カラフルな猫
はぶ談戯
高円寺バーボンタコス(東京都)
2009/12/07 (月) ~ 2009/12/14 (月)公演終了
満足度★★★★★
臨場感ありまくり
OLから転身した女性がオーナーであるカフェの2階を舞台にオーナーの元カレである居候やバイトの女性、オーナーの妹、オーナーに想いを寄せる出入りの酒屋などを描いた「日常系」。
それでなくとも会話自体が自然でリアリティがあるのに「リアルタイム」ならぬ「リアルプレイス」の芝居なこともあって臨場感ありまくり。
各登場人物も若干誇張されているものの「あ、そういう人っている(あるいは「いそうだ」)よね」でキャラがたっているのでなおさら。
で、先日の鈴舟の『ベイビー・フェイス』が昭和のホームドラマな味わいだったのに対してこちらは平成のホームドラマ(平成であってもトレンディドラマではない(笑))っぽい雰囲気。作家の世代が如実に表れているのかしら?
ってなことで、基本的には笑いながら、時には共感し、時には羨望(?)しての85分、楽しかったなぁ。
狂鬼~桜舞う春の夕暮れ~転生~
黒虹produce
劇場HOPE(東京都)
2009/12/10 (木) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
芝居の本編は星3つだが…
芝居自体は玉石混交と言おうか一長一短と言おうか「良いところもあるが残念な部分も散見される」(←「良くも悪くもない」よりはずっとイイ)出来ながら「遅れているお客様がいらっしゃいますので」という呪文を(それも定刻を10分近く過ぎてから)唱えさえすれば1人か2人の迷惑客のために本来の開演時刻に席についていた60~70人の真っ当な客を20分くらいは待たせても構わないと勘違いをしている無神経なスタッフに星を3つ減点して差し引きで星無し。
『プルーフ/証明(Repirse)』
DULL-COLORED POP
SPACE EDGE(東京都)
2009/12/12 (土) ~ 2009/12/12 (土)公演終了
満足度★★★★
演技がクローズアップされて濃密
舞台となる家をしっかり建てこんだコロブチカ版とは対照的にテーブルと3脚の椅子のみという可能な限りそぎ落とした装置で演ずるのは映画で言えば全編「寄りの画」、演技がクローズアップされて濃密な印象。
そんなこともあり全体がよりシリアスな中、第2幕第1場が回想シーンということもあってかユーモラスなのは上手い気分転換と言おうかアクセントと言おうか…。
しかし、第1幕の幕切れは「先がすぐ知りたい!」系なのに、その続きを見せる前にこの場を置いてじらすのはズルくね?(笑)
その第2幕第1場は7年くらい前の回想で、キャサリンとハロルドがそれぞれまだ若く(というよりコドモに?)見えるのは見事。
他に、1幕にしても2幕にしても照明がストンと落ちる(実際には若干のズレおあったが)幕切れも潔いと言おうか切れ味が鋭いと言おうか、鮮やか。
海獣
劇団桟敷童子
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2009/12/05 (土) ~ 2009/12/16 (水)公演終了
満足度★★★
ヤマ場が分散気味
開国前後の横浜村のはずれ、いずれ羅紗緬となる少女たちと、彼女たちをしばらく預かった漁師たちの物語。
羅紗緬哀歌を中心に、開国という時代の流れに押し潰されそうになりながらも生き抜いて行く庶民の力強さ・良い意味でのしぶとさ(特に女性たち?)も描いて骨太な印象なのはここの持ち味。
で、普通ならばクライマックスになりそうな少女たちが死にかける場面の後にまだ複数の波乱があるのが従来と異なるところか?(そこをクライマックスにすると尺が短くなってしまうしなぁ…(笑))
また、その少女たちを介抱する場面にドラマ「赤ひげ」(72~73年)で長屋の井戸に向かって帰って来いと叫ぶ住民たちの図を思い出したりも。
さらに、それまでに登場していた浪人風の男たちが実は尊皇攘夷派で…なんて展開は予想外で「そう来たか」的な。
ただ、その構造によってヤマ場が分散して重点が定まらない、な感なきにしも非ず。
いつものレベルと比べるとそんな不満もあるものの、絶対評価では悪くないかな。
ちなみに椅子はベニサンピットのものを再利用したようで、そう言えば客席のツクリや全体的な印象もベニサン風だったりして。
冬のジャンゴフェスタ2009
劇団S.W.A.T!
