阻む壁
Oi-SCALE
新宿シアタートップス(東京都)
2024/10/31 (木) ~ 2024/11/05 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/11/01 (金) 15:00
男が通勤すべく自宅から駅に向かう下り坂に、ある朝突如「壁」が出現して……な不条理系。ある日、障壁が現れ周囲もあれこれ動き出す、という設定は国家レベルでそれが起こる小松左京「首都消失」を個人レベルにしたオモムキ?(笑)とはいえもちろん展開/内容は全く異なり、また「壁」は人生に出現する何らかの障壁の隠喩などでもない(私見)。
壁に翻弄される主人公やいろんな動向を見せる周囲の人々に共感したりしなかったりするのが本作の楽しみ方かも?
また、A列・B列をつぶしC列からE列の席数を減らして(本来の)舞台前に建てられた「壁」の装置が前作で舞台中央にあった段ボール製の壁をグレードアップしたようでポップかつリアルだし、本来の舞台に置かれたあれこれも含めて舞台美術も良かった。
なお、灰二さんの一人語りで始まり、またそれで終わるのはいつものパターンだが、今回初めてロッド・サーリングやタモリ(あるいはバカリズム)を想起したのは内容が「そっち系」に感じられたからか?(笑)
あと、ああいう舞台装置ゆえ複数の出演者さんが「憧れのシアタートップスでの公演に出演できたのに舞台に上がれなかった」と残念がっているのが(申し訳ないが)微笑ましい。(いや、いずれその舞台にも上がれますって!)
いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した
チャミチャム
水性(東京都)
2024/10/29 (火) ~ 2024/11/02 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/31 (木) 15:00
放課後の3人の高校生。
前半は「ありそー!(笑)」なあれこれを見せてリアリティを感じさせて(そのリアリティは役者の演技によるところも大きい)から後半の「あれ」をフィーチャーした場に進むのが巧い。
そしてその後半では公演会場の外に面したガラスをも効果的に使う演出に舌を巻く。そう言えばここの公演、3回とも会場の外が見える場所を使っており、次回はどこなのだろう?という期待も膨らむ。早くも楽しみ♪
わが星
TEP+steps
シアター風姿花伝(東京都)
2024/10/24 (木) ~ 2024/10/30 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/10/27 (日) 14:00
ビッグ・バンから地球が星としての命を終えるまでを人の一生になぞらえて言葉遊びも含んだ数人によるリズミカルなラップ風パフォーマンスの後に地球や月などを擬人化して誕生から死までを物語る105分、2011年4月に観た本家のままごと版より20分も長いが冗長感や中だるみ感などなくしっかり惹きつけられる。
また、この回はトラブルにより本来の明かりではなく搬入灯での上演となってしまったが、それでもちゃんと観ることができたのは戯曲の力と演技・演出の賜物か?
なお、トラブル発覚から時間がほとんどなかったであろうにこのようなプランを考案して実行した照明スタッフもスゴい。
広くてすてきな宇宙じゃないか【Mura.画】
Mura.画
北池袋 新生館シアター(東京都)
2024/10/25 (金) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/26 (土) 13:00
オリジナルである演劇集団キャラメルボックスで観たのはいつのことであったか?というくらい前のことで懐かしいったらありゃあしない。
そしてかつてシアターアプルやサンシャイン劇場のような大きな劇場で観た作品をこの規模の劇場で「イマの若手」が上演するということであれこれ感慨深く、時折目が潤みそうになった(潤んだとは言っていない)。
ラストの「あの演出」も元を知っているからもあろうが「そう見えた」し照明も手がける(本作では異なるが)奥田演出のアイデアに「そうやったか!」と快哉。
こういうのもいいなぁ。
My cinema paradise 2024
劇団S.W.A.T!
