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だからビリーは東京で

だからビリーは東京で

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/01/08 (土) ~ 2022/01/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#西條義将 #古山憲太郎
#津村知与支 #生越千晴
#伊東沙保 #成田亜佑美
#名村辰 #蓬莱竜太(敬称略)
【初日】
♬かつて、これほどまでに愛しく、優しく、心地の良い木々の陰はなかった♬
BGMで使われた『Ombra mai fu』の歌詞。太い梁、立ち並ぶ材木が作る陰で、より良い作品を目指して模索し衝突し蠢く演劇人たち。一見その陰は居心地の良い場所には見えないけれど、演劇は人生の縮図のようで、ロープが絡み合うようにマーブル状の人間模様。人の思いはスレ違い衝突する。covid-19によって寸断された人間関係。他者や社会と隔絶された時間と場所の中で自分自身を見つめ、未来に不安を抱きながら、存在価値や人生の意味を考えてみたりする。やがて、かつての場所を、あの陰を愛しく思うのかもしれない。そして同時に、作家演出家の、俳優の、スタッフの、陰に対する優しい気持ち愛しい気持ちが劇場を包み込んでいるに違いない。だからきっと、思いを寄せ合い衝突しながらも何かを生み出そうとした陰は、振り返ると心地よかったと思うのだろう。
105分の全てから演劇人の叫びが聞こえてくるようであったし、同時に演劇人に対するエールであったと思う。
演劇人の苦しみは、そのまま全ての人の苦しみでもある。辛さや生き辛さは誰にでも共通する。分かり合えないと感じる家族との摩擦もそうだろう。蓬莱さんの中にも、深く根を張っているのではなかろうか。
あのラストシーン。彼等の背中から匂い立つモノに触れて、心から湧き出る泉を搾る演劇人がたくさんいるに違いない。演劇を愛する者も同様だろう。わたしの席から見えた大好きな生越さんの横顔に、そしてその隣で一瞬生越さんに視線を向けた成田さんにも、震える思いと溢れる泉の存在を認めて、演劇人の2年間を両手でひと掬いし抱きしめた。

これまで何度も書いてきたけれど、モダンスイマーズ は今作も3000円で上演している。映画を2回観たつもりで生の俳優の演技を目の当たりにして、終演後にお茶を飲みながら語り合える。

⚠️東京芸術劇場シアターイースト
1/30まで

「ストロング」

「ストロング」

坂井水産

RAFT(東京都)

2021/12/29 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#坂井宏充 #木村梨恵子
#浅倉洋介 #山崎丸光
#栂村年宣(敬称略)
12/30 12時
#月いちリーディング で取り上げられた作品。「稽古初日」という企画ではあっても、目の前で俳優さんの呼吸も体温も感じられる劇場で観ることができて本当に楽しかった。「稽古初日」という企画ではありながらも二日目。配役をシャッフルして「初日」を担保。でも、脚本は事前に渡されていたのではなかろうか。これは批判ではなく、あまりにも楽しく素敵な上演であったからの疑問。本読み以上、立ち稽古未満な感じの上演で、脚本の面白さも相まって素晴らしい時間を提供してくれた。これで、演出が入っていないのであるとすれば、俳優恐るべし。バケモノ(褒めてます)が揃っていた。
目当ての木村梨恵子さんはキュートが過ぎた。観る度にその愛らしさに心奪われる。だっさいニックネームで呼ばれる可愛い女性なんて反則。巧さが鼻につくことなく、役のキャラクターのままに本から飛びだしたような無邪気な危うさを纏って限りなく可愛い。まるで自分が奇跡の出会いをした錯覚に落ちてしまいそうなくらいに痺れた。改めて恋に落ちた。
実力派俳優、浅倉洋介さんも味わい深い演技で客席の感情を引き寄せた。完全に彼の気持ちで恋に落ちた。
夢のような出来事。演劇の素晴らしさが確かにそこにあった。今作、このキャストで上演して欲しい。3回は観たい。