「劇」小劇場(東京都)
2009/12/09 (水) ~ 2009/12/27 (日)公演終了
満足度★★★★
スタンダードな原点(I)
魂と引き換えに契約者の望みを叶える悪魔、ジャン・デビール・ジャンゴ・ファンバステンが結果的に契約者を助けてしまう三部作の1作目、05年12月の初演も観ていたが、記憶が風化していたので再見できて嬉しい。
で、こうして改めて観ると、ジャンゴとそのしもべ、それにジャンゴのライバルである悪魔ジャン・デビール・シンゴ・セバスチャン以外の登場人物は3人だけと非常にシンプルながらシッカリ作られており、基本に忠実と言おうか「スタンダードな原点」という感じ。
また、大ピンチに壁を叩き続けることによってサタンならぬ隣人・佐藤を召喚(笑)するという思わぬ解決法が愉快だし、『続・荒野の用心棒』(66年)の主題歌である「DJANGO」ほかの替え歌を、カラオケではなく原曲を流しながら声量で上回らせるなんて文字通りの力ワザもイイ。
さらに、悪魔法第1127条の扱いもちょっとズルい気はするがやっぱり上手いんだよなぁ。
コーポ桜木101号室
リブレセン 劇団離風霊船
テアトルBONBON(東京都)
2009/12/09 (水) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
満足度★★★★
時事的ネタに「もう一つの要素」も
月額25,000円・敷金礼金なしという格安のワンルームマンションへの入居日、101号室で15人もの男女が鉢合わせするが全員正規の契約書を持っているし、不動産屋は海外に行っており連絡つかず…という状況から始まる物語。
一言で表現すれば「一足早いクリスマス・プレゼント、なファンタジック・コメディ」、お得意(?)の時事的ネタも盛り込みつつ、さらに「もう一つの要素」も加えた100分、楽しかったぁ。
実は集まった面々はそれぞれ悩みを持っており、現代社会の病巣オンパレード(笑)、な感じ。
普段は1つの事件や事故などをモチーフにしているのが、今回は「みんなまとめて面倒見たヨ」なのね、と思っていたら、後半で床下収納庫の秘密が明らかになって以降はタイムスリップものの様相を呈して一粒で二度オイシイ、的な。
さらに、最初にシカケを知った者が先に旅立つとその人物が見つけたシカケ自体の記憶も残ったメンバーの記憶からなくなるのではないか、というパラドックス的要素もあるし、各々が現在の境遇に至るキッカケとなった時点よりも前に旅立つ中、予め残る決意をした者以外に土壇場で「現在」に残ることを選択する者がいるし、と終盤までヤマがあるのは画竜点睛を打つと言おうか、尻尾までアンコの詰まった鯛焼きと言おうか、さすがベテラン、みたいな。
ヤマト版 仮名手本忠臣蔵
笑劇ヤマト魂
ザ・ポケット(東京都)
2009/12/09 (水) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
満足度★★★
「仮名手本」なのに大石や吉良な理由
まずは舞台の三方はもちろん客席両サイドまで壁をクジラ幕風の幅広縦縞で覆い、そのモノトーンとは対照的にステージ上は画家のアトリエのように様々な色が飛び散っているという舞台美術に目をひかれる。
で、始まってみればいきなり討ち入りの夜、というクライマックスの一部を冒頭で提示しておくパターンに導かれた本編、「仮名手本忠臣蔵」なのに、登場人物が大石だったり吉良だったりなのは何故?と訝っていたが、観て納得。
松の廊下での刃傷沙汰をネタにして実録ものと銘打った芝居を3日で公演中止にされた二代目竹田出雲がその続編として創作した「仮名手本忠臣蔵」の脚本を大石家に持ち込み、それに誘発された主税の主導で討ち入り決行という逆転の発想がユニーク。
また、松の廊下事件の真相もいささかムチャではあれ、フィクションとしてはそういうのもアリかな、と。
あと、人間語を解する(だけでなく一部の人間とは会話さえできる)猫は、『ネコロジカル…』を観たばかりなのでその偶然にビックリ。なんだか今年はカブりネタが多いぞ。
ただ、複数の役者が露骨に噛んでいたのは残念。「初日だから」というのは言い訳になりませんぜ。(「公開ゲネだから」の場合は微妙か?)
