モンキー・チョップ・ブルックナー!!
アマヤドリ
シアタートラム(東京都)
2009/12/15 (火) ~ 2009/12/23 (水)公演終了
満足度★★★
ヤられたぁ!
「監禁」と「3人」と「あるスポーツ」に関する物語。
比較的静かに始まってだんだん物語が加速するというか広がるというか大きくなり、やがて沈静化して終わるのは線香花火みたいだな、と思いながら観ていたが、出発点に戻るラストから、じゃあジェットコースターか?みたいな。(笑)
がしかし、同じ状況ながら立場が変わっているというのは誰しもどちらの立場にもなり得るというコトか。時間もののSFにもあるパターンだが、ここでそれを使いますか、と言うか「ヤられたぁ!」な感じが心地好い。
また、クミコを3人がかり(?)で演じていたのはそういうことか、なんて深読みもしたりして。
FUTURE
ブラジル
駅前劇場(東京都)
2009/12/16 (水) ~ 2009/12/21 (月)公演終了
満足度★★★★
騙される快感に酔う
舞台上、左右対称に(しかし90°くらいの角度をもって)位置する安アパートの2つの部屋で繰り広げられる振り込め詐欺をする女と1億円を拾った男のストーリー、コメディタッチで始まりながらも次第に「ヤバめ」な空気も漂い、2つのストーリーの関連は何か?という疑問の回答は最後に明かされるというスタイル。
最初は同じアパートの隣か向かい合わせの部屋での同時期のことかと思わせておきながら終盤で時期が異なることを示唆し、さらにそのスパンがかなり大きいことを明かす終わり方が鮮やか。
そこまでに観客にミスリードさせるあるいは観客をミスリードする要素をさり気なく織り込んで煙に巻くのがお見事。
σ(^-^) なんざそれぞれの部屋の 男女が元夫婦であるとすっかり騙されており…ってか、おナカマは少なからずいることでしょう。
とはいえ、時期がそんなにも違うのに両方に登場する人物が同じ顔で出て来るのは反則気味では?(笑)
終盤の「オバサン」発言だってその時は「へ?」で、その後真相が明かされてやっと「それで “オバサン” だったのね」とわかるくらいで。
とかなんとか言いつつも騙される快感と言おうか、最後に「あぁ、そうだったのかぁ!」と気付く快感と言おうか、そういったものを満喫。
FUNNY ALIEN’S SHOW
YANKEE STADIUM 20XX
アイピット目白(東京都)
2009/12/17 (木) ~ 2009/12/17 (木)公演終了
満足度★★★★
「宇宙語」fだけなのにステージにひきつける
前年のクリスマス公演『チョコとおかしな宇宙人』に登場した宇宙人たちによるパフォーマンス&連作コント(?)集。
まず超技巧的なジャグリングを見せてツカミはオッケー、その後は得意の(笑)客いじり(しかも拡張スペシャルバージョンだ)や観客全員参加型のパフォーマンスが中心の前半と、休憩(10分)を挟んでパピプペポ星の日常(通勤電車や子供たち)をオムニバスコント風に見せる後という構成も良くて時間の経つのがアッと言う間。
ま、休憩込みで130分という上演時間が通常の公演と比べるとかなり短め(!)だったこともあるが…(笑)
それにしてもステージに上げる客の選択が的確。イヤがらないどころかちゃんと個性を発揮できるような人物を選んでいるのはさすが。
また、上演中の日本語はカーテンコールの最後の一言だけであとはすべて「宇宙語」(笑)なのに、観客をずっとステージにひきつけているのもスゴい。
エンジェル・イヤーズ・ストーリー
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2009/11/28 (土) ~ 2009/12/25 (金)公演終了
満足度★★★★
なるほど「天使の耳」
事故により「ある能力」が身についてしまった主人公の数日間を描いた物語、ここ何年かオリジナルの新作が不調(私見)なばかりでなく、原作ものですら時々首をかしげてしまうような出来だったりする中、新作として久々のクリーンヒット、な感じ。
その「身についてしまった」能力はなるほど「天使の耳」、ヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン 天使の詩』に登場する天使の如く他人の心の声が聞こえてしまうというもの。(逆『嵐になるまで…』とも言えるか?)