地獄変をみせてやる。―人生失笑(疾走)篇―

地獄変をみせてやる。―人生失笑(疾走)篇―

あんよはじょうず。

TACCS1179(東京都)

2021/12/29 (水) ~ 2022/01/02 (日)公演終了

実演鑑賞

#金子清文 #久保井研
#西川康太郎 #亀田梨紗
#千歳まち #中村ナツ子
#奥泉 #高畑亜実(敬称略)
サイケでパンクでカルトでアングラだった。嫌いじゃない。荒ぶる作りの作品ではあるけれど雑ではない。緻密に作られている。特に音響は超一流。照明も最先端。その中でノビノビ自分を解放する亀田梨紗さんを観られて楽しかった。

赤目

赤目

明後日の方向

王子小劇場(東京都)

2021/12/29 (水) ~ 2021/12/31 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#黒澤世莉 #蔭山ひさ枝
#上条拳斗 #菅野貴夫
#國松卓 #高田遼太郎
#直江里美 #野村亮太
#百花亜希 #渡邊りょう (敬称略)
劇的だった。それは、劇とはそういうモノだという意味で劇的だった。自由だった。どんでん返しとは違うけれども、辻褄がどうとかを超越してしまったような感覚。支離滅裂とまでは言わないが、意外性と言うか、危うさみたいなモノを感じた。
群馬県民なら誰もが知っている上毛カルタの『て⇒天下の義人 茂左衛門』。上野国、沼田、月夜野……、暴君の領主と苦しむ農民が、現代の身勝手な政治家と希望を持つことを諦めた民衆に映る。
誰かを活かし、自分を活かす。何を選び、何処へ向かうのか。進むべき我が道を見極めなければいけないと、新年を迎えるにあたり考える機会となった。
2021年の最後を百花亜希さんで締めくくれた幸せを噛みしめている。

ばいびー、23区の恋人

ばいびー、23区の恋人

マチルダアパルトマン

駅前劇場(東京都)

2021/12/28 (火) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#織田奈那 さん
#見里瑞穂 さん
#金子学 さん
#池亀三太 さん
フライヤーの吸引力がハンパない。だって可愛いんだもん。オヤジ臭がダダ漏れしました。すみません。
実際の織田さんは、美しいよりは可愛らしい。ビューティフルよりはキュートだった。見里さんは何作品か拝見しているけれど、活きの良さは今作品でも健在。
ただ……恐らく池亀さんが執筆している時に意識した劇団員の姿が色濃く反映されているからに違いないが、そこに居ない初演キャストの松本みゆきさんと穴泥美さんの姿が浮かび上がる。というよりは、そればかり追ってしまっている自分を認識している。
転換のBGMに使われている大垣友さんのギターのリフが、それ以外に考えられない程にフィット。
それにしても、終始客席が笑いに包まれていた。あなたも観たらいい。

マンホールのUFOにのって

マンホールのUFOにのって

マチルダアパルトマン

OFF OFFシアター(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#池亀三太 #松本みゆき
#宍泥美 #大垣友 #早舩聖
#久間健裕 #宮地洸成
#御飯ゆかり #小久音
#葛生大雅(敬称略)
二本の短編のような公演で、それは表と裏とも言えるし、スピンオフと言えなくもない。人生は自分の視点でしか見ることは出来ないけれど、目に映るその人にも人生があって、その人の視点からは、当たり前だけれど別のモノが見える。
人を大切に思わせてくれる作品。
マチルダアパルトマンらしい作品。楽しい。
松本みゆきさんは相変わらずすっとぼけた役で、たまらなく愛しい。
そして小久音さんの猫がオモシロ可愛くて癒された。

