満足度★★★★
鑑賞日2016/11/19 (土)
これぞ社会派演劇という作品。社会問題を多層的に織り込みながら展開を作っていく巧さが凄い。偶にはこういう硬派な作品も観ておかないといけないな、と思わされた。140分もあるのに全然中弛みしないのも流石。入れ方が上手いと暗転が全く気にならない
満足度★★★★★
ふだん知る機会の少ないほんとうのこと
身の回りのことや、テレビやインターネットで仕入れられる情報だけで、世の中のことをわかった気になっていないだろうか。自分の知らない世界においてこそ、隠れていた真実に気づくことがあるのではないだろうか。自分とは距離が遠く、これまでわずかなことしか知らなかった南西諸島の自衛隊基地について、その建設をめぐる島の住民たちの様子を描いた燐光群の新作『天使も嘘をつく』を見て、そんなことを考えた。
暮らしに必要のない基地が、目に見える/見えない様々な非情な手段でつくられようとしている、その矛盾に満ちた顛末が、これでもかと語られる。しかし、洞窟や生き物たち、天体など、島の自然とその美しさについて描かれていて、そのおかげで作品の硬質な主張がやわらかく、素直に心にしみいってきた。
「ドキュメンタリー」と虚構の狭間を揺れ動く映画監督(竹下景子)を追いかけながら、いつの間にか登場する住民たちと同じような目線で「民主主義」とは何かを考え直していた。作中では、人々の映画への情熱と自らの生活を守ろうという自然な欲求とが融合して、大きなうねりが生まれてゆく。日本の未来を暗い先行き不安なものだと悲観せず、希望を持たねばと確信させる演劇の力がそこにあった。本当に最近の事柄まで戯曲に盛り込まれていたけれど、「いま」の社会問題に取り組むことは容易ではないのだろう。その果敢で強い意欲のあるプロダクションに拍手を送りたい。いま観ておきたい、いま人に伝えたいと思わせられる舞台だった。
満足度★★★★★
演劇は現代を写す鏡で有り続けられるのか
映画と言う題材をモチーフに、ドキュメンタリーを撮り続ける監督とその舞台になる島と人々を追う。
現実社会、疑問を感じながらも平穏に暮らす自分にとっては、世の中の変化は、舞台を見ながらも感じるが対岸の火でしかないのかもしれない。
ただ、物語の中で俳優は当事者として叫ぶ。
それは、作者が実際に足を運び見てきた景色なのだろう、何が正しいのかなんてわからない。ただ、これだけは間違っていると言えると、作者は言いたいのではないか。
迷いながらも、声をあげて、今、進むべきなのだと言っているのではないかと自分は個人的に感じた。
面のない集団ではなく、確かな個人として、僕らは日々何かをかんじ、叫びたいはずなのだ。
公演を重ねるなかで、より色んな事を感じ迷い探すに違いない
。後半のステージがまた、楽しみ。
満足度★★★★
ドキュメンタリー演劇
この芝居は「ドキュメンタリー演劇」と言っていいかな、と私は思う。
「普通に暮らしている人たち」がそこにいる。役者がわざとらしくない。
そのせいか、起こっている問題に一緒に立ち会っている感覚がした。
そして一緒に考えた。
表面はソフトに、しかし中身は、いま日本のおかれている問題を、ハードにそして骨太に、それを丁寧に描いている。
切実な局面に置かれている人たちのはずだが、沖縄だからだろうか、そこに住んでいる人たちはみんな明るい。
また、竹下景子さんと馬渕英里何さんが、いい意味でとけ込んでいる。
二役している役者が何人かいたが、微妙なさじ加減で演じ分けられていた。
「似ているけれどちょっと違う」
おもしろい、演劇ならではの瞬間の一つ。
2時間を超える芝居だが、全然飽きなかった。
終盤、竹下景子さんが演じる、映画監督クリモトヒロコの台詞を聞いたとき、
「あー、こういう考え方があるんだ。」と刺激を受けた。びっくりした。私の中にはなかった。
でも、「あり」だと思った。
その内容をここに書き込みたいけど、ネタばれみたいな感じがするので書きません。
観終わって、すがすがしさを感じた。
いま、日本そして世界、いろいろ問題が起っている。
「才能」も「力」もないそんな私だけど、「何か」できるんじゃないかと思った。
お薦めです。
満足度★★★
これでいいのか??
あらすじの筆頭に似掲げられている社会性のあるドラマ。確かに西南諸島の諸問題を扱っているが、切実さがまるでない。坂手洋二どうしてしまったのだろう。二十年前は、それこそさまざまな社会問題を、物語の中に取り込んでしかも一種独特の叙情性もある舞台を作っていた。「屋根裏」を最後に続く『社会問題劇』は、もう誰もがよく知っている情報を並べて悪代官裁きをするようなドラマばかりだ。社会劇作家はほかにいないと思っているかもしれないが、中津留や古川のように繊細な才能を持つ作家が出てくるとこの精選されていない情報過多、妥協的な結末ではもう、若者はついてこない。それにやたらに体言止めが多く、役者で台詞割にしたような台詞のくせも気になる。最初は、情報ならそれで却って効果があるかとも思っていたが、これだけ連発されると、役者をどう考えているのか疑問になる。ベテランにはちゃんと台詞が書いてあるではないか。今回は、舞台俳優としてはなかなかの力量のある馬淵英里何を連れてきているのに、なんだかよくわからない役になってしまった。
本心を言えば、坂手、鐘下、は大いに期待していたのだ。それだけにこういう作品を見せられると奮起一番、あたらしい世界を目指してほしいと思う。劇団を持っていてその売りが固定していることが足かせになっているのかもしれない。それでは客足が遠のいたのに銘柄にこだわった三劇団と同じではないか。