満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/14 (土)
朝鮮半島北部 ヨナン温泉付近の湖畔の村を舞台に、日帝時代を背景にしてチェーホフ「かもめ」をベースに翻案した作品です。
この2週前に双身機関のチェーホフ「三人姉妹」を観たが、あれも翻案と言うべき内容で、上手く仕上げてくれると原作ストレートプレイより、極めて馴染み良い。
原作では どうしたって観る側が社会背景や価値観を共有し難いので、当然といえば当然だが、韓国は古典に対して翻案で挑むのが主流と知ってちょっと感心した。
以降、ネタバレBOXへ
満足度★★★★
日帝植民地時代の朝鮮に翻案した『かもめ』は原作を尊重した作りで重厚。一秒たりとも注意を怠れない、疲労を伴う観劇でこれに見合う感想の言葉を混沌とした感覚の海から拾い出すのも一作業だ。物語の進行と同時に、演出をみる観劇であり、対面客席の間に横に長くとって様々な大小の「ゴミ」が雑然と置かれたステージがまず観客に突きつけられている。
このステージの両脇には(恐らく反対側もそうだろう)モニターが地味に置かれており、中央には壊れた傾いた台が置かれ、端から昇った先でストンと降りる設定のため人物はその方向にしか移動せず、登退場も一方向だけである。従って役者はハケた先のドアから裏を通って会場の対角線の先まで移動して登場している事になる。
この方向が破られるのは一度、それまで殆ど目に止まらなかったモニター上の動きを観客は察知して注目する。出口には金網の扉があり、これが一度だけ施錠され、人々が閉じ込められた時間が暫時流れたあと、鍵を開けにやってくる男だけが逆方向を「許される」。
数々の演出のそこが私にとってのピークで、言わば「予感」と「期待」の時間であったが、その後「戦争」という局面に入って行くと、多田演出は尚も観客の注意を喚起する「場面の変化」のツールとして、地響きを多様したり思わせぶりな照明変化を入れてくるのだが、私の読み取りが凡庸なのか、同じ手に頼っているようにみえた。言葉にするなら、「実は・・」「実は・・」「いや実は・・」と、物語を聴く者の関心を繋ぎ止める手段を演出的な作為で行なおうとする、その「手」が長大な芝居ではカバーできなかった、という言い方になるだろうか。
「期待」と「予感」の時間の延長戦として登場した「戦争」の位置づけ方にも理由があるかも知れない。植民地で志願兵制度という名の緩い徴兵制が導入されたり、やがては徴用や労働力徴収(強制連行)と発展してゆく「背景」としての「日本がおっぱじめた戦争」というものが、朝鮮半島の生活にも浮上する。ただ、朝鮮人民にとってそれは自分らが都合良く利用される植民地時代というレジームの延長であり、平時から戦争体制という変化の意味合いは日本とは本質的に異なる。「戦争」が持つドラマ性に朝鮮人民が親和的になる事は、当事者にとって「恥」として回顧される類いであり、それこそが他国の支配がもたらす悲劇であったりする。即ち朝鮮人民の「分断」こそが悲劇であり、「戦争になったこと」そのもの以上に禍根を残すものだった、私はそう考える。
その意味では、「戦争」という事実の強調として地響きを用いる演出などは、私には違和感があった。思わず注目はするが何か薄まってしまうものを感じたのは正直なところ。
「期待」と「予感」の前半があまりに素晴らしいために、膨らんだ期待に見合う後半には届かなかった、という全体の印象の、それはほんの一瞬よぎったものにすぎないが。
だが、果敢な挑戦がもたらした舞台であり、ネタ切れ?とは言ったものの、演出という技術の可能性を発見させてもくれる大作だ。
韓国俳優陣も素晴らしく、女優(母)が息子トレープレフの感情的罵りに遭い、不意を突かれて自らの来歴にまで思いを馳せ「心が崩れた」瞬間を、動かない背中で演じた演技と演出は、彼女の人生がそこに包摂される歴史の悲劇も浮き彫りにし、圧巻というほか無かった。
やはり傑作。上演時間は約2時間25分、カテコ込み、休憩なし。チェーホフ作「かもめ」の舞台を日帝時代の朝鮮に置き換え、原作の核はそのままに(あるいはやや誇張して)、支配/被支配の関係にある二国間で翻弄される人々を描く。
いきなり大音量のK-POP、J-POP等で異化し、安易な感情移入を許さないのが、笑える上に残酷で私好み。
韓国初演時の俳優がほぼ勢ぞろいで演技は深みも余裕もアップ。アルカージナ&トレープレフの場面が素晴らしい!「かもめ」を知らなくても無問題です。ぜひ!
