満足度★★★★★
見事な殺陣
極めて近い間合いでの殺陣は、肉弾相打つ戦場の様を彷彿とさせて見事である。
ネタバレBOX
実際、歩兵戦では、銃剣を先に付けた兵士同士が互いに相手の目を狙って突く。骨が軋み折れる音、血しぶきに交じって、無論、近代以降の戦では砲弾の飛び交う音や支援する飛行機による空爆音、人間の声とは思えぬ獣の咆哮の如き叫び等が入り乱れてそれは正視に耐えるものではない。敵となれば互いに相手を自らと同等の者とは決して看做さない。それが戦いの掟だからである。これだけの殺陣を舞台上で行う為に練習は毎日12時間以上。それはそうだろう。これだけの動き、それほどの鍛錬を積まねばできるものではない。
シナリオはお伽噺の「桃太郎」をベースにしている。確かに描かれている世界は鬼と人間との争闘の世界であり、鬼と人間の争闘を賭して開かれるのは鬼とは何であり、人間とは何であるのかの解であり、同時にその悲哀である。また、単にお伽噺を現代的に解釈し直したというようなものであるより、遥かにリアルに支配・被支配の中に顕れる権力構造や政治、その政治という方法の持つ冷徹と愛が絡み合って物語を単なるお伽噺の地平には置いておかない。遥かにシリアスで現代日本の我々の在り様(アメリカの植民地奴隷としての)を浮彫にするようなリアリティーを持っている。所々で緊張を紛らわすような笑いが仕込んであるのだが、自分はシリアスだけで押しても良いように思った。
桃太郎が拾われるのは、爺さん婆さんにではなく花街の遊郭の主である。この視点も今作に社会性を持たせるにあたって恰好の設定であることは言うまでもない。また太郎が支配者、鬼の血と鬼を制御する力を持つ鬼御門神社の巫女とも言うべき風見の子であるという血の因縁にも、今作が単純に敵・味方と割り切れない鬼・人の類似関係を孕み込んで、殺戮と血に塗れた者たちの深い苦悩や精神的危機、花の意味を知ることさえなかった者の哀れを表現する際の深い河の水のような暗示になっている点も気に入った。
見応えも充分、心に残る作品である。最後になったが、今作が20作目とか。節目の作品ということだが、ぜひ、今後も良い作品を作り続けてくれることを期待する。
満足度★★★★★
今後にも期待
先ず、会場で椅子に置いてあるリーフレットが素敵。主人公のキャラクター設定も非常に良い。シナリオ、状況設定、演技、演出も面白い。タイトルと作品内容の関連性も上々。(追記途中まで、更なる追記後送)
ネタバレBOX
主人公、宮崎のキャラ設定が何故良いのか? 無論、彼は表現する者として描かれていると捉えた自分にとって、表現する者の持つべき最大の特質、徹底した率直さを持つキャラとして描かれていると感じたからである。
満足度★★★★
花 四つ星
設定はシェイクスピアの「リア王」の稽古場である。(追記後送)
ネタバレBOX
舞台監督、補佐、役者、演出家、照明、音響などが、本番に向けて稽古の真っ最中。役作りに余念のない役者達やダメだしをする演出家、舞台監督と補佐は、音響や照明との調整役も果たしている。謂わば通常観客が観る舞台の裏側を見せることで成立している作品なので、芝居好きにとってはことのほか興味深い作品とも言えるだろう。
ところで、この忙しい時期にとんでもない珍客が飛び込んできた。聞けば作品から生み出されたキャラクターたちなのだと言う。彼らは作家が生み出した存在なのだが作品が尻切れトンボで終わっている為、ずっと宙吊り状態のままであり、何とか決着をつけて欲しいと割り込んできたのであった。
満足度★★★★
陥穽 花四つ星
何処とも知れぬ廃屋。
ネタバレBOX
ここは恰好の隠れ場所となって、金が無く性を楽しみたいカップルに良く用いられている。地元では知る人ぞ知る名所だ。
