満足度★★★★
大千秋楽
面白い。
しかし、この面白さをどう伝えたらいいものか、言葉の選び方次第では、ただのギャグのように聞こえてしまいはしないかと危惧するのである。
CoRichには小劇場ファンは多くても、演劇全般のファンは少ない。許斐剛原作の『テニスの王子様』を未読の人も多いだろうし、これまでのあらすじを説明するだけでも手間がかかる。ましてや、そのファン層の中核を成す「腐女子」の説明までし始めたら、とんでもない長文になってしまう。
ここはもう、「この手の世界」をよく知らない人は、とりあえず、この『ミュージカル・テニスの王子様(愛称:テニミュ)』が、2003年より連続公演を繰り返し、日本では例を見ないヒットシリーズになっていること、その魅力は決して原作ファンのみが楽しめる狭い世界に留まるものではないということを理解してもらいたいと思うのだ。
俳優たちはみな新人である。演技は決して巧くはない。しかし、このミュージカルを成功に導いているのは演技の巧拙ではない。青春の情熱を、彼ら若手俳優たちが自ら体現してくれているからだ。心の赴くままにジャンプしダンスする、その汗と涙が観客の心を打つからなのだ。本気で踊っているから、息は切れる、音程は外れる。でもそれは口パクじゃない、彼らが「本気(マジ)」だという何よりの証明ではないか。
原作マンガで、故障してもなお試合に出場、勝利した選手がいたように、実際の舞台でも、足をケガしながら公演中、痛みに耐えつつ連日踊り続けた俳優がいた。
作り物ではない、本物の「青春」を、我々は『テニミュ』の舞台に見ることができる。日本の三大ミュージカルは、劇団四季、東宝ミュージカル、宝塚歌劇団だとよく言われるが、前二者が海外の「借り物」ばかりであるのに対して、『テニミュ』は純然たる和製ミュージカルである。その事実はもっと声を大にして指摘してよいことではないだろうか。