ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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In The PLAYROOM

In The PLAYROOM

DART’S

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2014/10/31 (金) ~ 2014/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

my game
 サスペンスものなので、筋などは、発表されているもの以外に書かない方が良かろう。約110分の作品だが、筋の組み立てが巧妙で引き込まれ、一瞬たりとも気が抜けない。どんでん返しが、次々に出てき、観客もゲームに参加しているような緊迫感と共に観ることができるので、時間は、あっと言う間に過ぎよう。ラストの部分がやや失速したような感じだが、面白い。

泥の子

泥の子

劇団 きみのため

劇場HOPE(東京都)

2014/10/29 (水) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

デジャビュ
感がある。自分のホントに小さな時、ここ迄悲惨ではないものの、雰囲気は残っていたからだろうか。(追記2014.11.12)

ネタバレBOX

敗戦3年後の東京、ニコライ堂の鐘の音が、響く病院アパートには、大家面した元小使いの老婆が、爆弾にやられたこの建物を人々に貸して日銭を稼いでいた。彼女、爆発で耳をやられて音が聞こえない。然し、その日の宿代の払えない者は遠路無く追い出すという冷静な面を持ち合わせている。中々因業な老婆である。
 現在、部屋を借りているのは、元鬼検事と自称する初老の男、何やら般若心経やら、観音経やらを誦し、鈴を振る。綽名は、先生だ。年齢は初老といった所か。帰還兵も居る。曹長だったとかで、中国大陸では若娘に酷いことをしたらしい。年中魘されている。猫を被ってはいるが、悪には違いない。綽名は復員。シナリオライター志願のヒロポン中毒者、ポン中。血を売ってはシャブを買っている。知識はあるが、ナイーブな男。靴を盗んでは金に換え、何と銀行預金を12万3千円もしているカッパ。自称大地主の息子で農地改革で財産を失った男。凶暴な犯罪を犯すタイプでもないが、ちゃらんぽらんな所もある。因みにカッパはカッパライから来ているのは、誰にも直ぐ分かるだろう。
その他姉弟が1組。貧しさから奉公に出されたが、年頃になると、器量の良いことから妾にされた。そんな暮らしが嫌で飛び出した後は、ストリッパーやパンパンをしながら中学生の弟を養って来たが、学の無い娘に他にどんな仕事があったというのだろう? それでも、弟に悪影響を与えられないと売春を止め、バーで女給として働くことで何とか身を立てていたが、彼女の美しさが仇を為した。チンピラヤクザにヤサを見つけられ、レイプされかかった際に、聞き及んだ居たヤクザの顔役の名を出して撃退したことから、このヤー公のレコにアヤをつけられた揚句、ヤー公から焼きが入ってレイプされた。おまけに、唯一の夢であった弟のマーボーは結核性の病に倒れて、薬の手配もままならない。唯一、治療に効果のありそうなペニシリン注射は1回1000円もする。薬代を稼ぐ為に再びパンパンに身を落としたが、名前を使った件に関してのレイプを1回で済ませ、シャブ漬けにもアヘン漬けにもしなかったのは、彼女の気性をヤー公が評価したからだった。然し、目を掛けたスケが誰彼構わず股を開いたとあっては、このヤー公の顔が立たねえ、となって2度目の焼きを入れられた訳であるが、本人は出張ってこない。手前のバシタのやっかみが怖いということもあるだろう、格好をつけて舎弟と例のチンピラを寄こした。舎弟がこのチンピラ命じた為に、この間のカラクリがばれていたこともあり、チンピラにも焼きを入れられる始末。