おわれる

おわれる

イサカライティング

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/12/29 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#毛利悟巳 さん
#新田佑梨 さん
#矢部祥太 さん
#小野晃太朗 さん
観客は観たもの聴いたものを、何にでも当てはめて考えることができる。演劇とはそういうモノなのだろう。だから、コレでイイのだろう。
メタファーに次ぐメタファー。何かを意味しているのだろうし、かもしれないし、ではないのかもしれないけれど、そうでないとすると、理解しようとすることを脇に置いてしまったことや、理解が追いつかないいたたまれなさを棚に上げてしまったことは、ココアが無い以上に行き場が無い。
話をすることを目的とした話すための話は、話したいことではなく義務であり労働でもあるのかもしれない。そこから派生していく不自然な会話は不自然な過去の行動を導き、フゥ〜ンと納得できるほどに彼等は誰で何者なのか何を議論しているのかを掴むことができず袋小路。会話の不自然さはまるでアンドロイド。
人はこれまでもこれからも、目に見えないものを恐れて畏れて、大切にする。いつだって自分のことを言葉にするのは難しい。人生は辛く苦しい旅であるのかもしれないけれど、そうでないかもしれないし、そうでないと願い、そうではないと信じたい。
わが人生は何に追いかけられているだろうか。何を負い生きているのだろうか。
毛利さんは今作でも違わず眩しかった。
新田さんがこれまでとは別人のようで、ミステリアスな新しい魅力を纏った。

ハムレット

ハムレット

西荻窪芸術センター

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/27 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

#三村聡 #大久保美智子
#中川佐織 #星善之
#高島領也 #喜多京香
#塚瀬香名子 #鶴澤津賀寿
#竹本京之助(敬称略)
古典を上演する時、「丁寧に忠実に上演する」ことと「それでは新鮮さを欠いてつまらない」という考えに分かれる傾向にあることは理解している。最近では後者が多い気がする。温故知新の精神は、まず丁寧に忠実に作ってみて、そこからのステップとして様々なトライがあればイイと常々思う。
今作は配役にひと工夫されている。目当ての塚瀬香名子さんの姿を存分に味わえてこの上なく嬉しい。以前に学生と作る演劇公演で彼女が『ハムレット』に出演されたのを拝見しているが、それとは全く違う楽しみを味わうことができた。いろんなカンパニーで上演された本作を観てきたけれど、王子が愛する女性に向ける叱責、罵詈雑言、尼寺へ行けと繰り返す視線の先に、こんなにも強く母への憎悪と、肉欲や煩悩への嫌悪が感じられた公演は無かった気がする。理解していることだったはずなのに、ハッとさせられた。さらに、悪や不正を憎む正義の印象が強かった王子に、他者(フォーティンブラス)と自分を比較して嫉妬し、己を嘆く人間らしさや弱さを立ち上げたのも塚瀬さんの功績と言えるだろう。
衣装への試みも興味深い。西洋の貴族と和装が混在する意図についてずっと考えを巡らせている。
王殺害の回想にアレを運び込んで活用するのもユニークで滑稽さが生まれた。カブトムシのヘラクレスも面白い。
しかし、野鳥の会の如く王子が双眼鏡で覗くのが母のベッドという演出ならば、悪趣味であり本作品の王子像にそぐわないと感じるのはワタシだけだろうか。ましてや母と叔父の情事をあんなに露骨に作る必要性があったのかも疑問である。かつてこの作品でそんな演出を観たことはなく、いい大人が困惑した。
最も違和感を感じたのは三味線と浄瑠璃。そこに人形浄瑠璃に似せた表現まで被せて長々と……。残念ながら唄われた大切な説明台詞は、その抑揚が邪魔して耳に入らなかったが、それは唄い手のせいではない。
演出の冒険は、まぁそういうものだから、そうなのだろう。むしろ脚本に誰がどんな手を加えたのかは演出以上に興味をそそられた。ボローニアスが異国へ旅立つ息子に話す三つの教えには手を加えていないのだろうか。分かりやすくて感心したが、本に変更が無いのなら演出と俳優の手柄だ。来春、家を出る双子の娘たちに何て言えばいいだろう……そんなことを今から考えている。