さて、教師の夫を持つ妻が、夫に疑いを持ち身辺調査を依頼した。探偵も女性であった為、彼女らは、夫が使っていると思しいこの場所で偵察を繰り返している。そこで彼女らが観たものは。偶々、ここで乳繰り合って来た高校生カップルと夫の「援交相手」を慕う男子、夫と件の女子高生の「不倫現場」。而も、夫はこの女子高生に金は一度も払っておらず、積極的なのは寧ろ女子高生の方であり、夫は2か月前に退職していた。妻は、己が一緒に暮らしている夫のことを何も知らなかったことを確認してゆく。初日が終わったばかりなのでネタバレはここまで。各登場人物たちの心理的な軋みも当然描かれているが、その辺りは観てのお楽しみ。
満足度★★★★
花 四つ星
言の葉。
ネタバレBOX
漢字発祥の地とされる殷、奈良から平安へ移るきっかけとなったと言われる薬子の変を転換の梃としつつ、嵯峨天皇、橘逸勢、空海ら三蹟の生きた時代や政治、留学時の有様などを絡ませながら文字の誕生に纏わる物語とその因縁を、歴史に浮かぶ逸話やイマジネーションと抱き合わせて形作られたシナリオは、錯綜して現代に迄なだれ込んでいる。尺が長いばかりではなく、錯綜した物語を何とか詰め込もうと、科白回しはかなり早口なので、序盤このリズムに慣れるまでは若干聞き取りにくく感じた。だが、物語自体はとても面白く拝見した。
満足度★★
ナルシシズムの好例
ミミ、ミコ双子姉妹の物語。妹のミミはピンク。姉のミコは水色。ミミは誰からも好かれ、常に皆の中心、然るにミコは誰からも距離を置かれ、内心孤独。その為ミコは、ミミに憧れできれば代わりたいと常々思っていたが、ミミの方では反対に何でもできるお姉ちゃんになりたいとの憧れを持っていたのであった。
メンタリティーのみを追求して客観的尺度のまるでない、従って普遍性へ至る努力もなければ方法論もない作品である。
それをおぼろげながら感じているからこそ、ひらかな表記の「せんのう」というタイトルなのであろう。だが、洗脳をするのは、無論、組織の利害に絡むからであって、それは組織的で極めて意識的な作業である。例えばアメリカの殺人部隊である海兵隊がリクルートした新兵(18歳程度が多い)をハイスクール卒業したての普通のガキから殺人マシーンに仕立て上げてゆくのはその好例である。教官共は、先ず、恐怖を与えて入所者の度胆を抜くと、それまでの一切の人間関係を断たせた上で脅し揚げ、眠らせずに体力を奪ったうえで、同じことを繰り返し怒鳴りながら教え、復唱させる。それは何回などという生易しいレベルではない。教官が気の済む迄である。昼は厳しい肉体鍛錬で殺人術を刷り込み、24時間体制で就寝中もふいに叩き起こしては自分の頭で考えることが無いよう精神を摩耗させてゆく。初期訓練は12週間。これで殺人に関する迷いを数分の一(洗脳しない場合の)にする。
こういうタイトルをつけるなら、現実に行われているこの程度の洗脳の実例程度は調べた上で作品を書くべきだろう。作品としての強度が余りに弱い。
満足度★★★★
カゲロウは血の上澄み
立教大学の演劇研究会の作品だが、育ちの良い中産階級子弟のインテリジェンスとデリカシー、対人関係での遠慮などを見事に表した内容であった。最近、物語の必然性とは無関係にダンスシーンを取り入れたがる若者たちの真意を測りかねていたのだが、今作を観て、その意味する所が初めて分かったように思う。要は、自分たちの抱えている苦悩を大人のせいだと直接批判しないけどわかってね! というメッセージと解したのである。思えば、気の毒な表現形式である。
ところで、会場案内やもぎりなどの裏方の印象は頗る良いものであった。このサイトを通じてお礼を申し上げる。無論、シナリオ、演技にも見るべきものがある。舞台大道具はもう少し工夫が欲しい。椅子を持って入ってきたり、持って退場いたりは、ちょっと小うるさい感じがした。(追記後送)
満足度★★★★
なんだにゃ~~~~~~~~~~~っ
(追記後送)
ネタバレBOX