そんな設定のもと、仕事が忙しくて家族にあまり目をむけることができなかった(あるいは「仕事に逃げていた」)父親(とその変容)を語り、終盤では『嵐…』や『さよならノーチラス号』のように犯罪も絡めてサスペンス要素も盛り込んだストーリー、語り口が巧みなことも加わってひきつけられる。
「心の声」を他の役を(も?)演じている別の役者が白いものを身につけて語るという演出がナイス。最初こそ「なんでもう1人いるんだ?」と戸惑ったが、すぐにわかって心の中で拍手喝采。
そればかりでなく、メインとなる部分はすべてが終わった後に主人公が部下たちに語る内容というスタイルで、劇中の「現在」と「回想」のクロスのさせ方も○。
さらに、本棚の本をあんな風に作ってラストシーン(だけ)で効果をあげるというのもゼイタク。
イマーゴメモリ
DMF
SPACE107(東京都)
2009/12/16 (水) ~ 2009/12/20 (日)公演終了
満足度★★★
達成感的なモノもあって満足
ダブルのカーテンコール込みで155分の長さは感じないが、勧善懲悪やそれぞれに理のある2つの勢力の対立のような単純な図式ではなく、しかも複数の「キャラの立場」が二転三転するので気を抜いて観ていると何が何だかわからなくなりそうだし、ラーバルメモリで他者の記憶を探るシーンもそれがどのくらい前のことなのか明示されないので自分でアタリをつけなくてはならないのがちょっと面倒臭い…(爆)
が、すべて夢落ち?風なエピローグ(プロローグと対になっている)も含めて三部作完結ということで達成感的なモノもあって満足。
また、浦えりかがさり気なくプロレスの足技など使っていたのがツボ。
冬のジャンゴフェスタ2009
劇団S.W.A.T!
「劇」小劇場(東京都)
2009/12/09 (水) ~ 2009/12/27 (日)公演終了
満足度★★★★
新たな趣向を惜しげもなく投入(II)
パート2は1作目と同工異曲に仕上げておき新機軸を打ち出すのは3作目から…というのが一般的(←私見)な中、本作の場合は2作目なのにもかかわらず新たな趣向を惜しげもなく投入して見事、基本的にはコメディながら終盤でホロリとさせ、さらにジャンゴの決断はどちらなのかハラハラさせるのが巧い。
…なんぞと思っていたら、07年12月の初演時は「続編としてはフツーながら、単品としては上出来」などと書いており…。(はにゃ?)
思うに初演時は1作目を観てから2年も経って記憶が薄れていたのに対して今回は中4日という非常に短いブランクで1作目をハッキリ覚えている状態で観たので印象も変わったのではないかと。
カラクリ雪之JOE変化
劇団ヘロヘロQカムパニー
前進座劇場(東京都)
2009/12/13 (日) ~ 2009/12/19 (土)公演終了
満足度★★★★
今回は満足満足ぅ
剣術指南役の謀反により父を殺され自らもピンチに陥ったところをお抱えのカラクリ師が作った人形・雪之丞に救われたりん姫は、万一に備えて侍女として仕えていたくノ一・楓らとともに隣国を目指して山を抜けようとするが、山賊に襲われ…な物語。
雪之丞を演じた小西克幸のいかにもからくり人形な動きが何とも良くて、それによってリアリティとまでは言わないけれど(笑)、説得力的なモノ(爆)が与えられている、みたいな。
また、一見天守閣内部風の装置ではありながら、舞台下手後方の壁と左右(とちょっとだけ上方)の額縁部分に城の外観や青空・夕空などの映像を投射することによって山中や城内の牢なども表現するのがナイスアイデア。
しかもスチルではなく動画で、時に歪めたりネガポジを反転させたり、さらには終盤で燃え盛る城とかも(照明との相乗効果で)見せてしまうという…。
内容的にも、コメディ風味の娯楽アクション時代劇としてよくできており、山賊たちの素性とか、終盤で立ち上がる部分、それにヘロQ版『T2』なカラクリ人形が感情を持ちラスボスと共に城に残るあたりなんざ巧いやね。
前回は期待が大きかったこともあって少なからざる不満が残ったが、今回は満足満足ぅ。
カラフルな猫
はぶ談戯
高円寺バーボンタコス(東京都)
2009/12/07 (月) ~ 2009/12/14 (月)公演終了
満足度★★★★★
臨場感ありまくり
OLから転身した女性がオーナーであるカフェの2階を舞台にオーナーの元カレである居候やバイトの女性、オーナーの妹、オーナーに想いを寄せる出入りの酒屋などを描いた「日常系」。
それでなくとも会話自体が自然でリアリティがあるのに「リアルタイム」ならぬ「リアルプレイス」の芝居なこともあって臨場感ありまくり。
各登場人物も若干誇張されているものの「あ、そういう人っている(あるいは「いそうだ」)よね」でキャラがたっているのでなおさら。
で、先日の鈴舟の『ベイビー・フェイス』が昭和のホームドラマな味わいだったのに対してこちらは平成のホームドラマ(平成であってもトレンディドラマではない(笑))っぽい雰囲気。作家の世代が如実に表れているのかしら?
