満足度★★★★★
体感!
観る前は難解そうで理解できるかとても不安でしたが迫力のある兵士たちの発する言葉は不思議とすうっと入ってきました。(語りかけるようなタイトルコールがまた素敵でした。)お芝居を観るというよりも、自分が動物か石っころか何かになっていてその現場にいるような感覚。ジェットコースターのようなアトラクションのように、何度体験しても飽きることのない、そして観るたびに違った感覚で、そして理解が深まるごとにどんどん面白くなっていくんだろうな、と思いました。都合で雑遊バージョンを観れなかったことが本当に残念です・・・。
些細なことですが、始まる前の、たばこを使うことの注意などの気配りが優しくて嬉しかったです。
(観劇から5か月も過ぎてしまってからの感想で申し訳ありません。)
満足度★★★★
そのまなざしが……
この舞台のテーマは哲学だ、と言ってしまうと、難しいと思われるかもしれない。けれどそんなことはまったくなくて、戦場の緊迫した空気や他の兵士たちとの確執や交流、そして何より、そこにはいない懐かしい大切な友との精神的な交歓が物語を牽引する。
緊張感に満ちた戦場の空気の中で、しかし彼を悩ませているのは死への恐怖ではない。手に取れないものを追う思考は、時には現実から何かを得、時に何かを与える。
俳優の心身が演じる役柄と密接に呼応し、物語は張り詰めたまま進んでいく。
クライマックスの暗闇に、ときおり閃光がひらめく。ガタガタと音をたてる世界に、客席で身体を硬くする。迫り来る敵襲に否応なく高められた緊張感と見えない舞台上を動く兵士たちの息遣い。
そして、明るくなった舞台の上で、ルートヴィヒが到達した思想。それを理解した、とは言わない。けれどたとえば、彼について書かれた本を手に取ってみようか、と思ってみたりもする。
それは、もう会うことのできない友に向けた彼のまなざしが、印象に残ったからかもしれない。
闇
場面転換ではなく演出としての闇。視覚を奪われ、聴覚が研ぎ澄まされる。言葉からの情報と、その語気から伝わる感情が、より効力を発揮する。これは戦争の舞台ではなく、人間が人間たる言葉の意味と可能性の舞台だ。あの闇の中で、あれだけのことをやってのける俳優って、やっぱスゲーなぁ。あの闇、シアタートラムの『モリー・スウィーニー』のラストに仕掛けたものと同義だな。あの時は南果歩さんが客席を手探りで練り歩いて…。それにしても、初演の時と全く違う舞台を観ている気分だった。初演の方がダークで、今回の方がポップに感じたのはなぜなのか・・を、じっくり反芻しながら思考を楽しもう。くじ引きの持つ意味や価値は興味深いなぁ。
満足度★★★★
光と影
結構暗闇のシーンが多く、上手い具合に心理描写とマッチしていていい演出だなと思った。アゴラ位の大きさの箱だとちょうどいい作品だと思った。5人の役者の組み合わせもよかった。
満足度★★★★★
面白かったという語彙はあってるか?
面白かったという語彙はあってるか?
あの空間に、闇の中に、戦場に、自分の身を置けたような気がする。
哲学とは?
いや、わからない。
でも、言葉とは?
小さな子供が遊んでいて、こんな事発見して面白いぜ!!と、
キラキラする感じを観てて思った。
「コトバ」を介して「現実」を切り取る事を発見した昂揚感。
なんか、演劇にも似ているなと観ながら思う。
頭の中の考えは見えない。
それが、
口を介して言葉の音と意味を持って世の中に生まれ出る。
手を介して文字となり、意味を持って世の中に生まれ出る。
面白いおもちゃが生まれ落ちた!!!