いい年をして引用ばかりしている馬鹿、その上で重箱の隅をつつくことで得意になるのもこれらイマジネーションの根本を認識する術を根本的に欠いた馬鹿共の得意とする所であり、この馬鹿に追随する更なる馬鹿共が、嘘を蔓延らせる温床なのである。彼らは、燃え盛る炎に喜んで飛び込む虫の如く、本能はあっても知性を残酷なまでに欠如させたヒトの形をした愚物である。現在、この植民地に蔓延るのはこのような愚物であり、エセである。
今作は、このような呆れ果てた世の中に、活を入れるべく立ち上がってきた作品とすることができよう。Noblesse obligeという表現が今作に一度だけ登場する。植民地に欠けている最も大切で普遍的な概念である。主人公たちが結成する政党の初代党首を務めた佐久間 修造の言葉の中に在った訳だが、佐久間は象山をベースにしているのは明らかだろう。(佐久間 象山と聞いて分からないヒトは勉強が足りない、もっと勉強もすべし。ところで、勉強って遊ぶことだよにゃんちって)
満足度★★
う~む
今作を今、掛ける意味が分からない。時代設定も場所も曖昧で、ジュリーが本当にエキセントリックなのかどうか、作品に描かれたレベルでは客観化できない。これは大変な問題である。自他の区別をつけることが、演出家にできていないことが明らかだからである。
役者陣の演技も、これが明治大学の演劇か!? と思わせるレベルのものであった。残念至極である。これは何も本編に限ったことではなく、ネット上での案内の内容でも、現場のインフォメーションのあり方にしても、とても被差別者として生きることで表現の鋭さ、温かさ、人間味、社会の諸制度が持つ問題の本質を抉ってこれた人々の位置に立てるレベルではない。猛省を促したい。明大の演劇関係で初の星2つ。残念至極である。
いずれにせよ、自分の力で勝負することなしに権威に頼るなどと情けないことを表現する者は決してしてはならない。これが、表現する者の最低限守るべきモラルであり、美学であろう。下らない生き方なんぞ、下種共に任せておけば良いのだ。表現する者は総て、精神の貴族をこそ目指すべきではないのか?
満足度★★★★
Bちーむ初日を拝見 花四つ星
こなれたシナリオ、流石である!
ネタバレBOX
特別養護老人ホーム紀陽の里は、芸能プロダクションに買収されて以来、現在は飛べない芸人や、スキャンダルに塗れて謹慎している芸人、アイドルなどの禊の場として用いられている。芸人は人気商売だから、事務所は、所属芸人たちが健気に反省したり、地道な活動で困っている方や社会的弱者である認知症の老人などのケアをしている姿を社会に見せる。業界復帰を狙わせる為である。無論、飛べなくなった者、駆け出し芸人たちが取り敢えずの生活費を稼ぎだす為もあれば、アトラクションなどで芸を見せることで事務所として当人たちの可能性を両立させる。こんなエクスキューズを巧みに使い分けつつチャレンジできる者はチャレンジする道を閉ざさない。無論、ここでは芸能プロダクション自体のイメージアップと実績作りを狙っている訳だ。アイドルなどは年齢を誤魔化したり、事務所のプロデュースのノウハウによる犠牲を蒙らされ傷つく者もいる。それが、心理的な機制となって周囲との人間関係を壊したりもする。結果、表現する者にとって最も大切な、徹底的に率直であること、というスタンスを狂わせてゆくのだ。
今作の優れている点は、以上のような様々な問題を、徘徊するキャラクターやおもらしをするキャラクター、認識に問題を抱えるキャラクター、疑心暗鬼に取り憑かれたキャラクターなど認知症の諸段階を一人一人の登場人物担わせて明確に表現している点。対してケアする側の実際問題である人手不足や過重な時間外労働問題、在宅ケア及び入居者ケアのスケジュール調整問題など実際に起こっている問題群を織り込みつつも、単に対比に終わらせず、そこに生起する恋愛や様々な人間感情のもつれをも、スタッフのたゆまざる努力と人間を肯定する力強さや優しさ温かさで乗り越えてゆく姿勢をキチンと打ち出している点、またこれらの処方で傷ついた者が己の姿に気付き変わって行く点を描いている点にある。