ってなことで、基本的には笑いながら、時には共感し、時には羨望(?)しての85分、楽しかったなぁ。
狂鬼~桜舞う春の夕暮れ~転生~
黒虹produce
劇場HOPE(東京都)
2009/12/10 (木) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
芝居の本編は星3つだが…
芝居自体は玉石混交と言おうか一長一短と言おうか「良いところもあるが残念な部分も散見される」(←「良くも悪くもない」よりはずっとイイ)出来ながら「遅れているお客様がいらっしゃいますので」という呪文を(それも定刻を10分近く過ぎてから)唱えさえすれば1人か2人の迷惑客のために本来の開演時刻に席についていた60~70人の真っ当な客を20分くらいは待たせても構わないと勘違いをしている無神経なスタッフに星を3つ減点して差し引きで星無し。
『プルーフ/証明(Repirse)』
DULL-COLORED POP
SPACE EDGE(東京都)
2009/12/12 (土) ~ 2009/12/12 (土)公演終了
満足度★★★★
演技がクローズアップされて濃密
舞台となる家をしっかり建てこんだコロブチカ版とは対照的にテーブルと3脚の椅子のみという可能な限りそぎ落とした装置で演ずるのは映画で言えば全編「寄りの画」、演技がクローズアップされて濃密な印象。
そんなこともあり全体がよりシリアスな中、第2幕第1場が回想シーンということもあってかユーモラスなのは上手い気分転換と言おうかアクセントと言おうか…。
しかし、第1幕の幕切れは「先がすぐ知りたい!」系なのに、その続きを見せる前にこの場を置いてじらすのはズルくね?(笑)
その第2幕第1場は7年くらい前の回想で、キャサリンとハロルドがそれぞれまだ若く(というよりコドモに?)見えるのは見事。
他に、1幕にしても2幕にしても照明がストンと落ちる(実際には若干のズレおあったが)幕切れも潔いと言おうか切れ味が鋭いと言おうか、鮮やか。
海獣
劇団桟敷童子
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2009/12/05 (土) ~ 2009/12/16 (水)公演終了
満足度★★★
ヤマ場が分散気味
開国前後の横浜村のはずれ、いずれ羅紗緬となる少女たちと、彼女たちをしばらく預かった漁師たちの物語。
羅紗緬哀歌を中心に、開国という時代の流れに押し潰されそうになりながらも生き抜いて行く庶民の力強さ・良い意味でのしぶとさ(特に女性たち?)も描いて骨太な印象なのはここの持ち味。
で、普通ならばクライマックスになりそうな少女たちが死にかける場面の後にまだ複数の波乱があるのが従来と異なるところか?(そこをクライマックスにすると尺が短くなってしまうしなぁ…(笑))
また、その少女たちを介抱する場面にドラマ「赤ひげ」(72~73年)で長屋の井戸に向かって帰って来いと叫ぶ住民たちの図を思い出したりも。
さらに、それまでに登場していた浪人風の男たちが実は尊皇攘夷派で…なんて展開は予想外で「そう来たか」的な。
ただ、その構造によってヤマ場が分散して重点が定まらない、な感なきにしも非ず。
いつものレベルと比べるとそんな不満もあるものの、絶対評価では悪くないかな。
ちなみに椅子はベニサンピットのものを再利用したようで、そう言えば客席のツクリや全体的な印象もベニサン風だったりして。
冬のジャンゴフェスタ2009
劇団S.W.A.T!
