満足度★★★
見終わったあと、残る物がない
18日の夜、新宿歌舞伎町の新宿眼科画廊スペース地下で上演されたスポンジの『慕情の部屋』千穐楽を観てきた。これは、タイトルが気になったこと、上演場所にまだ行ったことがなかったこと、それにブス土で気になった役者の八木麻衣子が出演しているという3つの理由からである。
話は、留置所の新人・阿久津の入所に至る回想というか、他の入所者への告白という感じ。コンビニでバイトをしていた阿久津が、人妻で夫のDVに困っていた若林翔子を好きになり、最後には翔子の頼みで夫を殺してしまう。しかし、翔子の本性は離婚歴3度、今回も夫の死の直前に多額の生命保険に入っており、警察の聴取では阿久津を単なるバイト先の知り合いに過ぎないと証言する悪女であった。結果、阿久津は捕まり留置所に入るわけだが、実は翔子の夫を本当に殺したのは阿久津ではなく翔子本人だったらしい。さみしいというか、無情な物語とでも言おうか。
劇場の縦長の作りを上手く利用し、回転・展開させる大道具で留置所・コンビニの休憩所・レンタルビデオ店・阿久津の自宅に手際よく場面転換させる工夫は、小劇場系の舞台としては楽しめるものであった。
問題は役者。役者という物は、演技だけではいけない。酷な話だが、容姿も重要である。今回の場合、役にあった演技力と容姿を備えた役者選びという点で、阿久津役の星耕介に関しては失敗しているのではないかと思った。
逆に、彼を夫殺しに導いた若林翔子役の川西佑佳は実に適役であったと言えよう。
結局、舞台の中心はこの2人な訳で、どうもどこかバランスが悪い。演技はともかく、2人が好き合うという状況が納得しにくいのである。
その微妙な雰囲気が劇全体を包んでいるようで、およそ80分の舞台に見入る瞬間、耳に残る台詞は無かった。
それと、劇中の音楽・効果音はともかく、客入れの際のライブ音楽は一考を要すだろう。いわゆるノイズ音楽のような内容だったので耳を塞いでいた客もちらほら見受けられたから。
満足度★★★★
豚箱友情物語、ではないが。
初スポンジ、名前もこの度知った。
タテに長い新宿眼科画廊(地下スペース、逃げ口無し)の奥行きを使った、多場面を作りだす装置の活用で、「物語」はテンポ良く、スリリングに進んでいた。
スーパーのバックヤード、ビデオ屋店内、主人公の部屋、上野、留置場、接見室・・。
印象的なのは、狭い横幅をさらに狭める上手側の小さなエリアで、機材を駆使して無機質系の「音楽」未満ただの音以上の幻想音を「生演奏」する姿、ドラマを「不穏」に盛り立てていた。
当て書いたように物語上のキャラに合う人達は、一劇団に属する同質感がないが、持つキャラによって物語の中に嵌め込まれ、総体で一つの芝居をこなし切った感じ。
悪行の果てであるはずの檻の中が、最もヒューマンな空間だというのも皮肉が利いて好きである。
満足度★★★
慕情ですか~・・・
近しい方の経験談を脚色・構成して創り上げたという感じの物語で、妙にリアルに感じる作品で面白かったです。
場転の際のセットもよかったですが、“ノイズ演奏”がとても効果的で、全体を通して作品の雰囲気を醸しだすのに一翼を担っていました。
ただ、私的には物語の顛末に一捻りが欲しいところ。。。