 それでも、鶴は弟の前で、金の心配をさせまいと「人気のある踊り子だから金は手に入る。心配はない」と嘘をついていたのだが、姉の不自然な態度をいぶかしんだ弟に質問されて、事実は、元パンパンの同僚、トンボの口から漏れてしまった。父と同じ病に罹ったと知っている弟は、父が患ってからの母の苦労を思い出し、姉の負担をいやがうえにも想起させた。優しい弟は終に自殺してしまう。
 弟を大学へやって世間を見返す為もあって、男断ちの誓いを立て、被ってきた泥を清めたハズの鶴であったが、レイプされて穢れ、たった一つの生きる目的・希望であった弟に先立たれて、ショックの余り床についてしまった。
 鶴の看病をしていたトンボは、就職してマッポになったを幸い、カッパを逮捕した復員に2万で手を打ってパイにして貰ったが、復員のあくどさはこんなものではなかった。復員が2万どころか彼の通帳を狙って首を絞めて来たので、反抗して自分も復員の首を絞めたが、気付いた時、復員の息は無かった。それで一旦、ヤサへ戻り、看病の為に其処に居たトンボを復員から奪ったワッパで拘束してトンコしてしまった。
 畳の上で往生したがっていた先生は、本当は鬼検事などではなく、主人家族を殺した殺人犯で、空襲で務所に火が回ったドサクサに紛れてトンコした脱走死刑囚であるとホントの事を話し、穏やかに息を引き取る。この辺り、最終的に、ホントのことを誰かに聞いて貰いたい、という人間実存の欲求を示してリアルである。
 一方、鶴は思うのである。死刑囚が観音に願って願いを聞き届けられ、畳の上で穏やかに死んだのに反して、苦労しかしたことのない姉弟が、人としての尊厳を踏みにじられたのみならず、最愛の者を奪われ、友人を失い、惨めさに泣くことさえできぬような苦悩を負わされる。そんな、神や仏とは何か!? と問う鶴の叫びは悲痛である。
 そして、このような叫びは至る所に在った。井上 ひさし作の東京セブンローズでも描かれていることであるが、戦い破れ、武器を取り上げられてしまった男なんぞ、何の意味もない。実際、戦後のどさくさに家族を守ったのは、女性達である。パンパンを余儀なくされた者もあったであろう。女を武器にした者もあったであろう。然し、現実に、戦前の飢饉や戦費調達に実質的に大いに貢献したのも女性の力が大きかったことを考えれば、売春をしていたからと言ってそれだけで彼女達を非難することは過ちである。からゆきさんの墓は、墓碑銘が総て古里に背中を向けていると言う。それだけ深い絶望を彼女らに味あわせたのが、我々の過去なのだ。そして、この過去を我々は未だ引きずっている。何故なら、既に多くの日本人がこの過去を忘れ、嘗て、売春婦を嘲ったように現在も差別し続けているからである。自分は、故あって無神論者である。然し乍ら、死者に対する冒涜とは、忘れ去ることであることぐらい知って居る。そして、忘れ去るとは、儀式化も含む。死者は、我らに、我らが生々しさを以て感じ続けることを要求するのだ。
 今でも、劇中のトンボの科白「自分は汚れている」という深い心の傷を抱える女性は多い。実際に、そういう傷を抱えながらも立派に社会復帰を果たし、他の人の面倒も見たりしてしっかりした生活を送っている方も多いのだが、また、知的職業に就いて、良い仕事をしている方もいるのだが、彼女達の心の傷は生涯癒えない。それでも、生まれてしまった彼女ら・我らは、誰しも自らの傷を生き延びねばならない。今作は、そのような覚悟の作品である。
 因みに神も仏も疾うに死んでしまったが!!
注:トンコ 脱走、逃亡のこと。
  シャブ 覚醒剤
  レコ 女
  バシタ ステディ
  パイ 釈放
  ヤサ 家、住まい
  ワッパ 手錠
  マッポ 警察、警官
『母の死』『大臣候補』