最高傑作 -Magnum Opus-
劇団銀石
ギャラリーLE DECO(東京都)
2009/12/08 (火) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
チャペックが底流にある Neo Genesis
一言で表現すれば「カレル・チャペックが底流にある Neo Genesis」、人工的に作られた「最高傑作」が人間よりも多数を占めるようになった未来を描いた連作的短篇。(ってか、各パートは交響曲などにおける「楽章」のようなものか?)
詩的でリズミカルかつ時には言葉遊びも含む台詞は耳当たりが良く、某書物と某戯曲を知っているとより楽しめる、な感じ。
また、その台詞回しや衣裳から(内容的にはシリアスな部分もありつつ)、どことなくメルヒェンチックで「やわらかい」印象も受ける。
台詞と言えば「最高傑作」たちが交わす会話は創作言語とのことで(←アフタートーク時の質問で得た回答)、その言語らしさが見事なことは ZIPANGU Stage の『航海綺譚』(05年)と双璧を成す。
で、「最高傑作」は所謂「ロボット」(=機械仕掛けの自動人形)ではない、なんてあたりでチャペックが「R.U.R.」に登場させた「ロボット」を思い出していたら「ロッサムという人が作った云々」という台詞が出てきて Bingo!みたいな…(笑)
それまでとガラリと変わったトーンで、かつプロローグと対を成すエピローグ(客電もあげる(!))で締めくくるのもイイ感じだし、最後の最後で各国語の「ありがとう」「さよなら」を(通訳付きで)羅列するのも好印象。
あと、本編でバベルの塔もモチーフとして使っているのだが、スタイリッシュなオープニング映像の中にピーテル・ブリューゲルの「バベルの塔」がもっと延びているカット(←今、書きながらフト思いついたのは「パーフェクト・ジオングみたいな」という形容…(笑))があったのにもツボを突かれる。
太陽と下着の見える町(庭劇団ペニノ)
フェスティバル/トーキョー実行委員会
にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)
2009/12/05 (土) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
満足度★★★
音楽に喩えれば現代音楽
テラスと会議室らしきスペースが上に、ベッドが1~3つしつらえられた部屋的なもの(うち1つは牢獄のようにも見える)と廊下が下にある2フロア(2階建てかあるいはそれ以上の建物の上部2フロア)で展開される複数のシーンをザッピング感覚で見せるスタイル。
展開されるシーンも様々かつ断片的だったりもして、中には特にストーリーになっていないものもあり、「何かの伏線か?」「どこかで他とリンクするのか?」と思っていると肩透かしを喰らう、な感じ。
中心となる(と言うか演じられる時間の長い)パートも個々の演技自体は具体的なのに、それによって表現しようとするものが抽象的、という印象で、音楽に喩えればジョン・ケージなどの現代音楽(ミュージック・コンクレートまでは行かない)ってところか?
そんなところから、これもまた「考えるのではなく感じる」タイプなのだが、あまり共感(あるいは共鳴)できずちょっと苦手。
「パンティ」に関するトリビアは興味深かったけれど…(爆)
ネコロジカル・ショートカット・ネコロジカル
猫の会
d-倉庫(東京都)
2009/12/02 (水) ~ 2009/12/07 (月)公演終了
満足度★★★★
ほっこりとしたオトナの童話
一言で表現すれば「オトナの童話」。人間の言葉を解する(が、会話ができるワケではない)猫やその他の動物たちも絡めて描く「悪人」など登場しない「ほっこり」とした優しい世界、ある時点でそれまで断片的に提示されてきた「教授の初恋」「大火の時に助けられた少年」「現世の存在ではなさそうな「神様」」などの情報たちがドミノ倒しの駒の如く次々に関連付いて全体像が見えてくるのが快感。
また、「神様」にしても「ししゃも」にしても登場した瞬間に猫だとわかるし、カエルやエリマキトカゲ(さすがにこの2種は劇中で紹介されるまでそれであるとはわからなかった(笑))も擬人化しているのが愉快。
さらに彼らの衣裳も「なるほど言われてみればそんな感じ」程度にとどめていて、そのセンスも◎。
カタルシス夢十夜
ムシラセ
王子小劇場(東京都)
2009/12/03 (木) ~ 2009/12/07 (月)公演終了
満足度★★★★
不条理感・不思議感・脈絡の無さを表現
学生時代にワンゲル部だった男達、そのうち1人は当時紅一点でマドンナ的存在だった女性と結婚しており…という同じ設定(と世界観?)での短篇連作(続きものではない)、漱石の「夢十夜」同様各編とも夢の中のあの不条理感・不思議感・脈絡の無さなどをうまく表現しており、第1話のラストのゾクッとする感覚、それが登場人物の見ていた夢ということで始まる第2話で姉と妹が入れ替わる(ちょっと違うが:ロベール・トマの『罠』も連想)フシギさなどが印象的。
また、途中に出てきた「百年」「竹の花」というキーワードだけでもニヤリとしたくらいなので、あのラストにはほとんど狂喜乱舞。いやぁ、鮮やかだったなぁ。キレイに入ったパンチでノックアウトされたような感じ?