劇団S.W.A.T!稽古場(東京都)
2024/10/17 (木) ~ 2024/11/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/25 (金) 19:30
【Bチーム】
前週の【Åチーム】で内容はワカっているがやはり笑ってしまうし、役者個人のオススメ映画紹介パートは原さん・清水さんそれぞれタイプの違う入れ込み方でアツさを感じる。
あと、スタジオとサブを照明で切り替えて表現するのも上手いんだよなぁ。
シみる~昭和歌謡短編集 其の四~
はぶ談戯
小劇場B1(東京都)
2024/10/23 (水) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/10/25 (金) 14:00
3編の短編が最後に結び付くという事前情報を得てから観たがわずかな接点しか見いだせず、エピローグ……というかそれまでの人物が揃う4編目で大いに納得。この巧みな構成に往年の深夜ドラマ「HeartにS(1995年)」を思い出した。
また、劇中音楽(歌&インストゥルメンタル)も元ネタがワカり易くそれを知っていると「似ているが異なる」加減が絶妙で頬が緩む。
いかにもはぶ談戯らしい作品に満足満足♪
おまえの血は汚れているか
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2024/10/18 (金) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/10/23 (水) 14:00
別々に養子とされてそれぞれに人生を送っていた5人の兄妹があることについて話し合うことになり次男が婿入りした旧家に集まるが……な会話劇。
それぞれに事情があるとはいえ好き勝手とも言える主張をする上に次男の妻の実家なので義兄も余計な口出しをして傍観者である観客まで居心地悪く感じるのはいかにも鵺的。
がしかし終盤でその義兄の正鵠を得た発言などから事態の好転を予測させ、後味が悪くないのは鵺的作品の中では珍しい部類かも?(笑)
「(家族の)血」についてあれこれ考えた90分、良かった。
サラマンドラの星空
Jungle Bell Theater
萬劇場(東京都)
2024/10/17 (木) ~ 2024/10/23 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/22 (火) 13:00
星チームを観劇。
メキシコにあると思われる「幻の遺跡」を探す人々の現代パートとかつてその遺跡周辺で起きたことの古代パートが併走して進行するアドベンチャー・ロマン。そして古代の船で遺跡を目指し遭難した現代人の意識がかつて漂着してそこに居ついた先祖に宿り過去を体験する(「THE WINDS OF GOD」を想起)というのがまた浪漫。
そんなスケールの大きい「ホラ話(褒め言葉)」だが、装置はシンプルで、それでも実在感(?)を持たせるのは演技・演出に加えて衣装の功績か?
なお、初演である「サラマンドラの虹」を観ていたどころかそれがこことの初めての出逢いだったが、そのことどころか内容もすっかり忘れていたことに15年の歳月を実感。(爆)
ビッグ虚無
コンプソンズ
駅前劇場(東京都)
2024/10/16 (水) ~ 2024/10/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/20 (日) 13:00
ハプニングバーのプレイルームでイタしていた男女が消失してから3年、消失した男の妻が当時バーにいた面々を集めて真相を探るが……な物語。
序盤の登場人物紹介的な3年前パートこそきちんとしている(?)が、現在パートに入ると次々にタガが外れてゆき混沌混沌また混沌、みたいな。その最中にはそれまでの前提を覆すような台詞もあって、こういうのも好きなんだな。
あと、バー従業員の制服や返り血を浴びたシャツを筆頭とした衣裳、塗装が剥げかかったバーの壁、さらに「あのゲーム」を等身大にした大道具(なのか?)など舞台美術も特筆モノ。これが妙なリアリティを与えているんだよねたと思う。
ということでかつて見たことがある悪夢のような2時間弱を堪能。
がしかし、開演が定刻より9分も押した場合は終演後に何か一言あって然るべきでは?(苦)
My cinema paradise 2024
劇団S.W.A.T!