観ていて「哲学」って????と思ってい
たが
もっと、違う感じだった。
だから、「面白かった」と思う。
小沢道成さんは、まだ4年程しか、お芝居を観ていないが、
今作は小沢さんが持っている「プラス」の要素が余すことなく抽出されていると感じた。例えるなら「ヒカリ」。
今作の「ヒカリ」の役割。
劇中の彼の言葉が観劇者の「?」を代弁しているように感じた。
笑い、怯え、苦しみ、様々な表情に目を奪われる。
彼の「生」への「希望」が生まれた時、成就してほしいと心で祈った。
榊原 毅 さん初見の俳優さん。
隊長で、絶対強面での少し、可愛い役柄。
(あえて、可愛いといった表現を使います)
人の気持ちを射抜く眼光と、でも、きっと、心根は優しいのかな?と想像。
古河耕史さん。以前虚構の劇団での出演を拝見した事はあった。
今作は、かなりの熱量を感じた。
ただ、吐き出すのではない、静かだが、でも、物凄く熱いものが彼の内側から溢れてくるような芝居だった。
大原研二 さん。最初、観ていて、苦しかった。
強い言葉を、言っているのだけど 弱い、怯えてるような 、
眼では見えない震えてる心が見えた気がして、悲しかった。
物凄く、追い込まれる気持ちになった。
安らかに、天に昇る事が出来たのだろうか・・・。
きっと、そうだったと思いたい。
本折智史さん。初見の方だったが、表裏を(今回は特にそういった役柄だったからかもしれませんが) 演じるのが上手い方だと感じた。口調は変化をつけ易い。この方の眼の切り替え方が凄かった。上手い。
闇のシーンは心拍数上がる。
過呼吸ではないですが、ちょっと、近い感じ。
私は特にそういったシーンで気分が悪くなったりする
症状をもってるわけではないのですが・・。
防空壕とかこういった戦地での恐怖感ってもっとひどいんだろうなと
あのシーンを体験して思った。
でも、あのシーンだから私みたいな人間でも
怖さを感じ取る事ができたのかもと。
舞台上の美術も、照明も、とても、良かった。
前回「柿喰う客」の時、印象的な照明が、今回も同じ方だった。
数回この方の公演を観させて貰ってるが、本当に美しい、そして、情景が浮かび上がってくる。
尽きないが、今作は、色んな歯車が上手くまわり、起こした、人間の、演劇の、素晴らしいモノ。その歯車が一個、違うとまた、違った作品の印象をうけるかと。この組み合わせだからこそ・・・。
満足度★★★★★
素晴らしかったです。
初演を観られなくて後悔していた演目を、個人的に好きなキャストさん達で観られて幸せでした。脚本演出、そして俳優さん達の演技の圧倒的な質の高さに、真摯この上ない演劇を見せていただける喜びを感じずにはいられません。凱旋公演も伺います。ありがとうございました。
満足度★★★★
演出が良かった
重厚なテキストもさる事ながら演出が良かった。暗転下での台詞のやり取りの緊張感と閃光、そして5人の声。観えないものを観せる演出は、タイトルに通じるものがあって考えさせられた。観れてよかった。初演観たかった
満足度★★★★★
語る事
チラシが気になっていたのだけど、今一つ踏み出せなくて、知人に背中を押されて観てきました。良かった!!面白かった!「語る」ことによる現実と今、…。創造。想像。音の効果。視覚効果。出演は好い男5人のみ!哲学とかわからないけど、心に響いてくるこの何とも言えない論理。なるほど!と頷きつつも不安になりもし、自分の中で考えたりと、脳フル回転させた気持ちよさもありました。
満足度★★★★
哲学についての考察
ヴィトゲンシュタインと言えばこれというテーゼ=「語り得ぬものについて人は沈黙せねばならない」の含蓄は、あらゆる事柄について何らかの形で「語り得る」と、普段考えている理性の土台を揺るがす所にある。