奇妙な仕掛けとして、徘徊癖のある入居者が一種の狂言回しをしていることが挙げられよう。だがこのキャラクターが認知症患者でもあることが肝要なのである。何故ならかつて狂人が一種の神の使いとして人々から扱われたような、我らヒトの古い記憶と歴史を踏まえて造形されているからであり、機織り機のㇶのように縦糸に横糸を通し、関係を紡いでゆくことによって、今まではなかった有用で新たな形を築いてゆくからでもある。多くの人にその役割を気付かれないままに。
タイトルの「ギンノキヲク」もシルバーエイジと神器として使われた金銀などのレアメタル、神々しさという言葉に含まれる重みと気高さをもその原初の意味を重ねていると考えられる。
序盤Bチーム初日の硬さが見られたが、まもなくこなれてきた。この序盤の硬さを取り払えば増々良くなる。
満足度★★★★
詩人の魂 花四つ星(カンダのが残念)
シャンソンの名曲にL'âme Des Poètesという曲がある。(追記後送)
ネタバレBOX
Longtemps, longtemps, longtemps après que les poètes ont disparu leurs chansons courent encore dans les rues…という、あれである。試みに私訳を記すと、詩人たちが亡くなってずっと、ずっと後になっても、彼らの創った歌が、幾多の道を流れる・・・。(興味のある方は、自分で歌詞を見付けて仏語辞書を引いて訳すと良い。簡単なフランス語だからちょっとフランス語に興味があれば、訳すことができよう。但しネット上で見つかる資料には間違っているものもあるから注意!)
前置きが長くなった。今作は、地方で金物屋を営む男が、人生の備忘録にと書き、出版社に送った小説の原稿が高い評価を得、権威ある文学賞の最終候補に残ったのだが、今日は、結果発表の当日。何となく落ち着かない新米作家の下には、地元紙、全国紙、スポーツ紙の記者、地場TVのレポーターらが、受賞関連の取材に押し掛けた。4人残っていた最終候補者のうち2名が抜けた。そのうち1名は盗作疑惑、1名は、ノンフィクション賞を目指していてプライドが許さない為の辞退であった。残り2名だから一騎打ちである。
初日が終わったばかりだから、ネタバレはこの程度にしておく。何れにせよ、緻密な作りで、地方の日常のゆったりした時空に緊張感と慌ただしさ、降って湧いたような状況下であれこれ惑う人間という生き物のチグハグな可笑しさが、各々の役者たちの佇まいと醸し出す陰影に彩られて実にしっとり描き出されている点は、流石にSpiral Moonの芝居と観客を唸らせる。おまけに、実力者揃いだからできる、途轍もない可笑しみが演じられる。それは、全員無言で同じ方向を向いて、恵方巻きの代わりに巻き寿司をもぐもぐ食べるシーンなのだが。何故こんなに可笑しいかと言えば、演出以外の部分で、恐らく個々の役者が己の想像力や悪戯心を解き放ち、自ら工夫したことをし始めると、最初に何かを始めた役者に呼応する感じで、他の役者達がアドリブで合わせていっているからではないか? 自分にはそんな気がした。ホントに途轍もなく可笑しいのだ。
「詩人の魂」に関することは、後に追記する。お楽しみに。
満足度★★★★
制度と差別 花四つ星
を日々生きるその地・人とのせめぎあいの中で見つめる目を感じる。 (追記後送)
ネタバレBOX
2020年東京オリンピック・パラリンピック大会を背景に巻き起こる小自治体の特別企画を、この劇団特有の制度・慣習観察をベースに時にはやんわりとした皮肉と自嘲の痛烈ギャグで茶化しながら、劇団メンバーにハーフが多いという特性を活かして、欧米と日本人ハーフの典型的な願い、複数祖国の架け橋になりたいという個人的でありながら普遍性を持つ強く熱い念に裏打ちされたヒューマンドラマ。様々な特技を持ったキャラクターが、所謂ヒーロー者をベースにした作品で訴えたのは、彼らが如何に社会を見、参加しているかである。とくと楽しんでもらいたい。