硝子はオバサン

硝子はオバサン

演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#奥田努 #小野健太郎
#姜暢雄 #力徳旺 #田中佑果
#綾野アリス #和田真季乃
#日高ボブ美 #山村涼子
#山下直哉 #長尾純子
(敬称略)
人生はピリッと辛い。でも、だからこそ愛の甘さを知る。優しさと愛ある厳しさに温まる冬の夜になった。大好きな長尾純子さんは艶やかさを存分に発揮して、劇中ばかりでなく客席の全てのオトコを虜にする。一滴の憂いをスポイトした笑顔に何でもしてあげたくなる。煙草を許せる女性は桃井かおりさんだけなワタシも、カウンターで虚空を仰ぎながらため息を着くように煙を燻らす後ろ姿に見惚れながら胸を痛める。この色気に男どもは骨抜きにされるとイイ。
良いスナックには素敵なママだけではなく、匹敵するスタッフがいる。綾野アリスさんが演じるミユが、美しさも勿論だけれどその存在で店の質を示す。かつてママに言われたことを語るだけで、彼女が乗り越えたり抱えたりしているものを感じさせる。そして辛口でありながら、その振る舞いは粋である。ショットグラスを煽る姿に痺れた。カウンターの隣に座りたかった。この人の次回作も観てみたい。
初めて拝見した公演でウェディングドレス姿が眩しかった和田真季乃さんは、健気な姿で一石を投じて作品を動かす。こんな人が職場に居たら恋せずにはいられない。
日高ボブ美さんはいつだって唯一無二の存在感。ちょっと残念な感じのある役どころを見事に成立させ、その上で心根の美しさを立ち上げて見せてくれる。笑いとペーソスを全身に蓄えた最強の俳優の一人。
男たちは一様にヤキモチ妬きでダラしない。まるで自分を見るようで辛いのだけれど、なんだかチャーミングなところも見せてくれて救われる。強くあらねばと自分に言い聞かせてみる。

横幅のある演技エリアに組まれた高さのあるセットが二つの空間を立体的に構築する。積み木を組み合わせたような美しさで、観やすくて、客席のどこからでも楽しめるはず。入場は到着順だし、だから、今からでも遅くない。クリスマスに人の温もりを味わいに足を運んでみてはいかがでしょう。

『水』/『青いポスト』

『水』/『青いポスト』

アマヤドリ

新宿シアタートップス(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#相葉るか #相葉りこ
#榊菜津美 #一川幸恵
#大塚由祈子 #中村早香
#村山恵美 #さんなぎ
#ばばゆりな #佐藤美輝
#星野李奈 #菊地音々子(敬称略)
『青いポスト』
語り部を務める劇団旗揚げメンバーの中村早香さんが、そのトーンで作品に相応しい重厚感の下地を敷く。
そのベテランに対峙する一川幸恵さんが、ウットリするほど綺麗でちょっと焦る。あらやだ、いつの間に。
初演に引き続き出演されているキャストも劇団員もコチラの方が多く、アマヤドリらしい群舞もあり期待値も高い。でも、今回の初見でアマヤドリらしさを感じたのは……何故かアチラ。それは初演のキャストが脳裏にチラついたせいだろうか。役とキャストのフィット感に対して、初演の刷り込みによるフィルターを勝手にかけてしまっているのかもしれない。声質の影響も多少はあるのかも。
もう一度観る時には、きっともっと受け入れられるに違いない。ちゃんと確かめよう。