見えざるモノの生き残り
イキウメ
紀伊國屋ホール(東京都)
2009/12/02 (水) ~ 2009/12/07 (月)公演終了
満足度★★★★
前川流の「幸福論」を堪能
新人を迎え、研修としてその仕事についてレクチャーする先輩「家守」たちとその新人の過去…という物語は「こんなのイキウメじゃない!」とか言って…。いや、「従来の」というコトバが抜けましたね。(笑)
得体の知れない漠然とした不安感が通奏低音のように流れる身近なSF、な世界とはガラリとオモムキを変えた第二形態あるいは version 2.0 のイキウメといったところ?
適度なユーモアはかつての短篇集の中にもあったし、終盤での緻密な構成…ちょっと違うか…新人家守の過去には実は先輩家守も絡んでいたというネタ(?)はやっぱりイキウメっぽいし、耳打ちした内容を舞台で再現して終わるツクリも巧みで、満足満足。
ってなことで前川流の「幸福論」を堪能。
なお、一般的な「座敷童子」像ではなく、オッサン(笑)を含んだオトナたちである(だから本人たちも「家守」と言うんだが)ことにヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン 天使の詩』(87年)も思い出す。
生の瑕疵
集団as if~
萬劇場(東京都)
2009/12/03 (木) ~ 2009/12/06 (日)公演終了
満足度★★★★
笑いとシリアスさの見事な同居
「ネガティブコメディ」と銘打ち、コメディとシリアスを両立させるのが作風だそうで、そのバランスが絶妙…と言うより「際どい」の方が的確?
一歩間違うと水と油の如く分離してしまいそうな笑いとシリアスさを、回想と現在に分けたということもあり見事に同居させているんだな、これが。
主人公夫妻を子供の頃からの友人が久しぶりに訪れるプロローグに導かれ、高校の映画同好会時代の回想が中心となる前半はコミカル。設定が設定だけに名台詞ほかの映画ネタも楽しい。また、途中でアンケート用紙に添付された紙片に観客が書き込んだ3項目を使ったインプロパートがあり、これまた大笑いモノで、ランダムに選んだものが時としてピタリとハマることもあって「芝居の神様って本当にいるんじゃないか?」とも…(笑)
一方、主人公がその友人によってもたらされた薬物に溺れて行く後半はシリアス。その悲劇的な結末はまるで公的機関が作った「薬物依存撲滅キャンペーン映画」(笑) の如く薬物のオソロシさを訴え、安易なハッピーエンドにしない分、さらにそれが強調される、みたいな。
が、決して後味は悪くないし、重くもないのが不思議。普通、こういう構成だと前半との大きな落差によってビターあるいはヘヴィーな味がより強調されそうなのに、何でだろう?(感じ方には個人差があります)
天使の涙・・・
projectDREAMER
シアター711(東京都)
2009/12/03 (木) ~ 2009/12/16 (水)公演終了
満足度★★★
「東京バンドワゴン」に通ずるニオイ
アラハン(=around 半世紀)の骨董屋主人とその親類から成る趣味の「フォークグループ」(男女3人組)が老人ホーム慰問クリスマスLIVEのリハーサルをしている、なオープニングに導かれる物語。
そういう設定なので劇中に歌が入るのが自然と言おうか当然と言おうか、唐突な感などあろうハズもなく…。
そこに骨董屋を訪ねて来た娘や主人の息子などもからませたストーリーは従来の IOH とはちょっと異なる系統ながら時にユーモラスでわかりやすく、これはこれでアリな感じで、ちょうど第2弾を読んでいる最中の小路幸也の「東京バンドワゴン」シリーズと共通するニオイも感ずる。
で、急に態度の変わるキャラが複数いるのは「キレやすい最近の若者」的な表現か?(笑)
【AchiTION!Q&A】
シネマ系スパイスコメディAchiTION!