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カルメギ食べたい…タンスユク食べたい…ジャージャー麺食べたい…チキン食べたい…
6年以上前
土曜はカルメギ😋
6年以上前
『カルメギ』がなんか『再生』っぽくて、良すぎてわけわかんなくなって衝動的にららぽーと富士見の周りをぐるりと一周したらけっこう距離があって疲れて、それでも鶴瀬の駅まで歩いて行ったら下赤塚の人身事故で電車が動かず、それくらい『カルメギ』はよかったし、ららぽーと富士見もよかった。
6年以上前
土日休んでも全然回復しないのでこりゃ夏バテだわなぁと思う気持ちとけどよくよく考えると最高気温更新される中一泊二日でディズニーランド行って飲み会も2件行ってBOATもカルメギも観に行ってそれなりに仕事も育児もしてるんだからこれで疲れないのもおかしいって気持ちと
6年以上前
今回の「가모메 カルメギ」公演、無事終了いたしました。いた方、いなかった方、もうここに運ぶからだを持たない方々にもお礼申し上げたく思います。どうもありがとうございました。
6年以上前
@pomipomipudding ぜひぜひ!カルメギがいい例だと思います!
6年以上前
『가모메 カルメギ』。私を知っている一部の人は気づいたかもですが、字幕にちょいちょい現れた謎の日本語は、私が青森の津軽弁に訳した台詞でした。「아뇨, 괜찮소이다...」を「なんも、けね…」と訳したのは個人的にはかなりクリティカルだ… https://t.co/8uoZQYFjqi
6年以上前
『가모메 カルメギ』、おととい無事に、全日程を終了しました。たくさんのご来場ありがとうございました。写真は私が中盤で舞台上から盗んでいく人形です。座組内では「スニム人形」と呼ばれていました。 https://t.co/ocrze29YPS
6年以上前
「カルメギ」を思い返す。多摩美の時、木元さん演出の舞台で、私が人殺した後にフェードインで小島麻由美の「甘い恋」が流れるってシーンがあって楽しかった。大音量のポップな音楽の中、登場人物の感情が揺さぶられてるって個人的にツボなのよね…あとトラメガ。下北感?ヴィレヴァン感?
6年以上前
東京デスロック+第12言語演劇スタジオ、カルメギ。於キラリふじみ。チェーホフが下敷きであることより、日韓合同の創作上演のインパクト。日本と朝鮮が時間の流れの中でどうあり、そしてどうなっていくのかという主題。とても多田さんらしい作品。カルメギ≒かもめとは何なのだろうかと考える。
6年以上前
台風の日「カルメギ」観劇。 こんな間近で演技を見るのは初めて。 Kポップ好きな連れは爆音レドベル、TWICEグッズ、BTSのTシャツに喜んでました。
6年以上前
「カルメギ」韓国人役の人が好きな女性にふられて自殺するのは違和感なく見られるのだけれどこれが日本人だと違和感があるなぁと思った。日本に女性にふられて死ぬ男性の話が少ないからかな。韓国の人にとってはどうなんだろう。今度聞いてみよう。
6年以上前
週末にカルメギ観たら、やっぱりperfume聴きたくなった。歴史としてつい先日の西日本の大雨のことが刻まれて、更新されていく歴史のことを考える。
6年以上前
『가모메 カルメギ』については、もう少しツイートする予定です。
6年以上前
『가모메 カルメギ』④ 『가모메 カルメギ』では、日本語と韓国語のコミュニケーションの壁、言語のすれ違いがくり返し描かれ、それはタイトルそのものに刻印されている。このディスコミュニケーションに対置される理想として登場するのが、ドクトル姜=ドールンが話すエスペラント。