『水』/『青いポスト』

『水』/『青いポスト』

アマヤドリ

新宿シアタートップス(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#河原翔太 #徳倉マドカ
#松尾理代 #宮川飛鳥
#右手愛美 #一之瀬花音
#阪本健大 #木村聡太
#齋藤拓海 #冨永さくら
#瀬安勇志 #福冨宝(敬称略)
『水』
フリーパスで何度も観ていた頃の人が去り、或いは外部公演に客演し、アマヤドリがアマヤドリではないと思っていたし……ある意味では思っている。でも、今日観たコレは紛れもなくアマヤドリで、新生アマヤドリが素晴らしい作品を上演していた。拍手を贈りたい。
2014年に観た『水』は疲労困憊の中で観たせいか、はたまた同時上演の『海の夫人』のインパクトが強烈だったからか、掴みきれず印象が薄い。だから『あれ⁉️こんな話だったっけ⁉️』というのが本音。いやぁ、面白い。主宰の広田淳一さんの社会に対する鋭い目が、人間の奥底にある反社会的な思考や行為を盛り込みながら、我々の道徳や倫理の正しさについて問いかけてくる。いま改めて、2014版を観返してみたいと思う。
今回注目していたのは右手愛美さん。出産と子育てのタイミングで自身の劇団の活動を休止していたため、舞台の姿を観るのは久しぶり。何を隠そう、アマヤドリに嵌ったのは彼女を観るために出かけた2013『うそつき』がきっかけで、それ以来ズブズブに愛してしまったワケだ。右手ちんは変わらず魅力的だった。魅力的だということは変わらないけれど、役も表現も大人だった。冒頭しばらくは誰だか分からなかったくらい。かつての魅力はそのままに、抑えの効いた落ち着きが増し、素敵だった。
今回の発見は阪本健大さん。早台詞も聞き取りやすいし、陽気さと神妙さの振り幅とバランスが見事だった。彼の声と表情と動きに引き込まれた。次の出演も観たい。
美術や照明も美しかった。
あっという間の140分。長くないよ。怖くないよ。是非とも観て欲しい。

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

monophonic orchestra

APOCシアター(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#リバース、リバース、リバース!
#寺田華佳 さん
#小口ふみか さん
#橘花梨 さん
#橋爪未萠里 さん
#浅野千鶴 さん
2回目。初日には、登場した小口さんといきなり目が合う席に座っていて、自分の引きの強さを感じたわけだけれど、今回はとあるシーンで橘花梨さんの正面を狙ってみた。ビンゴ。射抜かれた。

あのシーンで、小口ふみかさんがイヤホンで聴いているのが久保田早紀『異邦人』なのがシュールで悶絶する。そういう仕掛けが堪らない。
展開を知って観ると、俳優さんたちが敷いた表情の伏線にゾクゾクする。『うわぁ、ココでそんな顔をしていたのか!』にたくさん出会える。

遠慮せずに2回目、ご覧ください。

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

monophonic orchestra

APOCシアター(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#カラオケの夜
#佐藤みゆき さん
#森崎健康 さん
夫婦だから全てを曝け出せるのか、夫婦だからこそ気を遣って言えないのか……答えの出ない永遠の難問。良い関係を築いたり保ったりするために努力すること。それは無理をすることになるのか。確かに夫婦には何らかの覚悟のようなものは必要だと思う。「夫婦なんて所詮は他人」とはよく耳にする。でもそれは、分かり合えないことを何かのせいにして蔑ろにしたり諦めたりしている言い訳と言えなくもない。我が妻も、何度か伝えても変わらない……変えようとしないことは幾つもあって……もう仕方ない…と諦めている部分は確かにある。きっとその逆でワタシにも妻にとって許し難いことがあるだろう。性格、育った環境、染み付いたモノは簡単には変えられない。もし同棲をしていたなら、果たして結婚に至っただろうか。その時間に、曝け出すか気を遣うか、許せるのか冷めるのか……。かつて、そんなことを考えたのを思い出す。
子は鎹。この二人の7年の時間にコウノトリが天使を運んできたなら違う時間が訪れただろう。我が家の双子の娘が春に家を出て、夫婦だけになった後のことを考えると少し怖い。
音楽の力は本当に凄い。音楽は人生に寄り添い、彩り、その時間の価値を高めてくれる。メロディーに乗せたら言えることがあったり、誰かの歌詞に代弁させて思いを伝えたり……最強のアイテム。だから、大切な時間や思い出にこびり付いて剥がすことができずに苦しむことだってある。イントロを聴くだけで一瞬にしてその時が蘇って、嬉しかったり苦しかったり悲しかったりする。
音楽の力をよく知っているであろう佐藤みゆきさんがこの作品を演じられるのを観られて、本当によかった。歌もよかった。
森崎健康さんは、以前から味のある素敵な俳優さんだったけれど、いやぁ〜惚れ惚れする。
この二人の未来を、2時間半の帰路でずっと考えていた。きっと新しい人生を応援し合うのだろう。それでも、かつて志したあの仕事に対して「今からだって遅くない」と思える二人なのだから、人生を共にやり直したってイイ。その可能性を残してくれた須貝英さんの優しさに感謝して床に就こう。

