ネズミ狩り 2024
劇団チャリT企画
ザ・スズナリ(東京都)
2024/01/06 (土) ~ 2024/01/08 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/01/08 (月) 13:00
社会派シニカルコメディな作風のこことしては珍しく、笑いは緊張感を緩和する程度にすぎず基本はシリアスな異色作。2011年版を2回、2012年のULPS版を1回観て通算4度目となるが、被害者遺族の心境と犯罪者の更生/社会復帰を芯に据えたた内容には毎度舌を巻く。
また、今回は特に「(自分が信じているだけの)正義を振りかざした者の無自覚な悪意」が印象的だった。最近そういうのが多いもので。
長い正月
20歳の国
こまばアゴラ劇場(東京都)
2023/12/29 (金) ~ 2024/01/08 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/01/06 (土) 13:00
ある家族/一族の百年間折々の年越しを100分間で描いた「大河ホームドラマ」。
途中暗転を1回しか(!)挟まずに話が進むので見た目だけでは時が経ったことはワカらないが、家族に起きた出来事や社会的事象、登場人物の年齢などをさりげなく織り込んで経過年数やいつ頃のことかを観客に推測させる会話が鮮やか。
ヘタクソに作ると年が代わる度に暗転したり、会話に具体的な年号を入れたりするものね。(笑)
また、鬼籍に入る表現(照明含む)も巧みで観ていて「嗚呼、この人も……」と寂寥感を抱いてしまう。時として逝きかけて戻ってきたりもするけれど。(笑)
さらに、クロニクルだけに役者が子供時代から老年期まで演ずるが、その加齢表現(特に老年期)も良かった。これもまた「時の流れ」に説得力を持たせていたと言えよう。
2023年の観劇納めに続いて2024年の観劇初めも秀作で満足満足♪
日本演劇総理大臣賞
ロデオ★座★ヘヴン
駅前劇場(東京都)
2023/12/27 (水) ~ 2023/12/30 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/12/27 (水) 14:00
会議ものとバックステージ系の芝居が好みで「12人の怒れる男」も「笑の大学」も大好きな身にとってまさに「盆と正月が一緒に来たような」傑作にして秀作。4年ぶりに観ることができて、そしてこれが今年の観劇納めで良かった♪
劇中に出てくる「作劇/演出のセオリー」や「演劇に大切なもの」が本作で体現されているのも見事。これ、初演時に気付かなかったのは己の未熟さかあるいは脚本の改稿や演出家の違いによるものか?
で、活動休止前の作品を活動再開の1本目に再演することに連続ドラマで前回のラストシーンを見せてからその回が始まるパターンを想起。(笑)
天使の群像
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2023/12/21 (木) ~ 2023/12/29 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/12/26 (火) 14:00
事前情報の通り今までなかったタイプの作品ながら漂う雰囲気はまさに鵺的。いわば「鵺的・ネオ」か?
観ている途中で「どこか爽快感があるのは何人かの人物が"真っ直ぐ"だからか?」と思ったがその後「いや、全員が"真っ直ぐ"だ」と気付く。
しかし"真っ直ぐ"ではあるがそれぞれ方向が違っていて、それが事態を混乱させているのかな?的な。とはいえ、その真っ直ぐさゆえ後味が悪くなく、鵺的にしては珍しい。(笑)
珍しいと言えば装置も具象的なことが多いが今回は上手手前が高く下手奥が低い傾いた床に下手側と奥をハーフミラーフィルムの壁(?)を立て、椅子(教室用&パイプ椅子)と机(?)を随時配置する抽象的なものであるのも珍しい。(奇しくも翌日下北沢で観た芝居のそれと共通点アリ)
一方、途中で「あること」が判明して「そういうことか……」と思ったのもつかの間、「だとするとあれはどっちだ?」などと却って疑問が増えてしまうのはいかにも鵺的?(笑)
本作を経て今後の鵺的がどうなって行くか楽しみ♪
パラレルケンジ -GOLD BALL RUN-
オイウチケンジ製作委員会
中板橋 新生館スタジオ(東京都)
2023/12/24 (日) ~ 2023/12/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/12/24 (日) 13:00
自身が主役の短編集を、客演する公演と日程がカブったために他の役者にその役を演じさせるというブッ跳んだ発想だけでも見事なのにさらに流行りの(?)マルチバースとして構成するアイデアに脱帽。