沈黙はしなくたっていいだろう、折角言葉があるのだから・・。黙るか喋るかは人の性格や個性の問題だ。・・そう思いたくなる。
これを、不可知の領域を知り、潔く認める事の尊さについての言葉だと解釈してみる。・・人間は知る事のできない領域がある、現に今、自分にとって知らない事がある、その事実を「希望的観測」による根拠なき言説で置き換える不遜さは、例えば、放射能の被害について「無害」に寄った説を唱える学者に、見る事ができるだろう。確かに言いたくなる、「確証の無いことについて適当な事を言うな」と。
さて舞台は、第一次大戦中の前線部隊の生き残り5人(ヴィトゲンシュタインを含む)のお話。実験的な戯曲だ。彼の哲学の定理が生み出された源泉は前線での体験にあった、というのが史実かどうかを知らないが、最後は撤退を余儀なくされる前線の行き詰まった局面でのやりとりに、特異な視点を持つ彼は反論したり介入する中で「言葉」に関する発見をする。彼自身のドラマの軸は同性愛の相手との空間を超えた対話にあるが、彼の分かりづらい哲学の着想と、前線での体験に結び付ける試みは、果たして成功したかどうか。
私はこれでヴィトゲンシュタインという人間が見えた(彼の哲学の言葉と相まって)、とは思えなかった。面白い試みであったし、ドラマとして面白く見れたが、ヴィト君をもっと知りたいかも、という思いを残したまま芝居は終わった。
彼を「ホモ」と侮蔑する男の発言を際立たせる事で話を盛り上げていた感が強し。また、ある命の危険のある役割を選ぶのに、ベテラン隊員が自ら腕に覚えがあって志願したのに対し、隊長は自分が作ったくじを引かせる事にこだわり、最後まで譲らない、この奇行の理由もよく分からぬままだ。
「語り得ぬもの」という言葉の響きの深淵さと、彼の[発見」の際の台詞のトーンが、いまいちそぐわない、というのが正直な感想だった。
満足度★★★★★
極限での思考
私がいつもやってる、ただ本を読んでわかったふりをするだけの哲学とは、ひと味もふた味も違う世界が展開されていました。言葉のひとつひとつに血が通ってたと思います。
満足度★★★★★
深い
勝つときは勝つ、負けるときは負けるなどの意味のない言葉群や、パンやソーセージでも山や川が表現できるが、言葉はさらに事象を正確に表現できる、みたいなお勉強的理屈は置いといて、親友のお母さんからの手紙はうんちくがありました。
満足度★★★★
デュアリズム? シナリオ・演出浅いんでねえの?
余りにも有名でカッコイイ「論理哲学論考」の一節“およそ語り得るものについては明晰に語られ得る。しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない”についての作品である(追記2015.10.20)
満足度★★★★★
素敵な作品
“二十世紀最大の哲学者”といわれる“ウィトゲンシュタイン”の思考の本質を理解することなど、凡人の私には到底無理な話だが、本作はそんな私でも、とても楽しめた。
この題材で、難解にならず、さらには笑えるシーンも多く、観客を惹き付ける脚本が良い。
演者達の素晴らしい演技と相まって素敵な作品となっていた。
満足度★★★★★
独特の緊張感だった、115分
本当に長い長いタイトルで二時間で収まるのかという緊張感で観劇。ある小屋の一室で木の香りがただよう舞台美術ながらも、ちょっと悪役っぽい、ウィトゲンシュタインが、作戦を言いながらも、哲学とは何か、戦争とは何かを訴えながらも、暗闇でのシーンも音と視覚という感覚でよかったし、谷賢一さんらしい演出て、緊張感をもてた、115分でした。
満足度★★★★★
息詰まる攻防
塹壕にほうり込まれて気づく、光が届かぬ闇に‘いる’のだ、言葉が照らせぬ闇に‘いる’のだ、とすれば論理的帰結として・・・乏しい宗教観に再考を迫られる。グラマラスな俳優陣の本気度に引き込まれる。