満足度★★★★★
スタンディングオベーション 花5つ星
曲、生演奏、歌唱力、演技力、舞台装置、音響、照明、脚本、振付、演出どれも素晴らしい。スタンディングオベーションがしたくなるほどであった。無論、花5つ★。
ネタバレBOX
ファーストシーンでスポットライトを浴びた領主が右手を天に突き上げ登場するのと同時に、大きな旗を掲げ客席から登場する妖精たち。大きくて真っ赤なクロスの4つの角を一人ずつが持ち、クロスを跳ね上げるとクロスの左右に居た者達が旗を掲げて各々反対側へ移動する様が2度描かれ、戦いを象徴するような若干の緊張感を伴った動きが実に美しい。演出家のセンスの素晴らしさが、これらの布の使い方に良く表れていて、しょっぱなから驚かされる。無論、これは最上の導入方法の一つである。びっくりさせるということが、表現にとって如何に大切なことであるのかは今更言うまでもあるまい。作家・表現者の世界に引きずり込む最も巧みで良質な方法である。まして今作はファンタジーである。妖精という人間の目には見えないハズの者達が主役とも言える今作にあっては最上の導入法であろう。
この後すぐに妖精達の踊りが披露されるのだが、この飛び跳ねるような踊りはスモークの掛かった中で行われる為、幻想的な美しさが際立つ。更に妖精達の笑い声や、猫の鳴き声に似た叫び声なども実に効果的であり、更に舞台奥の薄暗がりでは、ジャングルジムのように組まれた鋼製の枠に蝙蝠のようにぶら下がったパックが、蠢いている様が対比されていて、妖精達の白い頭髪や衣装とパックのモスグリーンの衣装は明暗差の中で白・黒の対比となって現れ見事な対称を為している。また、妖精の女王、タイテーニアの背中に付けられた襞のあるクロスは天使の羽に見紛う作りになっていて、これを広げたり、そのままの状態にしたりで、彼女の動きに更なる奥ゆかしさと異形の者の王族の神々しさを加えている。
更に、後半ループ状になった幅の狭いクロスを妖精達が二人一組になって操るシーンがあるが、呼応するパックの動きと共に実にあでやかで軽快感に富む美しいシーンである。
今作の原作は無論、シェイクピアであるが、イッツフォーリーズ版では妖精の王オーベロンの最後の科白から、障害を特定するような単語を除き、人の目に見えない妖精達(自然の化身)が人間を祝福し、支え原作同様の人間賛歌を提示してくれているように思われる。
振り返って、現実を見れば、中国は原子力大国を目指し、国内原発のみならず、原発輸出にも力を入れて核汚染の拡散に「貢献する」道を選んでいる。習は軍部を掌握しているのをいいことに、国内での思想・表現・情報の自由化弾圧と少数派弾圧に余念がない。無論、対アメリカを睨んでの新冷戦構築である。一帯一路路線や金融政策等で、もう一つの選択肢を広げるのは構うまいが、鎧は着込んでも見せないのがお洒落。見せるなら香を焚き込む程度の風流は欲しい。まあ、余り頭は良くないから望むだけ愚かというものではあろうが。パナマ文書で証拠が出たように、所詮下司野郎でしかないことも明らかなのだし(それでも安倍晋三に比べればマシだが)同じシュウでも周恩来とは雲泥の差である。馬鹿が国家のトップに立つことになれば、愈々、鈍感な連中にも第三次世界大戦が危機感を持って迎えられるようになろう。そうならないことを望むばかりである。
満足度★★★★
意味の意味
世の中には極めて論評し難い作品というものがある。
ネタバレBOX
今作もそういう系列に属するのではないかと思う。どういうことかと言うと、芝居という形でしか表現できないもの・ことを描いているように思われるのだ。即ち今作を過不無く論じようとすれば、このシナリオと同じになり兼ねないのである。粗筋は、リーフレットに載っているから割愛するが、ここで描かれていることの意味する所は、現実世界に多々在って、その蟻地獄に囚われて呻吟している人々、殊に女性はたくさん居るだろうからである。最後の最後で、一応、多少の光は見えるもののこれは無論、観客を穏やかな気持ちで送り出すための配慮に過ぎまい。