劇団S.W.A.T!稽古場(東京都)
2024/10/17 (木) ~ 2024/11/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/19 (土) 13:00
【Aチーム】
下北沢のコミュニティFM局の人気生放送番組の新シーズン初回、初めてついたスポンサーが視察に来る中、社長の人脈で新レギュラーとなった人気声優は台本以外のことは喋れず……というワンシチュエーションコメディ。
稽古場に作られた三方囲みステージという公開生放送を観ているような臨場感のある場で繰り広げられる物語、劇中でのパーソナリティによる映画紹介は演者自身によるものだわ終盤に人情噺的味わいはあるわで身近というか親しみやすいというか心地よく、そう言えば開場時から会場にいて場を温める出演陣もステキで至福のひと時、的な。
あくたがわさん
東京ノ温度
「劇」小劇場(東京都)
2024/10/16 (水) ~ 2024/10/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/18 (金) 15:00
「あくたがわ」ぐみを観劇。
名作文学・SF的設定・メタフィクションの三題噺を得意とする(そしてその3つは同時にσ(^-^) の好みの要素でもある)ここ、今回は芥川龍之介を題材に。
で、ある役がダブルキャストで男女反転なのも観て納得。ってか元ネタ的には男性を配するところにそういう発想をすることに感心かつセクシーな水野以津美嬢は眼福。
売り言葉
平体まひろひとり芝居
雑遊(東京都)
2024/10/10 (木) ~ 2024/10/14 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/10/13 (日) 14:00
スパイラルホールでの大竹しのぶによる初演以来22年ぶりなので「何か自転車で舞台を走っていた」以外ほとんど記憶がなかったが(爆)冒頭の「あの曲」で「おや?」と思いその後すぐの言葉遊びで「そういうことか!」と膝を叩く。
以降、多彩な表情と変幻自在の演技に惹きつけられ魅入る。
そして終盤、流れ始めた時に「いやまさかあの曲?」と思ったその曲が意外にもピタリとハマっており冒頭と共に選曲にも舌を巻く。
あと、女中の語りから始まりいつの間にか智恵子になり終盤で女中に戻っている構造やラジオの臨時ニュースでその場の時代を表すのはさすがだね。
現代衣裳で見せる高村智恵子の「怨み節」、面白かった♪
RTA・インマイ・ラヴァー
東京にこにこちゃん
駅前劇場(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/06 (日) 13:00
二十代で亡くなった主人公の小学校以降の人生を50分ほどで見せた後に「バグを使って部分部分をスキップして30分に収めれば死を覆してそこから先に進むことができる」というゲーム丸出し(笑)の課題に挑戦する主人公たちを描く。
「演劇とコンピューターゲームの融合」を得意とする(私見)ここだが、また新たな独自の発想をしたことに舌を巻く。まったく演劇を何だと思っているんだ!(笑)
アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国
お布団
アトリエ春風舎(東京都)
2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
冒頭、登場した姉妹が「これまでのあらすじ」としてギリシア悲劇のオイディプス関連のストーリーを語ってから始まるが、いざ始まるとそこは死体をゾンビ化する技術が確立された3000年後の世界。
そうして語られるのはギリシア悲劇ともブレヒトの戯曲とも異なり、2017年の初演(未見だがCoRich舞台!の公演情報を見た)とも異なる(初演版のアイテムや元ネタの基本設定は踏襲)「思想劇(?)」。
前半では死生観というか、生と死に関する哲学的なものを感じたが、後半では「戦争を起こすもの/戦争を持続させるもの」に言及してあちこちで戦火が起きているイマだけにズシリとした重みを感じる。
あれこれしんどかった。
バック・トゥ・ザ・うんちゃん
ろりえ
ザ・ポケット(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/04 (金) 14:00
2024年問題対策を誤ったためにほぼロボットに取って代わられた運送業を救うためにタイムマシンで2024年に遡った主人公……というあの映画とその映画の設定を融合させて生歌も取り入れた娯楽作品。
凝ったものとチープなものが混在する舞台美術もその内容にふさわしく、そんなあたりに「三鷹の化け物」(2011年)を思い出したりも。あと、ティム・バートン作品っぽいキャラもいたよね?(笑)
ピンポンパン!
