ひずむ月【本日千秋楽!当日券若干あり】 公演情報 ひずむ月【本日千秋楽!当日券若干あり】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.1
1-7件 / 7件中
  • 満足度★★★★

    鑑賞日2016/10/17 (月)

    異端の地震学者として、また、夫として・父として頑固実直な生き方を貫いた、実在の人物の半生を軸に、様々な苦難や不条理に直面する主人公や当時の人々の有り様を、ユーモアを交えつつも、丹念に描いた2時間です。

    当時の地震学会の趨勢に逆らい、関東大震災発生の可能性を唱えた、今村博士役・石塚義髙さん。
    今村の上司であり、彼の熱意を理解しつつも、いたずらに社会に不安をもたらす関東大震災・発生説には懐疑的だった、地震学の権威・大森房吉博士役の北川竜二さん。
    2人の博士の出会いから対立、そして…までの骨太なやり取り、強い説得力をもって観客に迫ってきます。

    また、今村博士の長男(青木絵璃さん)と、朝鮮飴売りの娘(林佳代さん)との微笑ましい交流の様子は、後の悲劇が如何に不条理なものかを観る者の胸に訴えかけてきます。

    『ひずむ月』、可能ならば来年の9月1日にまた再演して欲しいなぁ…と思える作品でした。

  • 満足度★★★★

    珍しい
    25団としては珍しく、評伝劇である。地震学の礎を築いた今村明恒の物語を、ある意味で史実に忠実に物語にする。面白いのだが、なぜ今25団がやるの、という不思議は残った。終演後、杉田氏に訊いてみたが、「やりたかったので…」という回答。珍しいタイプの作品でも、25団らしいテイストはキチンと残っていたように思う。

  • 満足度★★★★

    お見事!
    一般的には知られていないマニアックな人物に焦点を当てた話。明治から大正にかけての時代の雰囲気が感じられて、骨太な作品に仕上がってました。役者さんたちも実に生き生きとしていましたね。小(中かな?)道具の使い方が上手い。

  • 満足度★★★★

    花四つ星
    地震でデータが消失した。

    ネタバレBOX

    大森式地震計で有名な東京帝国大学教授、大森の下にはすぐれた研究者が居た。名を今村 明恒という。日本の家屋特性や地震時の状況を的確に判断し、関東大震災の起こる前から大地震の可能性と予想される被害状況を説いたが、新聞の不正確で扇情的な記事から社会的誤解を受け、ほら吹きと評されるようになる。無論、彼の子供も学校でこのことを根拠に苛めを受けたりからかわれたりするのだが、日本の大衆の事大主義と軽率が、彼を追い詰めて行った。然し、物事をまっすぐに見つめることのできる彼には、自分の地震学が、主任教授の大森のものより正しく思えた。その為、以前よりメディアに注意するようになってはいたものの理論的に正しいと信じることに対しては発表していた。この姿勢が、彼への風当たりを増々強いものにしていった。無論、彼もこの件では悩む。偶々、義太夫の呂昇という人物に出会い、人生のいろはについても深い思索を身に着けるようになった今村だったが、彼の呂昇に対する批評が鋭く呂昇自身が感心するほどであったこと、また義太夫の上達が早かったことを見ても、彼がバイアスなしに物事を正確に見る目を持っていたことの証拠となるであろう。それに引き替え、学問的正しさより政治や評判を気にするタイプとして描かれている大森が、学会の大会でオーストラリアへ出掛けている間に明恒の予想通りの大震災が関東を襲い、死者105000人という大惨事となった。大衆は、明恒を地震の神様と呼びならわすように豹変したが、見苦しい限りである。昨日までほら吹きとさんざ馬鹿にしていた舌の根も乾かぬうちに態度を一変させる。この見苦しさと見識の無さは、自分が日本人を嫌う最も大きな理由である。
     それでも、大森は帰国直後、衰えた体をおして、地震研究所を訊ね、自らの瑕疵を認めると共に侘びを入れ、後任を明恒に託す。大森も流石に一流の学者であったのだ。腐り切っていない。間違いを間違いと認め、けじめをつけることは誰にでもできることではない。裕仁の戦争責任は明らかであるのに、彼はけじめをつけなかった。その故にこそ、戦後日本は此処まで腐り切ってしまったのだ。明仁天皇は皇太子時代から、父の尻拭いをしてきた。その上での生前退位の要望だろう。良く贖罪をなさった。ご希望を叶えて差し上げれば良い、と自分は思う。
     今作にも出てくる、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件は日本人の恥として、先ずは侘び、亡くなられた方々の冥福を祈るべきであろう。
     そして、このような惨劇を二度と繰り返すことの無いよう、日本人は、事大主義を改め、キチンと自分の目で見、自分の頭で考え、他人の話をまんべんなく聞いて自らの選択をしてゆきたいものである。
     万遍なく聞くということは日本会議メンバーのような下司の吐く嘘迄聞けということでは断じてないことは無論である。
     役者達の演技に関しては、背凭れの高い椅子に座りながら、列車の揺れまで表現していたことに感心。舞台美術、場転も話の展開の腰を折らないスムースなものであった。この辺りの演出もグー。
  • 満足度★★★★