かなり重い作品ではあるが、至る所に現実のかけらが割れたガラスそのもののように散乱していて、観る者をその鋭い反射光と鋭利な切断面で問い詰める。
満足度★★★★
大坂夏の陣 花四つ星
真田のほか歴戦の勇士たちの姿を彷彿とさせる。
ネタバレBOX
大坂夏の陣での真田 信繁の活躍を中心に信繁を人質として預かった上杉 景勝やその家老、直江 兼続らの名将、長曽我部 盛親、後藤 又兵衛、信繁側近・作兵衛。関ヶ原では東軍に参加したものの、その後豊臣家に仕え大坂夏の陣では浪人衆を集め、敗戦後は秀頼の助命嘆願を願い出た大野 治長、豊臣軍の主力として奮戦した木村 重成、槍の名手、渡辺 糺など歴戦の勇士、名将が登場する。
興味深いのは、真田が徳川軍の防御を突破、家康を追い詰め、首級を上げるかに思われたシーンでの信繁・家康のやり取りの中で、今作は、史実と反対に信繁が家康を“日の本一の兵”と評し、天下布武に掛ける。即ち生命を立てたのである。核の脅威に宇宙船地球丸に存在する総ての生命が危機に晒される現在、この判断が正しいか否かは、ヒトの持つ矜持に掛けて吟味せねばなるまい。
満足度★★★★
ディストピア 花四つ星
人々は、既に海底に住んでいた。日本の話だ。
ネタバレBOX
時代設定はいつとも知れぬ。或いは妄想の類ということでも構わない。だが、自分には、若者がしっかり目を開き、見たもの、聞こえてくるものに静かに耳を澄まし、情報の氾濫の中で見るべきものをキチンと見つけた上で自ら思考し辿り着いた、実態のあるもののように感じられた。
自分の解釈を述べれば人々が海底に移り住んだのは核汚染から逃れる為である。水は有効な核フィルターでもあるのだから。ところで、海底に巨大な居住空間を作り、更に維持し続けて行く為には莫大な費用が掛かる。また、大きいとはいえ限られた空間内で子が生まれ、若者は老人になってゆけば、人口ピラミッドは、発展の形態から外れてゆき、生産性の落ちた老人たちの生命を維持し続ける意味も希薄にならざるを得まい。そのような状態のまま人口密度だけ増えていったら? 政治は何をするか? その答えの一つが今作で描かれている。描き方もちゃんと個人レベルを敷衍化する形を取っており、納得できるものだ。狭いスペースで余りにも声を張り上げ気味なシーンは何か所かあったが、この点にグラデーションを付けられれば、表現力は更に上がろう。極めて適確なシナリオで今後が楽しみである。
満足度★★★★★
RPG
緻密で幾重にも撓められた謎を60分で解いてゆく快感が堪らない。
ネタバレBOX
所謂RPG(ロールプレイングゲーム)なのだが、役者が適宜その役割に則った演技でサジェッションを与えたりはするものの、制限時間内に総ての謎を解かねばならないので、どちらかというと純粋に謎解きを楽しめる。企画力の勝利と言えよう。出題の具体的内容は出せないが、純粋に楽しめる。
満足度★★★★
花四つ星
舞台は素舞台。ダンス公演だから当然である。舞台奥に出捌け口、これは大きな額縁のような作りになっていて黒っぽい色、昆布でも上辺からぶら下がるような感じで矢張り同じ色の布が垂れ下がっている。
ネタバレBOX
開演時、一人の男を客席側を除く三方から取り囲むように鏡を持った女たちが取り囲む。音響、適度な昏さ、三方から己の姿を映し込むように囲まれた男の慄きに満ちた表情などからいきなり能の世界に迷い込んだよういな気がする。というのも直後、死神と思しき者が入ってくると女たちから鏡を1枚、また1枚と受け取って奈落へでも受け渡すかのようにどこかへ受け渡してゆくのだが、男は小刀で頸動脈を切り自殺を図るからだ。能は霊界とこの世のコレスポンダンスを描くことの多い芸能である。今作の舞台も正しく冥界。即ち死んだハズの者が最終的に黄泉へ旅立つ前に滞在する場所である。男は、この霊界で三途の川で石を積む子供と子供の積み上げた石をその度崩す鬼の姿を見たり、祖母だと言う者に孝養を尽くしたりするのだが、祖母は、孫を生者の国に帰す為に仲間と語らって自分を刺させ、因果の鎖を解いて冥界から生者の国へ帰す。こ謀は成功し男は息を吹き返す。と其処には自死直前に与えられていたパンがあり、それを取り上げて食べる。無論、これは明喩である。死んだ奴は放っておけ、生きる者は先ず飯だ! くらいの意味と取れよう。
