約2時間。大阪・鶴橋に暮らす朝鮮人家族の約20年。戦後の空気も、暴力父との壮絶な闘いも熱く生々しく。「異常」な環境をリアルだと信じられるから、物語に没頭しつつ客観的にも考えられる。室内・野外とも生活臭ある抽象美術(阿部一郎)が素敵。
満足度★★★★
家族って、憎しみ合う関係になると大変...良い父親が悪くなっても、どうにもできない...父親は父親だから...そんな、家族のストーリーでした。力作です。
満足度★★★★
初日を拝見。客席に多くの演劇人が見られた。劇評家の姿もあって注目度が窺えたが、確かに話題になって良いタイトルである。
もっとも私は在日の世界を日本人が象る事の困難、況んやこの作品をと見切っていて、観るつもりはなかったのだが直前に「凄い事になってるかも」と期待の虫が這い出てきた。最近注目していた演出家というのも大きな要因となり、観劇。
構造はシンプルで、在日一世のある男の一代記として描かれ悪い感触はなかった。私は映画版がいまいちだった口で、映画より今回の舞台が良かった。父子の対決図を軸に据えたことで世代の継承の視点からこの異形の男の存在を捉え得た、というのが理由だろうか。
ただし「俊平」その人の存在を本質から形象し切れていないとの感想は映画に同じ。想像の中でしか作れない人物なのか・・判らないが、乱暴な言動の背後に流れている何か、核を掴むことは確かに大抵ではないとは思う。
舞台は暗転を多用した点描スタイルのニュアンスもあり、暗転になると人と物の出入りの際、芝居でなく作業員のようになるのが、私としては気に食わず、照明が落ちても役の気持ちでいて良いように思った。「割切り型」と「粘着型」とあるとするとこの芝居は「割切り型」(最近見たのでは「はだしのゲン」が典型)の構成と言えるか。
俊平の妻・英姫役は立派な関西弁でパキパキと喋り、韓国訛りとして「ツ」を「チュ」に変える配慮をやっていたが単純変換で機械的。この違和感というのは、関西弁の使い手として人選されたとすれば、韓国訛りなど入れず流暢に関西弁を喋ればよく、韓国訛りを入れるならむしろ関西弁はうまくなくて全然よい。最初に出てくる「あてつけ」を「あてちゅけ」と読ませた変換は、「あッてちゅッけ」(小さい<ッ>は短く跳ねる)もしくは「あでちゅッけ」と行きたかった。台詞には無かったかも知れないが「ざ」は「じゃ」になる。こだわるなら粘っこくこだわってほしく、こだわらない(割切り型)なら、むしろ韓国訛りが要らない。日本で育って自然な日本語が話せる設定でも他郷人らしさ=どこか遠慮がちである等=があればいい(それが出来ないから言葉で対処しようとしたと言われれば黙るしかないが)。
今回どういう事情か知らないがアンケートを取っておらず、ビッグな芸能人でもあるまいし、様々な疑念が湧く。出来についても批評を臆するような出来でなく。憶測を逞しくすれば、コールの際にスター然と佇んでいたあの役者の要求か、などイメージ的には最悪である。そもそもアンケートを取らない事の意味のほうが不明で、私には論外。舞台が思いの外良かったから非常に惜しい思いを抱えて劇場を後にした。
満足度★★★★
鑑賞日2019/04/11 (木) 19:00
梁石日の小説と映画で有名な作品の舞台化だが、小説も読んでないし、映画も見てない。在日の家族を扱った、シビアな物語ではあるが、芝居でしか表現できないものが観られた舞台だった。梁の父親をモデルとした暴力的な男を主人公にしているが、映画の評を調べると、暴力的なシーンが多いのがツライという記述を良く見る。だが、舞台ではリアルすぎる暴力的表現は少なく、むしろ家族の関係を主軸に描いているので、ツライとは感じずに済む。長編の小説なので、どの部分に軸を置くかで、違った物語になるのだと思う。主人公を演じる金子由之もさることながら、妻を演じる名越志保、息子を演じる筑波竜一にも軸を置いているところが良い。暗転が多いのは、ちょっと気になる。
満足度★★★★
鑑賞日2019/04/10 (水) 19:00
座席1階
映画にもなった有名な作品を、各劇団から集まった選りすぐりの俳優たちが熱演した。
主役の俊平を演じた劇団昴の金子由之は、身勝手だが内から湧き上がるどうしようもない感情の発露を懸命に表現した。だが、今の時代には稀有な存在で、しかも在日という出自を背負って荒れ狂う男を内面から演じきるのは難しい。荒れ狂う一方で見せる優しさも、あまりに落差が大きい。きわめて困難な舞台であったと思われる。その困難性は妻役の文学座、名越志保も同じだったろう。どんな暴力にも、夫の女癖にもこれは運命と耐え続ける。一度の反抗も見せないその胸の内に自分を支えた確固たる面影がある。それをおくびにも出さないけど何かあると感じさせる演技が必要だ。
総じてどの俳優も健闘した。舞台のテンポもよく目が離せない展開で客席を引きつけた。だが、やはりこの作品の深さを見せつけるには編集などで強化できる映像作品の方が有利だったかもしれない。生身の人間が目の前で演じる舞台ならではの色合いはあったと思うが、やや荷が重かったなと感じた。
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トム・プロジェクト『血と骨』企画・脚色の江原吉博の「映画化への不満からやりたいと思った」に納得。男の悪しき面を一身に集めた主人公の凄味から哀しみまで、シェイクスピア役者金子由之がリア王ばりに見せる。妻の名越志保、子供の筑波竜一・須藤沙耶も好演。柴田義之と七味まゆ味が滅法面白い。
5年以上前
トム・プロジェクト「血と骨」約2時間。大阪・鶴橋に暮らす朝鮮人家族の約20年。戦後の空気も、暴力父との壮絶な闘いも熱く生々しく。「異常」な環境をリアルだと信じられるから、物語に没頭しつつ客観的にも考えられる。室内・野外とも生活臭あ… https://t.co/ai5qBiWXXG
5年以上前
トムプロジェクト「血と骨」観劇。映画は未見なんだけど、いや〜、凄い!骨太!濃厚!濃密!腰が痛いのも忘れて見入る2時間。久しぶりに演劇らしい演劇を観た。観に来て正解。僕の大好きで憧れの勝平ともこ姉さまがとてもとてもキュート&チャーミングでした。
5年以上前