『母の死』『大臣候補』

オフィス樹

シアターX(東京都)

2014/10/28 (火) ~ 2014/11/01 (土)公演終了

満足度★★★★

名作劇場
「母の死」能島 武文の作品だが、上演記録が無い。実際に上演されなかったのか、それとも上演されたのだが、記録がないだけなのかは不明である。然し、前者であっても、不思議でない気がする。シナリオに曖昧な部分が多いのが、原因である。逆に言うと、演出次第でどうにでもなる。但し、難しいのは、如何に観客に納得させるかである。余り、恐れてもいけないし、なめてもいけない。自然に見えながら、尚、ドラマチックである為にどうつくるかである。兄と呼ぶのは、妹ではなく姪であるし、父が帰ってくると彼女の居る場所が不安定になるのだから、母方の命だろう。その姪が何故三五郎を兄と呼ぶのか? 「たまにして!」の意味する所は? 姪、よねの、はるに対する感情表現などは? 等々演出すべき所は多々ある。
「大臣候補」長谷川 如是閑の作品。全然、古びていないどころかまっさらのような作品。痛快である。(追記後送)

押入れのちよ

押入れのちよ

演劇集団 笹塚放課後クラブ

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2014/10/28 (火) ~ 2014/10/30 (木)公演終了

満足度★★★★

国を創った女性達
 恵太は、セレブ相手の営業マンで、営業成績は常にトップ。そろそろ、プロポーズしようと思う純子という名の彼女がいる。純子と申し込んだフレンチレストラン、3カ月待ちで漸く席が取れた。(追記2014.11.13)

ネタバレBOX

 新任の課長、駒沢が大阪から赴任して来て、恵太の上司になったが、新居を購入、そのパーティーに誘われたが、レストラン予約日と日時が重なってしまった。パーティーに出席しなかったことを根に持ち、課長は、恵太をいびりだす。問題のある顧客ばかりを担当させ、ちょっとでもクレームが来ると、罵倒した。恵太は辞表を提出して、会社を去ったが、純子のことは忘れられぬ。然し、新しい仕事が決まり、課長を見返す迄は、頑張ろうと、綺麗好きな純子の為に、風呂付格安物件を探した。漸く見付けたマンション、予算の月5万よりずっと安い3万3千円で借りられたが、マンションとは名ばかりの3階建て、築35年の古いマンションだ。3階には3部屋。入居したのは302。301、302、303号室があり、303号室には、早大受験を目指す受験生が居た。301は、パワーショベルの運転を生業とするヨマンさんを含む仲間11人が、多分、同じ間取り、6畳(押し入れつき)とダイニングキッチン、風呂のスペースで暮らしている。然し、観光ビザで来日したままなので、警察を警戒している。
安い物件に、多少の疑義は抱きながらも、恵太は、経済的負担が少なく、取り敢えず、純子が来ても大丈夫な条件を具えたマンションに引っ越して来た。然し、その夜から、おかしなことが起こった。見ず知らずの女の子が、市松人形のような和服を着て、自分の部屋に居たのである。名前を訊くとかわかみ ちよ、14歳と名乗る。生まれは、明治39年だと言う。「出て行って欲しい」と言う恵太に「行く所が無い」とちよは応える。最初は幽霊だと怖がっていた恵太だが、事情を飲み込んで行くと、放ってはおけない気持ちになり、ちよに同居を許すが。
 ところで、今作、ハッピーエンドで終わらせて欲しい、と観劇中に思わせた稀有な作品である。ちよが背負わされていた世の中の余りの理不尽が、観客の心をそのように動かしたのである。ちよ役の田中 香子の熱演に拍手!【これ以上のネタばれは現時点では控える、楽日以降に追記することを約束しよう】
 以下、追記である。ホントは、この他にもう一つ、オチがあるが、トーンが変わるので書かない。
 アイスクリンを食べさしてやると、島原の叔父の家から300円で売られ、女衒に連れ出されたちよは、長崎から出港した船で南方へ向かった。カラユキさんとして僅か14歳の生涯をマラリヤで閉じる為に。カラユキさんの多くは、島原や長崎の貧乏な百姓の娘である。物同然に売られ、苦界に沈められた年端も行かない娘たちが、売春を強いられ、体を壊せば隔離されて碌な治療を受けられないどころか、役立たずとして食事さえ満録に与えられずに死んでいった。だから、カラユキさんの墓は、総て墓碑銘が故郷の反対を向いていると言う。その悔しさ、哀しさは筆舌に尽くし難いものであっただろう。その念が、ちよの霊に形を与えたのだろう。ちよの遺体を掘り出したのは、パワーショベルの運転をしているヨマンさんに違いあるまい。日本に来て彼の肩凝りが治ったのは、ちよの霊が離れたからであろう。何れにせよ、カラユキさんら、この「国」の犠牲になって異国で儚く亡くなった多くの方々に対して、無神論者としての立場も弁えず、冥福を祈りたい。
アポトーシス

アポトーシス

0 LIMIT

浅草リトルシアター(東京都)

2014/10/28 (火) ~ 2014/10/29 (水)公演終了

満足度★★★

もう少し、大人の笑いが取れると素敵
 折角、アポトーシスなんて難しい言葉を用いているのだから、わざとらしく声を張り上げるて滑稽味を出すような擽りや稚拙な演出でなく、アポトーシスサイドからのブラックユーモアも欲しかった。