■おまけ■
結婚式の入場BGMに大好きなビートルズの『IN MY LIFE』をタック&パティという夫婦デュオのカヴァーで使った。その一週間後にブルーノート東京で行われた彼らのライブに出かけ、1stステージを終えた二人に声をかけると楽屋に招かれた。式のことを伝えると、2ndステージで予定になかったその曲を「二人の為に」と紹介して歌ってくれた。素敵な夫婦だった。
https://youtu.be/WB6eHS8Bwos

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

monophonic orchestra

APOCシアター(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#ファーファーファーファー、ファーラウェイ
#湯口光穂 さん
#月岡弘一 さん
本公演終演後のExtra Stageとして上演させる短編作品の一つ。本編より先にコッチを知って即座に予定を入れたのはナイショ。
友情と愛情、友だちと恋人の狭間の問題は答えの出ない永遠のテーマ。揺れる想い、伸縮する実際の距離と心の距離。短編の中で長い時間を生きる二人の歴史をガラケーとスマホがサポートする。面と向かっては言えないこと、顔が見えないから言えることがあって、羨ましかったり切なかったり。セピア色の思い出も、声という魔法の雫を一滴垂らせば、一瞬で鮮やかな色が蘇える。
みんなキュンキュンしたらいい。
目当ての湯口光穂さんは、所属劇団主宰に「普通の子を演じられる」と評価されているが、なんだか大人びて綺麗なお姉さんになっていた。わたしにとっては、とうの昔に"普通の子"ではなくなっているのだけれど。ドキドキしたのは脚本のせいばかりではないんだよな。

他のExtra Stageも魅力的なキャストが揃っていて、観られない作品が気になって仕方ない。
Extra Stageの短編作品を集めたスペシャル上演回もあったらよかったね。

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

monophonic orchestra

APOCシアター(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#リバース、リバース、リバース!
#寺田華佳 さん
#小口ふみか さん
#橘花梨 さん
#橋爪未萠里 さん
#浅野千鶴 さん
奇跡のキャスティング。お一人ずつの出演だって観に行く俳優さんが揃って、情報を知った時にはリアルに「マジか⁉️」と声に出してしまったほど。首を長くして待った初日。皆さん期待を超えてくるだろうという期待通りに素晴らしかった。
まず最初に橘花梨さん。もうもうもう本当にバケモノ(褒めてます)だ。あれ程までにこの役を具現化できる人はいないだろう。無邪気はこの上なくキュートで、嫌味を嫌味なく存在させられて、"だからそうなる“を見事に立ち上げる。スキップが似合う俳優👑No.1を贈呈したい。最近は綺麗なお姉さんの役も増え、それが大好きなのだけれど、今回の役は彼女の真骨頂。これぞ橘花梨という姿を堪能できる。彼女を観るだけでも足を運ぶ価値がある。素晴らしい。
出会ってからずっと観続けている小口ふみかさん。笑いを生むのは努力の前に天性の資質が必要だと思う。あの視線と口角の動きだけで笑いを誘えるのだから敵わない。コメディエンヌの才能もここまで磨かれれば最上級品。彼女の可笑しさを満喫した。
橋爪未萠里さんは正義。作品に落ち着きを与える。それまでの葛藤の上に構築させた静かな口調で、作品に奥行きをもたらす。流石。
浅野千鶴さんがスイッチを押し舵を切る。CMで見せた明るくて優しいママの奥にオカルト映画の"来るぞ来るぞ"を忍ばせ、恐怖を増幅させる。深い愛情があればこそ鬼を生む。天晴れ。
この怪優(褒めてます)たちに囲まれる人柱は、最年少の寺田華佳さん。襲いかかる猛獣相手に一歩も引かずに四つに組む。その場所で充分に輝けることを証明してみせた。お姉様たちと良い関係で初日まで作り上げて来たことが伝わる。
初日の幕が開き、5人の強者どもは更に色を濃くしていくに違いない。もう一度観るのが楽しみだ。たくさんの人に観てほしいオススメの作品。