しもきた空間リバティ(東京都)
2009/12/04 (金) ~ 2009/12/06 (日)公演終了
満足度★★★★
謎を残して終わるのがニクい
『5/5』『WS』に続く短編オムニバスの第3弾、今回は各編とも劇中で疑問が提示されて終盤でその解答が明かされるスタイル。
であると同時に、最後の1編でそれまでのエピソードをまとめるという、往年の深夜ドラマ「ハートにS」(それまでのエピソード何篇かの主要登場人物が別の形で顔をあわせるのはマンスリースペシャル的か)型の構造。こういうの、好きなんだよなぁ。
さらに、各エピソードは基本的にコミカルな中、ラスト1編のみ「その中に1人嘘つきがいるので、その嘘つきを射殺した者が解放される」(ありゃ、劇団Bの『R』みたいだ)というサスペンス系で、しかも一応解決はするものの、捨て台詞の如く謎を残して終わるのがニクい。
月いづる邦
La Compagnie An
座・高円寺1(東京都)
2009/12/03 (木) ~ 2009/12/07 (月)公演終了
満足度★★★★
「考えるのではなく感じる」のが心地好い
かつて Egg-Man とアゴラで観た『祈りのあとに ~RESONANCES~』と同様、音楽とジェストダンスが対等にぶつかり合う…というよりも融合して創り上げるパフォーマンス、今回は使うステージのみならず、語られるテーマも大幅スケールアップ、な感じ。
母の想い、母への想いからヒト(個人・人類とも)の来し方、行く末など、哲学的とも言える内容だけに抽象的な表現がよく似合い、当日パンフに概要説明はあるものの受け取り方・解釈は観た側それぞれで千差万別かも。
その「考えるのではなく感じる」のが何とも心地好く、M.C.エッシャーの「メタモルフォーゼ」のようにシームレスで次々と変容して行く流れにひたすら身を任せる…。
また、広い壁面をスクリーンのように使い、床ギリギリに設置した照明で演者の影を投影するのも時として幻想のように見えて効果的。
さらに秘話満載のポスト・パフォーマンス・トーク(「面白くない」とか「下手」とかを具体的な団体名を出して語らなくても…(笑)>マキノ、巻上両氏)も、出てくるネタがほとんどわかるだけに楽しかったなぁ。
相沢さん家の結婚式
波天南人
テアトルBONBON(東京都)
2009/12/02 (水) ~ 2009/12/06 (日)公演終了
満足度★★★★
三段構えのツクリが巧み
早くに妻を亡くし、男手一つで育てた三姉妹の三女の挙式当日、長女は離れて一人暮らし、次女は既に嫁ぎ、ということもあってか父親は親族控室で「早すぎないか?」「延期できないか?」と往生際の悪いことを言っており…という状況から始まるハートウォーミングコメディ。
実際の控室を覗き見しているようにリアルな前半、複数の隠し事がいつ発覚するかハラハラさせるとともに笑わせる中盤、家族のつながり、あたたかさが強調される終盤と三段構えのツクリが巧みで、その内容も含めてテッパンな仕上がり。
ただ、ガンコな父親像がちょっと古風あるいは類型的かも? いや、やはり娘が嫁ぐ日の父親の気持ちは今も昔も変わらない普遍的なものなのか?
それにしても、三女の妊娠を式が終わるまで隠そうとしてのとっさのウソ、という王道パターン、大好きなのでもちろんウェルカムではあるのだが、ここ4日間で3度目なのでいずれこの3本の設定を混同してしまうかも…(爆)
抗菌バスターZ3 チェンジ
ACファクトリー
シアターサンモール(東京都)
2009/12/03 (木) ~ 2009/12/06 (日)公演終了
満足度★★★★
何でもやってちょうだい!