ネタバレBOX

 
 エリーの動機は、無論、それなりの説得力を持つが、それとは次元を異にするレベルで死んで行く3人の死の描き方にセンスの良さが見て取れる。演出、演者双方が、真に人生の苦みを知れば、もっと大人のブラックユーモアの作品をものすることが出来よう。
【全日程終了】葉桜/ぶらんこ 【ご来場ありがとうございました】

【全日程終了】葉桜/ぶらんこ 【ご来場ありがとうございました】

7度

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2014/10/24 (金) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

7度
 7度という劇団名について、良く質問を受けるらしい。リーフレットの説明によると、音楽用語だという。ドから7つ目の音、即ちシの音を7度の音と言うそうである。そして、この7度の音を用いて、西洋音楽に新たな地平を切り開いた作曲家が居たと言うのである。彼の名はエリック・サティー。「ジムノぺディ」「干からびた胎児」「世紀ごとの時間と瞬間の時間」「夢見る魚」「逃げださせる歌」等々、数々の名曲を残したパリの場末のピアノ弾きである。だが、20世紀の作曲家の中で、現代人に、これほど愛されている作曲家がいるだろうか? 彼以外に。まあ、自分の感傷などどうでもよい。(追記後送)

月の出る国

月の出る国

夢幻舞台

中野スタジオあくとれ(東京都)

2014/10/24 (金) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

To be or not to be, that is the question.
無論、ハムレットの有名な科白である。総て、この世に生を受けた者がハムレットのようである必要はないし、民衆には、そんなことに悩む暇も金もないのが実情、という事情もあろう。然し、思春期から、どんなに遅くとも青春期のある時期に、ハムレットである必要はある。即ち、人生が生きるに値するか否かを真剣に問うべき時期が、誰にでもある。この作品は、その古くて新たな問題を、自分自身の視点から問い直した作品である。ストーリー展開としては、ベタだし、決して器用ではない。然し、人間として、そして、これから、大人になって行く過程で、まともな人間なら避けては通れぬ問題を真正面から、取り上げ、取り組んでいる姿勢が爽やかである。ラストの一行は美しいぞ!!

読書劇「岸上大作全集全一巻」

読書劇「岸上大作全集全一巻」

オフィス再生

秋葉原アトリエ「ACT&B」(東京都)

2014/10/24 (金) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

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1960年12月5日未明に自殺した学生歌人、岸上 大作の名を知る者は少なかろう。自分も名を知っていたのみである。まあ、結果から言えばそれで充分な歌人と言わざるを得ない。1冊しか出版していないからではない。そんなことならば、Baudelaireは生前“Les Fleurs du Mal”1冊しか出版していない。侃々諤々はあったものの、19世紀彼の評価を普遍的なもの成らしめたのは、この詩集1冊だけの功績である。而も、彼は、世界の大詩人である。この詩集が出ていなければ、その後の世界詩壇は大いに違ったものになっていたであろう。だが、岸上は、無論、大詩人でもなければ、詩人ですらない、と自分は思う。
では、何故、彼は、もてはやされたのだろう。少なくとも、一時期。(追記後送)

嘆きのベイルート

嘆きのベイルート

ピープルシアター

シアターX(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

背景
 1975年からレバノン内戦が始まった。然し、他の中東地域などと同様、この遠因というより、直接的原因は、第一次世界大戦でドイツと共に敗戦国となった旧オスマントルコ支配地域の、英仏による不自然で不条理な分断政策にある。今作で扱われるのは、1975年からサブラ・シャティーラ虐殺事件(1982年)迄の期間である。この認識が無いと、今作の意味する所は、捉えきれまい。
上演中でもあり、大切なポイントだけを挙げておくと、元々のレバノンは、ファハル・アッディーンの支配地をベース(小レバノン)とし、ドゥールーズ派が多かったが、フランスが、この地域を含めシリア領域であったエリアを大レバノンと唱えて内部対立させ、独立派を抑えようとした為、レバノンという国家は、大シリアに統合された諸地域、諸宗教が、歴史的、文化的、社会的に自然な結合を無視した形で強引に成立させられた。これが為に、レバノンは極めて人工的な政治体制が組まれ、17ある宗派の其々が、どの政治的ポジションを取るかが決められていた。一応、国政調査に基ずいた人口比率によったのだが、その国勢調査自体、アリバイ作りの為に行われたに過ぎず、定期的に実行されるなど民意を反映するものでもなかった為、人口実態を反映させることができず、民衆の鬱屈は充満していたのである。このような中で、宗派対立などが、抑えきれなくなれば、人々のアイデンティティーは危機を迎える。そのように不安定なアイデンティティー問題も、今作では極めて重要な要素であることを意識して観劇すべきである。
役者の力は、高いので、もっと観客席に踊り込むなど、観客に臨場感を持たれる演出が望ましい。また、若者の苛立ちや疾走感の象徴として置かれているバイクが、使われていない間、象徴としての機能を重んじるなら、スポットなどで、必要に応じてライトアップするなり何なり、何か工夫が欲しい。(追記後送)