東京

東京

小松台東

RAFT(東京都)

2021/12/10 (金) ~ 2021/12/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#小松台東east
#小園茉奈 さん
#松原由希子 さん
#兼行凜 さん
#塚原大助 さん
▶️Nチーム▶️
今作も宮﨑が舞台。でも、台詞は標準語。なぜなら、地元の登場人物がいないから。主宰の松本哲也さんの作品は外部への脚本提供公演を含めてたくさん観てきたけれど、標準語のみの作品は初めて拝見した。それでもしっかり宮﨑の風景が見えて、空気を感じられた。三人の女性の台詞と感情の受け渡しが滑らかで楽しい。だから空気の揺れが心地よく、観客も彼女たちの感情の波に乗る。
やはりこのチームのエンジンは小園茉奈さん。小松台東に何作品も出演していることもあり安定の面白さ。そう、面白い。客席もまんまと笑わせられる。ともかく視線が雄弁。驚きも困惑も納得も感心も…み~んなあの大きな瞳で見せてくれる。
ジャンルじゃん…が、ジャン・バルジャンに脳内変換されてひとり笑いを堪えた。

チームN……ナチュラルのN。
自然にその空間に取り込まれた。

東京

東京

小松台東

RAFT(東京都)

2021/12/10 (金) ~ 2021/12/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#小松台東east
#永井ちひろ さん
#椎名慧都 さん
#小川あん さん
#菊池均也 さん
▶️Sチーム▶️
地図を見ながら世界へ旅をする……気持ちになると聞くことがある。もうそれは、気分ではなく旅しているのだと思う。ある意味で。演劇も、いや観劇も同じなのだと思う。誰かの人生を生きることができる。そして自分のこれまでの人生やこれからの人生と重ね合わせたりして、心のどこかを埋めたり補ったり。
今作もまた、宮崎へ旅をした。青島の海が、かつて大学の同級生の実家へ泊めてもらった時のことを思い出した。
見つめられるContrexと悩めるTropicana。作品の中にあるナイショも語られない秘密も蜜の味。小松台東には甘い蜜がたくさん詰まっている。でも、軽くない空気に満ちている。彼女の苛立ちの原因について考えてみる。
俳優座『戒厳令』で初めて観て気になった椎名慧都さん。全く別の表情に引き寄せられた。ラストの星で表情に花開いて、なんとも美しかった。目当てだった小川あんさん。悩みを抱えた感じも好きだけれど、笑顔の彼女は無敵だ。

チームS……スペシャルのS。
特別な時間だった。

莫逆の犬

莫逆の犬

Nana Produce

新宿シアタートップス(東京都)