6年以上前
『가모메 カルメギ』③ とりあえずこれで見納めと、昨日は『가모메 カルメギ』日本公演の楽日をしっかりと心に焼きつけてきた。現代に生まれ変わったミョギ=ヤーコフが歴史の痕跡をひとつひとつ振り返る冒頭シーンから思わず感極まった。これは全体の構造を知らないと湧かない感情なのだけれど。
6年以上前
『가모메 カルメギ』の照明を通じて、すごく色んなことを考えました。LEDやムービングについてなど。 例えば色。ダークブルーのシーンでLEDのブルーとフィルターのブルーが色が違う。それをどう考えるか、とか。 ゲージ。ハロゲンの100… https://t.co/odABQmYpIX
6年以上前
(どちらであるにせよ)この「カルメギ」の物語とボレロの組み合わせは、現代を生きるわたしたちが歴史に対して抱いているあの居心地の悪さを、これ以上ないくらいあからさまに炙りだしていることに変わりはない。この作品の大きな発明の一つだと思う。
6年以上前
NTLロズギルは見逃し。NTのアーカイブにあるといいのだけど劇場違うしどうかなぁ。先週の帰省時には伊丹でカルメギ。厨二じゃないコスチャ!親ばかでないアルカージナ!時代背景を買えただけでこんなに深く人物を読み込めるのかと驚き。なんで… https://t.co/zbjVwtYUnO
6年以上前
「カルメギ」は、「かもめ」の恋愛物語を、日帝植民地時代の韓国に置き換えた、極めて歴史的な戯曲だ。そこには私たちが学んできたような悲しい出来事が多く描かれる。けれど、そこへ単純に感情移入して観ようとすると、ボレロの「不・歴史性」が超然と拒否してくる。
6年以上前
昨日は台風の中、「가모메 カルメギ」を観てきました。めちゃくちゃ面白かった… 劇場から駅へ向かうバスの中で、しまった、戯曲買えばよかった!と後悔しました。今から買う方法ないものか…
6年以上前
「가모메 カルメギ」横浜、三重、伊丹、富士見公演、韓国チームも帰国して、無事終了。各劇場の方、観に来ていただいた方ありがとうございました。
6年以上前
「カルメギ」見終わったあと、偶然アジアの国に滞在経験ある人の話を聞けた カルメギの時代の日本の残したものはまだぜんぜん残っている、その上でこの作品つくるのがどんだけ大変ですごいことか、ていうのが、やっとわかった
6年以上前
昨日は台風よこめにきらり☆富士見へ「カルメギ」みにいってみーみー泣いてた。今日はナイロン100℃の当日券チャレンジの末、圧倒的なものをみせられ呆けてた。合間にすてき女優とおしゃべりしたりしてなんていい週末……幸せすぎて不安……
6年以上前
東京デスロック+第12言語演劇スタジオ『가모메 カルメギ』無事に終演致しました。 ここ数年の中でも最も刺激的な2ヶ月間でした。終わりたくない現場ってあるんだなぁって久々に思いました。 ほんっとうに一生分勉強した気がします。ここで学んだことをしっかりと自分に返していきます。
6年以上前
昨日見た、カルメギよかった。これからもいいものを見続けたい。
6年以上前
『가모메 カルメギ』2018ツアー全日程終了。お疲れさまでした。 脳が疲労してます。 しばらく何も考えたくない
6年以上前
@dansj888 えじゅ 久しぶり~(^o^)カルメギ、すごかった、まだドキドキしてる。笑 撮影で会えるの楽しみにしてるね!