加えてそこにメタフィクション的に両公演の会場ネタも取り入れてラストにサプライズまであるとはなんと素敵なクリスマスプレゼント! あと、前年のキャストを確認するのもまた楽しからずや♪
ゼンイとギゼンの間で 呼吸する世界。。
エンニュイ
エリア543(東京都)
2023/12/23 (土) ~ 2023/12/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/12/23 (土) 13:00
従兄弟同士の男3人とその同棲相手・姉・妻の会話劇にしてエンニュイ旗揚げ公演作(2017年)のリブートで、6人の登場人物のうち2人ずつの会話場面を重ねてそれぞれの関係が見えてきたところで全員揃ったクライマックスを迎えるという構造。
そのクライマックスは「よく言った、痛快!」や「それは言い過ぎ……」が混在してあたかも小学生時代に授業で観たNHK教育テレビ(当時)の学校放送の道徳ドラマのオトナ版なオモムキ。「貴方ならどう振舞いますか?」と問われたら困惑しそう。
『メトロノームが叫んでる』
ウテン結構
六本木ストライプスペース(東京都)
2023/12/16 (土) ~ 2023/12/21 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
冒頭と終盤に演劇的手法/トリックを仕込んで語る時空超越系ファンタジー。
SFとも言えるのだが「SF」という語から受けるカタい印象が全くないのはここの芝居の持ち味と言えようか。(前述の手法/トリックも同様)
また、小説版が世界的ベストセラーとなった某芝居と芯になる部分は一緒(一部は真逆だが)なのにまるっきり別な味わいに仕上がっているのも興味深い。
トリプルパパパーズ!
はらぺこペンギン!
新宿シアタートップス(東京都)
2023/12/13 (水) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/12/17 (日) 14:00
前評判通り優しくあたたかいハートウォーミングコメディ。
かつてここで観た泪目銀座やペテカンの作品に通ずるどこか懐かしい感覚にイマな事柄も加味してぺこペンの真骨頂か?
作劇の基本と言うか王道というか「それな!」なパターンの使い方も巧み。
#34「闇の将軍」四部作
JACROW
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/12/15 (金) 19:00
第0話・やみのおふくろ」
「第0話」と銘打たれている通り夕闇前の角栄と母・フメの短編二人芝居。終盤で夕闇冒頭の演説場面が出てきてまた夕闇が観たくなるシカケはまるでSW ep.4前日譚である「ローグ・ワン」の如し。(笑)
#34「闇の将軍」四部作
JACROW
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/12/15 (金) 14:00
第3話・常闇、世を照らす」
夕闇は直球、宵闇は変化球という印象だったが再び直球? とはいえ劇中で女性が担う役割が大幅に増えた感じで時代の変化もひしひしと感じる。
また、テレビ番組の表現や生歌など娯楽要素もたっぷりでそのバランスも見事。
#34「闇の将軍」四部作
JACROW
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/12/14 (木) 19:00
第2話・宵闇、街に登る」
夕闇の料亭風から田中事務所の洋間に代わった装置で描く三角大福総裁選。登場人物にしても描かれる事柄にしても物心ついてからのことなので親近感(?)を抱く。そして総裁選への裏工作はある意味「ドロドロした」ものなのにまるでスポーツドラマを観ているかのように痛快に感たのは夕闇を観て狩野角栄に肩入れしてしまっていたからか?。(笑)
また、劇中の出来事を補足したりツッ込みを入れたりする字幕も夕闇よりパワーアップ(?)していて楽しい。
3年前の3部作上演の時はそれぞれ異なる日に観たが、こうして夕闇と宵闇を1日で観ると、前者は直球、後者は変化球も交えた投球、という印象。
#34「闇の将軍」四部作
JACROW
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/12/14 (木) 14:00
第1話・夕闇、山を越える」
冒頭の狩野角栄の演説からもうワクワク。憑依したかのようななりきりぶりは劇団チョコレートケーキ「熱狂」冒頭の西尾ヒトラーと双璧を成す。またその演説内容も地域格差をなくすべく尽力したいというもので中盤で政治家たちが語り合う場面と合わせてあの頃は「国民のため・国(の将来)のための政治」を目指していたのだなぁと感銘を受ける。今の「自分(の利益)のため」しか考えない政治「屋」どもとの違いたるや!