あらすじは大体述べたとおりであるが、ダンスパフォーマンスなので、科白は、祖母が孫の名を呼んだあと若干、祖母の仲間たちがしゃべる位で殆ど無い。従って以上のストーリー展開は自分の解釈である。唯、このような解釈に至った理由は説明することができる。小道具に使われている短刀は、男が頸動脈を切る為に用いた物であり、祖母を刺したもこの短刀なら、何度か出てくる死と裏腹のシーンに出てくる刃物も総てこの短刀であるから、このアイテムは、冥界と現世を繋ぐ謂わば機織り機のㇶのような物と考えてよかろう。
また、一種の夢と解釈することもできる内容であることから、その根拠を否定し、現実に冥界と現世の行き来をしたという物語の設定を補完する役割も兼ねていると思われる。
これらの設定い奥行を加える為に、更に幾つもの仕掛けが工夫されている。例えば冥界で祖母の仲間が男に襲い掛かるシーンでは、死神と思しき者も登場する中、1人が出吐け口に使われている大きな額縁内に残り蠢いているのだ。目立たないが、殆ど科白零の物語に奥行を加える方法として効果的である。更に、開園後15分程もほぼ全員によるダンスパフォーマンスがあるのだが、暗転した時に死神役だけが、出捌けの額縁内に残っており、その後の再登場ではタイミングぴったりに出てくる。こういう細かい配慮が物語に奥行と深みを与え立体的で分かり易いと同時に広がり・深みを与えている。
満足度★★★
設定に難あり
経営難で備品(薬品、包帯、ガーゼ等々)迄不足し、CTなどの医療用機械も故障して使えないという救急指定病院の一夜を描いたコメディーだが、
ネタバレBOX
シナリオが荒く、終盤まで適確な集約点を見いだせるような構成を取っていないので、終盤部以外は、頑張っている役者の演技も活きてこない。シナリオ・演出をもう一度キチンと練り直す必要があろう。
病院の問題は、実際多々ある。これは事実である。救急車が急患を搬送しても盥回しにされて、結果患者が亡くなるということも報道される通りであろう。然しながら、日本の現在の病院で今作に描かれているほど機器が機能しなかったり、包帯や三角巾迄無いというのは、コメディーとしての細部を創れない設定で、リアリティーに欠け笑う前に呆れてしまう。シナリオライターは状況設定にもっと頭を使うべきであった。
満足度★★★★★
WASP VS ネイティブ
ローンレンジャーというTV番組があった。無論アメリカ製である。ローンレンジャーはWASPで連れにトントという名のネイティブアメリカンが出てくるのだがトントとはスペイン語で馬鹿・間抜けという意味である。(追記後送)
ネタバレBOX
ところで日本でも名を知られるNYのメトロポリタン美術館には、アメリカ開拓史(ネイティブアメリカンに対するジェノサイド史というのが正しかろうが)に纏わる展示がある。これを具に見るとアメリカに植民した所謂ピルグリムファーザーズが如何にレベルの低い文化しか持っていなかったかが本当に良く分かる。それに比してネイティブアメリカンの文化のレベルの際立つ高さが目を惹くのだ。実際、現在の日本にもうようよ居る、史実を述べられるとその史実をプロパガンダと名付けて排斥したがる愚か者たちと同様、反知性主義に毒され洗脳されていることにすら気付けないアホそのものであるアメリカの愚衆共が盲信している、頭の皮を剥ぐからインディアンは残虐だというレッテル貼りなどはとんでもない事実誤認である。