2021/12/08 (水) ~ 2021/12/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#荒井敦史 #傳谷英里香
#百瀬朔 #浜谷康幸
#お宮の松 #入江雅人
#とみやまあゆみ #東原里夏
#山口森広 #森永友基
【初日】永遠の愛の誓いなんてモノほど儚いものはない。人の心は移ろいやすい。時は人の気持ちも関係も変えてしまう。無常観。秘密を共有する者の絆は太く強い。だからこそ、一旦それに綻びが生じると修復は困難である。愛や恋にダメージを与えるのは、いつの時代だって嫉妬だ。恐ろしい怪物だ。ソイツに打ち勝つ術はない。小さな恐れ……疑念は、直ぐに腐敗臭を放ちながら傷口を広げていき、やがて全てを飲み込む。抗うことはできない。
キャスティングが素晴らしかった。
短い時間でも、クソでウンコな女のリョウを演じた #とみやまあゆみ さんは流石だった。作品に存在する登場人物の必要性というのは、その長さではなく意義だ。彼女はそれを証明し、姿を見せずとも作品の重要なパーツを担っていた。
百瀬朔さんが演じた弟のダメ男ぶりもよかった。
お宮の松さんも何作品も観てきたけれど一番よかったなぁ。
傳谷英里香さんの演技を初めて観たのだけれど、不安を抱えた従順さの危うさが伝わり素敵だった。次の出演も観てみたい。
暗転を効果的に用いた演出は、時の経過……繰り返される日常を静かに語った。
ただ戸口の開閉のSEのタイミングは、もう少し合わせないと気になる。
座席については感染予防対策のゆったりした間隔に慣れてしまったので、隣と肘が触れる距離には抵抗を感じるようになってしまった。せめて5cmの間隔を取って欲しい。

わたくしたち、人中短ガールズです!!

わたくしたち、人中短ガールズです!!

東京E-Do motions.

新宿眼科画廊(東京都)

2021/12/03 (金) ~ 2021/12/08 (水)公演終了

実演鑑賞

#高橋里帆 #与古田千晃
#神近梨子 #都倉有加
#吉岡瞳 #福田真夕
#池田恵子
んなわけねぇ〜よ……とツッコミどころ満載すぎて苦笑い。
そこで気付く。
そうか、コレは演劇。フィクションだし……そう、エンターテインメントだ。旗揚げ公演も可笑しさに溢れ、笑いの絶えない公演だったと思い出す。コメディを観るスイッチに切り替えて楽しむことに徹する。
学校生活は100%に近い日本人が経験していること。だから「あるある」を感じる事柄も多いし、共通の体験をしている人も多いはず。そうなると、提示するモノは精度を上げないと粗が見えて恥ずかしくなる。もっと楽しめる可能性……あるような気がするなぁ。
アノ場所で生きている者として何を大切にすべきか……他山の石にせねば。

ダウト 〜疑いについての寓話

ダウト 〜疑いについての寓話

風姿花伝プロデュース

シアター風姿花伝(東京都)

2021/11/29 (月) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#亀田佳明 #伊勢佳世
#津田真澄 #那須佐代子
正義、真実、純粋……それらは正しさとなり得るのかは、たくさん議論されていることだ。同時に、善と悪の対決は見た通りなのか、悪と善ではないのか。視点を変えれば見えるものも変わる。厳しさと優しさも同じことが言える。信じることと疑うことはどうだろうか。権力を持つ者は正しい行いと思想や判断を有するモノなのか。コトを詳らかにすることは虐げられた者を幸せにするのか。白と黒に色分けすることとグレーを受け入れることはどちらが幸福なのか。頭をフル回転させ自身の倫理観を問い続ける。圧巻の100分。結末がそうとは限らないけれど、終演後はなんとも清々しい。きっとそれは、ホンモノの俳優が四人、そこで生きてみせてくれるからに相違ない。一点の濁りもなく、そこで目の前の悪や不道徳や不条理と闘ってみせてくれる。映像であろうと舞台であろうと、お芝居に携わる全ての……いや、もう本当に全ての人に観てほしい。演劇の素晴らしさ、俳優の凄さがわかるはず。
さて、教室で生きている者として、どれだけできているのか自問している。津田さん演じるアノ人の思いがジリジリと詰め寄ってくる。
日本人は……いや、ワタシは、あんな風にキチンと議論できるだろうか。できてきたろうか。心許ない。ましてや地位や名誉や権力を有する相手と。誰とどういった状況であっても、冷静で物怖じせずに対処できる人間に……なれないけれど、なろうとする姿勢や気持ちを持ち続けたいものだと思っている。
素晴らしい時間だった。

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