病人の体内に「ミクロの決死圏」よろしくミクロ化された隊員が入り、擬人化された(笑)菌や病原体と戦うというアクションコメディシリーズの第3弾、ライバル会社のバスターを登場させた続編から2年、今回は薬効成分という「物質」を擬人化するなんて「反則ワザ」を使用。
がしかし、これが面白いので、もう「何でもやってちょうだい!」状態?(笑)
「CATS」のキャラのようなTイガーBーム(塗り薬じゃんかさ!)、「見るからに」な青・黄・銀の風邪薬や銭湯でお馴染みの頭痛薬、チープなGンダム(爆)のような胃腸薬など、欽ちゃんの仮装大賞(←劇中台詞にもあった)もどきの「薬品」たちの衣裳のアイデアも愉快。
いや、衣裳だけでなく某頭痛薬の「半分は優しさでできている」なネタも上手かったっけ。ネタと言えばアニメネタも今回は多くて、それにもウケる。
他にストロボとS.E.を使った「なんちゃってバク転」とかエフェドリンの幻想シーンなんかは舞台表現の面白さを引き出しており、前日に西口で観た芝居の演出家に爪の垢を煎じて呑ませたいくらい…(爆)
で、一件落着の後にはシリーズ第4作の予告もあり……実現するのはまた2年経ってからか。
トナカイブルース
GENKI Produce
笹塚ファクトリー(東京都)
2009/12/01 (火) ~ 2009/12/06 (日)公演終了
満足度★★★★
菅野臣太朗マジック?
経営難で身売りがほぼ確実な幼稚園、大切な交渉の日に園長が姿をくらまし、その長男も逃げ腰なところに三女のカレが結婚の許可を得ようと訪れるわ、10年前に家出した次男は帰って来るわ、あげくの果ては行方をくらましたサンタを探しにトナカイまで(!)来るわ…というコメディ。
サンタクロースが実在し、しかも人間に姿を変えたトナカイが探しに来るなどというトンデモ系(笑)な設定ながら、ヘンにリアリティがある…とまではいかないにしても、芝居のウソとして十分に納得できてしまうのは菅野臣太朗マジックか?
また、三女のカレに関するその場しのぎや勘違いはコメディの王道だし、情けなかった長男は終幕近くにはちゃんと成長(?)しているだけでなく、ずっと隠れたり顔を隠したりだった次男をキチンと見抜いているという家族の絆まで描いているし、手堅いと言うかソツ無いと言うか、やっぱり巧い。
奇々怪々
カートエンターテイメント
SPACE107(東京都)
2009/12/02 (水) ~ 2009/12/06 (日)公演終了
満足度★★
出だしの2つの汚点が惜しい
安永8年、酒呑童子の首を埋めたとされる首塚もある京都付近の山中、深夜に雷雨を避けるために廃屋に1人また1人と集まる旅人たち。そこには妖しい老婆が出没するなど怪異現象が起こり…という物語。
まず冒頭の殺陣でS.E.に頼りすぎ、というか音量が大きすぎ(もちろん使用頻度もクドいほど)で興醒め。音を大きくすれば迫力が出るものと勘違いしていのではないか?と思ってしまうくらい。(本当に勘違いしていたりして…(爆))
続いての廃屋場面(以降ここがメインとなる)の序盤は盆を回しすぎ。中と外の様子を交互に見せたいらしく、回す回す…。(染之助・染太郎かよ)
映画のカット割りを意識したのかもしれないが、それとは違って盆を回すのには時間がかかることを忘れてないか?みたいな。
それも見せる必要性が薄い(外の様子は声だけでも十分な)場面にも回すし、そこ以外の見せることが必要なシーンであっても盆を使わない舞台表現なりの別の方法があるだろうに…。
1度だけとはいえ、止めずに360°回したりもしたし(ここなんてホントに外の様子は声だけで足りるのに何で回すの?状態)、結局アタマだけで5~6回転させたんじゃないか?そんなに盆を回したかったのか?(呆)
そんなワケで1年少々前の「クライマックスシーンの大半を映像上映で表現する」という舞台表現の可能性を自ら放棄あるいは否定した愚行には及ばないにせよ少なくともσ(^-^) の好みではない演出をまた見せられるのか?と不安が増大したものの、そこ以降はノーマルで一安心。
旅人の中には冒頭(メインパートの2年前)の強盗事件で失明しながらも仇討ちすべく賊を探している武士などもいて、怪異現象(ホラーではない)を彩りとして使ったサスペンスの様相。
強盗事件の真相が二転三転しながら明かされる後半と、もののけも力を貸して(!)の捕縛劇、さらにその後にまだあるドンデン返しや大岡裁き的な結末など、そんなところがよくできているだけに、本当に出だしの2つの汚点(暴言?)が惜しい。