「劇」小劇場(東京都)
2009/12/09 (水) ~ 2009/12/27 (日)公演終了
満足度★★★★
スタンダードな原点(I)
魂と引き換えに契約者の望みを叶える悪魔、ジャン・デビール・ジャンゴ・ファンバステンが結果的に契約者を助けてしまう三部作の1作目、05年12月の初演も観ていたが、記憶が風化していたので再見できて嬉しい。
で、こうして改めて観ると、ジャンゴとそのしもべ、それにジャンゴのライバルである悪魔ジャン・デビール・シンゴ・セバスチャン以外の登場人物は3人だけと非常にシンプルながらシッカリ作られており、基本に忠実と言おうか「スタンダードな原点」という感じ。
また、大ピンチに壁を叩き続けることによってサタンならぬ隣人・佐藤を召喚(笑)するという思わぬ解決法が愉快だし、『続・荒野の用心棒』(66年)の主題歌である「DJANGO」ほかの替え歌を、カラオケではなく原曲を流しながら声量で上回らせるなんて文字通りの力ワザもイイ。
さらに、悪魔法第1127条の扱いもちょっとズルい気はするがやっぱり上手いんだよなぁ。
コーポ桜木101号室
リブレセン 劇団離風霊船
テアトルBONBON(東京都)
2009/12/09 (水) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
満足度★★★★
時事的ネタに「もう一つの要素」も
月額25,000円・敷金礼金なしという格安のワンルームマンションへの入居日、101号室で15人もの男女が鉢合わせするが全員正規の契約書を持っているし、不動産屋は海外に行っており連絡つかず…という状況から始まる物語。
一言で表現すれば「一足早いクリスマス・プレゼント、なファンタジック・コメディ」、お得意(?)の時事的ネタも盛り込みつつ、さらに「もう一つの要素」も加えた100分、楽しかったぁ。
実は集まった面々はそれぞれ悩みを持っており、現代社会の病巣オンパレード(笑)、な感じ。
普段は1つの事件や事故などをモチーフにしているのが、今回は「みんなまとめて面倒見たヨ」なのね、と思っていたら、後半で床下収納庫の秘密が明らかになって以降はタイムスリップものの様相を呈して一粒で二度オイシイ、的な。
さらに、最初にシカケを知った者が先に旅立つとその人物が見つけたシカケ自体の記憶も残ったメンバーの記憶からなくなるのではないか、というパラドックス的要素もあるし、各々が現在の境遇に至るキッカケとなった時点よりも前に旅立つ中、予め残る決意をした者以外に土壇場で「現在」に残ることを選択する者がいるし、と終盤までヤマがあるのは画竜点睛を打つと言おうか、尻尾までアンコの詰まった鯛焼きと言おうか、さすがベテラン、みたいな。
ヤマト版 仮名手本忠臣蔵
笑劇ヤマト魂
ザ・ポケット(東京都)
2009/12/09 (水) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
満足度★★★
「仮名手本」なのに大石や吉良な理由
まずは舞台の三方はもちろん客席両サイドまで壁をクジラ幕風の幅広縦縞で覆い、そのモノトーンとは対照的にステージ上は画家のアトリエのように様々な色が飛び散っているという舞台美術に目をひかれる。
で、始まってみればいきなり討ち入りの夜、というクライマックスの一部を冒頭で提示しておくパターンに導かれた本編、「仮名手本忠臣蔵」なのに、登場人物が大石だったり吉良だったりなのは何故?と訝っていたが、観て納得。
松の廊下での刃傷沙汰をネタにして実録ものと銘打った芝居を3日で公演中止にされた二代目竹田出雲がその続編として創作した「仮名手本忠臣蔵」の脚本を大石家に持ち込み、それに誘発された主税の主導で討ち入り決行という逆転の発想がユニーク。
また、松の廊下事件の真相もいささかムチャではあれ、フィクションとしてはそういうのもアリかな、と。
あと、人間語を解する(だけでなく一部の人間とは会話さえできる)猫は、『ネコロジカル…』を観たばかりなのでその偶然にビックリ。なんだか今年はカブりネタが多いぞ。
ただ、複数の役者が露骨に噛んでいたのは残念。「初日だから」というのは言い訳になりませんぜ。(「公開ゲネだから」の場合は微妙か?)
