1999で上演した短編などを加えたプログラム、過去作品は観ていたとはいえかなり記憶が薄れていたので「あーそうだった!」的な。
また、新作パートはお約束満載でベタなのがいかにもここ流で、しかしそれが魅力? あそこまでベタなのに演技臭さがないと言おうか自然体で芝居をしているような感じなのはホントにスゴい。ボケとツッコミのタイミングも完璧だし…。
さらに、新作はシリーズ第2作に出てきたキャラとエピソードを拾って展開させてちゃんと続編になっているんだもの。
いやぁ、堪能いたしましたぁ。

地図から消された島

地図から消された島

amipro

アドリブ小劇場(東京都)

2009/10/14 (水) ~ 2009/10/18 (日)公演終了

満足度★★★

結論から言えば一長一短
現代の若者が訪れた広島の大久野島で落ちていたガスマスクをかぶったら1944年にタイムスリップしてしまい…というもので、結論から言えば一長一短。
シリアスな題材ではありながらとっつきやすくしようという配慮からコメディリリーフ的なキャラを登場させるのは悪くないものの、『ダブリンの鐘つきカビ人間』(G2プロデュース、02,05年)を想起させる「思ったことと反対のことしか言えない男」や男色気味の将校など、今ひとつ設定を活かしきれず中途半端になってしまったのが惜しいというかもったいないというか…。
その一方、あまり知られていない、第二次大戦中に毒ガス製造工場であった広島の大久野島をクローズアップするばかりでなくチラリとはいえ731部隊にも言及し、人と人との殺し合いを「戦時下の狂気」と他人事で片付けずに、現在でも飛行機でビルに突っ込んだり無差別殺人をしたりする愚かしさは変わらないので人間そのものが変わらなければ平和は訪れない、とする主張は◎。

徹底的に手足

徹底的に手足

売込隊ビーム

「劇」小劇場(東京都)

2009/10/15 (木) ~ 2009/10/18 (日)公演終了

満足度★★★

イイ意味で力が抜けている感じ
ここを観るのは04年7月の『13のバチルス』以来5年ぶり2度目ながら、どちらかと言えば今回の方が好み。
『…バチルス』は、前半はともかく、後半が捻りすぎ・考えすぎのようだったが、本作はイイ意味で力が抜けている感じ?
特に冒頭のワカるようで実はワケのわからないオカヤマの喩えを筆頭に、会話全体にトボけた味わいがあって可笑しい。
また、整備しているのではなく足場のネジを締め直しているだけじゃん、とか、どう見ても航空機の下部あるいは尾部ではなくモビルスーツ系の脚だろ、とか、確信犯的にツッコミどころを作っているようなフシがあり、そんなところも好み。
そういえばチラシに写っている脚部らしきものだって膝の関節の向きが変だし。
そういうことなら次回公演にも足を運んでみようか…

くるくるとしとしっと

くるくるとしとしっと

秦組

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/10/13 (火) ~ 2009/10/18 (日)公演終了

満足度★★★★

命の重さ・生命の尊さ
死刑になりたいという理由から無差別殺傷事件を起こした男によって兄を意識不明の重態にされた女性研修医を中心にした物語。
プロローグは余命の少ない恋人のために不老不死の薬を手に入れたが「不老」と「不死」それぞれを分けてのんでしまい…というまた別のハナシ(しかし後半でリンクしてくる)だったり、そちらの主人公が胡蝶の夢よろしくどちらが夢か迷ったりもしてチョイとトリッキーでもあるので戸惑わされもするが全体を通して謳われるのは命の重さ・生命の尊さ。
特に終盤で研修医が述べる生命についての主張にはホロリ。その前の肝臓をめぐるやりとりでもすでにホロ、くらいまで行っていたワケなのだけれども。
また、前述の部分も含めて凶悪犯の生命の重さ、死刑の是非などについても考えさせられる。(死刑になりたくて無差別殺人を犯した者を死刑にするのは被告の思う壺、などという「矛盾」的な理屈も含めて…)
で、ストーリーの中心となる研修医を演じた工藤里紗は前年の秦組旗揚げ公演『Pain』に続いて好演。築山万有美、滝佳保子なんてベテランと互角に渡り合う(張り合う?)、な感じで。
TVドラマだと端役程度なのであまり気付かれないけれど、実はかなりイイ女優になってきていて、イイなぁ。今後ますますの舞台での活躍を期待。

噺劇と落語の会

噺劇と落語の会

北沢タウンホール

北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)

2009/10/13 (火) ~ 2009/10/14 (水)公演終了

満足度★★★

おぉ、進歩している!
噺劇は元ネタが最後のオチでストンと決まるタイプのものではないことと上手く脚色されていた(「転宅」の終盤で唄に乗せて演技を見せるなぞ見事)こととで、前回のようになんだか潔くないとかキレが良くないとかの不満もなく、「おぉ、進歩している!」みたいな…。
また、小宮孝泰は明大の落研出身なことに加えて最近落語を語る機会が増えてきたということで、本職の噺家顔負けの達者な語り口な上に噺劇も2本とも出演とほぼ出ずっぱり。そうそう、噺のマクラで明大時代からテアトル・エコーを経てコント赤信号に至るまでを語ったのも◎。

このページのQRコードです。

拡大