6年以上前
キラリ⭐ふじみで「カルメギ」。 大千秋楽だったんだ。 1936年の「日本」だった朝鮮。 イ・エジャ役のチェ・ソヨンの、舞踊の手の動きに眼を奪われた。
6年以上前
見終わってぼーっとしてたら隣に座っていたおばあちゃんに話し掛けられて、おばあちゃんは昭和10年に朝鮮で生まれ小学5年生までを朝鮮で過ごしたそうで、当時のお話を少し聞かせてくれました。まさにカルメギと同じ時代の朝鮮に生きていた生身の人間が隣に座っていて、不思議な気持ちになりました。
6年以上前
「カルメギ 가모메 」観てきました。今年の僕のフジロックは富士見でデスロック。すばらしかったです。
6年以上前
東京デスロック「カルメギ」を観ました。言葉にならない深い部分が揺さぶられました。歴史や他の国のことを知るこや想像することは、昔の遠い誰かのことを知ることではなく、いつだってどこだってそこに生きているのは今の私と繋がっている、私と同じような心を持ってる生身の人間なんだと思いました。
6年以上前
カルメギ かもめ 観劇して来ました。 かもめは、三作観ます。色々な劇団で今日は、ハングルでした。 次は、無名塾で観ます😄 池袋経由なので、やっぱり 行っちった😄 死ンデ、イル。 何度観ても、鳥肌‼️… https://t.co/X6KHagp2ps
6年以上前
いや、ほんまにカルメギ面白かった。
6年以上前
そうだ。가모메 カルメギで、どの場面だったかな…あの歌が流れた。死の賛美。
6年以上前
昨日は「カルメギ」を観て、すごくすごく面白かったんだけど一体何がどう面白かったのかは今の私にはわからない。知らないことが多すぎる。くやしい。
6年以上前
가모메 カルメギ。日本人と結婚した朝鮮の女性二人が、和服で出てくるんだけど、夫を見る目がすごいの。軽蔑というか、心は全然許してないんだなってのがさ。今おうちでまったりしてても、役者さん一人ひとりの顔が頭に浮かぶ。日本人も韓国人も、いい役者さんたちだったな。
6年以上前
最後に、日韓の歴史が淡々と文字で映し出されるのを、衣装を脱いだ役者さんたちと一緒にみてるという、カモメのものがたりの上に、カルメギが歩んできた道のりを、すこしだけおすそ分けしてもらっているような瞬間があり、演劇の面白さと、カルメギという作品に挑んだチームに拍手をしていたという感じ
6年以上前
『月光のためのマントラ』推敲した。やはり昨日苦労して(午後3時半に家を出て帰宅が午前1時半)劇を観に行って良かった。韓国語と日本語の相聞歌(『カルメギ』)を聞いた効果が出てる。こういうものは「無意識の因果律」なので説明は難しいが。
6年以上前
それに加えて、カルメギは基本的に、登場人物が、僕の位置からみると、右から出てきて、左にはけていくというシンプルな演出。誰が誰を追いかけて、という人間関係がすごくわかりやすくて、時間も右から左に流れていく。面白さがわかりやすい。
6年以上前
『カルメギ』inキラリふじみ、観劇してきました! 多田さんすげーな~1人で見るのもったいないなあ。 うまく文章化できたらいいのに(><)
6年以上前
原作は、ロシア人の名前のややこしさや、キャラクターのややこしさ、関係性、時代背景、文化のややこしさに、僕の頭は誰かに説明してもらわないとついていけないのですが、カルメギは、日本と朝鮮の話になるので、単純にわかりやすくなるので、話に入り込みやすかった気がする。
6年以上前
カルメギがなんで面白かったのかを考えているんですが、まず、原作のカモメが、面白いんだなということ。 自分のドラマを愛し、熱狂し、そこに人を巻き込み、執着することの中毒性と危険性についての、チェーホフの鋭く、悲しくも、どこか暖かいお話がベース。ああ、ちょっと予習しておいてよかった。
6年以上前
가모메 カルメギ。韓国語多めだったから、なになにどうなる?と思ったけど、ちゃあんと見やすいところに字幕が。舞台のセットと一体化してて、セリフとぴったりな速度で、ストレスなく、とってもいい字幕だったな。
6年以上前
가모메 カルメギ。これがマッコンだそうで…。いろいろ考えさせられた(これからも考える…)けど、一番印象に残ったのは、あっち側の客席にいた、おばあちゃま。朝鮮の少年兵が銃を撃ちまくるシーンで、おばあちゃまのお顔が悲しげで…。 https://t.co/IA8O7xMkWe
6年以上前
東京デスロック『カルメギ』を観ました。 とんでもなく良いものが観れました。 ただひたすら打ちのめされました。 過去について、そして今についてとにかく考えさせられる舞台でした。 やっぱり演劇ってスッゲェなぁとしみじみ。
6年以上前
カルメギ、すごく、よかった。 すごく、すごく、よかったと伝えたいですが、本番終わりの人に話しかけるのは、本当に気恥ずかしい。 そして、すごく台風。 仮にまた台風が来たとしても、見にきたいくらいによかった。 https://t.co/R9efGgjdm4
6年以上前
わーまもなく『가모메 カルメギ』、最終日、開演!だー!とおくから念を!とばす!
6年以上前
東京デスロック+第12言語演劇スタジオ『가모메 カルメギ』富士見公演楽日の開場です。今回のツアーファイナル!!
6年以上前