ミュージカル「テニスの王子様」 青学vs六角 公演情報 ミュージカル「テニスの王子様」 青学vs六角」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    一見さんでも大丈夫
    ライブビューイングにて観劇。

    以前から評判は聞いていたが、チケットを取ることは難しそうだし、と思い、ライブビューイングなら初心者でもいいのでは、と観ることにした。

    出演者は新人さんばかりでもちろん演技や歌は下手だ。が、それを補って余りあるほどに面白い。
    そして、演技が下手、とはいっても、動きやポーズなどはキャラクターそのままだ。激しく踊っていても、各人のキャラクターが揺らぐことはない。
    そして、この作品ではそれが何よりも重要だ。
    顔が違うと文句が出る映画の実写などという道を取らず、舞台、しかもミュージカルにしたのは大正解ではないだろうか。

    試合の演出も面白い。
    曲ごとにコートチェンジしたり、光でボールを演出たり。
    また、全員に無理に試合場面を作らず、数人をヒューチャーするのも次回公演がある強みだろう。

  • 満足度★★★★

    大千秋楽
     面白い。
     しかし、この面白さをどう伝えたらいいものか、言葉の選び方次第では、ただのギャグのように聞こえてしまいはしないかと危惧するのである。
     CoRichには小劇場ファンは多くても、演劇全般のファンは少ない。許斐剛原作の『テニスの王子様』を未読の人も多いだろうし、これまでのあらすじを説明するだけでも手間がかかる。ましてや、そのファン層の中核を成す「腐女子」の説明までし始めたら、とんでもない長文になってしまう。
     ここはもう、「この手の世界」をよく知らない人は、とりあえず、この『ミュージカル・テニスの王子様(愛称:テニミュ)』が、2003年より連続公演を繰り返し、日本では例を見ないヒットシリーズになっていること、その魅力は決して原作ファンのみが楽しめる狭い世界に留まるものではないということを理解してもらいたいと思うのだ。
     俳優たちはみな新人である。演技は決して巧くはない。しかし、このミュージカルを成功に導いているのは演技の巧拙ではない。青春の情熱を、彼ら若手俳優たちが自ら体現してくれているからだ。心の赴くままにジャンプしダンスする、その汗と涙が観客の心を打つからなのだ。本気で踊っているから、息は切れる、音程は外れる。でもそれは口パクじゃない、彼らが「本気(マジ)」だという何よりの証明ではないか。
     原作マンガで、故障してもなお試合に出場、勝利した選手がいたように、実際の舞台でも、足をケガしながら公演中、痛みに耐えつつ連日踊り続けた俳優がいた。
     作り物ではない、本物の「青春」を、我々は『テニミュ』の舞台に見ることができる。日本の三大ミュージカルは、劇団四季、東宝ミュージカル、宝塚歌劇団だとよく言われるが、前二者が海外の「借り物」ばかりであるのに対して、『テニミュ』は純然たる和製ミュージカルである。その事実はもっと声を大にして指摘してよいことではないだろうか。

    ネタバレBOX

     1st..シーズンの放送をテレビで観たのはもう十年近く前になるのか。
     何の気無しに観てみただけだったから、その斬新な演出には度肝を抜かれた。既にテニミュファンが散々指摘していることだが、テニスのラリーをピンスポットの照明で表現、これが本当にボールが飛んでいるように見えるから、まるで魔法だ。
     もちろんミュージカルだから、歌とダンスは欠かせないが、これが試合で窮地に陥った時に一曲歌うと、そいつは格段に強くなるのである。ミュージカル嫌いはよく「いきなりの歌い出し」が不自然だと文句をつけるが、歌って強くなれるのなら、そりゃ歌うだろう。いや、別にそんな設定があるわけではないが、「そのように見える」ことが重要なのだ。
     なぜ、『テニスの王子様』を、通常の映画や演劇ではなく、ミュージカルにしようと発想したのか、もちろんそこには新人売り出しのための商売上の原理が働いてはいるのだが、それが結果的にはこのシリーズに、他の舞台とは一線を画した斬新さを与えることになった。
     「商売上の原理」と書きはしたが、ただ新人を売り出すためなら、まずは俳優ありきのキャスティングになっていただろう。しかし、オーディションで選ばれた歴代のキャストは、いずれもまるで原作から抜け出てきたようなそっくりのイメージの俳優ばかりで、制作者たちが、この舞台を成功させるために何が肝要であるかを知悉していることが見て取れる。
     小越勇輝くんの立ち姿を見れば、ここに越前リョーマがいる、と誰もが感じるはずなのだ。

     今回の「青学VS六角」編は、いきなり部長の手塚国光(和田琢磨)のリタイヤから物語が始まる。
     手塚は、先の氷帝戦で肩を痛めて治療に専念することになっていた。
     俳優が新人ばかりだから、全体的に演技は拙いと書きはしたが、試合に出られぬ苦悩を手塚役の和田くんは、抑制の利いた静かな演技で好演していた。ライバルである氷帝の跡部景吾(青木玄徳)が、イケメンだがナルシストのお笑い担当なので(何しろそのカリスマ性ゆえに森の動物たちまで後を追いかけてくるのである)、手塚の苦悩は反作用的に深刻に見える。

     次の対戦相手、実力高である六角中を、手塚不在のままいかにして倒すか。青学メンバーは、みな敵の意表を突く攻撃に翻弄されることになる。
     マンガが原作であることの「強み」は、ここで一段と発揮されてくる。ライバルの六角選手たちが、みなキャラクターとしてエキセントリックで、決して一筋縄ではいかないことをその大仰なまでのデザインや、台詞や演技で体現してくれているからだ。まあ、天根(木村敦)のダジャレはことごとく滑っていたけれど(「爺さんなのにババロア」だよ)。
     六角選手中、誰が最強かって、そりゃ部長の葵剣太郎(吉田大輝)だ。テニスをやってる動機が「女の子にモテたい」だもの。ストレートにもほどがある。対する海堂(池岡亮介)は「やつには何か信念を感じる」なんて言うんだが、それ、煩悩ですから(苦笑)。
     こういう下品なキャラは、女の子からは絶対に人気が出ないので、演じる吉田くん、ちょっと割に合わない役をやっている。ところが彼がカーテンコールでその天然ぶりを発揮して、場を攫っちゃったから面白い。和田くんを役名じゃなくて「和田部長役の」と言っちゃうし、今回が初参加で「付いていけるか(不安だ)な」と言うべきところを「追いついてこれるかな」と言っちゃうし。
     腐女子諸君も、イケメンばかりをフィーチャーしないで、吉田くんにもエールを送ってほしいものだ。

     物語は、敗退した氷帝が推薦枠で再び参戦することと、リョーマの次戦への決意を示して終わる。
     今回、リョーマの見せ場がほとんど無かったのは残念だが、『テニミュ』はもちろんこれで終わりではない。リメイクという形で2nd.シーズンに入っているが、原作はさらに続編も描かれている。3rd.シーズンばかりでなく、新シリーズもまたきっと立ち上がってくるはずだ。
     彼らの熱い青春は、決して終わらない。

     福岡では、キャナルシティでの生公演もあったのに、ライブビューイングで大千秋楽を観ることにしたのは、カーテンコールでの彼らの「絆」を観てみたかったこともある。
     青学も、氷帝も六角も、彼らは素でもチームだった。言葉は拙い。みんな「ありがとう」としか言えない。でもそれで充分ではないか。次回公演は全キャスト大集合の「大運動会」。さてこれはライブビューイングがあるのだろうか。

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