匂衣(におい) ~The blind and the dog~〈当日券あり!〉

匂衣(におい) ~The blind and the dog~〈当日券あり!〉

劇団印象-indian elephant-

シアター711(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

演劇好きに受ける作品

 初演は2010年4月。韓国の役者とのコラボレーションであったという。演出家が、随分悩んだ時期の作品だ。今回は、タイの役者とのコラボレーションである。日韓の差異以上に大きな差異を持つ日タイとのコラボは、果たしてどんなテイストを産み、どんな間と、表現を我々に観せてくれるか。その快い緊張も楽しめる。日本語に習熟しているハズの日本の役者だけでやっても無論、役者の身体や個性で様々なテイストが生まれる。それが、生き物としての芝居である。日によっても、回によっても、無論同じ物は二度とない。当たり前すぎる程当たり前のことなのだが、そのような微妙なテイストをキチンと、演出家が個々の役者から引き出し、役者は、己の役を、物語が要請する必然的な形をキチンと押さえたうえで過不足なく表出している。主演の彩香役、山村 茉梨乃 ホム役のナルモン・タマプルックサー、光一郎役の鈴木 穣らの演技が、より強い感情を観客に惹き起こせるように、母役の橘 麦、万丈役の泉 正太郎、厳島とパーカッション担当の広田 豹が、適確な表現に徹している点も見逃せない。

ネタバレBOX

 
 殊に、嘘と真と矛盾のバランス、全盲の少女の鋭敏な感覚と明晰な頭脳が、ほんのちょっとした、齟齬から、真実を暴いてゆく過程の緊張感や、嘘を見抜いた後、事実を受け入れ、精神的な成長を遂げてゆく彩香の姿と、幼い自分と愛犬、ヨソベエへの訣別を表し、次へのステップを踏み出す象徴ともなるダンス表現は圧巻である。
更に、終章、光一郎とホムの別れの場面、10数える場面で1,2,3,4~と日本語で数えて来たホムが、7からは、母語のタイ語で数を数えてゆくシーンも粋で、彼女の哀しみを澄みきった海水の哀しみのように深く苦い着地点に導く。この別れを告げた、男の狡さ、優しさを表現した鈴木 穣の役作りも素晴らしい。
 作品の内容は、とても微妙で、センシティブなものだし、上演中なので、内容については、これ以上触れない。
 See you Again!

See you Again!

劇団 浪漫狂

シアターサンモール(東京都)

2014/10/23 (木) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★

白浪漫組拝見
 若手漫才日本一を決める日、突っ込みが、ぼけをかました。呆けは、それが、わざとだと気付いていたが、自分と妹のことを思ってだと分かっていたので黙っていた。これが、もとで、3年前の決勝には、敗れた。その因縁の対決が3年後に為される、という設定自体おかしい。ホントウに登竜門なら、勝った側は既に売れっ子になっているハズではないか?

ネタバレBOX


 劇中、演じられる漫才が全然面白くない。漫才が大事な作品なのだから、本物の面白さが観たい。話が表層的で、わざとらしく感じられた。
上手いと感じたのは、タケシ役。他の笑いが、笑いを取りに来るのがミエミエだったり、笑い自体が陳腐だったのに比べ、キチンと桁を外す笑いだから、腹の底からカラッとした笑いが込み揚げてくる。元の弔いに来たタケシが「アゲインのファンだ」という科白や「他人の為にシャカリキになって何かできるってのは、いいね」なんて科白が泣かせる。
きとうのときうた