    みてきた
    梢栄さんよかっったですね、だいぶ年齢上の設定でしょうに違和感なかったです。
    チーズ丸さんは、主役やればよかったのに。

  • 満足度★★★★

    地震学の先駆者
    「関東大震災(1923)」の地震の前と後で、評価が大きく変わった学者...今村明恒東京帝国大学教授(博士)。 地震前は「ホラ吹き」と罵(ののし)られていたのが、地震後には「地震の神様」となった。

    本公演は、地震やそれに連なる災害を描くというよりは、数奇な運命を辿った男の人生譚といった物語である。その家族や職場である東京帝国大学地震学教室の人物との交流を中心に展開していく。ほぼ年代順に進み、時々の風潮が織り込まれる。

    タイトル「ひずむ月」...地震は地球上に起こる現象であるが、それは(歪む)月になぞらえて民衆の心(変わり)を投影しているような...。
    (上演時間約2時間)

    ネタバレBOX

    公演やそれを取り上げた新聞記事等の中で、将来起こりうる関東地方での地震への対策を訴える。「ホラ吹きの今村」と中傷されるも、彼の警告は関東大震災によって現実のものとなる。その後、幅広い震災対策を呼びかける一方で、現在の「地震学会」設立に尽力する。本公演では、関東大震災までの辛苦の時代を中心に描き、地震に対する独自の視点と研究成果へ自信、その信念の強さを窺い知ることが出来る。

    物語は、今村明恒が東京帝国大学地震学教室に勤務(無給)しているところから始まる。その後は、彼の家庭と職場、外部での公演とその新聞記事により騒動が交錯するように描かれる。この時代、金銭的に苦労したことにより子供を亡くしている。子(特に長男を通して)への愛情、接し方も明治男の気骨を思わせる。

    また、今村の長男・武雄と朝鮮飴売りのアンさんの交流は、関東大震災時に流布された朝鮮人行動に結びつける伏線であることは明らかである。今村教授の職場内での不遇、家庭内の不幸、夫々への苛立ちも垣間見え、けっして聖人君子のような人物でなかったことも描き出す。そこに人間味=この芝居の魅力が表れていると思う。

    役者陣の演技力は確かでバランスも良い。その演技をさらに効果的に演出しているのが、舞台セット・衣装(和服)である。上手側に段差のある舞台を設け、今村家や街路に見立てる。舞台中央は職場、そこに机が置かれている。また可動する背もたれの高い椅子、見ようによっては衝立をいくつか用意し、玄関戸、汽車内の座席。その簡易な道具によって見る面白さが加わる。

    本公演まで名前さえ知らなかった男の半生...関東大震災以降、阪神淡路大震災、東日本大震災など幾度となく地震災害の痛みを受けている。今村教授の教訓は生かされていたのであろうか。冒頭や中盤でのダンスシーンが、災害対策への啓蒙と大正時代の遊興の対比(皮肉)として描かれているような気がして…。

    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度★★★★★

    隙が無い。見事
    見事。素晴らしかった。
    役者さんは上手いし、演出も洗練されていて非常に良い。
    これまで割と暗めの作風が多かったと感じるが、本作は明と暗、適度なバランスが保たれていて観ていて心地よい。テンポの緩急など非の打ち所がなく、2時間という長い尺でも退屈しなかった。作・演出の杉田鮎味氏の才能に脱帽。お若いのに、何故こうも昔のことに詳しいのか不思議。
    技術面でも、特に音響が優れていた。照明もシンプルな構成なのに美しく見せていた。

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