最高傑作 -Magnum Opus-
劇団銀石
ギャラリーLE DECO(東京都)
2009/12/08 (火) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
チャペックが底流にある Neo Genesis
一言で表現すれば「カレル・チャペックが底流にある Neo Genesis」、人工的に作られた「最高傑作」が人間よりも多数を占めるようになった未来を描いた連作的短篇。(ってか、各パートは交響曲などにおける「楽章」のようなものか?)
詩的でリズミカルかつ時には言葉遊びも含む台詞は耳当たりが良く、某書物と某戯曲を知っているとより楽しめる、な感じ。
また、その台詞回しや衣裳から(内容的にはシリアスな部分もありつつ)、どことなくメルヒェンチックで「やわらかい」印象も受ける。
台詞と言えば「最高傑作」たちが交わす会話は創作言語とのことで(←アフタートーク時の質問で得た回答)、その言語らしさが見事なことは ZIPANGU Stage の『航海綺譚』(05年)と双璧を成す。
で、「最高傑作」は所謂「ロボット」(=機械仕掛けの自動人形)ではない、なんてあたりでチャペックが「R.U.R.」に登場させた「ロボット」を思い出していたら「ロッサムという人が作った云々」という台詞が出てきて Bingo!みたいな…(笑)
それまでとガラリと変わったトーンで、かつプロローグと対を成すエピローグ(客電もあげる(!))で締めくくるのもイイ感じだし、最後の最後で各国語の「ありがとう」「さよなら」を(通訳付きで)羅列するのも好印象。
あと、本編でバベルの塔もモチーフとして使っているのだが、スタイリッシュなオープニング映像の中にピーテル・ブリューゲルの「バベルの塔」がもっと延びているカット(←今、書きながらフト思いついたのは「パーフェクト・ジオングみたいな」という形容…(笑))があったのにもツボを突かれる。
太陽と下着の見える町(庭劇団ペニノ)
フェスティバル/トーキョー実行委員会
にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)
2009/12/05 (土) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
満足度★★★
音楽に喩えれば現代音楽
テラスと会議室らしきスペースが上に、ベッドが1~3つしつらえられた部屋的なもの(うち1つは牢獄のようにも見える)と廊下が下にある2フロア(2階建てかあるいはそれ以上の建物の上部2フロア)で展開される複数のシーンをザッピング感覚で見せるスタイル。
展開されるシーンも様々かつ断片的だったりもして、中には特にストーリーになっていないものもあり、「何かの伏線か?」「どこかで他とリンクするのか?」と思っていると肩透かしを喰らう、な感じ。
中心となる(と言うか演じられる時間の長い)パートも個々の演技自体は具体的なのに、それによって表現しようとするものが抽象的、という印象で、音楽に喩えればジョン・ケージなどの現代音楽(ミュージック・コンクレートまでは行かない)ってところか?