きとうのときうた

宴友企画

d-倉庫(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

重層化が欲しい或いは捻りが
ストーリー展開がやや単調に感じたが照、明・音響の使い方は効果的だ。更に観客の心を鷲掴みにする為には、現代をと交感するような視座を何処かに嵌め込んでおきたい。様々な方法が在り得ると思う。梛役、空木役が気に入った。桃役も爽やかでピュアな感じが良いし、鬼灯と牡丹、椿の関わりは可愛らしい。また、菖蒲役の品は流石である。(追記2014.10.23)

ネタバレBOX

 今年2人が、通過儀礼の儀式としての狩りにチャレンジする、桃と柊だ。既に儀式を終えた、空木、梛、鬼灯を加えた5人は、大の仲良し。おまけに、鬼灯を兄と慕う牡丹、椿が、妹分である。妹分達を入れると7人衆になる。
 今日の狩りも失敗だった。他の4人にお膳立てをして貰いながら、桃は、そのポテンシャルの高さとは裏腹に、その余りの優しさと大切に育てられた環境から、おっとりした所から抜けきらないでいる。それに引き換え柊は、より野性的でアグレッシブである。
 男3人のうち、桃の失敗を優しく慰め、フォローしてくれるのが、梛。村で最も腕もたち、何をやらせても出来るのが、空木だ。集落の長は、馬酔木。
 ところで、成人へのイニシエーションとはいえ、狩り場のある森の奥には、鬼が棲むと言い伝えられており、特に月の細る時期には里近く迄鬼がやって来る為、くれぐれも用心しなければならない。だが、半月の間、練習を重ねたのに、桃はまだ一頭も大物を仕留めることができないでいた。そんな折、牡丹と椿は、容体の悪化した母を助けようと、万病に効くという、森の奥の霊木を探しに行った。妹分を探しに5人組も捜索に加わったが、鬼に襲われ、桃を守ろうとした柊は深手を負ってしまった。妹分達を助け、漸う、帰村したものの、柊の命は費えたと思われた。彼女のケアは一応、馬酔木に任されたのであるが。何れにせよ、不甲斐ない自分を守る為に柊は命を落としたと考え、桃は深く傷つく。そして、仇を取ろうと独り森の中へ入ってゆこうとするが、友人たちが放っておかない。森に分け入った4人は、矢張り、鬼に遭遇する。而も、最初に出会った鬼とは比べようもない程強い。何とか、命を保ってその場は逃れたが、森で出会った奇妙な老人、木賊から語られたのは、思いもよらぬことであった。(上演中故、ここから先は明かさないが、物語は急展開する)
Re・BIRTH-南総里見八犬伝異聞-

Re・BIRTH-南総里見八犬伝異聞-

super Actors team The funny face of a pirate ship 快賊船

ブディストホール(東京都)

2014/10/19 (日) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

流石長い歴史を生きて来た古典
 言わずと知れた曲亭 馬琴の「南総里美八犬伝」をベースとした作品だから、読んでいる方も多かろうが、念の為、一応粗筋を記しておく。(追記2014.10.22)

ネタバレBOX

宝珠チームを拝見、今作は、南総里美八犬伝異聞の前半である。前半だけで3時間の大作だが、隋所にきらりと光る科白があり、殺陣も多く飽きさせない。殊に注目すべきは、怨霊となった珠梓が、女の身の不幸を切々と訴える場面で、男女差別に煩くなった現代に於いても、その科白の訴えはいささかも古びていないのは、流石である。また、その訴えが、玉梓を悪の権化として描くというより、女性の哀れを通して人の哀れとして描いている所に、普遍的な文学作品の質を見る。
 今作の時代設定は室町。結城の戦いで敗れた里美 義実は、安房へ落ちのび裏切った山下 定包の首を討った。その際、定包の妻、玉梓の命は助けると約束したが、忠臣、金碗 八郎に“生かしておけば国を滅ぼす”と諭され、首を撥ねてしまった。首を撥ねられる前、玉梓は、里美一族の根絶やしと国を崩壊させることを呪詛として投げつけた。
 時は下り飢饉に見舞われた義実の城を、隣国の領主が襲った。形勢不利と見た義実は、敵将の首を討った者に姫をやる、と下知。その任を果たしたのが愛犬の八房であった為、伏姫は、八房の妻となった。
 と、玉梓の怨霊が現れ、姫が、八房の子を身籠りやがて八つの命を生み落とすと予言する。姫を守ろうと果敢に戦った八房は、無残に殺されたが、その念は、姫を懐妊させていた。そこへ、許嫁の金碗 大輔が姫を救いにやってくるが、玉梓に翻弄され、姫を殺めてしまった。亡くなる前、姫が気を放つと、彼女の数珠から八つの珠が飛び散った。その一つ一つには一文字ずつ文字が刻まれていた。その文字とは、仁義礼智忠信孝悌の八文字。
 大輔は、その後、伏姫の菩提を弔い、悪霊となった玉梓の怨霊の呪いを解く為、飛び散った珠を持つ八人を探す旅に出た。姫の菩提を弔うのであるから、当然、出家してゝ大と名を変え、僧形に身をやつした。
 更に時は、流れ、ゝ大ハ、次々と成長した珠の持ち主達に出会い、玉梓との決戦に向け力を蓄えてゆく。