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/02 (水) 14:00
久々のインターハイ出場で資金調達のため開催された高校卓球部OG会を描いた会議劇。
離れた世代との気まずさに始まり、やがて過去の「不祥事」に行き着き部活の在り方や暴力の是非などに触れて緊張感を昂めてからそれまでの伏線も回収する意外な真相で〆るのが巧い。
à deux
うにくらげ
宗清寺(東京都)
2024/09/27 (金) ~ 2024/09/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/09/29 (日) 18:00
鵺的・高木豊、チタキヨ・米内山陽子による書き下ろし短編二人芝居2編。
高木作品は鵺的と動物自殺倶楽部で上演された「夜会行」の延長線上で本編はもちろん、音響効果が独特。あれは人物の心象の表現か想像上の相手の反応かはたまた現実での反応か?
いずれにしても観客の判断に委ねる余地が大きく面白いと言うか巧みと言うかそう言えば終演後に訊きそびれたがあの音響は脚本による指定か演出か?
休憩と座席移動を経ての米内山作品は事故死した兄弟それぞれの妻が一周忌法要後に菩提寺でかわす会話。
微妙な距離感の二人が故人への想いや自分の過去などを語りつつ距離を詰めてゆく様がユーモアを交えて描かれヨナさんらしい感じ。
各作家と会場の特質を活かした公演、お見事!
あと、1編目と2編目の合間の客席移動時の誘導を筆頭にスタッフワークもとても良かった。
遊びの杜17
東京幻堂
「劇」小劇場(東京都)
2024/09/26 (木) ~ 2024/09/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/09/29 (日) 14:00
日本の民間伝承などを題材に伝統芸能的手法を取り入れて描く短編オムニバスシリーズの最新作。
まずは前奏曲的な「幻式巴三番叟」のオリジナル音楽が「バリ島の民俗音楽」っぽいことにニヤリ。古典的な題材にそれを使い、しかも違和感がないのが面白い。
続く「幽霊滝」の滝と鳥居の表現も好き。2枚の青色の長くて薄い布を交互に上下に動かす滝はままあるものの、同様の赤い布を組み合わせて鳥居表現するのはアッパレ。「瘤取り翁」の鬼、「くさびら」の茸の表現も楽しい(茸の表現は原典の狂言に準じているとか)。
最後を飾る「黄泉比良坂」はギリシャ神話のオルフェウスを想起させる中心部分は知っていたが、そこに至るまでもけっこうあったことを初めて知る。そんなこんなで今回も面白かった。来年の題材は何だろう?
朗読劇、余炎
三度目の思春期
マホラ食堂(小田急線経堂駅南口徒歩5分) 2階客席(東京都)
2024/09/27 (金) ~ 2024/09/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/09/27 (金) 14:00
6月の悲喜交交による「古民家上演版」を経ての朗読版。朗読劇だけに3人の登場人物に加えてト書き担当がいるので情景を思い浮かべたり上演版を思い出したり。
朝ドラをBSで一度観てから地上波を字幕・副音声で観るσ(^-^) にはピッタリ、的な。(笑)
そして会場が食堂の2階テーブル席で演者もテーブルを前に並んで座るカタチだけに台本を手に持つ「一般的な朗読劇」と違って木製の書見台に台本を置くという演出がまた別なオモムキでステキ。演者が劇中の衣装だったり当日パンフレットが劇中の俳句誌を模しているのも〇。
そうして語られる内容が「戦意高揚に文学(を筆頭とした芸術)が使われる時代が二度とあってはならない」なのは秀逸。(10年前に書かれた作品とのことだけれども)
かえるかな、この道
空晴
駅前劇場(東京都)
2024/09/13 (金) ~ 2024/09/16 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/09/16 (月) 14:00
えっ、どゆこと?この人(たち)は何?と、観客を登場人物と同じ心境に置いて始まる物語。
今まで観てきた作品群とどこか趣を異にするのは能楽「隅田川」をモチーフにしたからか?
で、その物語をそのまま現代版にするのでなく演出法や表現を、ということだが事前に Wikipedia などで予習して臨んだらいくつか合点がいった。
今後はこういった路線になるのか。はたまた従来パターンを継承するのか、いずれにしても次回も楽しみ♪