そんなところから、これもまた「考えるのではなく感じる」タイプなのだが、あまり共感(あるいは共鳴)できずちょっと苦手。
「パンティ」に関するトリビアは興味深かったけれど…(爆)
ネコロジカル・ショートカット・ネコロジカル
猫の会
d-倉庫(東京都)
2009/12/02 (水) ~ 2009/12/07 (月)公演終了
満足度★★★★
ほっこりとしたオトナの童話
一言で表現すれば「オトナの童話」。人間の言葉を解する(が、会話ができるワケではない)猫やその他の動物たちも絡めて描く「悪人」など登場しない「ほっこり」とした優しい世界、ある時点でそれまで断片的に提示されてきた「教授の初恋」「大火の時に助けられた少年」「現世の存在ではなさそうな「神様」」などの情報たちがドミノ倒しの駒の如く次々に関連付いて全体像が見えてくるのが快感。
また、「神様」にしても「ししゃも」にしても登場した瞬間に猫だとわかるし、カエルやエリマキトカゲ(さすがにこの2種は劇中で紹介されるまでそれであるとはわからなかった(笑))も擬人化しているのが愉快。
さらに彼らの衣裳も「なるほど言われてみればそんな感じ」程度にとどめていて、そのセンスも◎。
カタルシス夢十夜
ムシラセ
王子小劇場(東京都)
2009/12/03 (木) ~ 2009/12/07 (月)公演終了
満足度★★★★
不条理感・不思議感・脈絡の無さを表現
学生時代にワンゲル部だった男達、そのうち1人は当時紅一点でマドンナ的存在だった女性と結婚しており…という同じ設定(と世界観?)での短篇連作(続きものではない)、漱石の「夢十夜」同様各編とも夢の中のあの不条理感・不思議感・脈絡の無さなどをうまく表現しており、第1話のラストのゾクッとする感覚、それが登場人物の見ていた夢ということで始まる第2話で姉と妹が入れ替わる(ちょっと違うが:ロベール・トマの『罠』も連想)フシギさなどが印象的。
また、途中に出てきた「百年」「竹の花」というキーワードだけでもニヤリとしたくらいなので、あのラストにはほとんど狂喜乱舞。いやぁ、鮮やかだったなぁ。キレイに入ったパンチでノックアウトされたような感じ?
見えざるモノの生き残り
イキウメ
紀伊國屋ホール(東京都)
2009/12/02 (水) ~ 2009/12/07 (月)公演終了
満足度★★★★
前川流の「幸福論」を堪能
新人を迎え、研修としてその仕事についてレクチャーする先輩「家守」たちとその新人の過去…という物語は「こんなのイキウメじゃない!」とか言って…。いや、「従来の」というコトバが抜けましたね。(笑)
得体の知れない漠然とした不安感が通奏低音のように流れる身近なSF、な世界とはガラリとオモムキを変えた第二形態あるいは version 2.0 のイキウメといったところ?
適度なユーモアはかつての短篇集の中にもあったし、終盤での緻密な構成…ちょっと違うか…新人家守の過去には実は先輩家守も絡んでいたというネタ(?)はやっぱりイキウメっぽいし、耳打ちした内容を舞台で再現して終わるツクリも巧みで、満足満足。
ってなことで前川流の「幸福論」を堪能。
なお、一般的な「座敷童子」像ではなく、オッサン(笑)を含んだオトナたちである(だから本人たちも「家守」と言うんだが)ことにヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン 天使の詩』(87年)も思い出す。
生の瑕疵
集団as if~
萬劇場(東京都)
2009/12/03 (木) ~ 2009/12/06 (日)公演終了
満足度★★★★
笑いとシリアスさの見事な同居
「ネガティブコメディ」と銘打ち、コメディとシリアスを両立させるのが作風だそうで、そのバランスが絶妙…と言うより「際どい」の方が的確?
一歩間違うと水と油の如く分離してしまいそうな笑いとシリアスさを、回想と現在に分けたということもあり見事に同居させているんだな、これが。
主人公夫妻を子供の頃からの友人が久しぶりに訪れるプロローグに導かれ、高校の映画同好会時代の回想が中心となる前半はコミカル。設定が設定だけに名台詞ほかの映画ネタも楽しい。また、途中でアンケート用紙に添付された紙片に観客が書き込んだ3項目を使ったインプロパートがあり、これまた大笑いモノで、ランダムに選んだものが時としてピタリとハマることもあって「芝居の神様って本当にいるんじゃないか?」とも…(笑)
一方、主人公がその友人によってもたらされた薬物に溺れて行く後半はシリアス。その悲劇的な結末はまるで公的機関が作った「薬物依存撲滅キャンペーン映画」(笑) の如く薬物のオソロシさを訴え、安易なハッピーエンドにしない分、さらにそれが強調される、みたいな。
が、決して後味は悪くないし、重くもないのが不思議。普通、こういう構成だと前半との大きな落差によってビターあるいはヘヴィーな味がより強調されそうなのに、何でだろう?(感じ方には個人差があります)