Siren Song【アフタートーク&握手会イベント決定!】

Siren Song【アフタートーク&握手会イベント決定!】

Lunar Punk

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2014/10/15 (水) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★

まるきり繋がりのないように見えるこの話、果たして結末は?
 2つの物語が交錯しながら展開する。1つは現代物で、エンパスという特殊能力(他人の痛みを我がことのように感じることのできる能力)を持つ男に纏わる。もう1つはファンタジーで、こちらは、過去のとある時代、とある地から、不老不死の霊肉を求めて、大海原に乗り出した、船乗りとサイレン族の物語。
(追記後送)

アンサータン・ストーリーズ

アンサータン・ストーリーズ

演劇ユニット「クロ・クロ」

劇場MOMO(東京都)

2014/10/15 (水) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★★

才能

大學の文芸サークルで、ライバル同士だった2つの才能。一人は、現在、売れっ子作家
一人は、亡くなっていたが、一人の女性を巡って、才能同士が、微妙な関係・心理を紡ぐ。
(追記後送)

目々連ー覗き込む葉ー【千秋楽当日券あり!】

目々連ー覗き込む葉ー【千秋楽当日券あり!】

鬼の居ぬ間に

「劇」小劇場(東京都)

2014/10/16 (木) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

化け物の正体
この国の不可視の部分を、相互監視と村八分を基軸に描いた秀作。原発村が、何故、これほど厄介なのか? その謎の一端も解けるのではないか? (追記2014.10.22)

ネタバレBOX


日本人の畜人根性は、恐らく太閤検地で人別帳を権力サイドに握られ、刀狩によって、権力に反対する為の武器も奪われたことによって、民衆が自らの権利を主張する為の要件を失わされたことから生じている。即ち権力押し付けのベースを作られ、江戸幕府の朱子学によって、倫理的統制を受け、更に、五人組などの連帯責任制を負わされることによって、その畜人根性の完成を見た、と自分は、考えているのだ。
それ以前、日本人の発想は遥かに自由であった。戦国時代を一言で言い表す時、人々は下剋上と言う。これは、個々の自由裁量によって何でもできる、ということである。尾張の信長が下半国の守護代織田家の奉行の家系出身であることは良く知られていよう。而も、信長の父、信秀は、小大名並みの軍事的指揮権を持ち、経済的基盤も強かった。従って主君を倒すだけの地力は具えていたと見て良かろう。その、嫡男として生を受けた信長が、その賢さを力のないうちから見せていたとすれば、無論、暗殺されていたに違いない。従って「うつけ」と呼ばれる程に、桁外れな行動を取って、人々から馬鹿者という評判をとったのは、信長の天才性を示すものであって、それ以外ではない。こういった、自由が、戦国期の日本人にはあったのである。織田家の家系図に怪しい所があることも、出自が細工できるような内実があったからできたことである。無論、今でも、最高権力者の座についてしまえば、行えないことではあるまいが。何れにせよ、時代が下剋上という一言で表されるように、発想と自己裁量の自由があり、且つ、その野心なり夢なりを実現する為に、闘う為の武器も持っていた点に注目する必要がある。そのことが、他の権力、権力者に立ち向かうことを許したのだ。
だが、先にも述べたように、江戸時代に、武士以外の階級は、その牙を抜かれ、寄らしむべし、知らしむべからず、という論理の下、徹底的に抑え込まれた。飢饉や火山の噴火、冷水害、地震、津波等の災害によって、米の収穫が大打撃を受け、年貢減免を願い出ても、温情が示されることは少なく、追い詰められて一揆に及べば、首謀者、関係者は打ち首、犬死にであった。義に従い、情に従う村方三役は、このように権力に惨殺されてきたのである。だから、お上に逆らうことは、避けねばならない暗黙の了解事項となったのだ。このような背景があればこそ、今作に描かれたような、村の総意が、その力を遺憾なく発揮するのである。そして、そのことが、この植民地の民が持つメンタリティーのエグさなのであり、醜さなのだ。その点を今作は、実に見事に描いている。
湯浅桂樹の頭ん中