有害なおばけらしさ
実弾生活
スタジオ空洞(東京都)
2023/12/09 (土) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/12/13 (水) 15:00
笑いでコーティングされているが中身は世相を皮肉ったシニカルかつビター、ブラックなもの。
それでいてラストではちゃんと主人公の成長を描いてきれいに着地させる絶妙のバランス。
また、チラシ画像で予期したアレはやはり……ニヤリ
夜を歩く
劇団肋骨蜜柑同好会
新宿眼科画廊(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/12 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/12/11 (月) 15:00
冒頭の芝居がかった大仰な台詞回しの会話にニヤニヤ。続いてあるものに導かれて奇妙な世界に迷い込む主人公に有名(児童?)文学作品を想起するが、その後の詩的(かつ抽象的)な台詞とシュールな状況に「あ、これは昭和のアングラ芝居リスペクト大会か♪」と気付く。
そんな中で描かれるのは「んなワケねーだろ!」から「あぁ、ありそー」な新宿の一夜。
そして朝が近くなった時の「演繹的表現」も面白かったなぁ♪
ブラック・フラッグ・ブルーズ
ミサキカク・秋月はる華共同プロデュース
小劇場 楽園(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/12/10 (日) 12:00
1997年のキャラメルボックス・アナザーフェイス公演で観ていたものの四半世紀以上前なのでかすかな記憶しかなく新鮮な気持ちで観る。(観ながら初演時の配役を思い出そうとしたが帰ってから確認したら3人しか合っていなかったほどで)
で、SFサスペンスコメディ、キャラメルボックスサポーターズクラのゴールド会員として「あー、まんまじゃん」な脚本にも、第一報で「風雷紡の吉水さんが!?」と驚いた演出にも満足。(「手術台の上のキャラメルと風雷紡の邂逅」的な?(笑))こういう企画がまたあることに期待♪
天動虫版マクベス
劇団天動虫
シアター711(東京都)
2023/12/06 (水) ~ 2023/12/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/12/07 (木) 14:00
原典由来の「いかにも古典戯曲」な台詞回しとダンスや歌を取り入れたポップな味わい、それに初期(要町の第七秘密基地で公演していた頃のチープだが工夫に富んだもの)と較べて洗練されつつもどこかアングラテイストがある舞台美術が混然一体となりタイトル通りまさしく天動虫版マクベス!
なお、この日この回は出演者の体調不良のためクライマックス前で公演中止となったが関係各位の心中いかばかりか。いつの日かリベンジ公演があること(と関係各位が気を落とさないこと)を切に願う。
空ヲ喰ラウ
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/11/28 (火) ~ 2023/12/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/11/30 (木) 14:00
言われてみれば確かに新機軸。設定は現代だし、悲劇の度合いも従来作と較べて(あくまで相対的に)マイルドだし「桟敷童子といえば」な「アレ」もないし。しかしそのことによって「各人物のドラマ」がより前面に押し出された感じ。
そして脚本・演出・演技に舞台美術・音響などのスタッフワークも含めて「桟敷童子の芝居」なんだと改めて認識。
生きてるうちが華なのよ TAIAI
グワィニャオン
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/11/15 (水) ~ 2023/11/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「笑って泣ける本格/正当ゾンビ芝居」、みたび(前2回は2005年5月・東京芸術劇場、2012年12月・萬劇場)。タイトルにしても劇中使用曲にしてもそうだしこの題材で「生きる/生きているということ」を前面に押し出しているのがイイ。
そしてラストで語られる「その後の変化」は、作・演出の西村さんをはじめとした関係者のみならず観客……どころか全人類(広げすぎ?(笑))の願いなのではなかろうか? 昨今の情勢を考えるとよりそのように感じる。やはり名作。
日本演劇総理大臣賞・余話
ロデオ★座★ヘヴン
新宿眼科画廊(東京都)
2023/10/17 (火) ~ 2023/10/24 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/10/22 (日) 13:00
「日本演劇総理大臣賞」の登場人物2人それぞれのスピンオフ短編二人芝居2編。
どちらも主人公とその相手との「絆」が浮かび上がって心地好く、「当時ならさもありなん」な内容ながらイマの世相にも通ずるものがあるのはさすが。
オダマキとフクロウ
十七戦地
東京おかっぱちゃんハウス(東京都)
2023/09/20 (水) ~ 2023/09/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/09/22 (金) 15:00
哲学の教授たちが集まる冒頭と結論が出て去ってゆく〆の場面を除いた正味80分ほどが議論というガチ論争劇。
戦時中の若者に生き方を示唆するとか大学での覇権争いとか最近話題の映画やドラマなど連想しつつ、現政権では「そんなこと」になりかねないという部分に慄く。