湯浅桂樹の頭ん中

神田時来組

ART SPOT LADO(東京都)

2014/10/11 (土) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★★

未だ延びシロあり
15分の短編、2編と1時間の作品1編という変則スタイルのオムニバス。1.事故PR 2.師走にDON 3.茜荘

ネタバレBOX

1. 事故に遭ってむちうち症になった患者が訪ねてくるが、医者は、常識はずれの「治療」で対応、終にはお門違いの職種の人間迄絡んできて!

2.彼女に浮気を疑われたサンタクロース。事実を打ち明けて誤解を解こうとするが、彼女は、自分の彼が、本物のサンタクロースだとは信じられない。サンタクロースは、真実を明かしたことが、掟に触れた為、相棒のトナカイに殺されてしまうが、トナカイが彼女迄襲おうとしたので、必死になって彼女を庇い助けるも、自らは終に詩を迎える。最後にサンタのつけ髭をねだるラストは、小品とはいえ泣かせる。

3.3作品の中で唯一、1時間の作品でキャストの数もグンと増える分、ストーリーも込み入り、面白く拝見した。今は無人島となった島に立つ茜荘に、募集に応じて集まった男女、そして、募集を掛けた会社の社員一人が、繰り広げる男女関係そのものをゲーム化したような世界。単に、恋愛の様々なパターン(あり得るものとしては、ゲイやレスビアン、通常のヘテロ、三角関係、スワップ等々)を内包しつつ、今作が導いて行くのは、殺人事件である。それも、200年後の世界で起こる殺人事件だ。その頃迄には、血液型の相違を原因とした戦争が起こっていて、登場人物はたった一人を除いて、総て同じ血液型。そして、その事実は、この事件の起きる二十数年前に、抹殺されていた。従って、人々は、自分達以外の血液型が在った事実を知らない。ここに、残った唯一の人物を除いて。殺人事件の顛末や如何に?
傘の確率

傘の確率

TOLTA

調布市内 京王線つつじヶ丘駅から徒歩8分 詳細は予約後にご連絡します。(東京都)

2014/10/12 (日) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★

現実の切り取り方が詩的な点が好みだ
砂丘、星、温泉、プラネタリウム等に憧れ、旅をしたいトルタロボトークと関口文子によるダイアローグ。

ネタバレBOX

文章は、演劇の科白というより詩的散文と言った方がしっくりくるような文章で、言葉によって、通常の生活次元の箍を外されたような体験であった。
500万

500万

A.R.P

千本桜ホール(東京都)

2014/10/10 (金) ~ 2014/10/14 (火)公演終了

満足度★★★

あったかコメディー
僅か500万の身代金を要求する為に誘拐を働く、という設定には、無論リアリティーが無い。

ネタバレBOX

 しかし、この点こそ、今作のミソで、500万程度の金なら、退院ではあっても、庶民が何とか1日で都合をつけることが出来そうな感じはする。そういうレベルでの温かいコメディーである。
 シナリオ自体べたで中盤に掛かる頃には、結末まで見えてしまうものの、流石に、ディーテイルには、工夫が凝らしてあって、その点では、良い意味で裏切られ楽しめた。シナリオがベタな分、役者達の演技や歌で作品が立体化すると、矢張り感動的だし、楽しめる。
 今後、更に延びてゆく為には、演技を内側からにじみ出るようなレベル迄高めることを目指して、研鑽に励んで欲しい。
今は昔、栄養映画館

今は昔、栄養映画館

劇団乗越

あさくさ劇亭(東京都)

2014/10/11 (土) ~ 2014/10/12 (日)公演終了

満足度★★★

今後、更に芸を磨かれることを。
 映画のタイトルを科白に織り込んだり、コンセプトの「枠」を決めてその微妙なバリエーションを表現するタイプのシナリオを卒なく演じているが、未だ、膨らみは弱い。若いユニットのデビューとしてはしっかりしている。
 

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